ナマコブシを投げるだけの簡単なお仕事。   作:ジョージ・マッケンジー

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ナマコブシの、語彙力は。

 

 

 

 【$月D日】

 

 ()()()()を見て、最初の俺の口から割って出た言葉は「わぁ」だった。

 

 「わぁ」

 

 ポケセンから徒歩1時間。例の森よりも手前にある街──だった場所に、化け物が巣食っていた。別にここまでは普通だ。いや、普通じゃないけれど、相対的に見たらね。

 

 でも、それでも、俺の視界に飛び込んで来たソイツだけは、特別だった。

 

 「でっっっか!!!!!」

 『ぶにぃ!?』

 

 俺の目がイカれていなければ、その体躯はビルをも容易く超えるほど。ダークグレーの本体のほぼ全体を占める巨大な口の周囲は黄色で縁取られ、ペイルブルーの巨大な口の奥からはカニのハサミのような触腕が2本出ている。まさに()()。世紀末は世紀末でも更に世紀末な方の世紀末だ。

 

 『グォオ─────!!』

 

 突如、既にありえんほど大きな口を更に開き───ビルを食べた。

 いやいやいやいやいやいや。

 

 「……ナマコブシ君、逃げるぞ」

 『ぶに』

 

 そもそもデカすぎて俺なんて視界にすら映らない埃程度の存在であるのは百も承知なのだが、俺のSAN値が持たん。ダッシュで駆け出し、森の方へと歩みを進めた。

 

 全ての化け物を倒す!だなんてうそぶいた記憶があるのだけれど、流石にアレは範疇を超えている。何だよビルを食べるって。出来ることなら、俺の敵はナマコブシ君の【とびだす中身】で倒せる奴だけにして欲しい。

 

 

 ───森に着いて数十分。良い感じに食料は集まっているが、スカル団の姿が見当たらない。……生きてるよな? まぁ、まだ日が落ちるには早すぎる。もう暫く探索を続けるとしよう。

 

 

 「────着いちゃった」

 

 自力でスカル団のアジトらしき場所に辿り着いてしまった。これにはナマコブシ君もビックリ、中身が飛び出す寸前である。

 にしてもこのアジト、何と言うか……。

 

 「思ってた数倍はボロボロじゃねーか」

 

 ポケセンらしき建物はあるのだが、逆に言えばそれ以外の文化的な施設は何一つ存在しない。唯一のポケセンすら寂れており、何処か廃墟に似た雰囲気を漂わせている。

 

 「たのもー!」

 

 バン、と自動扉──故障していた──を開け、道場破りの如く足を踏み入れると、部屋の隅で何人かの人間が屯しているのが視界に入る。あの奇抜な服装はスカル団だな、間違いない。

 

 「───アナタは! 来てくれたんスね!!」

 「ちょっと遅くなったけどな、飯、持ってきたぞ」

 

 鞄いっぱいに詰めた食料を適当に選んだテーブルの上へ置いてやると、残りの下っ端たちも目の色を変えて近付いてくる。

 

 「い、いいんスか!? こんなに貰っちゃって」

 「おう、たらふく食べろ」

 「あぁ……感謝するッス!!」

 

 数人の下っ端が瞳を輝かせながら此方を見やる。きっと、今の俺の背後には後光が輝いていることだろう。悪い気はせんな!

 

 さて、軽く警戒心を解いたところで、俺は本題に入る。『こんな僻地で何をしているのか』。悪の組織の一員だから云々の理由は聞いているのだが、正直なところ腑に落ちていない。

 

 いくらジョーイさんでも、マスクを付けた人間の顔を覚えていられる事は難しい。少し変装すれば直ぐにでもポケセンで匿ってもらうことも出来そうなのだが。

 

 「オレ達、待ってるんスよ」

 「待つ?」

 

 こんな僻地に人が来るなど、到底思えないのだけれど。

 

 「『グズマ』さん───スカル団のリーダーっス」

 「……来るかもわかんないのに?」

 

 俺の、無神経とも言える質問に対しても下っ端は笑顔で「絶対に来る」と断言してみせた。そのグズマ、って奴の事は知らんが、少なくとも俺が口出しするべき問題ではないのは確かだろう。

 

 「じゃ、飯はここに置いとくぞ。また、来るからな!」

 『ぶし!』

 

 下っ端達に見送られながらアジトを去る。彼らも彼らなりに必死に生きているのだろう。偶にはこうして様子を見に来るのもアリかもしれない。何時にもなくシリアスな考えに浸りながら、俺は思い出したように呟く。

 

 「……てかお前、『ぶに』以外も喋れたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【$月E日】

 

 あれから森で一夜を過ごした俺は、帰宅早々リーリエに重めの説教を食らう等のハプニングを起こしながらも無事に帰路へ着くことが出来た。

 

 自業自得の極みである好感度Downイベントにテンションが右肩下がりしていたのだが、そんな事が些細に思えるほどの展開が俺を待っていた。

 

 「───私は()()()()のリラと申します。UB対策特別本部より派遣されて調査に来ました」

 「リ、リラさん!?」

 「? えぇ、そうですが」

 

 最初は記憶違いの線も考えたが、数秒考えた後に『本物だ』という旨の結論に至った。俺の頭脳スーパーコンピュータが言ってんだ、間違いない。

 

 彼女は恐らく、RSE*1の登場人物───の、未来の姿と言ったところか。髪と背伸びてるし、大人っぽくなってるし、何より可愛さに磨きが掛かっている。紫髪キャラのスーツ姿こそ至高!!

 

 隣でリーリエをあやしながら話を聞いてみると、リラが国際警察のオッサンの連れらしい。ふーん。

 

 趣味やら好物やらを聞き出そうと奮闘していると、突如話の軸が「俺の情報」にすり変わる。そんな事より好きな子のタイプ教えてよ……。

 

 「貴女のポケモン、見せて頂くことは可能でしょうか?」

 「リラさんのお願いなら何なりと!」

 

 こんな事ならルカリオ辺りのイケメンポケモンでも捕まえときゃ良かった、という思考が脳裏に過ったが、イヤイヤと首を横に振る。

 俺の手持ちだってかなりの粒揃いだ。

 

 1匹目。マスコット適性抜群の海のアイドル(笑)。

 ────ナマコブシ君。

 2匹目。筋肉すごい。

 ────マッシブーン。

 

 勝ったな!!!

 自信満々に2匹を召喚すると、リラさんが驚愕を隠せない様子でマッシブーンへ視線を向ける。

 

 「UB02、まさか本当に……」

 

 もしや筋肉に興味があるタイプだったか?

 人知れず筋トレ計画も視野に入れていると、疑惑が確信に変わった様子のリラさんが言葉を紡ぐ。

 

 「単刀直入に申し上げます。貴女──いや、カナデさん。国際警察として私達と同行しては頂けませんか?」

 

 断言しよう。

 答えは「NO」だ。

 

 

 

 

 

*1
ポケットモンスター ルビー/サファイア/エメラルド




高評価、ここすき、感想ありがとうございます!!
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