ナマコブシを投げるだけの簡単なお仕事。 作:ジョージ・マッケンジー
「ナマコブシ君『Zおきみやげ』!!」
頭上約10mの高さに投擲されたナマコブシから、墨のようなドス黒いエネルギーが煙と成って溢れ出す。やがてグソクムシャの『であいがしら』が肉薄した瞬間、煙が鋭利に輝く刃となり───
グソクムシャが【危機回避】で攻撃を止め、ピシピシと音を立てる空間から退避する。間もなく罅の入った空間が割れ、真空を空気で満たすようにして、全てを引き込む突風が巻き起こった。
「……ナマコブシ君、やりすぎ!!」
『ぶっに!?』
俺なんかやっちゃいました? みたいな顔で振り向くナマコブシ君。思いっきりやっちゃってるよ。空間が歪む──どころか割れるって何?? お前パルキアなん?
『シャグッ!?』
「グソクムシャぁ!!」
「───あ、おい、お前ら!!」
足を崩し吸い込まれたグソクムシャを追い、グズマまでもが割れた空間の中へと身を放り投げる。即座にマッシブーンを呼び出すも、助け出そうと腕を伸ばす前に、空間は何事も無かったかの如く元通りになってしまった。
「おい嬢ちゃん、凄ぇ音が聞こえたんだが……」
ポータウンの制圧を終えたらしいクチナシさんが、半ば放心状態の俺を見て心配そうに言葉を発する。直後に屋敷内の凄惨さを目にしたのか、何かを察した様子で顳に手を当てた。
一拍遅れて、どっと押し寄せる疲労と共に、罪悪感とも後悔とも取れる、複雑な感情が湧き上がる。
「ごめん、俺のミスだ……」
いつの間にか傍に寄っていたナマコブシが、何時もより数段低いトーンで、小さく『ぶに』と鳴いた。
◇
【@月A日】
結局、昨日は一睡も出来なかった。
『グズマは生きてるのか』だとか『アーカラのスカル団下っぱに何て言おう』だとか『あの罅割れは何だったのか』とか。
リラさん達は「元からアイツは元凶疑惑のある悪人だったから」的な言葉で励ましてくれたけれど、モヤモヤが拭えない。
『ぶに』
「……ごめんな」
あの出来事からというもの、ナマコブシ君が俺の傍から離れない。やっぱ心配掛けちゃってるよなぁ。あくまで指示を出したのは俺だってのに。
……よし、シリアスモードは終わりだ終わり!
『グズマを救う』というタスクが一つ追加されただけの事、有能ロリである俺にとっては御茶の子さいさいである。
ともかく、Zワザは暫く使用禁止だ。もし、
あー、そうそう。
今日はリーリエが五分だけ膝枕をしてくれた。
結果、興奮のあまり普通に死にました。さよなら。
【@月B日】
衝撃の事実発覚。
スカル団の奴ら、ポケセン──俺達がウラウラで初めて訪れた所──から、常習的に食料を奪っていたらしい。妙に寂れてると思ったらナルホドそういう……。
結果、彼らは償う代わりに交代制でポケセンの食料集めに駆り出されましたとさ。食べ物の恨みって怖ぇわ。
午後8時。
寝ようとしていたところをハンサムに起こされた。何勝手にロリの部屋に入ってきてんじゃワレェ!
話を聞いてみると、
「グズマの居た屋敷に、異常な程のUBエネルギーが発見された!!」
とのこと。
UB。マッシブーンを出した記憶はあるが、それだけでエネルギーが濃くなったりするものなのだろうか。
……いや、コイツならやりかねんな。
『ぶーん?』
【@月C日】
『ミキュッ!』
「ミミッキュだあああああ!!!」
午前6時。ツヨシとナマコブシの泥試合を観戦していたところに物音がしたので振り返ると、ミミッキュが草むらに隠れていた。
やっぱアセロラちゃんの言う通りじゃねぇか!! ありがとうアセロラちゃん!! 俺、元の世界に帰れたらアセロラちゃんのSRポケカ絶対買うから!!
俺はモンスターボールを右手に握り──────、
『ミキュッ』
「あ」
HPを削ってから捕まえようとマッシブーンを繰り出した所、全速力で逃げられてしまった。しゅんとした様子のマッシブーンの肩をポンと叩き、17番水道に生えていたスイレンらしき花を渡す。
『ぶーーん!』
ちょっろ。
後からリーリエから聞いて判明したのだが、スイレンの花言葉には『滅亡』って意味も含まれてるらしい。ごめんよ、悪気はねぇんだ……。
【@月D日】
ポータウンの捜索も済ませたという事で、今日は新たな地へ出発の日だ。
スカル団黒幕疑惑があったのだが、下っぱ達に問い詰めても「そんなもの知らない」の一点張りだったのでリラさん達は違うと判断したらしい。
俺の知る限りのゲームにおける悪の組織ならばロケット団然り、ギンガ団然り、大抵は全ての元凶なのがお決まりだと思うのだが───うーん、こんな事なら最新作もプレイしときゃ良かったな。
全ソフト色旅でクリアしようとしてたからダイパまでしかやった事ねぇんだ……。
今考えると、本当に馬鹿だと思う。何時間かかんだよ。
それと、今日でクチナシさんとはお別れだ。
まだウラウラの調査を進めておきたいらしく、もう暫くはあの交番を拠点に動くらしい。
何だかんだで最初に出会ったネームドキャラなのもあり、やはり悲しい。言うなれば、アニポケでサトシのポケモンが修行やらで手持ちから外れる時のあの感覚──そう考えると、大して悲しくない気もしてきたな。
「ま、あんま無理はすんじゃねぇぞ。がむしゃらに動いたって、方向が間違ってりゃ意味ないんだからな」
名言らしき何かを残し、クチナシさんは去ってしまった。
……俺のツヨシへの当て付けか?
肺呼吸を取得しようと練習中の我がツヨシに視線を向け、俺は訝しんだ。