第33話
秋の天皇賞を制したのはライスシャワーだった。
「ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
大記録達成に観客が大いに沸いた。
ライスシャワー「や、やった…ライス…やったよ…!!!」
かつてライスは他人の大きな記録を壊したことから、疫病神扱いされてきたが、今自分がその大きな記録を作り上げた事から、観客が盛大に自分を祝福していたのだ。なんとも都合がよすぎる話である。
キタサンブラック・ハルウララ「やったぁー!!!」
ナイスネイチャ「すごい…!!」
キタサンブラックとハルウララが抱き合って喜び、ネイチャも目を輝かせ、キングが口角を上げた。。そしてトレーナーは大笑いした。
トレーナー「はっはっはっはっはっは!! お前には参ったぜライス!!」
4着に沈んだカフェもライスが勝利したのを見て、満足そうに口角を上げていた。
そしてメジロはというと…。
凪「くそう!! 完全にライスシャワーとマンハッタンカフェのスタミナを侮っていた!! しかもアイツ…はめやがったな!!」
凪がトレーナーの方を睨みつけた。
メジロマックイーン「嵌めた…!? 何を仰っているんですの!」
凪「オレ達メジロにとって天皇賞は負けられない試合…。だからどうしても力が入る…。それをあいつは利用して、後半ペースをあげて、こっちの調子を狂わせたんだ!」
メジロマックイーン「えっ!?」
そして負けたアルダンたちは負けてうつむいていたが…。
「…顔を上げましょう」
「!」
そう口を開いたのはアルダンだった。
メジロアルダン「悔しいですが…我々の完敗です。今はライスさんを讃えましょう」
アルダンの言葉にパーマー達もうなずいた。
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そしてライスの元にラモーヌとカフェがやってきた。
マンハッタンカフェ「おめでとうございます。ライスさん…」
ライスシャワー「カフェさん…」
そしてラモーヌもライスを見つめた。
ライスシャワー「…ラモーヌさん」
メジロラモーヌ「見事としか言いようがなかったわ。最後の最後で完全にしてやられた。あなたの勝利よ。ライスシャワー」
するとラモーヌは観客の方を向いた。
メジロラモーヌ「さあ、観客の想いに答えなさい。天皇賞春秋連覇者として」
「ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ラモーヌの言葉に呼応するかのように、観客がまたライスを祝福する。
「おめでとー!!!」
「よくやったー!!」
「ありがとうライスー!!!」
「あの時はごめんなー!!!」
正真正銘、皆が自分を祝福してくれている事に、ライスは涙が止まらなかった…。そしてトレーナー達も静かに見つめている。
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そしてライスたちはチームと合流した。
ハルウララ「ライスちゃん! おめでとー!!」
ライスシャワー「うん…! やったよウララちゃん…! ありがとう!!」
ウララがライスを抱きしめると、ライスはまた涙を流していた。そんなライスにネイチャも思わずもらい泣きした。
キタサンブラック「とっても感動しました!」
ナイスネイチャ「いや、もう本当に最後は凄かった…」
メジロラモーヌ「あなたにもいずれあの舞台に立つのよ?」
ナイスネイチャ「…はい」
キングヘイロー「次は菊花賞ね。このキングが勝つわよ!」
トレーナー「そうだな…」
ラモーヌの言葉にネイチャは一応返事をすることにした。すると凪とアルダンたちがやってきた。
トレーナー「よう」
凪「……」
トレーナーが声をかけると、凪が歯ぎしりした。
トレーナー「今回はオレ達が勝たせて貰ったぜ」
凪「…ああ」
凪が思ったほか負けを認めて、トレーナーが少し驚いた。
凪「オレ達の天皇賞に懸ける想いを逆手にとって、作戦を立てたんだろう? 小賢しい奴め」
トレーナー「そうでもしなきゃ勝てなかった。とでも思ってくれ。アルダンさん達はお前が指導したんだろ? 相当努力したんだな」
凪「フン! まあいいさ…」
凪がトレーナーを見つめる。
凪「まだここで終わった訳じゃねぇ。ダシマカップとメジロ・イン・クリスマスが残ってる。そこでお前とライスシャワーを…」
「いや、お前はここで終わりだ」
「!」
知らない奴らが現れた。
トレーナー「誰だ?」
凪「お、お前たちは…!!」
「全くお前には失望させられたよ。奥様の命令だから、お前に天皇賞を任せたというのに、この結果はなんだ?」
「一番上で3着。しかもお前が指導していなかったラモーヌが2着で、1着は春の天皇賞を勝利したライスシャワー。ここまで面子を潰しておいて続投させると思ってるのか?」
「無様にも程がある」
凪「な、何だと!?」
メジロ同士の言い争いにトレーナー達は困惑していた。
トレーナー「…なんだ?」
凪「フン! 任せたなんて強がりやがって! まさか自分たちが取って代わるなんて言うんじゃないだろうな!?」
「それ以外に何がある?」
「お前は負けたんだ。大人しく身を引くべきだろう」
「そうだ! 見苦しい!」
と、言い争いになっていてトレーナーは帰っていいかなと考えていた。そんな中、おばあさまがやってきた。
「おやめなさい。あなた達」
「!?」
おばあ様が現れると、メジロの関係者の大半が固まった。トレーナーはどうでもよさそうにしていたが、一応ラモーヌがチームにいるため、残る事にした。
おばあ様「お疲れさまでした。今年も逃してしまったのは残念ですが…」
「奥様。凪は敗北しました。アルダンたちのトレーナーは…」
おばあ様「継続させます」
「えっ!!?」
おばあ様の言葉に男3人が驚いていた。
「な、何をバカな!!」
「メジロの悲願だった天皇賞の制覇を逃したのですよ!? それもこんな正規のトレーナーでもない少年に!」
「それならば、この責任はどう取るおつもりなのですか!」
おばあ様「確かに天皇賞の勝利は我がメジロにとっては悲願」
「だったら…」
おばあ様「ですが、レースというのは天皇賞だけではございませんし、そう軽々と見限ってしまっては、下は成長致しません」
おばあ様の言葉にトレーナーと凪の目が大きく開いた。それはおばあ様がトップに立つにふさわしい人格者である事が分かったからだ。
おばあ様「それに、そういった思い上がりが、メジロの成長を阻害させてしまったのです」
「思い上がり…!? 我々はメジロの事を思って…!!」
おばあ様「あなた達と凪で違うものが1つだけあります。それが何か分かりますか?」
おばあ様の言葉に男たちは答えられなかった。
おばあ様「…それも答えられないようでは、アルダンたちを任せることはできません。帰りますよ」
おばあ様の言葉にアルダンたちも凪も無言で立ち去ろうとする。
トレーナー「オレ達も帰ろうぜ」
キングヘイロー「そうね」
そう言ってトレーナー達も去ろうとすると、ラモーヌはトレーナー達についていった。
トレーナー「え、お前こっちでいいのか?」
メジロラモーヌ「あら。私はあなたのチームなのよ?」
するとアルダンたちがめっちゃ悔しそうにラモーヌを見つめていた。
凪「まあ、まだ時間はあるさ…。勝つことが出来ればあいつも少しは振り向くんじゃないか?」
「おおっ!!!」
おばあ様「……」
本当にメジロはどうなってしまうのだろう。と、おばあさまは内心ため息をついた。
つづく