メジロになれなかった男   作:ダシマ

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第35話「さよならリリー」

第35話

 

「ルイ。玲那くん。本当にうちの娘をありがとう」

 

 ある日の事。トレーナー親子とリリーは、とある病院にいた。そう、リリーの父親が入院している病院だった。

 

イエローリリー「お父さん…っ!!」

「…済まなかったリリー。寂しい思いをさせたな」

 

 リリーが涙ぐみながら父親を抱きしめると、父親もリリーを抱きしめた。それを見てトレーナー親子は口角を上げた。

 

トレーナー父「…まあ、一命をとりとめたのは良かったが、一体何があったんだ?」

リリー父「…ほんの一瞬の出来事だったから、あまり良く覚えていないんだが、車を避けようとして、高い所から落ちた所は覚えてるんだ」

イエローリリー「そうなんだ…」

 

 リリーが困った顔をしている。

 

リリー父「…あの車、オレの方に突っ込もうとしていたんだ。もしかして飲酒運転でもしていたのか…?」

トレーナー父「まっすぐ走ってなかったのか?」

リリー父「ああ…だが、もう今となっちゃ分かんねぇ。人もいない道だったからな」

 

 するとリリー父はトレーナー父を見つめた。

 

リリー父「ルイ。お前がリリーの面倒を見てくれたんだってな」

トレーナー父「ああ。お前の親族が悉く使えなかったからな。やむなくオレが面倒を見た」

 

 トレーナー父の声色から、リリー父はトレーナー父に何かしら迷惑がかかったのだと、うなだれた。

 

リリー父「…本当にすまない」

トレーナー父「まあ、お前が元気になりゃあそれでいいが…。退院すりゃこいつを元の学校に戻そうと考えてる」

 

 トレーナー父の言葉に誰も反論する事はしなかった。

 

トレーナー父「…まあ、理事長やその秘書は色々無理言ったからな」

リリー父「ああ。本当にすまなかった。仕事にもすぐに復帰してみせる。リリー、お前にはもう少しだけ迷惑をかける…」

イエローリリー「ううん! そんな事言わないで。お父さんが意識を取り戻してくれて、私嬉しい!」

 

 そう言ってリリーは目に涙を浮かべて口角を上げた。

 

*********

 

 トレセン学園に帰ってきて…。

 

トレーナー父「まあ、そういうこった。リリーはもう今月末にはここを出る」

ウイニングチケット「そっか…」

 

 トレーナー父のトレーナー室で担当ウマ娘たちにリリーの事を話した。チケットは寂しそうにしていたが、ハヤヒデとタイシン、ブライアンは特にリアクションをすることはなかった。

 

イエローリリー「皆さん。いきなり押しかけてきて本当にすみませんでした」

ビワハヤヒデ「いや、謝らなくていいんだ…」

ナリタタイシン「…まあ、確かに最初は怪しいと思ってたけどね」

ウイニングチケット「タイシン!」

 

 タイシンが悪態をつくとチケットが怒鳴ったが、タイシンは言葉を続ける。

 

ナリタタイシン「この数か月、どうだった?」

 

 と、タイシンが気の利いたことを言ってきたのでハヤヒデもチケットも驚くと、リリーは口角を上げた。

 

イエローリリー「はいっ! 皆さんのそばで勉強させていただいたことも光栄でしたが、中央のレースも走ることが出来て、本当に嬉しかったです! 向こうに戻ったらまた地方のレースを走る事になるんですけど、皆に感動してもらえるようなレースができるように頑張りますっ!!」

 

 リリーの言葉を聞いて、ハヤヒデ達は満足そうにしていた。

 

トレーナー父「さて、一応リリーが出発する前日にうちで送別会を行う。お前たちも出来るだけ来い」

ウイニングチケット「勿論行くよ!」

ナリタタイシン「…まあ、最後だしね」

ビワハヤヒデ「喜んでいかせてもらおう」

ナリタブライアン「肉を用意し」

 

 ブライアンがそう言うと、ハヤヒデが肘でブライアンの脇腹を小突いた。余計な事を言うなと言わんばかりに。

 

 そして出発前日。トレーナーの家で送別会が行われたが、トレーナーチームも全員来ていた。

 

トレーナー「やっぱ多いな…」

キタサンブラック「あのー。露骨に間に挟まるのやめて貰っていいですか?」

メジロラモーヌ「まだ私から勝ち星を得ていないでしょう?」

 

 と、ラモーヌがキタをブロックしていた。

 

トレーナー父「あんま騒ぎを起こすなら2人とも追い出すぞ」

キタサンブラック「えー!! そりゃないよおじさーん!!」

 

 キタが困惑しながら突っ込むと笑いが生まれた。ちなみにこの日は鍋で皆思い思いにつつき、時間を忘れる程楽しんだ…。

 

 そして…。

 

「くーくー…」

 

 ウマ娘たちはそのまま宿泊することになり、そのまま爆睡した。

 

トレーナー父「…ったく。ちゃっかり外泊届を出しやがって」

トレーナー「まあいいじゃない。今日くらいは」

トレーナー父「…まあ、リリーに免じて大目に見てやるか」

トレーナー「凄く嬉しそうだったしな」

 

 と、ウララやチケットと一緒に寝てるリリーを見て、トレーナー親子は満足そうにしていた。

 

メジロラモーヌ「本当に大したものね。あなた達親子は」

トレーナー父「テメー起きてたのかよ」

トレーナー「雑魚寝してるイメージないしなぁ…」

 

*************

 

 そして翌日。東京駅からリリーは新幹線で地元に帰る事となった。

 

ウイニングチケット「元気でね~!!!」

イエローリリー「はい! チケット先輩もお元気で!」

 

 チケットが涙ながらにそう言うとリリーも目に涙を浮かべた。

 

ビワハヤヒデ「達者でな」

ナリタブライアン「まあ、向こうに行っても元気でな」

ナリタタイシン「がんばれ」

イエローリリー「はい! 先輩たちもありがとうございました!」

 

 そう言ってリリーはトレーナーを見つめた。

 

イエローリリー「トレーナーさんもありがとうございました!」

トレーナー「まあ、時間出来たらお父さんと一緒に東京に遊びにおいで」

イエローリリー「はい!」

 

 ウララ達も口角を上げると、そろそろ新幹線が到着した。

 

イエローリリー「…東トレーナー」

トレーナー父「ああ」

イエローリリー「短い間でしたが、本当にお世話になりました! それじゃ私…行きますね」

 

 そう言ってリリーが行こうとすると、

 

トレーナー父「今までよく頑張ったな」

イエローリリー「!」

 

 トレーナー父の発言にリリーが振り返った。

 

トレーナー父「気を付けて帰れよ」

 

 トレーナー父の言葉にリリーは目に涙を浮かべながら頷いて、そのまま新幹線に乗り込み、そして動き出すとトレーナー達は新幹線が見えなくなるまで手を振った。

 

 そしてリリーもトレーナー達が見えなくなるまで手を振り、席に座ると…。

 

イエローリリー「……!!」

 

 リリーは大粒の涙を流して泣いた。涙に加え鼻水も出ていたがお構いなしだった。トレーナー達がずっと親切にしてくれたことや、そんな彼らと別れることがとても寂しいからというのもそうだが、忙しかっただろうに父親の親友だからという理由で、嫌な顔をせずに親代わりをしてくれたトレーナー父への感謝の気持ちがあふれ出ていたからだった。

 

 そして彼女は誓った。トレーナー父の為に、そして自分の為に夢をかなえようと…。

 

*****

 

ハルウララ「行っちゃったね…」

トレーナー「ああ。お前にとってもいい練習相手になれたのに…」

ハルウララ「友達にもなれたよ!」

トレーナー「…そうだな」

 

 ウララの言葉にトレーナーはフッと笑った。

 

トレーナー父「まあ、お前たちもあと1か月だ。気を抜くなよ」

トレーナー「よし、それじゃこのメンバーで頑張るぞ!」

キタサンブラック・ハルウララ「おー!!!!」

「あの~…」

トレーナー・トレーナー父「……」

 

 どこからか声がしたので、トレーナー親子が嫌な顔をしながら向くと、そこには未加入組のウマ娘たちが。

 

トレーナー父「帰るぞ」

トレーナー「そうだね…」

「いや、仲間に入れてよお!!!!!」

 

 という訳で、次トップだったウマ娘が仲間になります。

 

 

つづく

 

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