ナマコブシを投げるだけの簡単なお仕事。   作:ジョージ・マッケンジー

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筋肉馬鹿に、魅せられて。

 

 

 

 

 【£月F日】

 

 なんか、空に穴が空いている。

 

 カラフルで、不気味で、何処か神々しい。試しに適当なナマコブシを選んで投げてみると、吸い込まれるようにして穴へと姿を消してしまった。

 えぇ……。

 

 焦った様子で此方へ駆けてきた警察官──クチナシさんによると、『ウルトラホール』と呼ばれるもので、とても危険らしい。具体的にどう危険なのか聞こうとしたのだが、「お嬢ちゃんは知らなくていいんだよ」的な言葉ではぐらかされてしまった。

 ここに来て見た目の弊害である。中身は20超えてるのに……。

 

 ともかく、危険な事に巻き込まれたくないので今日のバイトはバックれる事にする。実質的な災害なのだ。オーナーも許してくれるやろ(適当)

 

 結局この日は、部屋でダラダラしながら夜を迎えてしまった。テレビでお姉さんが『近くにお住まいの方は避難を──!』とか言ってたけれど、些か大袈裟すぎる気がする。

 

 あの穴、結局何なんだ?

 

 

 

 【£月G日】

 

 警報が鳴り響いている。寝ぼけながらも時計を確認したが、まだ朝の4時だ。人の安眠を邪魔するとは……アローラの風上にも置けんな!

 

 「ぶにに」

 

 ほうら、ナマコブシ君も怖がってるじゃないか。

 訝しみながらカーテンを開けてみると、穴が増えていた。昼間は「綺麗だな〜」程度にしか思ってなかったが、こうして見ると色が奇抜すぎるな。アレだ、寄生されたカタツムリみたいな色。

 

 「……よし、ナマコブシ君、探検に行くぞ!」

 「ぶにぃ!?」

 

 マジで!? みたいな表情で此方を見るナマコブシ君。そりゃあ折角のイベントなんだから楽しまなきゃ損でしょ!!

 

 俺は勢い任せに扉を開き、いざ未知の大冒険へ!

 

 『ぶーん』

 

 ────ガチャ。

 俺は扉を閉めた。

 

 「…………は?」

 

 いやいや、見間違いかもしれない。

 あの天下のゲーフリ様だぞ?? あんな生物──筋骨隆々なボディビルダーと蚊を合成したような赤い化け物──を生み出すわけがない。そうだ、きっとアレは幻覚だ。

 そう思って、もう一度扉を開く。

 

 『ぶーーん』

 

 ────ガチャ。

 俺は扉を閉めた。

 

 

 さて、状況を整理しよう。俺は玄関から出ようとして扉を開けた。すると、何か赤い筋肉化け物が此方を眺めていた。上半身を重心的に鍛えられた、男なら誰しも憧れるであろう筋骨隆々なボディに対し、あまりに不安定すぎる下半身。うーん、キモ可愛い。

 

 いや、どうすんの?

 

 俺は再びカーテンを開く。そこには、見た事もない化け物達が街内を我が物顔で闊歩していた。中には、あの筋肉虫も何匹か見受けられる。地獄かな?

 

 俺はここで漸く、()()が起きていることに気付いた。いや、異変どころじゃねーよ。災害じゃん。

 

 ともかく、先ずはこの家から脱出しなければならない。俺は数日前にデパートで買っておいたモンスターボールを右手に、意を決して扉を開く。

 

 『ぶーーーん』

 「なんとかなれーっ!」

 

 クソ雑魚コントロール。

 時速2km。

 飛ばない魔球。

 

 しょーがないだろ!! こちとらか弱い幼女やぞ!!

 この世の終わりみたいな投球を見せ付けた後に、筋肉虫がボールの中へ吸い込まれていく。数回揺れた後に、そのボールは動きを止めた。

 

 ───バケモン、ゲットだぜ!!

 

 という訳で、ぶにぶに鳴くナマコブシ君と、

 

 『ぶーん』

 

 一生筋肉を見せつけてくるセクハラ害虫と共に世紀末と化した街を闊歩する美少女──こと俺。やっぱ映えるね、白髪。ボディガードとペットを連れて歩いていると、唯一光が灯された施設、ポケモンセンターを発見。流石は24時間営業の最強福祉機関。休みなんてありゃしねぇ。

 

 「よーっす」

 『ぶーん』

 

 俺が入った途端、黄色い声援と野太い咆哮が施設内を満たす。

 ふっ、これが美少女の特権か。悪い気はしねぇ!

 

 ───ん? その化け物をどうして……って?

 

 『ぶーーん』

 『ぶに』

 

 お前ら嫌われすぎじゃね?

 怯え切った様子のジョーイさんに事の経緯を説明すると、納得……してくれたかは微妙だが、ともかく俺もここに匿ってくれるらしい。普通に家あるんだけどな! まぁ人居た方が寂しくないしええやろ!

 

 

 

 【€月A日】

 

 俺はとても気分が良い! 何故かって? そりゃもちろん───

 

 「あ、カナデさん、おはようございます!」

 

 女の子の友達が出来ました。それも美少女。もうこれストーリークリアでは?

 くぅ〜疲れましたw これにて完結です!

 

 あ、因みに『カナデ』というのは今世での俺の名前である。前世の名前を一文字変えただけのシンプルな名前なのは秘密。……まぁ、そんな事はどうでも良い。今は目の前の美少女についてだ。

 

 名前は『リーリエ』と言うらしい。うん、グッドネーム!

 俺よりも綺麗なプラチナブロンドの髪色の持ち主で、可愛らしさに全振りした私服が可愛いのなんの。何なら彼女の連れているポケモンも可愛い。何だよコスモッグって。絶対人気ポケモンじゃん。

 

 とまぁ、順風満帆な被災ライフを続けていた俺だが、早くも救助が来たらしい。よく分からんかったのでリーリエに聞いてみると、『キャプテン』とやらが例の化け物の対処に徹しているらしい。ジムリーダー的な存在なのだろうか。いずれジムチャレンジするのも良いかもな。

 

 安全の確保にはあと数日かかるらしく、暫くはポケモンセンターに寝泊まりする事になりそうだ。リーリエは心配そうにしていたので同調していたが、内心ウキウキである。実質、美少女と同棲してるってことだろ? 最高かよ。

 

 

 

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