メジロになれなかった男   作:ダシマ

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第14話「メジロの集会」

 

 

 ところ変わってメジロ家。この日は緊急会議が行われることとなった。ラモーヌたちメジロ家のウマ娘や凪たちもいた。

 

「皆さん。今日はお集まりいただき、誠にありがとうございます」

 

 メジロ家当主であるマックイーン達の祖母。通称『おばあ様』が現れた。

 

(通称…?)

 

 まあ、それはさておき。このおばあ様がメジロ家の頂点に君臨しているのだ。

 

「さて、今回も定例会議を始めさせていただきます」

 

 メジロに関わる企業などの業務報告などを行っていた。ちなみにだが、ブライトの父親は遊園地を経営していたりと、色々やっているのだ…。勿論ブライトの父親も自身が経営している遊園地についての業務報告をしていた。

 

 ラモーヌや凪たちも学生ではあるが、将来メジロを背負って立つ人材なので、こういう場に参加する事も少なくはない。あの凪も真面目に聞いていたのだ…。

 

 そして大人たちが報告を終えると、今度はラモーヌたちの出番になった。一応レースでの成績なども報告することになっているのだ。結果を出してないとマジで肩身の狭い思いをすることになる。

 

 とはいえ、全員が話すと時間がかかるので、ラモーヌが代表でしゃべることになったが、凪もアルダンたちも今のラモーヌに業務報告をさせることはリスクとしか思っていなかった。

 

おばあ様「それではラモーヌ。トレセン学園での生活を皆に報告なさい」

メジロラモーヌ「分かりましたわ。まず、私を除くメジロ家のウマ娘は秋の天皇賞に向けて、トレーニングを続けておりまして、凪もトレーナー科でそこそこ頑張っています」

凪(そこそこって…!)

 

 雑な扱いをされて憤る凪をよそにラモーヌはこんなことを言い出した。

 

メジロラモーヌ「そして私もまた秋の天皇賞に参加する予定ではございますが、学生向けのTSと呼ばれる『ダシマカップ』にエントリーする事にいたしました」

 

 ラモーヌの言葉に大人たちがざわざわし始めた。

 

「ダシマカップ…?」

「なんだそれは…」

「聞いたことないぞ…?」

「ていうか、ネーミングセンスないってレベルじゃねーぞ!!」

 

 メジロの至宝と呼ばれたラモーヌがなぜ小規模のレースに…? と、皆が信じられなさそうにしていたが、

 

おばあ様「静かになさい。まだラモーヌが話している最中ですよ」

「……!」

おばあ様「ラモーヌ。続けなさい」

メジロラモーヌ「はい。皆さまが騒がれるのも無理はございません。なぜ、そんな小規模の大会に私が参加をしているかについても、ご説明させていただきます」

 

 ラモーヌが淡々と説明をすると、凪やアルダンたちは嫌な予感がしていた。

 

メジロラモーヌ「今年の春に入り、メジロが取り逃がした『希望』とも呼べる少年がトレセン学園に転入し、ダシマカップに参加してきたからです」

「!?」

 

 ラモーヌの言葉に大人たちはざわついた。

 

凪「ね、姉さん! その希望は僕じゃないのか!!?」

メジロラモーヌ「そんな訳ないでしょう。自惚れを『希望』と呼ぶバカがどこにいるのよ」

 

 ラモーヌの冷めた目に凪が歯ぎしりすると、ドーベルやブライトが噴出そうになっていた。

 

「ラ、ラモーヌ。そ、その希望の少年とは…」

メジロラモーヌ「トレセン学園普通科4年。東玲那よ」

「東…!!?」

 

 東という言葉を聞いて、一部のメジロが信じられなさそうにしていた。

 

「もしかして父親は東ルイか!?」

メジロラモーヌ「ええ。何か問題があって?」

 

 ラモーヌの言葉にざわざわし始める一同。

 

「ラモーヌ。悪い事は言わない。あの男の息子とつるむのはやめろ!」

メジロラモーヌ「…貴方も、彼らを『差別』するというのね?」

 

 ラモーヌが目を細めてにらみつけると、男は委縮した。

 

凪「ラモーヌ姉さん! 皆さんを困らせるんじゃない! 皆メジロの事を真剣に考えて…」

メジロラモーヌ「庶民に対して『格が違う』とか言うバカのどこが真剣に考えているというの? ただ単にお金を持ってない連中が気に入らないだけでしょ。メジロを語るにしては随分思い上がっているわ」

 

 ラモーヌの言葉に凪も連中も黙った。

 

メジロラモーヌ「客商売をしている身としては、金があるかどうかで態度を変えるのは宜しくないのよ。東トレーナーとあなた方の間に何があったかは知らないけれど、私には関係のない事。それに、用があるのは父親である息子の方。文句なら当人同士で解決なさってくださる?」

 

 ラモーヌが淡々と説明すると、もう皆何も言えなかった。

 

おばあ様「…言いたいことはよくわかりましたラモーヌ。下がりなさい」

 

 そう言ってラモーヌは何も言わずに下がった。

 

おばあ様「…さて、双方まだ言いたいことがあるでしょうが、会議を続けますよ」

 

 そんなこんなで会議が終わった頃には昼になっていた。

 

凪「姉さん! さっきのあれはなんだ!」

 

 会議が終わるなり、凪がラモーヌを追いかける。アルダンたちも後を追いかけてきた。

 

メジロラモーヌ「あなたが知る事ではないわ」

凪「どうしてそこまでしてあいつにこだわるんだ! 姉さんにはオレがいるじゃないか!!」

メジロラモーヌ「…可哀そうな人」

凪「は?」

 

 ラモーヌが凪を見つめた。

 

メジロラモーヌ「あの子に構ってるのが、そんなに悔しいの?」

 

 ラモーヌの言葉に凪の頭に血が上った。

 

メジロラモーヌ「もしそうなら、今まで自分が私たちにやってきた事を考えなさいな。それと…世の中そんなに甘くないわよ」

 

 ラモーヌの言葉に凪の顔は怒りにゆがんだ。

 

メジロラモーヌ「図星ね。本当にくだらない」

凪「い、いいのか…! 謝るなら今のうちだぞ…」

メジロラモーヌ「別にいいわよ。そんな事をしたところで、メジロが潰れるだけ」

 

 ラモーヌが全く動じることなく言い放つと、凪もマックイーン達も目を大きく開いた。

 

メジロラモーヌ「そして潰した張本人であるあなたは、沢山の人間に恨みを買われる。せっかく手に入れた『安らぎ』も自分の手で壊すことになるわね」

凪「な、なんでそうなるんだ! 悪いのは姉さんたちだろ!!」

メジロラモーヌ「言ったでしょう。世の中そんなに甘くないって。組織というのは一人がこければ皆がこける。いわば『運命共同体』なのよ。そんな事も分かってないお子様の相手をしてる暇はないの。そんなに女の子に相手してほしければ、お金払ってそういうお店にでも行きなさい」

 

 そう言ってラモーヌが去っていった。

 

メジロマックイーン「ラモーヌさん。どちらに行かれるのですか?」

メジロラモーヌ「決まってるでしょ。学園に帰るのよ。今、あの子たちはトレーニングしてるのよ」

メジロドーベル「え!? これから食事会があるのに…!」

 

 ドーベルがそう言うも、ラモーヌは全く気にしなかった。

 

メジロラモーヌ「欠席するのは私だけじゃないし、おばあ様の許可はもう貰ってるわ」

凪「か、勝手なことを…!」

メジロラモーヌ「それに、今はあなたよりもあの子の顔が見たい気分なの。アルダン、後は頼んだわ」

メジロアルダン「えええ~っ!!!?」

メジロラモーヌ「それじゃあね」

 

 そう言ってラモーヌはその場を後にした。

 

凪「…くっ! もういい!! こうなったらオレ達だけでも…」

 

 凪が声をかけようとすると、アルダンたちは逃げるようにスタスタと去っていった。

 

凪「なんでだよお!! 家族はオレなのに!! どうして誰も振り向いてくれないんだよー!!!」

 

 凪が地団駄を踏みながら怒鳴ったが、誰もその問いに答えてはくれなかった…。

 

 1時間後…

 

メジロラモーヌ「あら、結構美味しいわね」

ナイスネイチャ「そ、そりゃどうも…」

メジロラモーヌ「あら、貴女が作ったの。てっきりトレーナーかと思ったわ」

ナイスネイチャ「……」

 

 河川敷にビニールシートを敷いて、ネイチャの手作り弁当を食べているトレーナー達が確認された…。

 

ハルウララ「おいしー!!」

トレーナー「せやな。いい天気で良かった」

 

 

つづく

 

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