メジロになれなかった男   作:ダシマ

1 / 63
第1章:4月
第1話「禍を転じて福と為す」


 

 どうしてこうなってしまったのだろう。オレ、東玲那こと『トレーナー』はそう思っていた。

 

「トレ兄! あたしもチームに入れてよ!」

「トレ兄様!!」

 

「トレーナーさん…いえ、兄様。私をチームに入れてくださいませ!」

「トレーナーくん! その…あたしも入れて!」

「アタシも入れなさいよ!」

「入れてください~」

「その…入れてくれたら嬉しいな…なんて…」

「入れてくれますよね?」

「入れなさい」

 

「トレーナーくん。私にもチャンスをくれないだろうか」

「この際だ、貴様の指示に従おう」

 

***************

 

 まあ、簡単にオレがどういうヤツかを説明いたしますね。黒髪、ワイルドヘアー、ラノベ漫画によくいるモブっぽい奴をもっとワイルドな感じにした感じがオレだ。イケメンではない。ていうか、見た目が地味とか言ってる割に、目がぱっちりして結構イケメンなんよな。

 

 そんな事はおいといて、オレは生まれながらの孤児だ。親がどうしようもない連中で、借金という借金を作り過ぎて、やべえヤツに連れていかれてもうそのまま日本に帰っていないらしい。

 

 で、結果的に施設で暮らすことになった訳だが、そこにいる連中とは仲はあんまり良い方じゃない。まあ、本当にどうでもいい奴らだったんで、忘れた。

 

 ある時、メジロっていうウマ娘の名家がやってきて…まあ、ウマ娘がどんなかってのはもう公式サイトぐぐってくれ。ここで説明する事じゃない。とにかくめっちゃ強くてレースする奴らだと覚えてくれたらいい。で、ここがポイントだ。なんか兄様とか言ってる奴を含めた7人のウマ娘がその家のウマ娘らしい。

 

 で、そんなメジロが何しに来たかって言うと、自分の娘を助けてくれた奴がうちの施設にいて、是非養子にしたいって言いだしたんだ。ここだよ。

 

 どういう訳か、オレが養子として引き取られそうになったんだ。まあ、最終的に人違いだって分かって施設に送り返されたんだけどね。

 

 で、本当に助けた奴がメジロ家に養子としていくことになったんだけど、これがまあ施設の中でも問題児で、周りを馬鹿にしてる癖に要領は良くて、大人達からの評判は良いって言うマジで同級生にいたら嫌なタイプだ。オレも散々な目に遭ったし、正直こいつのせいで施設の空気悪かったよ…。

 

 まあ、正直いなくなってオレ達は清々したし、祝杯を挙げたね! マジで平和になったもん。

 

 とまあ、そんな事は置いといて、暫くしてオレも養子として引き取られることになった訳だが、その人が今オレが通っているトレセン学園…通称『日本ウマ娘トレーニングセンター学園』という一流のウマ娘のレーサーを育成する超エリート校で、ウマ娘を育成するトレーナーをしているらしい。

 

 そんなこんなで引き取られたわけオレ。どうやら嫁はいないみたいで、男2人の生活だった。何故オレを引き取ったのか前に聞いたことがあったが、どうやらオレが昔の自分と同じ目をしていた。との事らしい…。

 

 でもまあ、超エリート校で働いてるだけあって、給料もそれなりによかった。ウマ娘とも結構触れ合う機会もあったので、それはそれとして良しとした。

 

 中学までは普通の学校に通っていたが、トレセン学園に興味を持った上に、知り合いのウマ娘が中等部に入学するそうなので、高等部から編入する事になった。

 

 で、そこまでは良かったのだが、ウマ娘達が結構オレを見てくるわけだ。まあ、簡単に言えば『またたび体質』という訳だな。モテてるのかモテてないのかはっきりわからん。

 

 今オレの目の前にいる幼馴染のキタサンブラック、サトノダイヤモンド。そして本来オレが行くはずだったメジロ家の連中。で、何故かウマ娘のトップである生徒会も来て、オレを取り合っている自体だ。出来過ぎやろ。

 

 このまま一人選べば済む話なんだろうけど、そうもいかない。何故なら…。

 

「トレーナーはもうわたしとチームを組んだんだよ?」

 

 そう、実を言うとオレは隣にいるウマ娘『ハルウララ』と組むこととなったのだ。

 

 今のトレセン学園にはウマ娘だけではなく、トレーナーやレース関連のスペシャリストを育てるクラスもあるのだ。まあ、オレは普通科に通っているのだが…。

 

 そんなある時、今年は『トゥインクル・シリーズ(以後TS)』に走れていないウマ娘や、トレーナーを育成する『トレーナー科』の生徒を対象に小さなTS『ダシマカップ』が行われることとなった。

 

 まあ、オレは出るつもりなかったんだけど、有力なウマ娘達と組むのを恐れたトレーナー科の連中が、ウララを騙した上に勝手にエントリーしちゃったんですよね。

 

 このウララが中々の落ちこぼれ…というか、集中力がない奴で、楽しい事を見つけるとすぐそっちの方向に行ってしまうというトレーナー泣かせのウマ娘なんだけど、基本的には明るく愛嬌もあって人懐っこいから人望もあるし、正直こういうタイプが1番成功するんだよね…。

 

 それはさておき、オレは親父譲りの『アレ』でウララを導いているわけなのですが、今このように他の連中も入れろと言って来てるわけですね…。大変長らくお待たせしました。語りを終わります。

 

*****************

 

「まあ、それはそうと…メジロ家はあいつ元気?」

 

 トレーナーがメジロ家のウマ娘に対して、あいつ…養子に行った『凪』の事を聞いたが、彼の話題になったとたん、メジロ家の機嫌が一気に悪くなった。

 

「すみませんが…彼の話はもうしないで頂けません事…?」

 

 菫色のロングヘア―にしてメジロ家の末っ子的存在であるメジロマックイーンがそう言うと、トレーナーは『相当やらかしたんだなぁ…』と思っていた。

 

 そう、この『凪』こそが今までトレーナーや他の子どもたちに対して迷惑をかけていた問題児だったのだ。実際にメジロ家の養子になった時も大人のいない所で散々バカにしていたのだった…。

 

 メジロ家になった彼の噂は度々聞いていたが、トレーナーとしての才能はないが、それなりに実力を兼ねそろえた男になったそうだ。だが、マックイーン達ウマ娘といった女性にはとてつもなくだらしがないようで、正直嫌われており、昔助けて貰ったという理由でメジロ家に引き入れた事を激しく後悔していた…。ちなみに大人達からの評判は相変わらず良い。

 

「こんな所にいたのか!」

「!?」

 

 噂をすれば『凪』が現れる。元々イケメンだったのだが、ぜいたくな生活が災いして激太りしてとにかく清潔感に欠けていた。ウララ以外の気持ち悪がるウマ娘をよそに、凪はトレーナーの方を睨みつけていた。

 

凪「てめえ…またマックイーン達にちょっかいかけにきたのか!」

トレーナー「かけてないよ。にしても相変わらずだな…」

凪「帰れ帰れ! てめえみたいな奴が、メジロ家に寄生しようとしてんじゃねぇよ!」

 

 凪がトレーナーをしっしっと追い払おうとすると、ウララ以外のウマ娘達が激怒していた。

 

トレーナー「はいはい。今となっちゃお前がメジロに行ってくれて良かったと思ってるよ。行こうぜウララ」

ハルウララ「べー!!」

 

 基本的に明るくて誰とでも仲良くなるウララも、凪の事を嫌っていた。

 

キタサンブラック「あっ! 待ってよトレ兄!!」

サトノダイヤモンド「お待ちになって…」

凪「君達もあんな奴に関わるな! それにしても相変わらずいい身体してる…ウへへ…」

 

 

 さて、こんな感じでトレーナー達の物語が始まろうとしていた。

 

ハルウララ「わたし、あの人キライ!!」

トレーナー「オレはもっとキライ」

 

 

つづく

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。