ナマコブシを投げるだけの簡単なお仕事。   作:ジョージ・マッケンジー

10 / 19
強くて、弱い。

 

 

 

 【%月C日】

 

 リラさんが懐から白いボールを取り出し、投光器のように翳した瞬間、辺りが白飛びし思わず目を伏せてしまう。光が収まって間もなく、2匹のリザードンが現れた。

 

 「すげー、リザードンってモフモフだったんだ」

 『がぅ』

 

 リーリエに聞いてみると、このリザードンは『ライドポケモン』と呼ばれる個体で、アローラで利用される主な移動手段らしい。自分の手持ちポケモンじゃダメなん? と聞いてみたところ、あろうことかアローラでは秘伝技が法律で禁じられているのだとか。

 

 じゃあ秘伝技要員のビーダルさんはもう用無しだって言うんですか!! 秘伝技世代だった俺にとっては非常に遺憾である。

 

 「────では、飛びますよ!」

 

 片方にハンサムと俺、もう片方にリラさんとリーリエを乗せたリザードンが翼を羽ばたかせる。俺もそっち乗りたいんだが。

 

 俺が酔ったりナマコブシが墜落しかけたり、波乱万丈な人生初飛行を終えて何とか次の目的地に着陸。どうやら此処は『ウラウラ島』と呼ばれ東南部に位置する自然島の一つらしい。本来ならば様々な環境入り交じる自然の地──だったのだが、今は見る影もない。

 UBも結構やる事やってんな……。

 

 「ここからが肝だ。UB奴らに見つからぬよう、細心の注意を払って────」

 『ぶん』

 

 大袈裟に身を隠しながら進むハムサ…ハンサムを傍目に、モンスターボールからマッシブーンを呼び出す。よくよく考えたらコイツ1匹でUBの脅威から逃れられるのアドすぎる。1家に1台欲し……くはないが。

 

 数時間くらい街を歩いた結果、ようやくポケセンを発見。

 やったね!

 

 

 

 【%月D日】

 

 ポケセンに着いたのはいいが、食料が無い。不足とかじゃなくて全く無いのだ。避難者の1人に聞くと、3日前くらいから水だけで凌いでいるのだとか。アーカラより世紀末じゃねぇか!!

 

 って事で食料集めにレッツゴー、withリラさん。

 

 「これ……スーパーか?」

 「『スーパーメガ安』の跡地ですね。尤もUB襲撃以前に神の怒りに触れ、潰された後のようですが」

 

 ────か、神の怒り!?

 アルセウスも個人的にスーパーにクレーム裁きのつぶて入れたりするのか。最悪な方の庶民感だ。

 

 「すげー寂れてんな」

 『ぶにに』

 

 ドアをこじ開けると、蜘蛛の巣や倒壊跡の埃が目立つ店内が視界に映る。頭の上のナマコブシ君も店内に入った途端に眉(らしき何か)を顰め、不満そうにぶにぶに鳴いていた。一日三回も風呂を要求する綺麗好きなのは伊達じゃないな。

 

 口に入れても大丈夫そうな保存食を探しながらリラさんと話をしていると、何やら神妙な雰囲気に切り替わる。

 

 「カナデさんはUB02──マッシブーンに懐かれる心当たりとか、ありますか?」

 「……心当たりっつっても、コイツが優しいだけと思いますよ」

 『ぶーん』

 「だから筋肉アピールだけやめてくれ」

 

 実際、心当たりなんて微塵もない。強いて言うならUBがロリコンである可能性だが、そんな薄い本向きの設定は無いと思いたい。……無いよね?

 

 「……そう、ですか。すみません、変な事を聞いてしまい」

 

 そう言って意味ありげに口を噤む。今更すぎるのだが、どうしてリラさんはアローラに居るのだろう? ホウエンのフロンティアブレーンが国際警察になるってこの世界ポケモン世界においては案外普通だったりするのか? うーん、幼女には分からん。

 

 この日はそれなりの数の非常食を手に入れ、ポケセンへ戻った。

 

 めちゃくちゃ感謝された。へっ。

 

 

 

 【%月E日】

 

 リーリエに部屋へ呼ばれた。

 

 「──────ッッッッッし!!!!!」

 

 俺は人知れずガッツポーズを構える。ついにイベント来やがった!! もうこれ恋人だろ!! 仮にこの日記に先が書かれていなかったとしたら察して欲しい。今夜は忙しくて書けねぇかもしれないからな!!!

 

 

 

 書けちゃった。

 

 結果から言うと、『ほしぐもちゃん』が進化していた。進化したんだ、良かったじゃん!と言ったのだが、どうにも訳が違うらしい。俺から見ても、その異変は明らかであった。

 

 顔──どこか悟りを開いたような寝顔。(˘ω˘)スヤァ…←こんな感じ。

 大きさ──クッソ小さい。進化というより退化では?

 匂い──リーリエの匂いがした。ふへ。

 見た目──本体を頑強な殻の内側に凝縮している。いわゆる繭に似た状態。あと浮いてる。

 

 うーん、トランセルとかコクーンと同じタイプか。凡そ進化のエネルギー貯めてるとかそこら辺だろう。その旨を伝えると、リーリエはほっと胸を撫で下ろす。その隣でマッシブーンがしきりに『ほしぐもちゃん』を上げ下げしていた。別にダンベル代わりになる訳でもあるまいし、何してんだお前(笑)。

 

 

 

 【%月F日】

 

 今日は北方向を探索──しようと思ったのだが、湖に阻まれていた。

 うーん、これでは満足に移動することもままならない。1匹くらいは泳げるポケモンも手に入れておくべきか。欲を言うならばラプラス辺りの可愛い系のポケモンを求む。そろそろ俺の手持ちにも華が欲しくなってきた。

 

 俺はボロい釣竿を握り、湖へ放り投げた!

 

 

 

 『よわわ』

 「よわそー」

 

 紹介しよう、新メンバーのヨワシ君だ。最初は「最悪コイキングでもいいか」程度にしか考えていなかったのだが、そのコイキングすら釣れなかった。この湖どうなってんの???

 ともかくゲットしてしまったものは仕方ない。名前が『ヨワシ』ではあまりにも不憫ということで、俺は人生初のNNニックネームを授ける事にした。

 

 強くなって欲しい、という意味を含めて……そうだな。

 

 「君の名前は今日から『ツヨシ』だ!」

 「よわわ!?」

 「違う。『つよよ!?』だ、やり直し!!」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。