それはある日のことだった…。
「本当に無茶なのは分かってるの…でもお願い!」
「お願いします!!」
トレーナーとトレーナー父は、シチーとそのマネジから頭を下げられていた。
シチーはレーサーとしてもそうだが、その美貌からモデルも行っているのだ。…本作ではトレーナーに依存しすぎるあまり生活にも支障をきたしているので、今の仕事をやらせたら見事に大成功したのだ…。
まあ、それはいいとして何故自分もしくは自分の息子に頼み込んでくるのか謎で仕方なかった。
トレーナー父「無茶もそうだけど、私欲が強すぎるんだよ。素人のこいつを出したら、他の奴の立場ねぇだろうが。そこん所考えてから声かけろよ」
マネジ「仰る通りです…」
トレーナー父の正論にマネジは何も言い返せなかった。
ゴールドシチー「た、確かにそうかもしれないけど、本当にお願い! 今回だけでいいから!」
トレーナー父「ダメだ。そんな事言って何回もやる事になるだろう。それならこうしよう。オレが行く」
ゴールドシチー「え…」
トレーナー父の言葉にシチーが思わず声を漏らす。
トレーナー父「どうした? 代わりが欲しいんだろ? ならいいじゃないか」
ゴールドシチー「そ、それは…」
トレーナー父「ほら見ろ。結局こいつに来てほしいだけじゃねーか。お前だけ認めたら、他の奴だって来るんだ」
トレーナー父がそう言うと、トレーナーは困惑していた。
ゴールドシチー「おじさん。確かにそうだけど! そうなんだけど!」
トレーナー父「何だよ」
シチーがトレーナー父を見た。
ゴールドシチー「そんな事言ったらこの話すぐに終わっちゃうよ!!?」
トレーナー父「こっちで何とかする」
ゴールドシチー「ねえ~!!! お願い来てよ~!!! 兄さ~ん!!!」
シチーが泣きながらトレーナーにしがみついた。トレーナーは困惑しながら父親と顔を合わせた。
トレーナー「…そんなに?」
トレーナー父「…仕方ねぇ」
トレーナー父がそう言うと、シチーが目を輝かせた。
トレーナー父「だったら一つだけ条件がある」
ゴールドシチー「な、なに!? 何でも言って!!」
トレーナー父「あいつらを納得させて来い」
ゴールドシチー「え?」
トレーナー父がある方向に指をさしてシチーもその方角を見ると、色んなウマ娘たちが…。
キタサンブラック「あたしも行きます」
サトノダイヤモンド「シチーさん。独り占めさせませんよ?」
ゴールドシチー「ああ。無視すれば大丈夫だよ」
「ダメだよ!!?」
「無視は学生生活を送る中でやってはいけない最低行為の一つだからね!!?」
ゴールドシチー「やかましいわ!!」
自分の事を棚に上げてブーブー言うウマ娘たちにシチーも突っ込んだが、正直シチーも説得力がない。
シンボリルドルフ「東トレーナーがいるだろうから心配はないだろうが、やはりここは生徒会長の私が行くべきだ」
ゴールドシチー「んな事言ったら、あんた毎日休みない事になるけど…?」
サトノダイヤモンド「トレ兄様が他のモデルたちに誘惑されたらどうするんですか!!」
ゴールドシチー「そんなのアタシが守るし!!」
トレーナー父「そもそもそんな場所に行かせねぇ事が最善の判断なんだけどな…」
トレーナー父が皮肉気味にツッコミを入れると、マネジはもう平謝りするしかなかった。
ゴールドシチー「とにかく! 部外者のあんた達は来ないで! 兄さんとおじさんの3人で行くから!」
トレーナー「それはそうとどこに行くの?」
ゴールドシチー「ここよ」
そして撮影当日。
ゴールドシチー「スタッフの人たちが常識のある人たちで良かった」
トレーナー父「全くだぜ…」
トレーナー、トレーナー父、シチーの3人は無事に現場にたどり着いた。ルドルフたちもついてこようとしたが、許可した者以外は入れないという事で門前払いになった上に、トレーナー父が密告していたたづなによって回収されていった。ちなみにトレーナーの担当ウマ娘であるウララ達は普通に学園でトレーニングをしている。
トレーナー「まあ、キタにはもしここに来たらクビって言っといたからな」
ゴールドシチー「さ、行こう兄さん」
そう言ってシチーがトレーナーを連れて行くと、トレーナー父も一息ついた。
キタサンブラック「ううう…。変な事されてないか気になるよぉ…」
メジロラモーヌ「真面目に練習なさい。クビになりたいの?」
キタサンブラック「はーい…」
***
そして現場にたどり着くと、他のモデルたちも集まっていた。
ゴールドシチー「もう皆来てるんだ…」
「あ、シチーちゃん! おはよ…って、その人だれ?」
ゴールドシチー「え? カレシ」
トレーナー「親戚です」
トレーナー父「今日はマネージャー代行で来ました。宜しくお願いします」
「は、はい!!」
「…あっちの人も素敵♡」
あからさまに色目を使われているので、親子そろって困惑していた。
トレーナー父(本当にウマ娘を引き寄せるんだな…)
トレーナー(目が怖い…)
ゴールドシチー(兄さんは誰にも渡さない…!)
そんな時だった。
「みんなー。そろそろ始めるよー」
「あ、はーい」
と、いよいよ仕事が始まろうとしていたが…。
「…あれ? あの人は?」
「また遅刻だって」
「マジかよ…」
「まあ、顔がいいからなんだろうけどな…」
誰かが来ていない事に気づいたスタッフが話をしていたが、皆嫌そうだった。
「顔岳さん入られまーす」
と、一人のイケメン・顔岳が入ってきたが、どうもふてぶてしかった。
顔岳「お疲れーっす」
顔岳が気だるそうに呟くも、反応がなかったので顔岳が気になっていた。
顔岳「…ねえ、なんで挨拶がないの?」
顔岳がそう言うと、トレーナー父が顔岳の顔を見るなり表情が険しくなり、背を向けた。
「お、お疲れ様です…」
他のモデルたちがそう返すも、顔岳がため息をついた。
顔岳「…もういいよ。やる気失せた。帰る」
顔岳がそう言うと、スタッフたちが慌てていた。
「何言ってるんだ!」
「今からもう撮影だぞ!」
「特に君が…」
顔岳「うるせえな! 元はといえばそっちが当日になって、時間変更してきやがるから、遅れたんだぞ! スケジュール管理どうなってんだよ!」
顔岳が文句を言うと、スタッフたちが不満そうに視線をそらしていた。
顔岳「なんだその顔は。てめえの無能さを棚に上げやがってよ」
「何だと!!?」
顔岳の言葉に2人のスタッフが食って掛かったが、
「す、すみません顔岳さん!」
上司のスタッフが慌てて仲裁に入った。
「どうか! どうか抑えて貰えませんか…」
顔岳「分かってんだよ。中央のトレーナーで話題性がなかったら、お前みたいな奴なんか使わねーって。トレーナー以外の仕事なんて全然分かってねぇと思ってんだろ」
「そ、それは…」
顔岳「そうだな。今、オレに食って掛かった二人が頭下げて謝るなら残ってやるぞ。どうする?」
顔岳の言葉に2人のスタッフが歯ぎしりした。
上司「お前達! 謝るんだ!」
「く、くそ…!!」
本当はこんな奴に謝りたくなかったが、このままだと仕事がパーになって損害も出るので、泣く泣く頭を下げる。
「…すみませんでした」
顔岳「全くだよ! なんでこっちが悪者にされなきゃいけねーんだ! 時間変更の連絡をしてきた時も悪びれた様子もなかったしよ! ざけんなよ!」
こうして険悪の空気のまま、撮影が始まった。
つづく