メジロになれなかった男   作:ダシマ

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第39話「トレーナー 撮影現場に行く(後編)」

 

顔岳「…こ、これはパワハラだ…。職場いじめだ! 学校に訴えてやる!」

トレーナー父「やってみな。オレがクビになる分には一向に構わねぇが、何故そうなったのかも必ず聞かれるし、お客さんも知る事になる。その時、どっちが正しかったか嫌でも分かるぜ」

 

 トレーナー父が睨みつけると、顔岳がまた表情をゆがめた。

 

顔岳「…れ」

トレーナー父「あ?」

顔岳「…帰れ! 帰れ帰れ!! あんたがどんなにすげぇトレーナーだろうが今は関係ねぇ!! 仕事の邪魔だ!」

 

 顔岳の言葉にトレーナー父が無表情になっていた。

 

「いい加減にしろ!!」

 

 一人のスタッフが怒鳴った。

 

「さっきから黙って聞いてれば勝手な事ばっかり言いやがって! 邪魔なのはお前だ! 顔岳!」

顔岳「…は?」

 

 スタッフの言葉に顔岳がメンチを切ると、

 

「そうだそうだ!」

「お前、トレーナーとして大した結果も出してねぇのに、モデルなんてやってる場合じゃねぇだろ!!」

「これが性格良かったらまだ良かったのによ~!」

 

 他のスタッフたちも今までの不満をぶちまけるかのように続いたが、トレーナーは困惑していた。

 

トレーナー(…どっちもどっちなんだよな)

 

 トレーナーが困惑していると、一番偉いプロデューサーが現れた。初老の優しそうな男性だった。

 

「プ、プロデューサー!!」

「うん。話聞いてたけど、君ら全員クビね」

 

 プロデューサーの言葉に空気が止まった。

 

プロデューサー「顔岳くんもそうだし、君ら全員ね。問題起こしすぎだよ」

 

 プロデューサーの鶴の一声にトレーナー達も困惑していたが、プロデューサーがトレーナー父の方を見た。

 

プロデューサー「東トレーナー。折角遠方からお越しくださったのに、このような事になってしまった事を、代表してお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした」

トレーナー父「あ、ああ…」

プロデューサー「問題を起こしたスタッフはこちらで処分し、こちらの顔岳くんは私の方から理事長にご連絡させていただきます」

顔岳「なっ…! ふ、ふざけんな!!」

プロデューサー「顔岳くん」

「!」

プロデューサー「自分が今置かされている立場を分かっていないのなら、猶更使う訳にはいかない。それだけ君が仕事を舐めていたということだ。自分の仕事だけじゃない。他人の仕事もだ。そんな人間はこの現場にはいらない」

 

 プロデューサーの言葉に皆何も言い返せなかった…。

 

***************

 

 後半は顔岳、該当スタッフなしで行われることとなった。

 

トレーナー「凄かったね。あのプロデューサーさん…」

トレーナー父「ああ…」

 

 そして2時間ほどして撮影が終わり、解散となった。

 

トレーナー「お疲れさん」

ゴールドシチー「…うん」

 

 シチーと合流したが、シチーもどこか反省している様子だった。

 

トレーナー父「ちっとは真面目に仕事やる気になったみてぇだな」

ゴールドシチー「…うん。アタシもちょっと舐めてたかもしれない。ごめんおじさん」

トレーナー父「…わかりゃあいいんだ。帰るぞ」

 

 そう言ってトレーナー父は背を向けて現場を後にした。

 

 

 その後、理事長たちに連絡が行き、顔岳はモデルの仕事を禁止されてトレーナーとして地道に頑張る事になったが、今までモデルをやっていた事にあぐらをかいて、色々やらかしていた為、助けてくれる人がおらず、いづらくなったのか退職した。

 モデル一本で行こうとしたが、スタッフが言っていた通り、トレーナーにしてはイケメン過ぎるという事だったから仕事があった為、すっかり苦しい生活になってしまった。

 

 ちなみに時間管理をきちんとできなかったスタッフたちは人と関わらない倉庫関係の仕事をさせられているが、こちらでも仕事が出来なかったうえに損害を出した為、仕事をクビになっただけではなく、損害賠償と慰謝料を求められて借金地獄になった。

 

トレーナー「天罰下り過ぎじゃね?」

トレーナー父「だから言ったろう。金を貰う人間が下手な事をすると自分が払う事になるってな」

 

 だが、話はこれで終わりではなかった…。

 

トレーナー父「…は?」

 

 後日、トレーナー父とトレーナーは理事長室に呼び出され、理事長である秋川やよいからモデルをやってほしいと言われた。

 

やよい「…顔岳くんの件をなかったことにする代わりに、君たちにモデルをやってほしいと…」

トレーナー父「お前もクビになるか?」

トレーナー「父さん」

 

 トレーナー父が滅茶苦茶不機嫌になると、トレーナーは困惑しながら諫めた。

 

トレーナー父「オレはともかく、こいつを外に出すとどうなるかお前も分かってるだろう」

やよい「そ、それはそうなのだが…」

たづな「東トレーナー。お気持ちは分かりますが、やって頂けませんか…?」

 

 たづながそう言うとトレーナー父がじっとたづなをみていた。

 

たづな「な、何ですか…?」

 

 するとトレーナー父はやよいを見た。

 

トレーナー父「一つ条件がある」

やよい「な、何だ! この際交換条件をのむぞ!」

トレーナー父「こいつも参加させろ」

たづな「え」

 

 なんと、たづなをモデルの仕事に参加させるように指示したのだ。これにはトレーナーも呆れていた。

 

たづな「え、な、何を言い出してるのか!?」

やよい「分かった!!」

たづな「理事長!!!」

トレーナー父「…これで無茶ぶりされるこっちの気持ちも少しは理解しろってんだ」

トレーナー「やれやれ…」

 

 こうしてトレーナー、たづな、トレーナー父の3人で顔岳の代役をすることになったのだが…。

 

「今度こそ私たちがいくー!!!」

「駄目に決まってんだろ! アタシが行くの!!」

 

 とまあ、ウマ娘たちが大騒ぎしていた。

 

たづな「やっぱり私が残った方が…」

トレーナー父「ああ。帯広から『ばんえい隊』を呼んでおいたから安心しろ」

トレーナー「…もう諦めましょう。たづなさん」

たづな「え、ちょ、ちょっとおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 この後どうなったかは皆さんのご想像にお任せします。

 

 

つづく

 

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