ナマコブシを投げるだけの簡単なお仕事。   作:ジョージ・マッケンジー

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悪の組織の、本拠地で。

 

 

 

 【&月G日】

 

 スカル団の本拠地への侵入の日。

 ふと、前に会った下っぱの言葉を思い出す。

 

 「……グズマ…いや、クズマだっけ?」

 

 ごめん、やっぱ思い出せねぇや。

 ともかく、此処にアイツらのボスが居るのは確かだろう。

 ポータウンと17番道路を隔てる巨大な壁をまじまじと眺めていると、ハンサム、クチナシさんに次いでリラさんが横に並ぶ。

 

 え、今行くの?

 

 何も言葉を交わさずに、全員がボールホルダーに手を伸ばす。

 やがてクチナシさんの一声と共に、重く存在感を示す扉が開かれる。

 

 「ポータウン、侵入開始!!」

 

 よく分からんが、取り敢えず後に続いた─────!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウラウラ島の北西に位置するポータウン。

 数年前から街中がスカル団に占領されており、彼らの本拠地として長らく警戒されている其処には、一面が落書きだらけな上に、折れた街灯までも見受けられる、まさに『不良達の巣窟』とも言えるであろう街に一つの騒乱が巻き起こっていた。

 

 

『こ、コチラ、監視役っス! 入り口の監視組が全員やられちゃいました! ポリ公が3人と、幼いガキが二人! 既に奴らはもう直ぐ此処まで───うわぁああああ!!!』

 

 悲鳴はやがてザーザー、という雑音に切り替わり無線が途絶える。

 同時に外の騒乱による衝撃音を耳に入れたグズマボスは、静かに最奥の玉座から腰を起こした。

 

 ()()()()、ブッ壊し甲斐のあるヤツが来やがったなぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やー、どーも。TS転生白髪美少女こと俺です。

 ポータウンに侵入して三分が経とうとしているのだが、既に本拠地──グズマの居るであろう屋敷──まで、既に半分を切っている。

 端的に言えば、ルリさんのボーマンダ & クチナシさんのルガルガン(悪)による無双ゲーである。火炎放射がバリケードを焼き尽くし、岩雪崩が敵ポケモンを飲み込み瞬殺する無敵コンボ。

 

 俺? 俺はお零れの経験値を貰い奪いながら地道にレベルを上げてます。

 ナマコブシ君、虚しいよ俺。

 

 「おい、そこのガキ!! ちょうどいいのがいるじゃないっスか、コイツくらいなら俺でも勝てるっスよ!!」

 

 テンプレ噛ませ役のお手本のような台詞が聞こえ、くるりと踵を返し、恐怖に震えている様子のリーリエを背後に誘導する。

 こんなに素晴らしい(好感度アップ)イベント、逃してしまえば紳士系ロリの名に傷が付く!

  

 「下がってて、リーリエ」

 「カナデさん! でも」

 「……大丈夫。俺、最強だから」

 

 ─────決まった!!

 俺は気分が高揚したままにボールホルダーへ手を回し、一つのモンスターボールを手に取った。

 イベントが終わってしまえば後は消化試合。パパッと終わらせて屋敷へ一直線だ。

 

 「ぶっ壊せ、マッシブーン!!」

 『ぶーーん!!』

 

 俺の背後で、ひっそりとボルテージを上げていたナマコブシが僅かに目を潤ませていた。

 

 

 

 その後も襲って来る下っぱ達をマッシブーンで受け流しては奥へと進み、五分も要さずに呆気なく屋敷へと辿り着いてしまった。UBとかいう実質チートさぁ……。

 まぁ、俺にしか得がないので良いものとする。後は戦闘中のリラさん達を待つだけだな。ハンサムとリーリエは戦闘不能にした下っぱ達の対処をしてるらしいし。

 

 「嬢ちゃん、此処はオレらが食い止めてやる。サクッと奴らの頭領でも倒して来い!!」

 「いや、俺別に───」

 「カナデさん、ボスの方は任せます!」

 「あの───」

 

 俺だけで行くのは少し心細いって言うか、全員で行った方が成功し易いっていうか!

 喉から不満を漏らしかけたところで、遠くから不安気に此方を眺めるリーリエを発見。

 やがて、俺は苦渋の決断を経て屋敷へと足を踏み入れた。

 

 「こりゃまた随分とボロい屋敷だな」

 

 『スーパーメガやす』程ではないけれど、咽せてしまう程度には白く、存在を主張する埃が辺りを浮遊している。外で小雨が降っている事もあり、肌に張り付く嫌な感覚に襲われる。

 ナマコブシを頭に乗せながら慎重に探索していると、湿度が原因ではない──ピリ、と肌を刺す感覚が訪れ、大元である扉の方へ視線を向ける。

 

 「……なんだぁ? 国際警察の奴らかと思って来てみれば、年端もいかねぇガキじゃねぇか!!」

 

 乱暴に掻きむしられた白髪の上にサングラスを掛け、黒いパーカーの下には『ドクロ』のマークを刻んだシャツを身に纏っている。……うん、コイツがボスだな。分かり易い。

 

 「なぁ、アンタがスカル団の親玉か? ウチの国際警察とちょいと話に付き合って欲しいんだけど────」

 「お前、そんなことの為に態々乗りこんできたのかよ? …ハッ、壊れてやがる! お前、ブッ壊れてるよな!!」

 「んぇ?」

 「もし、機械が壊れたら……取り敢えずブッ叩くよな! 少なくともオレ様はそうする!」

 

 話し合いの余地、無いっぽいな。

 屋敷外から衝撃音が鳴ると同時に、ナマコブシを左に構える。アーカラのバイトで掴んだ投球フォーム。流石に二桁mは飛ぶはずだ、つーか飛ばないと困る!!

 

 「ウォーミングアップも悪くねぇ。感謝しろよ! ブッ壊れたお前をブッ倒して直してやらぁ!!」

 

 狂ったように叫ぶグズマに気圧されたか、ナマコブシが後退るようにして此方へ振り向く。その瞳には、心配と緊張が入り混じっていた。

 

 『ぶ、ぶに』

 「大丈夫だナマコブシ君。お前は至って練習通りにやればいい、簡単だろ?」

 

 グズマがボールを投げ、俺もZクリスタルをリングに嵌め込んだ。

 瞬間、黒い光がリングから発せられ、俺の動きに同期するかの如くナマコブシに注ぎ込まれていく。全てを終えると同時に、張り詰めていた緊張感がパァン、と弾けた。

 

 「グソクムシャ『であいがしら』!!」

 「ナマコブシ君『Zおきみやげ』!!」

 

 俺はナマコブシを天高く投げ付けた─────!

 

 

 

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