ナマコブシを投げるだけの簡単なお仕事。 作:ジョージ・マッケンジー
【%月G日】
「……ツヨシ、何とかしてデカくなれない?」
『よわわ』
「そこをなんとか!」
両手を合わせて頼み込んでみるが、ツヨシはあわあわするだけで巨大化なんてする気配もなく。
「カナデさん、何をしてるんですか?」
「おー、リーリエか。何とかしてツヨシ……ヨワシに『波乗り』を覚えさせたいんだけど、なんか良い案ない?」
秘伝技が違法云々の話は知ってるが、正直こんな世紀末で一々言ってられんやろ。逆にこんな状況で駆けつけられるライドポケモン及びその管理会社の方がおかしいと思うんだが。そのエーテル、財団?って会社、個人的にヤバい匂いがプンプンするのだけど。
「あの、無理だと思います」
キッパリ言われてしまった。ナマコブシもそんな目で見ないでくれ。
結局、まともな移動方法は思い付かなかった。もう一匹捕獲するのも視野に入れておこう。
【#月A日】
今日は協力者の居る場所に赴くらしい。俺は食料を集めたり探索したりで気付かなかったのだが、よく見るとここ数日でポケセン内の衛生環境やら設備やらが改善されている気がする。
すげぇな国際警察、そんな事まで出来るんだ。
やがて、協力者の居る場所───もとい、エーテルハウスへ辿り着いた。現実世界の方のアレでは無く、エーテル財団のハウスという意味でのエーテルハウスだ。
場所自体は俺が見た湖のすぐ隣だったのだが、不運な事に崩壊した崖によって気付けなかったらしい。いや、UBの目も誤魔化せる事を考えたら幸運と言うべきか。
「ポケモンバトルしよー!」
入るなり、聞こえてきた一声。視線を向けると、そこには右手にモンスターボールを握ったショタが一人。思わず身体がブルリと震える。オデ、バトル、コワイ。……いや、よく考えろ、今の俺はクソガキに一万円を取られたあの日よりも目まぐるしく成長している。
─────勝てるのでは?
よーし、お兄ちゃん頑張っちゃうぞー!
めのまえが まっくらに なった!
さて、早速二万円をカツアゲされた俺とその様子を眺めていたリーリエだが、一方でリラさん達は協力者と何やら言葉を交わしていたらしい。やがてその相手が此方を見てトテトテと近付いてくる。
「あれっ、君が噂の女の子だよね!」
何だこの美少女ォ!?!?
話を聞いてみると、ふにゃっとした猫口が愛らしい紫髪の少女───アセロラがリラさん達の言う協力者らしい。要するに、彼女が噂のキャプテンという訳だ。天然な見た目の割に意外とやりよるな。
【#月B日】
スーパーメガやすに食料調達へ赴いたのだが、何かがおかしい。
─────ガタッ、ガタガタ。
「
俺の言葉に応じるようにして、再びガタガタと揺れる商品棚。正直に言うと、俺はこのスーパーに訪れた初日から怪しんでいた。『ゲーフリがこんな無意味なダンジョンを作るか?』と。考えてみればそうだ、非常食を手に入れるだけのイベントって何だよ。
『ミ───キュ────』
倉庫の方から、不気味な鳴き声。
残念だったな! 俺はホラー耐性があるのだ、現に足がガクガク震えるだけで済んでいる。常人だったら失禁必至だからな。
「……さて、帰るか」
『キュッ!?』
ごめん、俺心霊現象に構ってる暇ないんだ……、帰ってナマコブシのブラッシングとツヨシの波乗り特訓してやらねぇと。マッシブーン? 勝手に筋トレして満足してるから放って置いて問題ナシ!
【#月C日】
今日もスーパーメガやすに来た。あまりに暇すぎるので雑誌でも───と思っての行動だ。調査云々は国際警察の二人が全部こなしちゃってるが故に、やる気がない日にわざわざ遠出する必要がないのだ。
『キュ────ミ────』
「懲りねぇなぁ」
今日も今日とて倉庫へ誘導してくる謎のゴーストポケモン。しゃーない、構ってや───
「お、これ少年ジ◯ンプじゃん!! この世界、あったんだ」
『キュッ!?』
すまん、構ってる暇無くなったわ。
俺は軽い足取りへポケセンへと戻った。あとでエーテルハウスのガキどもにも見せてやるか。
【#月D日】
今日も今日とてスーパーメガやすに来た。俺暇人すぎない? 今日はリーリエと恋バナに花を咲かせる予定だったのだが、エーテルハウスのアセロラの手伝いがあるから、とのこと。俺もアセロラちゃんと共同作業してぇよ!!
『ミミ──ッ───キュ!』
「おー。ミミ助、今日も元気だな!」
倉庫から聞こえる謎の声の主に名前まで付けてしまった。今では恐怖感も0と言っていいほどに消え、勝手に友人認定しているほどである。これが寂しすぎるが故に聞こえてきた幻聴でないことを祈るばかりだ。
「────ん?」
ふと下を見やると、お菓子が等間隔で置かれている。その先を視線で追うと───倉庫。可愛いかよ。健気な努力を欠かさないミミ助に免じて、ここは釣られてやるとしよう。
『……キュキュッ!!』
俺の足音が近付くにつれ、ミミ助の嬉しそうな声が漏れてくる。俺が扉に手を掛けて、いざ倉庫を開けようと────、
「カナデさん!!!」
「わぁ!?」
『ミ゛!?』
突如、スーパーの入り口からリーリエの声が響く。彼女がここまで声を荒げるのは初めてだ。…もしやすると、だ。俺は倉庫への侵入を断念し、踵を返した。
『ミミッ──キュ─────!!!!』