ナマコブシを投げるだけの簡単なお仕事。   作:ジョージ・マッケンジー

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ゼットで、ゼンリョク。

 

 

 

 

 【&月A日】

 

 

 

 今日はアセロラちゃんと仲良くなった。

 本人曰く『ゴーストタイプ』が好きらしく、彼女のポケモンを見せてもらった。流石キャプテンと言うべきか、素人の俺から見てもレベルが高い事が分かる。特に───

 

 『キュキュ』

 「へぇ、この子可愛いな! なんか首折れてるけど」

 「この子はミミッキュ! 本体は胴体の部分だから首が折れてるわけじゃないよ〜」

 

 アセロラちゃん曰く、人気に成る為にピカチュウを模した皮を被っているらしい。何だそのあざとい生態は。絶対ナマコブシに次ぐ人気ポケモンじゃん。

 

 「なんか俺も欲しくなってきたな……アセロラちゃん、ミミッキュの生息地帯とか知ってる?」

 「うーん、心当たりはあるんだけどね〜」

 

 「むむむ」と小さく唸りながら難しそうな顔で顎に手を当てるアセロラちゃん。あざてぇ! あざとすぎるよ!! アレだろ、ポケカでSR出たら絶対に高額になるタイプのキャラだ。リーリエもね。

 

 ───話が逸れてしまったが、話を要約すると「UB達の影響で生息域が大きく変化してるから分からん」とのこと。まぁそうだよな。例のビーチからナマコブシが消えていた時点で大体の察しはつく。

 

 「ミミッキュゲットはもう暫く後かなぁ」

 「でもカナデちゃん、ポケモンに好かれる体質でしょ? きっとすぐ向こうからやって来るって!」

 

 俺の背中をバシバシ叩きながら励まして来るアセロラちゃん。一口に「好かれる」と言っても、ポケモンというかUBというか筋肉というか……。

 

 

 

 

 【&月B日】

 

 「───ナマコブシ君、強くなりたいか?」

 『ぶ、ぶし!』

 

 さて、今日は待ちに待ったナマコブシ君特訓デーだ。

 参考までに現在までの戦績をおさらいしておこう。

 

 勝利──0

 敗北──2

 引き分け──0

 

 尚、二回の敗北は両方とも俺よりも小さい子供である。俺は頭を抱えた。

 ナマコブシ君の主な攻撃手段は『とびだす中身』なのだが、俺が物理的に押し潰すか、気絶する程のダメージを受けないと発動しない謎仕様。もしやお前、アローラのネタ枠か?

 

 俺は考えに考えた結果、一つの結論に至った。

 嘗て、対戦環境でTOPレベルで猛威を振るった状態異常──『もうどく』。

 嘗て、ダブルバトルで必須級とまで呼ばれた絶対防御の無敵技──『まもる』。

 その二つを組み合わせれば、地獄を超えた地獄が生まれるのは、だいもんじを見るよりも明らかであった。

 

 「名付けて、どくまも作戦!」

 『ぶにに!』

 「というわけで、ナマコブシ君。君は今日から害悪ポケモンだ」

 『ぶにに!?』

 

 強さを得る代償は大きいのだ、ナマコブシ君。敵を諦めさせちまえば勝ちだ勝ち、って安西先生も言ってたろ!*1

 

 

 

 「どうしたもんかねぇ」

 

 大口を叩いて特訓を始めたのはいいものの、俺達は一つの大きすぎる壁に直面していた。

 『どくどく』と『まもる』が使えねぇ────!

 彼の使える技は『カウンター』『おきみやげ』『ミラーコート』の三つらしい。攻撃技どこ……? 俺がウンウン唸っていると、砂浜を踏む音と共に一人の男が近づいて来た。

 

 「おー、クチナシさんじゃん。おひさ」

 「嬢ちゃん、少し言葉遣いを──まぁ、いいか」

 

 ため息を吐きながら頭を掻くクチナシさん。こんな世紀末だってのに、このオッサンは何も変わっていないように見える。案外こんな人が危機的状況でも長生きすんのかもしれない。そこら辺はホラー映画で履修済みである。

 

 「そういや、クチナシさんバトル強いだろ? コイツ特訓してんだけどさ、何か良い案ない?」

 「……そのナマコブシ、まだ連れてたのか」

 「そりゃあ、俺の相棒だし」

 『ぶっし』

 

 クチナシさんは「ハッキリ言うねぇ」と小さく呟き、ポケットから何かを取り出す。

 

 「持っていきな。こんな状況だ、お前に渡しても守り神サマは怒らねぇだろうよ」

 「なんすか、これ」

 

 俺の問いを半ば無視するように言葉を紡ぐ。

 

 「お前、No.836…いや、ハンサムと同行してんだろ?」

 「そうっすけど、その前にこれ何な────」

 「覚悟は決まってると思うが──まぁ、精々()()とやらは大切にしろよ。骨くらいは拾ってやるからさ」

 「いやあの、その前に説明を───」

 

 そう言って背中を向けたクチナシさんは、背中を向け手を振りながら去ってしまった。

 ……このリングとカケラ、何なの?

 

 

 

 

 【&月C日】

 

 アセロラちゃんに聞いてみたところ、『Zクリスタル』と『Zリング』と呼ばれるアイテムらしい。ポケモンは何時から特撮系になったんだ?

 

 「『Zリング』に『Zクリスタル』を嵌めるとね〜、ポケモンがすっごくなるんだよ!」

 「す、凄いです!」

 

 目を輝かせるリーリエと、自慢気に鼻を鳴らすアセロラちゃん。俺の理解力が低いのか……? 戦慄していると、隣の個室──リラさんが療養中の部屋──の扉がガタリ、と開かれる。

 

 「所謂、技を強化するアローラ特有の道具ですね。試練とやらを突破しなければならないと聞きましたが……」

 「お、リラさん! ケガはもう大丈夫なんすか?」

 「えぇ、元々小さな傷でしたので」

 

 リラさん曰く、ポケモンの元々備える技を強化するアイテムらしい。俺が貰ったのは黒いクリスタル───つまり、悪技の『おきみやげ』を強化する事が可能なんだとか。

 

 「おきみやげの強化って何だ……?」

 

 なぜか背筋が凍るほどの危機感を覚え、試すのはやめておいた。どちらにせよ膨大なエネルギーを消費するらしいし、最終手段としておこう。

 

 

 

 

*1
※言ってない




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