ナマコブシを投げるだけの簡単なお仕事。 作:ジョージ・マッケンジー
お久しぶりです(土下座)
【!月A日】
ほしぐもちゃんを捜索するべくエントランスフロアへ移動したのだが、目が合うや否やエーテル財団職員がバトルを仕掛けてきた。半ば反射的に俺もマッシブーンの入ったボールを宙へ投げる。
「侵入者、排除します!」
俺達って一応客人扱いだよな?
エーテル財団の報連相どうなってんの……。
「まぁいいや、助けてマッシブーン!」
『ぶん』
改めて便利だなコイツ。
『ばかぢから』を受けて吹き飛ぶルガルガン───この前リーリエに教えて貰った───を傍目に、一つの疑問が脳裏を過ぎる。
「……コレ、本当に
突如消えたコスモウム。
昨日まで温和だった職員達の豹変。
ツーアウトってところか。
ならば協力者をとハンサムに持たされていた連絡用の携帯でリラさんと通話を試みたのだが……この人工島、どうやらWi−Fiが弱いらしい。
ネト◯リも見れねえのかよ!クソったれ!!
おっと、俺はロリ俺はロリ……。
「リラさーん?」
念の為に部屋も確認してみたのだけれど、影ひとつ見当たらず。
───と、なると。自ずと彼女達が居る場所が予想できる。
「……"職場まで徒歩2分の家"、か」
◇
ミミッキュは『ポケモン』である。
『ポケモン』はヒトと生き、ヒトと暮らし、ヒトと苦楽を共にする。時には仲を違い、時には互いに支え合い。その様子を見ていた彼らには、やがて一つの考えが脳内に浮かぶ。
自分達も、人間から好かれたい。
故に、彼らは人気者を模倣した。似通った布袋を作り、被って、偽った。けれど、それでも夢は叶うことはなかった。
ミミッキュは警戒心が強い『ポケモン』だ。
それは身を護る本能である。だが、本来彼らに味方する筈のソレは、興味本位や善意で近付いてきた人間すらも見境なく攻撃してしまう──逃れられない
───ミミッキュとは、怖い『ポケモン』だ。
───ミミッキュとは、危険な『ポケモン』だ。
───ミミッキュとは、恐ろしい『化け物』だ。
噂話は火の粉から広がり、伝わり、巨大な炎へと姿を変えた。いつしか彼らは追いやられ、
偶にゴーストタイプのキャプテンを名乗る少女が訪れることもあったが、それ以外は殆ど。それどころか、全く人間と触れ合うことは無かった。肝試しでやってくるトレーナーや配信者達も、ミミッキュの存在を認めるや否や消えていく。
やがて『孤独』という言葉が似合うであろう状況に慣れつつあったミミッキュの人生に、一つの小さな分岐点が訪れた。
「これも賞味期限過ぎてる……ナマコブシの餌にでもしとくか」
『ぶに!?』
─────人間だ。
僅かな期待を覚えた直後に、そんな甘えた思考を直ぐに捨てる。どうせ、この人間も同じなのだと。彼女らを追い出す為に商品棚をガタガタと揺らす。所謂『ポルターガイスト』。普通の人間ならばこれだけで怯え驚き、逃げ去ってしまう。
「
けれど、彼女は逃げ去ることはなく。それどころか、僅かに声を漏らした此方へとズカズカと寄ってくる。
『キュッ!』
紫髪の少女以降現れることのなかった、自分を恐れない人間。常に被っている布袋を軽く整え、彼女の前に姿を現そうと、
「……さて、帰るか」
したところで、彼女は踵を返した。
『キュミミ!?』
スーパーの中に、悲しげな鳴き声が反響する。けれど、その中には僅かな期待と興奮も入り交じっていた。もしかすると、あるいは、彼女ならば──────!
それからだった、ミミッキュが彼女の虜となったのは。
後日。
『キュミミ──────!!』
この日は『大声でアピール作戦』を実行した。今までのポルターガイスト頼りの情けない自分を捨て、鳴き声というシンプル且つ強行手段。成功は必至かと思われたが、結果は良い方向へと転ぶことは無く。
「お、これ少年ジ〇ンプじゃん」
『キュッ!?』
ミミッキュの身を呈した作戦は、少年誌の前に儚く散る結果となった。
二日後。
この日は『食べ物で誘導大作戦』を実行した。名前こそシンプルなものであるが、この世界───UBに侵食された世紀末においては、非常に有効な作戦であった。
自らの潜む倉庫へ辿るようにしてお菓子を並べていく。ただの食料ではなく菓子類なのは、推定子供の少女に対するミミッキュなりの配慮であった。
「おー。ミミ助、今日も元気だな!」
今日もやって来た少女が、気さくな声を上げながら店の中へ足を踏み入れる。『ミミ助』という単語が何を指すのかなんてミミッキュには分かっておらず、ナマコブシに対する呼び名だと勝手に予想。
「なぜ耳が無いのに名前に『ミミ』を?」などという呑気な疑問に首を傾げている間にも、少女は此方へ近付いてくる。
ついに埃だらけの倉庫のドアノブへ手が掛けられ、
「カナデさん!!」
『ミ゙!?』
奇しくも、彼の計画は『大声でアピール作戦(By リーリエ)』によって阻止される結果となった。後の倉庫には、一匹ミミッキュの悲痛な鳴き声が響いていたという。
『ミミッキュ───!!!!』
三日後。
今日は『漫画で釣ってやる超作戦』を実行する予定だったのだが、対象であった彼女が来なかったので断念。たまにはこんな日もあるよな、とミミッキュは一人片付けに取り掛かった。
四日後。
今日は昨日の計画を練り直した『漫画でフィッシング作戦』を準備していたのだが、彼女は訪れなかった。
五日後。
今日も、彼女は来なかった。
六日後。
彼女は来なかった。
七日後。
来なかった。
八日後。
九日後。
『キュ』
いつものように、小さな鳴き声が廃れた店内に反響する。今日で彼女が来なくなって一週間、ミミッキュの脳内に一つの予感が漠然と姿を表し始める。
「……」
布袋が力無く萎れる。普段は悪戯気質な周りのゴーストポケモン達も、今日だけはミミッキュを揶揄うことはなかった。
「あれー? なんか元気ないね〜」
『キュ?』
視線を上げると、そこには見慣れた紫髪の少女が立っていた。世界がこうなってしまった後にも彼女は定期的にここに来ている。少女は軽く埃を払った後、ミミッキュの隣に腰掛けた。
「────そっか」
「……キュミミ」
ミミッキュはこれまでの出来事を彼女に話し、アドバイスを求めた。
「食べ物の怨みって凄いもんね〜……」
「キュッ」
だが致命的なことに、互いに言語が通じていなかった。真剣なミミッキュと少女とは対照的にどんどん飛躍していく会話。
彼女らが気付かないうちに、話題は「ポケモンの進化の不可逆性について」へとすり替わっていた。
「あれ、私たち何の話してたんだっけ?」
「ミ?」
顔を合わせて、思わず吹き出す。
「ま、詳しい事情は知らないけどさ、取り敢えず突き進んでみよう! 『あきらめたらそこで試合終了ですよ』ってカナデも言ってたし!*1」
カナデ────少女の口から出たその名前を、何度も脳内で反芻する。ミミッキュは直感的に、それが
「あれ、ミミッキュ?」
いそいそと動き始めたミミッキュは、スーパーの出口の方へ歩みを進める。期せずして、アセロラの言葉がミミッキュを駆り立ててしまったのは言うまでもない。
『ミミッ!』
「よく分かんないけど……ま、元気になったならいっか」
アローラの大地に、一匹のストーカーが誕生した瞬間であった────!
続きは未定です
────想像力が足りないッ!