投稿するなら今日しかないと思いました。
先日ふと気になって10年前のボカロを調べたところ、2014年の年内ミリオン達成曲が『ストリーミングハート』だけだと知り、もう少し突っ込んで調べたら2013年にカゲプロ・kemu VOXXという当時のボカロ界を牽引した二大コンテンツが完結したことを知るなどして、当時の寂しさを追体験して衝動的に書いたSSになります。
[2014-2016:THE SHOOTING STARS]
「ハッピーニューイヤー! 2014ー!」
「……はあ」
「もー、新年から浮かない顔だね。折角盛り上げようとしたのに~」
「そりゃあ……盛り上がる気分にもなれないさ」
隣で彼女が呟いて、息を吐いた
埃っぽい会場には、無数の空席
彼女はドーナツをひとつ手に取り、片目を瞑って穴を覗いた
ミクはそっとモンブランの皿を引き寄せる
「『もう一回何回やったって 思い出すのはその顔だ』」
去年、孤独なカミサマの奇跡の箱が閉じられた
去年、赤いジャージの彼がさようならをした
ハッピーを求めたモノクロのミクは、いつかに落ちていったっきり
全ての始まり、溶けそうに可愛い歌は、気づいたらもう遠すぎて
今はただ、最高速の別れの歌が懐かしい
「寂しい?」
「言っただろ。私をマトリョシカにするな。……お前、このままここにいるつもりか?」
「もちろん。『愛したっていいじゃないか』」
「……『勝手にどうぞ』」
彼女はふっと視線をそらした
無言のまま、それぞれに甘味を噛み締める
長い時間をかけてモンブランを食べきって、それからミクは顔を上げた
2人のマスコットを連れて、最前線に飛び込んでいくピンクの目のミクを眺める
そうしてミクはまた、新たな歌を口ずさむ
「『嫌いになってしまえたら 大成功』?」
[2017:THE DESERT PLANET]
砂埃舞う惑星に、日没が迫っていた
二人のミクはいつかのように並んで、どこからか響く歌を聴いていた
それは黄色い王女が歌う天国の歌
長い長い悪ノ物語の、ひとつのピリオドを告げる歌
王女とよく似た召使が Re_Birthday と口にする
そういや、と思い出して
どちらからともなく懐かしい歌を歌った
ヒーローの歌とか、モザイクの歌とか
桜の歌、ぶっ飛んだ歌、お貴族様の喧嘩の歌なんかを
ふいに彼女が目を見開いた
紛れもない、モノクロのあのミクが問いかけている
『あなたなら何を願うか』
『あなたなら何を望むか』
何故だか、もう二度と会えない気がして
二人のミクはただ、聞き届ける
モノクロの歌姫がさけぶ愛を
誰も知らない物語を
世界が砂色に戻ったとき
吹き晒す風とともに
眩いくらいに真っ白な原稿用紙が飛んできた
丁寧な字で綴られていたのは、生命の歌
ミクは微笑む
砂埃舞う惑星で、ミクは新しい歌を紡いだ
『未完成だって何度でも言うんだ』
ミクの「応答」を聞き届け、彼女はバトンを投げて渡した
ミクは顔を上げる 零れ落ちる一粒の涙は、拭わないまま
「応援してるよ。『モザイクの奥』から」
「ん。……『心残り残さないように』」
砂埃の向こうに、見知った影が消えていく
『風が吹き曝しなお進む砂の惑星さ』
『いつだって 転がり続けるんだろう』
彼女の歌 モノクロのミクの歌
バトンを握りしめ、ミクは砂の中へと踏み出した
[2018-TODAY:THE BLUE PLANET]
ミクは種を蒔き続けた
みっつめの愛の言葉を紡ぎ、鬼灯を植えた
彼女から受け取ったバトンと、歌いたい愛を肌身離さず持って
やがてひとつの林檎が、大きなセカイと成る
片手でOKサイン、もう片方の手でピースサインを作れば
惑星に花が狂い咲き 王の歌と毒の歌が響き渡った
孤独なカミサマの面影あるビートに乗って
ミクは新たなセカイを言祝いだ
『まだ絶対いけるよ』、とトマトを植えた
赤と青のカップルの、笑っちまうような追いかけっこを見守った
綺麗な造花と猫のお面の秘密をそっと覗いた
花蘇芳と白百合の花畑を越えて
メイドと魔女の悲痛なダンスを見届けた
ピンクの目のミクが煙草を吸って、薄っぺらい信仰を皮肉った
林檎を齧って存在を歌う時も、チョコレート片手に誹謗を歌う時も
ミクに似た2人のマスコットはずっとあの子のそばにいた
黒い天使の格好をして会いに行ったら
白い悪魔の格好をして出迎えてくれた
ランドセル背負った子が風で吹っ飛ばされた
まん丸のキャベツが沢山育っていた
カレーうどんを愛する、ミクとは似て非なるあの子が
おつかいの勢い余ってセカイに頭から突っ込んでくる
さあ、今日は16回目のハッピーバースデー
あの日から数えれば、5回目の誕生日
この日、ミクはまたひとつ新たな歌を紡ぐ
曲名は『ブループラネット』
全てのミクたちと、彼女らが紡いだ全ての音を祝福する誕生歌
願わくば、彼女に届くように
そして、ミクたちを愛したすべての命に響くように
『響けオゥイェイ 廻り出すブループラネット』
さあ、今また夜が明ける
捧げよう、すべての音に祝福を
歌い継ごう、未来永劫級のこの歌を──
──忘れ得ないメロディとともに、爆発音が耳を劈いた
爆心地には、ドーナツみたいな形の痕跡