遊戯王ZEXAL~俺の弟が可愛すぎてマジ超天使。弟のためなら何をしても構わない、というかむしろ俺に全部任せて「は?そんなことも出来ないの?」って蔑んだ目で見下してあんなことやそんなk(ry 作:雲珠
第十六話を読んでくださり、ありがとうございます。
今回は凍夜が珍しく真面目というかシリアスです。
変態な凍夜を期待している方はご注意を!
サブタイはハイネ先生の名言です!
遊馬達が3対3のタッグデュエルを始める同時刻。
凍夜は路地裏にひっそりと佇む建物の前に来ていた。
建物の近くには数台のバイクが置かれており、凍夜はそれを苛立った様子で足蹴にした。
バイクは他のバイクを巻き込んで派手な音を立てながら倒れる。
当然、狭い路地裏でそんな音がすれば建物の中にいても聞こえる訳で……
「テメェ、何してやがる!」
ぞろぞろと建物の中から人相の悪い輩が出てくる。
普通の人間なら怯えるであろう相手を前に、凍夜は気だるげな動作で振り返ると不機嫌な顔を隠しもせず言い放った。
「あー……八つ当たり?」
「ナメてんのかテメェ!」
「ふざけんじゃねェぞ!!」
罵詈雑言が浴びせられるが、凍夜の表情は変わらない。
しかし、その全身からはアストラル以外には視認出来ない黒いオーラが立ち上る。
人知れず、凍夜の右手に50という黒い文字が刻まれる。
「なあ、俺とデュエルしようぜ」
「何言ってやが……、ッ!?」
不意に言われた言葉に反論しようとしていた相手が、凍夜の異様な雰囲気に気付く。
恐怖。その感情に支配された男は凍夜から距離を開ける。
その男の様子を見て、周りの連中も凍夜の異様さに気付いたのか警戒心から一歩足を下がらせる。
「おいおい、俺まだ何もしてないだろう。傷付くなぁ」
肩を竦めてみせた凍夜だが、その言葉に感情は籠っていなかった。
当然、相手もその言葉を本気で言っているとは欠片も思わず、ただの冗談か戯れだと確信していた。
「じゃあこうしよう。俺がデュエルで負けたら二度とここには近寄らないし、そこのバイクの修理費も全額支払う」
凍夜は後ろのバイクを指さしながら、そう言った。
倒れた衝撃で塗装が剥げたり、ハンドルな変な向きに曲がっているバイクが数台ある。
その全ての修理費を支払うとなれば結構な額だろう。
「だが、俺が勝ったらテメェ等全員ここに近寄るな。ついでに神代凌牙への接触も禁止する」
「凌牙…?テメェ、凌牙の知り合いか!?」
思わぬ人物の名前が凍夜の口から出たことで、相手の警戒心がさらに増す。
元々、相手は一匹オオカミ気質な凌牙のことを快く思っていないのだ。
「いや、他人だ。俺の中ではどうでもいい存在だな」
「はぁ?」
「じゃあ何でわざわざ…」
「だが、俺の大切で愛しい天使というか女神がそいつを仲間だって言っててな。ぶっちゃけ羨ましいのと悔しさで心が痛い。そいつがここしか居場所がないって言うもんだから潰しにきた」
「………は?」
相手が凍夜の言葉を正しく理解するのに数秒の時間を必要とした。
色々ぶっ飛んだセリフだったが、要するに俺達を潰しに来たと言ったのだ、この凍夜という男は。
「何ふざけたこと抜かしてんだ!このクソガキ!」
「いい加減にしねぇと容赦しねぇぞ!」
「大人ナメてんのかコラ!」
先程まで警戒心は凍夜への怒りで撥ね飛ばされたのか、微塵も感じられない。
しかし怒りに満ちているのは凍夜も同じで、近くの壁を拳で殴った。
「黙れよ」
瞬間、再び凍夜から異様なオーラが漏れる。
静まり返った空間で、凍夜が口を開く。
「早くデュエルしようぜ。そっちは何人でもいいからよ。今頃、神代が俺の大切なハニーと会って話していると思ったら嫉妬で狂いそうだ」
中々に締まらない発言だが、その殺気は本物だ。
たじろぐ男達の中で、気の強そうな男が2人、凍夜の前に出た。
「いいだろう、俺達がやる」
「さっきの言葉は本当だろうな?」
凍夜は2人の顔を見た後、暗い笑みを浮かべた。
「勿論、約束は守るぜ」
流石の凍夜とてデュエリストだ。
デュエルで嘘を吐くことはない。
「なら始めるぞ」
その言葉を切欠に3人はデュエルディスクを構える。
『
倉門 LP4000
凍夜 LP4000
古内 LP4000
「先攻は貰う!ドロー!……おい、テメェふざけてんのか?」
倉門は自分の手札を一瞥した後、表示された凍夜のライフを見てそう言った。
言われた本人は首を傾げながら頭の上に疑問符を浮かべる。
「何のことだ?」
「俺達2人を相手に通常ライフだと?」
そう、2対1のデュエルで凍夜のライフは通常の4000。
明らかに不利な状況を選択したことになる。
「は?お前ら程度、通常ライフで充分だろ?」
さも当然のように真顔で言い放った凍夜に、相手の額にピキッと青筋が浮き出る。
「その発言、後悔させてやるよ!俺は永続魔法《コア転送ユニット》を発動!1ターンに1度、手札を1枚捨てることで自分のデッキから《コアキメイルの鋼核》を手札に加える!そして《コアキメイル・ウルナイト》を攻撃表示で召喚!」
《コアキメイル・ウルナイト》ATK2000 Lv4
倉門の場に鎧を纏い、槍と盾を持ったケンタウロスが現れる。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンド。そしてターンエンド時、ウルナイトの効果が発動。このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ毎に手札から《コアキメイルの鋼核》を1枚墓地に送るか、手札の獣戦士族モンスター1体を相手に見せる。または、どちらも行わずにこのカードを破壊する。俺は手札の《コアキメイルの鋼核》を墓地に送る」
「俺のターン、ドロー」
相手モンスターの効果処理が終わり、凍夜にターンが移る。
「俺はモンスターをセット。カードを1枚伏せてターンエンドだ」
「おいおい、随分言ってた割には逃げ腰だな」
凍夜は相手の挑発には乗らず、薄っすらと笑う。
それを不気味に思った古内は心のモヤを払うように勢い良くドローした。
「俺のターン、ドロー!フィールド魔法《ヴァンパイア
《ヴァンパイア・ソーサラー》ATK1500 Lv4
ヴァンパイア帝国の演出か、周りのARヴィジョンが変化する。
相手の背後に古城が出現し、紅い月が妖しい光を放つ。
そして蝙蝠のようなステッキを持った黒いローブの女性ヴァンパイアが古城から現れ、古内の場に降り立つ。
ヴァンパイア・ソーサラーが凍夜に対して妖艶な笑みを浮かべるが、全ての愛情を自身の弟である遊馬に捧げている凍夜は全くの無反応だ。眉一つ動かない。
「カードを1枚伏せてターンエンドだ」
「俺のターン、墓地の《コアキメイルの鋼核》の効果を発動。通常ドローを行う代わりに墓地のこのカードを手札に加える。バトル!ウルナイトで伏せモンスターに攻撃!」
「残念、俺のセットモンスターは《E・HERO クレイマン》だ」
《E・HERO クレイマン》DEF2000 Lv4
同じ攻撃力と守備力を持つ者同士、ダメージは発生しない。
その事実に相手は舌打ちした。
「チッ。俺はこれでターンエンドだ。そして手札から《コアキメイルの鋼核》を墓地に送る」
「俺のターン、ドロー。手札から《E・HERO エアーマン》を攻撃表示で召喚」
《E・HERO エアーマン》ATK1800 Lv4
青い体と翼を持ったエアーマンが凍夜のフィールドに現れる。
「エアーマンの効果発動。このカード以外の自分フィールド上の《HERO》と名のついたモンスターの数まで、フィールド上の魔法・罠カードを選んで破壊出来る。俺はお前のセットカードを破壊する」
「何!?」
倉門の場にセットされていた罠カード《魂の綱》が破壊される。
効果は自分フィールド上のモンスターがカード効果によって破壊され墓地に送られた時、ライフを1000ポイント支払うことでデッキからレベル4のモンスター1体を特殊召喚する。
意外と面倒なカードを破壊出来た凍夜は満足気に頷く。
「さて、そろそろ行くぜ。俺はレベル4のエアーマンとクレイマンでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。黒き希望を乗せた海賊よ、闇の淵より現れよ!エクシーズ召喚!《No.50 ブラック・コーン号》!」
《No.50 ブラック・コーン号》ATK2100 ORU:2
凍夜のフィールドが黒い霧に包まれ、その中から半透明な海賊船が姿を見せる。
白い帆には髑髏の代わりに赤い文字で50と書かれている。
そして、ブラック・コーン号がフィールドに現れた瞬間、凍夜の右手に浮かんだ50という文字が一層その光を輝かせる。
「ナンバーズ…?」
「ブラック・コーン号の効果発動!オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで相手フィールド上のモンスター1体を砲弾に変え、その攻撃力分のダメージを与える!」
《No.50 ブラック・コーン号》ATK2100 ORU:2→1
ブラック・コーン号から鎖が飛び出し、ウルナイトの体に巻き付く。
そしてウルナイトは抵抗虚しく、ブラック・コーン号の内部へと引きずり込まれていく。
「ウルナイト!」
「やれ、ブラック・コーン号。
「うあぁああぁぁ!!」
倉門 LP4000→2000
ブラック・コーン号の砲台から光の礫が発射され、倉門のライフを削る。
どこか遠くで、ウルナイトの悲しげな声が聞こえた気がした。
しかし、凍夜はそれでも止まらない。
「アッハハハハ!さあトドメだ!ブラック・コーン号で
「ぐあぁあぁぁあ!!!」
倉門 LP2000→0
先程よりも大きな光の弾が倉門を跳ね飛ばす。
その衝撃で気を失ったのか、ピクリとも動かなくなった。
「倉門!テメェ…!」
「何だ、他人の心配をする余裕があるのか?俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ」
「もう許さねえ!魔法カード《ナイト・ショット》!相手フィールド上にセットされた魔法・罠カード1枚を選択して破壊する!このカードの発動に対して、相手は選択されたカードを発動できない!俺は左側のカードを破壊だ!」
「へえ、良いカードを使うな」
セットされていた《リビングデッドの呼び声》がナイト・ショットによって破壊される。
しかし、凍夜は破壊されたカードを一瞥しただけで表情に変わりは無い。
それどころか相手を称賛する余裕さえ見せた。
「ナメてんじゃねぇぞ、クソガキ!ヴァンパイア・ソーサラーをリリースして《ヴァンパイア・ロード》を召喚!ブラック・コーン号に攻撃だ!そしてフィールド魔法《ヴァンパイア帝国》の効果により、ヴァンパイア・ロードの攻撃力はダメージ計算時のみ500ポイントアップする!」
《ヴァンパイア・ロード》ATK2000→2500→2000 Lv5
ヴァンパイア・ソーサラーが蝙蝠に姿を変えて古城に戻ると、次はヴァンパイア・ロードが古城から姿を表す。
そして体の一部を蝙蝠に変化させ、ブラック・コーン号を襲う。
「っ…」
凍夜 LP4000→3600
僅かに与えられた攻撃に凍夜が眉を潜めるが、それも一瞬のことだ。
しかし、表情はあまり思わしくない。
というも、凍夜はヴァンパイア・ロードとヴァンパイア帝国の効果を知っているからだ。
だが顔色が悪いのは相手も同じであった。
「な、何故破壊されない!?」
「ブラック・コーン号はナンバーズと名のついたモンスター以外との戦闘では破壊されない」
攻撃を受けてなお佇むブラック・コーン号に古内は驚きを隠せていない。
そして凍夜はブラック・コーン号の効果を淡々と説明した。
「破壊耐性持ちか…!だがカード効果は防げまい!ヴァンパイア・ロードの効果発動!このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、カードの種類を宣言し、相手は宣言された種類のカード1枚をデッキから墓地に送る。俺はモンスターカードを宣言!さあ、デッキから捨ててもらおうか」
「俺は《邪帝ガイウス》を墓地に送る」
「さらに、ヴァンパイア帝国の効果発動!1ターンに1度、相手のデッキからカードが墓地に送られた時、自分の手札・デッキから《ヴァンパイア》と名のついた闇属性モンスター1体を墓地に送り、フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。俺はデッキから《ヴァンパイア・ソーサラー》を墓地に送り、ブラック・コーン号を破壊!」
ブラック・コーン号の真下に黒い穴が出現し、その穴から黒い槍のように無数の蝙蝠がブラック・コーン号を貫く。
凍夜は破壊された爆風を右手で防ぎ、ぼんやりと右手の甲に現れていた文字が消えていくのを見た。
「俺はこれでターンエンドだ」
「……折角、」
「あ?何か言ったか?」
「折角、チャンスをやったのにな」
「どういう意、味……」
凍夜の目を見た相手は、全身に恐怖が走る。
先程の異様なオーラとは比にならないほどの異様、いや、異形なオーラが場を支配する。
そこにあるのは、純粋な闇。
「俺のターン、ドロー」
無機質な声が、静寂な場に響く。
相手にはそれがまるで、死の宣告のように聞こえた。
「俺は魔法カード《ダーク・フュージョン》を発動。手札の《E-HERO マリシャス・エッジ》2体を墓地に送り、エクストラデッキから《E-HERO マリシャス・デビル》を特殊召喚。そして《E-HERO ヘル・ゲイナー》を通常召喚」
《E-HERO マリシャス・デビル》ATK3500 Lv8
《E-HERO ヘル・ゲイナー》ATK1600 Lv4
どちらのモンスターを凍夜と同様に黒いオーラを纏っている。
特にマリシャス・デビルは桁違いのオーラを放ち、まるで意思があるかのように凶悪な爪を相手に向ける。
「イービル、ヒーロー…?」
「俺はヘル・ゲイナーをゲームから除外。さあ、お前の好きにしろ。マリシャス・デビル」
初めて見るモンスターなのか、相手は呟く。
しかし、無視したのか単純に聞こえなかったのか、凍夜は相手の呟きには答えずマリシャス・デビルに指示を出した。
いや、正確に表すのであれば決して指示とは言えない。
何故なら、凍夜が指示を出すよりも速く、マリシャス・デビルはヴァンパイア・ロードに斬りかかっていたからだ。
「なっ、あ……と、罠発動!《聖なるバリア-ミラーフォース-》!」
発動された閃光の輝き。
それに相手が安堵した瞬間、その光はマリシャス・デビルによって引き裂かれた。
絶望。その二文字が相手の頭を過る。
「残念だったな。ダーク・フュージョンによって特殊召喚されたモンスターはこのターンのみ魔法・罠カードでは破壊されない。そして、ヘル・ゲイナーの効果によってマリシャス・デビルはこのターンに2回の攻撃を行える。……本当に、残念だ」
もはや恐怖によって話すことも出来ない相手に、凍夜は静かに告げる。
悲しいことに、相手には凍夜の声など聞こえてはいなかった。
いや、逃げ場のない
「あ、あ……」
古内 LP4000→3000
ヴァンパイア・ロードが破壊されたことにも気付かず、相手はただマリシャス・デビルから距離を置くように体を後退させる。
だが、マリシャス・デビルは容赦なくその体に爪を突き立てた。
「あ゛、あぁぁああ痛いっ、痛っぎゃあぁあああああ!!!」
古内 LP3000→0
ARヴィジョンが解除されてなお、相手はマリシャス・デビルに攻撃された箇所を押さえ、地面を転げ回った。
痛みで薄れゆく視界の中、相手は見た。
マリシャス・デビルが消えるのに若干のタイムラグが生じたこと。
そして、人間を人間として見ていない、凍夜の無機質な瞳を。
「(アレは……何だ…)」
己の理解を超えたモノが、そこに佇んでいた。
しかしそれを認識するよりも早く、相手の意識は闇に沈んでいった。
「…なん、で……何で、こんなことするんだよ…!」
「そうだ…。俺たち、何もしてねぇだろ!?」
仲間が倒された恐怖に、思わず何かを言わなければいけないと感じた彼等は凍夜を非難するように声を荒げる。
「そうだな、お前たちは何もしていない」
「だ、だったら何で…」
「けど、そんなの関係ないんだ」
凍夜はデュエルディスクを片付けながら、相手に一歩ずつ近づいていく。
「俺の愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて愛しい天使がさ、神代凌牙を助けたいって言ったんだ。あの子は誰よりも優しいから、無下に扱われて断られても絶対に助けるまで諦めない。だから俺は考えたんだ。神代凌牙がここしか居場所が無いと言うのなら、それを奪ってしまえばいいって。奪って、奪って、奪い尽くして、そうして、あの子の所にしか居場所を見出だせなくなればいい。何もかもを失えば、もうそれしか居場所も方法も無くなるだろ?人は全てを失った時、差し出された手に縋るしかないんだから」
慈愛に満ちて、何もかもを許容するような笑みで、この男は今、何と言ったのだろう。
相手は凍夜の言葉を理解出来なかった。いや、拒絶した。理解などしたくなかった。
目の前の男が、人間という範疇を超えて、恐ろしい存在に見えたからだ。
「俺、勝っただろ?だから約束、守ってくれるよな?」
相手は凍夜の言葉に必死に頷いた。
もうそれ以外の選択肢は彼等に残されていなかった。
「そりゃ良かった。んじゃ、今日中に引っ越しよろしくなー!」
あの異様なオーラは鳴りを潜め、軽い態度で凍夜はその場から去った。
ひらひらと振られる手。相手はその背後を呆然と見送る。
口を開く者は、誰もいなかった。
《No.50 ブラック・コーン号》の効果は漫画版のを採用しています。