ナマコブシを投げるだけの簡単なお仕事。 作:ジョージ・マッケンジー
【£月A日】
一晩寝たら知らん砂浜の上で目覚めてTS異世界(ポケモン世界)転生を果たしていた。
何を言っているのか分からねぇと思うが、俺も分かんない。
ネット小説でありがちな超展開に戸惑う俺。
そんな絶望的な状況にも、差し込んだ一つの光があった。
白く豊かな髭を蓄え、まさに真夏! という印象を受けるアロハ服。
金がなくて此処が何処かも分らない旨を伝えると、オッサンはこう言った。
「お金がないなら───
はい?
【£月B日】
『ナマコブシ』。
アローラ地方とやらに生息するポケモンであり、おはぎに細長いイチゴがニョキっと生えたような見た目が特徴だ。
(・大・)←こんな感じ。
そして、砂浜にやって来たソレを海へ投げ戻すのが俺の仕事らしい。
日給2万。衣食住付き。十匹投げるごとに+1万。
ぶっちゃけ怪しいが、他に身寄りもないので受けることにした。
実際にやってみた感想としては───
クッッッソほどキツい。
アイツら、名前の通り「ナマコ」が元ネタらしく、ニュルニュルしててまず掴めん。
掴めたとしても口から
国民的ゲームのキャラクターの癖に生態が謎にグロい。
結局、今日は3匹だけ投げて一日が終わった。
【£月C日】
バイトに励んでいると、浜辺に流れ着いたモンスターボールを発見した。
幸い、防水機能まで完備されており、まだ使える代物らしい。
ならばどうする?
ゲットするしかねぇだろ!!
────ってことで、早速ポケモンを手に入れた。
「ぶにー」
紹介しよう、俺の新メンバーのナマコブシ君である。
いや、俺だってもっとマトモなポケモンが欲しかったよ? 欲しかったんだけどさ。
……この砂浜、ナマコブシ以外のポケモンが攻撃的すぎるのだ。
CASE1 『スナバァ』
これまたアローラ特有のポケモンであり、子供が作った砂の城にスコップを突き刺したような見た目をしている。
可愛い見た目に騙されそうになる──というか俺も騙されたのだが、実のところゴーストタイプ。
なんか鬼火みたいなの打ってきてそりゃもう大変だった。
スナバァに追い掛けられ、恐怖のあまり悲鳴を上げながら逃げる俺。
前世より身長が低いのもあり、動きにくいのなんの。
あの時の観光客の冷たい視線を、俺は生涯忘れる事はないだろう。
結局、俺は見慣れたナマコブシにボールを当てた。
【£月D日】
今日は初めての休暇。
せっかくなので、近くの街を散策する事にした。
まず視界に入ったのが『ポケモンセンター』。
この世界における福祉機関であり、ポケモンの回復から宿泊地の提供まで、何でもこなすトレーナーの心強い味方だ。
俺もウキウキで入ったのだが、何故か皆が皆離れていく。
避けられてる? と思って周りを見渡していると、俺の肩に視線が集中していた。
「ぶに」
もしかして、コイツ嫌われ者だったりするのだろうか。
……可哀想に。
そして、此処にきて朗報である。
────鏡、あった。
周りの利用客に怪訝な視線を向けられながらも、まじまじと自分の身体を眺めてみたのだが……。
「うーん、ロリw」
風呂には入っていたので身体は見た事があったのだが、顔を拝むのは今回が初めて。
上から見ても下から見ても、完全に美少女のソレであった。
ナマコブシの粘液に塗れたワンピースが、趣深ささえ演出している。
いやこれアウトだな。
この日はデパートで服を二着だけ購入して終わった。
オデ、オシャレ、ムズカシイ。
【£月E日】
今日も今日とてナマコブシを投げていると、一人の短パン小僧に声を掛けられた。
「目と目が合ったらポケモンバトル!!」
それゲーム上だけじゃ無くて実在したんだ。蛮族かよ。
とはいえ俺もポケモンバトルには興味があったので快諾。
ナマコブシ君の華やかな初戦を飾る事となった。
俺は 目の前が 真っ暗になった!
負けた。
一万くらい取られた。
覚えてろよクソガキ!!
一方のナマコブシ君は、しゅんと哀しそうな表情を浮かべていた。
……余裕が出来たら、バトルの勉強もしてみようと思う。
【£月F日】
なんか、空に穴が空いている。