メジロになれなかった男   作:ダシマ

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第15話「凪の野望」

第15話

 

 こんなはずじゃなかった。オレはメジロの養子になって勝ち組の人生を手に入れた筈だった。

 

 父親だった男は金にすぐに目がくらみ、酒やギャンブルに明け暮れていた。勿論仕事はせず、都合の悪いことがあると、すぐに暴力をふるう。母親だった女はそんな父親に愛想をつかし、他の男の所に行って捨てられては、何事もなかったかのように戻ってくる。

 

 そしてオレはこんな家庭環境のせいで差別され続けてきた。いじめもあったが、バカ教師どもも知らんぷり。どうやらいじめてきた奴が権力者か、うちの親が暴力をふるったり、かな切り声をあげたりして、鬱陶しかったのだろう。

 

 そしてある時、そんな父親が遂に死んだ。急性アルコール中毒だ。どうせ無駄に長生きするだろうと思っていた矢先だ。オレは心底喜んだよ。母親はともかく、働かないくせに何故か妙に腕っぷしだけ強くて、作者のご都合主義でもかけてるんじゃないかっていう程の父親が死んだんだ。ありがとう…じゃないんだよ。

 

 まあ、母親と2人暮らしとなるはずが、母親はオレを育てるのがめんどくさかったのか、また男を作ってそのまま逃げた。今度はマジで帰ってこなかったよ。なんであんな奴に限って子供が出来たりするんだ。

 

 で、あとはお察しの通りさ。オレはあいつと同じ施設に預けられた。当然こんな奴らと仲良くなんて出来るわけがない。オレはもうそういう環境でしか知らねぇんだよ。結局力こそすべてなんだ。

 

 そんな中、公園でブライト達が迷子になっているのを見たんだ。見るからに金持ちそうだったから、声をかけてやったんだ。そしてすぐに見つかったよ。黒服から是非礼をしたいといわれたが、断ったよ。だってそうした方が受け取りやすくなるからだろう? 

 

 あとはもうお察しの通りだ。まあ、何故かオレじゃなくてあいつを引き取った時は、焦ったが取り違えていたことに気づいて、オレがメジロ家に引き取られた。

 

 で、後は分かるだろう。マナーとかは色々厳しかったから、あのゴミクズの所にいたからそんなの屁でもなかった。とにかく最高の環境で結果を出して、いずれはメジロがオレが手に入れる。まあ、ラモーヌ姉さんたちも顔は整っていたから、もし求められてきたら受け入れるつもりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凪「…この際、ラモーヌ姉さんたちは一旦いいさ。トレーナー!お前にオレの邪魔はさせねぇからな!!」

トレーナー「いや、知らんがな!」

 

 ここはトレセン学園のグラウンド近く。凪がトレーナーと話をしていたが、トレーナーは知った事じゃないと言わんばかりに凪に話しかけた。

 

トレーナー「いいよ! 金持ちになりたい訳じゃねぇし、寧ろ親父が迷惑してんだよ! 親父とオレとウララとネイチャに迷惑かけなかったら好きにやってくれ!」

凪「オレだってお前なんかとはもう関わりたくねぇんだよ…!」

トレーナー「オレの方がもっと関わりたくねぇよ!」

凪「うるせえよ!! そんな話してーんじゃねぇんだ! 悉くむかつくやつだな!!」

 

 凪が憤慨していた。

 

凪「オレがメジロの権力を握ろうとすると、ラモーヌ姉さんたちが他の奴を使って悉く邪魔してくるんだよ! 普段はお前にくっついて相手にしないくせに、やる事はきっちりやる!!」

トレーナー「…そこまで地位に執着してたら、そりゃ危なくて任せられないだろ」

 

 凪の文句にトレーナーは呆れていた。

 

「その通りよ。本当に懲りないわね」

「!」

 

 ラモーヌ、ネイチャ、ウララが現れた。

 

凪「…姉さん」

メジロラモーヌ「やはりそうだったのね。貴方、メジロの資産が…」

凪「資産だけじゃない。あんたたちもだ!! 養子とはいえオレも今まで結果を出してきた。全部とは言わないが、貰う権利はあるはずだろう!?」

メジロラモーヌ「まあ、それは一理あるわね」

凪「だが、それに比べて姉さんたちはどうなんだ!? そいつの家に不法侵入したことは…」

メジロラモーヌ「それについてはもう和解したわよ。お義父様があなたを好きにさせないためにね」

凪「!」

 

 ラモーヌが目を細めた。

 

メジロラモーヌ「資産が欲しいのであれば、下手な事は今後一切やめる事ね」

凪「……!」

ハルウララ「それもそうだけど、トレーナーをいじめないで!」

ナイスネイチャ「本当はダメだけど、マックイーン達の事はマックイーン達に言えばいいんじゃないの?」

凪「うるせえクソガキ!」

 

 凪は興奮気味に怒鳴ると、ウララが怯えてネイチャは困惑していた。

 

「いったい何を騒いでいる!」

「!?」

 

 エアグルーヴを筆頭にたくさんのウマ娘が現れた。

 

トレーナー「いや、めっちゃ多いんだよな…」

エアグルーヴ「またお前か!」

凪「とにかくだトレーナー。頼むからオレの邪魔してくれるなよ…」

 

 凪は興奮気味になっているのか、グルーヴの話を聞いていない。

 

エアグルーヴ「聞いてるのか!!」

 

 グルーヴが凪に近づいて腕をつかもうとするが、

 

凪「オレに触るな!!!」

 

 凪が怒りでエアグルーヴの顔を殴った。

 

ハルウララ「ああっ!!」

ナイスネイチャ「グルーヴ副会長!」

 

凪「おい。そんな演技なんかするなよ。ウマ娘なんだから痛くねーだろ。立てよ卑怯者!」

 

 完全に我を失った凪はグルーヴを挑発すると、ルドルフが圧をかける。

 

シンボリルドルフ「その辺にしておけよ。目白凪」

凪「…あ?」

 

 しかし、肝心の凪には全く届いていなかった。

 

凪「なんだそれ。脅しでもかけてるつもりか?」

トレーナー「……」

 

 凪の表情を見て、トレーナーは察していた。

 

シンボリルドルフ「これ以上は生徒会長として見過ごせないと言っているんだ」

凪「そうやって怖い面をすればいう事聞くと思ってんのか? バケモノじゃねぇか」

「なっ…!!」

 

 凪の言葉に他のウマ娘たちも憤った。

 

凪「あーあ。こんな事ならオレもウマ娘に生まれ変わりたかったなー」

メジロドーベル「凪! あんたいい加減にしなさいよ!!」

メジロパーマー「そうだよ! 会長やみんなに謝って!!」

凪「うるせえ! 元はといえばお前らがそいつばっかり見てるからだろーが!! オレが家族のはずだぞ!!」

 

 とまあ、埒が明かない状態になっていて、トレーナーは一息ついた。

 

トレーナー「凪」

凪「あ? なんだよ」

トレーナー「お前の言いたいことはよくわかった。ラモーヌたちがお前を見ない事と、オレがいると自分の生活が脅かされる。折角どん底の生活から抜け出せたのに、満たされない。そうだろう?」

凪「何が言いたいんだよ」

 

 するとトレーナーはグルーヴに近づいた。

 

トレーナー「グルーヴさん。一旦あいつを見逃してやってくれ」

「!?」

エアグルーヴ「な、何を言っている! そんな事は…」

トレーナー「今のあいつはもう得体のしれない何かだ。それに…今はあいつのケンカを買う事よりも、みんなの方が大事だろう。違うか?」

 

 トレーナーが冷静に諭すと、グルーヴはうつむいた。

 

エアグルーヴ「…分かった」

トレーナー「すまねぇな。これでようやく話が出来る。凪」

凪「!」

トレーナー「さっきも言ったが、オレはメジロの資産に頼らなくても何とかなるし、金はともかくメジロの地位なんていらねぇよ。ただ、これだけは忠告しとくぜ」

 

 トレーナーが凪をまっすぐにらみつけた。

 

トレーナー「そんなにメジロの資産や地位が欲しいならな。レースは正々堂々とやれよ?」

凪「!」

トレーナー「いくら金や地位が大好きなお前でも、メジロがレースで不正をするって事がどういう事か分かってるはずだ。お前が求めてたものがすべて消えてなくなるぜ」

凪「ぐ…!」

トレーナー「勿論、オレ達のダシマカップだって例外じゃないぜ。ラモーヌに用があるなら、まずオレを通せ! 分かったな!」

 

 トレーナーがそう激昂すると、凪が歯ぎしりした。

 

凪「フン! オレに喧嘩を売った事、後悔するなよ!!!」

 

 そう言って凪が去っていった。

 

トレーナー「…ハァ。あそこまで落ちぶれたとはな。グルーヴさん、大丈夫か?」

エアグルーヴ「あ、ああ…」

 

 そう言ってトレーナーが何故か持っていたアイシング道具でグルーヴの顔の傷を治す。この時、ナチュラルにエアグルーヴの頬に触れているので、エアグルーヴはメスの顔になっていて、大半のウマ娘がジト目で見ていた。

 

エアグルーヴ「はっ!! ゴ、ゴホン!!」

 

****

 

メジロラモーヌ「…今回ばかりは愚弟が迷惑をかけて済まなかったわね」

トレーナー「ハァ…」

 

 ラモーヌの言葉にトレーナーがため息をついた。

 

メジロドーベル「グルーヴさん! 先生や上に訴えましょう! そうしたらあいつも…」

エアグルーヴ「…断る」

「え?」

 

 エアグルーヴが闘志を燃やしていた。

 

トレーナー「それをやれば確かにあいつは消せるけど、生徒会副会長のエアグルーヴが男子にぶたれたなんて言ってみろ。多分お前らの首も危ないよ? オレんちの事もあるし」

 

 トレーナーの言葉にドーベルたちは困惑した。

 

シンボリルドルフ「手間をかけさせて申し訳なかった。トレーナーくん」

トレーナー「それはいいんだ。それよりも、あんたが圧をかけてきた時のあいつの顔と態度、覚えてるか?」

シンボリルドルフ「覚えているとも…」

 

 そう言って凪の無機質な表情と態度を思い出した。

 

『それで脅しをかけてるつもりか?』

 

 凪の顔を見て一部のウマ娘が恐怖していた。

 

フジキセキ「トレーナーくん。あれは…」

トレーナー「…あいつもあいつで苦労してたんだよ。父親がパチンカス、母親が浮気性。甘えたい盛りの時に両親が育児放棄をした事がすべての元凶だ」

 

 トレーナーの言葉にライアンやパーマーは思い当たる節があった。そう、セクハラまがいの事をよくしてくるが、あれはもしかしたら母親から与えられなかった愛情を自分たちで補おうとしていたのではないかと…。

 

トレーナー「とはいっても、今までの事を考えたら全く同情できねーし、それを言ったらオレだって似たようなもんだ。実際に孤児院の皆で助け合って生きていくように言われてきたんだ。それなのにあいつは…いや、今思えばそういうのじゃなくて、自分だけを見てほしかったんだろうな…」

ナイスネイチャ「トレーナーさん…」

 

 トレーナーが力が抜けたように近くにあった椅子に座りこむと、ネイチャや他のウマ娘たちが心配そうに見つめていた。

 

トレーナー「…ライアンさんとパーマーさんだっけか?」

メジロライアン・メジロパーマー「!」

トレーナー「あいつの事気にかけてくれてるみてーだが、もうあいつに情けをかけるな。そんな事をされてもまた大騒ぎするし、下手に出ると性的な意味で襲われるぞ」

 

 トレーナーの言葉にライアンとパーマーが俯いた。

 

トレーナー「…まあ、一番の原因はオレとあいつを取り違えた…メジロの黒服なんだよな。元気にしてる?」

メジロラモーヌ「クビになったわよ」

トレーナー「だろうな…。それが無かったらあいつも平和に…」

メジロラモーヌ「なるわけないわ。自分が可哀そうなのを分かってて、私たちに同情を誘おうとしてたくらいなのよ」

トレーナー「やっぱりやってたか…。あいつ、しょっちゅうオレは親に捨てられたとか、殴られたとか言ってたからな…。そういう無駄のメンタルの強さは親譲りだったってわけか…」

 

 と、困惑していた。

 

トレーナー「もうこれ以上暗くなるからもうこの話、終わり! だいぶ時間使っちまったよ」

ライスシャワー「お兄様…」

トレーナー「…まあ、もう分かり合えることもないし、分かり合いたくないもないけど、メジロ家の後継者になるために真面目に勉強はしてたんだろ? 変な騒ぎを起こさない事だけ祈ろうぜ」

フジキセキ「それを聴いたら、君の力になりたくなっちゃった。私に何かできることはないかな?」

キングヘイロー「それはそうと、新しい仲間はどうするのよ! もうウララさんは15勝もしているのでしょう!?」

トレーナー「まあね…」

 

 そう、ウララは地味にダシマカップを勝ち進んでいたのだ…。

 

メジロアルダン「まあ、凪の件は私たちの方でも対処するとして…。やっぱり私もトレーナーさんのチームに入りたいです!!」

サトノダイヤモンド「いや、アルダンさんはおうちの問題解決してくださいよ!!」

キタサンブラック「そうだよ! 結局トレ兄に迷惑かけまくってるじゃん! それについては申し訳ないって思わないんですか!?」

メジロアルダン「思ってますけど!! 思ってますけどぉ~!!」

メジロドーベル「あいつ、本当にいやらしい目で見てくるのよ! 分かってよぉ~!!」

 

 と、アルダンやドーベルが涙目で弁解した。

 

トレーナー「…そういうのを教えてくれる大人とかいなかったの?」

メジロラモーヌ「知らないわよ。まあ、あの子も何だかんだ実力はあったから、その大人たちが甘やかしたんじゃないかしら」

 

 まあ、という訳で3人目を決めます。

 

ダイワスカーレット「今度こそあたし…」

ツインターボ「ターボ!!」

ウオッカ「オ、オレは…」

 

 今回はなしです。

 

ウオッカ「なーんーでーだーよぉー!!!」

 

 

つづく

 

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