メジロになれなかった男   作:ダシマ

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第38話「トレーナー 撮影現場に行く(中編)」

 最悪の空気のままモデル撮影が始まった。とはいえ、皆やはりその道のプロという事もあって、撮影が始まるといがみあっていた事など初めからなかったかのように、仕事をしていた。

 

トレーナー「プロだなぁ…」

トレーナー父「ああ。金貰ってんだ。中途半端な仕事をすれば、こっちが金を払う羽目になるんだからな。そりゃ皆真面目にやるさ」

 

 トレーナー親子が近くでシチーの撮影現場を見ていた。すると、シチーがちょくちょくこっちを見ていた。

 

トレーナー「…そうでもないみたいだよ」

トレーナー父「こりゃあ親父に連絡だな…」

 

 そう呟くも、トレーナー父は顔岳の方を見つめていた。先ほどまで暴言を吐いていた顔岳も仕事となると大人しく撮影されていた。

 

 2時間が過ぎたころ、やっと休憩になった。

 

ゴールドシチー「兄さん!」

トレーナー「シチー…」

 

 ゴールドシチーがトレーナーの元にやってきた。

 

ゴールドシチー「見ててくれた?」

トレーナー「見てたよ。ていうか、こっち見過ぎだ」

ゴールドシチー「兄さんに見てもらいたくて、つい張り切っちゃった」

 

 邪魔者がいないという事もあってか、シチーは上機嫌だった。本当に学園では見せない程上機嫌だった。

 

トレーナー(…裏でバチバチやりあってたんだろうなぁ)

 

ゴールドシチー「あれ? おじさんは?」

トレーナー「休憩入る前にトイレに行ったよ」

ゴールドシチー「そっか…」

 

 その時だった。

 

「シチー!」

 

 顔岳がやってくると、シチーが露骨にイラっとしていた。

 

トレーナー「シチー!」

ゴールドシチー「う…」

顔岳「…? 誰、そいつ」

トレーナー「シチーの代理マネージャーの息子です」

顔岳「そうか…。悪いがシチーと2人だけで話したい事があるんだ。あっちに行ってくれるかな」

ゴールドシチー「担当の話でしょ?」

 

 顔岳の言葉にシチーがはっきり言い放った。

 

顔岳「分かってたのか…。そうだよ。君は僕の担当ウマ娘になるべきだ。僕なら君を…」

ゴールドシチー「悪いけど、もう間に合ってますので」

顔岳「なっ!」

 

 シチーの発言に顔岳が驚くと、他のスタッフや共演者たちも振り向いた。

 

顔岳「ま、間に合っている? そんな話は聞いてないぞ!」

ゴールドシチー「教える必要あります?」

顔岳「い、一体誰なんだ!」

ゴールドシチー「今、マネージャー代理として来てもらってるトレーナーになって貰おうと思います」

顔岳「マネージャー代理…!?」

 

 シチーの言葉に顔岳が表情をゆがませた。

 

ゴールドシチー「とにかく。アタシの事は諦めて貰っていいですか」

顔岳「マネージャー代理って事は、こいつの父親か!」

トレーナー「…ええ、そうですが」

 

 すると顔岳がトレーナーに詰め寄った。

 

顔岳「どこの誰かは知らないけど、お父さんにシチーちゃんの事を諦めるように言ってもらえないかな?」

トレーナー「…本人に言ったらどうですか?」

 

 あまりにもみみっちすぎる顔岳にトレーナーも呆れていて、シチーは首を横に振った。

 

顔岳「勿論本人にもいうさ。だけど息子である君からも言ってほしいんだよ。正直な話、君のお父さんなんかよりも僕の方がシチーに相応しいんだ。イケメンでモデルをやってる僕の方が…」

「言ってくれるじゃねぇか」

「!」

 

 トレーナー父が現れた。

 

顔岳「だ、誰だあんた!」

トレーナー父「誰だってオマエなぁ…」

 

 顔岳の態度にトレーナー父は呆れていた。

 

顔岳「お前がマネージャー代理か! シチーちゃんは僕の担当ウマ娘になるんだ! お前のような奴に行かせたらダメになる!」

 

 顔岳の言葉にトレーナー父は目を細めると、シチーが近づいた。

 

ゴールドシチー「…おじさん。こんな奴の相手する必要ないよ。言わせておけばいいんだ…」

トレーナー父「そうか。そこまで言うならテストしてやろう」

「!」

 

 トレーナー父が無機質にそう言うと、トレーナーは困惑していた。

 

顔岳「テ、テストだと!? 偉そうに…」

トレーナー父「じゃあまず1つ目の質問だ。お前、オレの事知ってるか?」

顔岳「知らん!! 一体誰なんだ!」

トレーナー父「マジか…。それじゃあ次の質問だ。クラシック三冠勝たせられるほどの腕はあるんだろうな?」

 

 トレーナー父の言葉に顔岳は失笑した。

 

顔岳「三冠? まあ、少なくともオマエよりかは自信あるぜww」

トレーナー父「言ったな?」

 

 顔岳の言葉にトレーナー父の額に青筋が浮かんでいた。

 

トレーナー父「じゃあ、去年クラシック三冠のウマ娘が誰か言ってみろ」

顔岳「そんなの知ってるさ。ナリタブライアンだろ?」

トレーナー父「じゃあナリタブライアンの担当をしていたトレーナーの名前はどうだ?」

顔岳「トレーナーなんざ知るか! まさかそいつと友達だって言うのかよ!」

トレーナー父「本人だよ!」

 

 トレーナー父の言葉に周囲が驚いた。勿論顔岳は例外じゃない。

 

顔岳「う…うそだ! どうせハッタリだろ!」

トレーナー「あのう…」

 

 トレーナーが顔岳に近づいて、新聞を見せた。

 

トレーナー「これ、去年の秋の雑誌…」

 

 トレーナーに雑誌を見せられた顔岳。すると確かにナリタブライアンとトレーナー父が映っていて、青ざめた。

 

トレーナー父「随分大口叩いてくれるじゃねぇの。顔岳さんよぉ」

顔岳「ぐ…!!」

 

 トレーナー父の言葉に顔岳がトレーナー父を睨みつける。

 

トレーナー父「お前の戦績も調べさせてもらったぞ。確かに重賞での優勝はしてるみてぇだが、それでもG3。もう一度聞くぞ、本当にオレよりもシチーを育てられる自信があるんだな?」

顔岳「も、勿論だ! 今まで満足した結果が出せてないが、シチーちゃんとなら間違いない!」

トレーナー父「…って言ってるぜ。どうするシチー」

ゴールドシチー「あり得ないから」

顔岳「なっ…!」

 

 シチーにバッサリ振られて顔岳がまた表情をゆがめる。

 

トレーナー父「それからお前が現場に入ってくるところから見せて貰ったが、何だあのザマは。てめェ…何か勘違いしてるみてぇだな」

顔岳「か、勘違いだと…!?」

トレーナー父「どういう経緯でモデルの仕事をしてるかは知らねぇし、知りたくもねぇがな、ここはトレセン学園じゃねぇんだ。この言葉の意味が分かるか」

顔岳「ど、どういう事だよ。はっきり言えよ!」

トレーナー父「なら分かるように説明してやる。お前が今日みたいにあんなバカな真似をすれば、お前だけじゃなくてオレらや他の連中、トレセン学園にいる全員がこういう事をする奴だと思われんだよ。そんな事も分かんねぇ奴に、シチーどころか、担当ウマ娘を持つ資格はねぇって事なんだよ。ちょっとばかし顔がいいからって、何しても許されると思うなよ!」

 

 トレーナー父が説教すると、顔岳は震えた。

 

 

つづく

 

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