ナマコブシを投げるだけの簡単なお仕事。 作:ジョージ・マッケンジー
ありがたや〜
【€月B日】
数日振りに、浜辺でナマコブシを投げる。
赤い突起部分を握り、
「働くってサイコー」
尤も、観光客すらいない現状ではナマコブシを海へ戻す意味なんて微塵もないのだけれど。自己満足というヤツだ。相も変わらず──というか、数日前よりも街が崩壊している気がする。まぁ、俺にはボディーガードの筋肉虫が居るから問題ないけどな。
あと、ここに来るまでの道のり……というか主に出発時に、大天使リーリエに猛反対されてしまった。理由は外の環境がクソほど危ないからだとか。優しい。
俺は彼女の安全が一番だし、自分のバイトに付き合わせる訳にもいかないので「死ぬ覚悟はあるから大丈夫やぞ」的な言葉を掛けておいたのだが、尚更心配させた挙句同行させる結果となってしまった。完全に言葉選びミスったな、ガハハ!!
「カナデさんは……怖くないんですか?」
「怖いって、コイツが?」
『ぶーん』
視界の端でマッスルポーズを取り続ける化け物。怖いよな、分かる。
ウンウン頷いていると、リーリエがジト目で此方を眺めていた。可愛い! 可愛いけど……嫌われたくないのでこの辺で撤退だ。紳士の皆も引き際は考えような!(n敗)
「…………」
「……ゴメンて、この変な穴のことか? そりゃ、最初見た時は怖かったけどさ」
───ポケモンはポケモンだ。
俺はゲームとアニメの断片的な情報しか知らんクソニワカだが、和解の道がない訳じゃないだろう。この筋肉虫が何よりの証拠だ。マジでこいつ何なん?
すると、リーリエが可笑しそうに小さく笑う。どこか小悪魔的な微笑みを受け、俺は硬直してしまう。
「……ほんと、変なヒトですね」
あっ(死)
【€月C日】
今日もリーリエと沢山話した。
彼女曰く、お母さんとの諸々を解決するため?に旅をしていたらしい。偉い、偉すぎる。俺なんか目的も無しに毎日ナマコブシ投げてるだけだぞ。何だこの格差。
あと、リーリエが連れていた『コスモッグ』というポケモンのニックネームを教えて貰った。
───────『ほしぐもちゃん』。
大天使。可愛い。センスある。やっぱ俺のリーリエ天才だな!!
【€月D日】
ポケセン襲撃されて草。
なんか消灯時間の間に野盗が入ったらしく、食料がごっそり持ってかれたんだとか。比喩でも何でもなくマジで世紀末になって来たな。あと、ジョーイさん達は野盗のことを『スカル団』と呼んでいた。やっぱあるんだ、悪の組織。
流石に世話になってばかりじゃ俺の顔が立たねぇ!!!
ってことで、明日にでも食料集めに出発する事に決定。今んとこ人間側の最大戦力が俺の筋肉虫──改め、マッシブーン(クチナシさんが教えてくれた)らしいので、当然と言えば当然か。か弱いロリから頼もしいロリになるために、いざ参らん!!
あと、リーリエからの好感度を上げるためにもな!!!!
【€月E日】
外に出た。
ナマコブシ投げの浜辺みたいな近場ではなく、それなりに離れた森の中。ポケセンでは『救助隊やらキャプテンが助けに来てくれる〜』という噂が囁かれていたが、実際のところほとんど状況の打開には繋がってないっぽい。
だってやべーもん。何だよあの穴の数(真顔)
ぽんぽん化け物が出てくる様はジュラシックワールドもびっくりである。コレだから外来種は……。
ん? 俺は大丈夫なのかって? 心配ご無用!
隣にマッシブーンが居るお陰か、化け物達に全く敵視されないのだ。いや、敵視というより引かれてんのか? ともかく最初こそ怖くて震えていたナマコブシ君も、今では安心した様子でぶにぶに鳴いている。……粘液付けんのだけはやめてくれないかな。
あー、そうそう。
これはさっき気付いたのだが、俺、森の中で遭難しちゃったっぽい。