第4話
トレーナーは自宅から通っていた。それなのに…。
トレーナー「……」
「ご機嫌よう。トレーナー」
トレーナーが学校に行こうと家を出たのだが、メジロラモーヌが待ち構えていた。
トレーナー「あんたかい…」
メジロラモーヌ「随分な挨拶ね」
トレーナー「親父がいねぇのを狙ってきたのか?」
ラモーヌの方が2つ年上であるが、トレーナーは特に敬語を使うことはなかった。というのも、敬語でしゃべるとよそよそしいので、逆にやめろと言われていた。
メジロラモーヌ「まあいいわ。学校に行きましょう」
そんなこんなでトレーナーとラモーヌが一緒に登校した。
トレーナー「…そんなにあいつが不満か」
トレーナーがそういうと、ラモーヌの機嫌が露骨に悪くなった。もう不満とかいうレベルではなかった。
メジロラモーヌ「不満なんてもんじゃないわ。あの時ばかりは迎え入れたおばあさまを心底恨んだくらいよ…!」
トレーナー「いったい何やったんだあいつ…」
そうは言いつつも、綺麗もしくは可愛い女と大人の前ではわかりやすいくらい、媚びへつらっていた男だったので、何をしでかしたかは大体察しがついていた。
メジロラモーヌ「あの男の愚行さは貴方もよくわかっているでしょう?」
トレーナー「そうだな。もうオレとしても関わりたくないよ…」
メジロラモーヌ「その為にも私をチームに入れなさい」
トレーナー「だから無理やっちゅーねん」
メジロラモーヌ「連勝しているのでしょう? ダシマカップ」
トレーナー「ああ…。お陰様で4連勝。このままいけば本選進出だ」
ちなみにダシマカップの本選の出場条件は、春に行われる1次予選、秋に行われる2次予選、この2つの予選のどちらかで上位に上がることである。1次予選の各種目で8位以内に入ること、2次予選では1次予選の進出者を除いた状態で上位8位に入れば本選進出なのだ…。連勝しているので成績もよい。
トレーナー「まだ許しが出てねぇんだよ…」
メジロラモーヌ「つまらないわね…」
トレーナー「つまらなくて結構。それにあんたが来ると、あのバカもうるせぇし、妹たちも納得しねぇだろ」
メジロラモーヌ「あの子たちは今が大事な時期なのよ。私一人で十分だわ」
トレーナー「ちなみにオレの部屋、純和風なんだよ…」
メジロラモーヌ「いいじゃない。お父様譲りで素敵よ」
と、皮肉気味にラモーヌがそういい放った。どうしても入りたいらしい。
トレーナー「あと、なんだかんだ言ってウララもTSでは結果を出してないんだ」
メジロラモーヌ「いいじゃない。この際愛人でもいいのよ?」
トレーナー「どんだけオレの事好きやねん」
トレーナーが関西人風に突っ込んだ次の瞬間だった。
「トレ兄?」
トレーナー「おー。早速やってきましたよ」
トレーナーが声がした方を見ると、そこにはキタサンブラックとサトノダイヤモンドが現れた。
サトノダイヤモンド「ラモーヌさん! どうしてトレ兄様と一緒にいるのですか!?」
メジロラモーヌ「あら、お子様がこんな時間に出歩いてよい時間じゃなくってよ?」
キタサンブラック「な、なんですか! 上級生だからって!」
トレーナー「おい、道の真ん中で大声だすんじゃねぇ。とっとと学校行くぜ」
トレーナーが上級生らしく注意すると、キタサンブラックは黙ってそのままついていくことにした。
メジロラモーヌ「いいじゃない。あなた達幼馴染なんでしょ? 十分一緒に過ごしたじゃない」
サトノダイヤモンド「そうかもしれませんけど、抜け駆けです!」
ラモーヌが先にトレーナーの家に来ていたことにまだ納得していないキタサンブラックとサトノダイヤモンド。
キタサンブラック「ラモーヌさんにはあの凪っていう変な人がいるじゃないですか!」
メジロラモーヌ「彼の話をしないで頂戴。汚らわしい」
キタサンブラック「…え、そんなにヤバい人なんですか?」
トレーナー「こればっかりは同情するよ…」
トレーナーがあきれながら突っ込みを入れると、
「おい! お前!」
トレーナー「あーあ…。言ってるそばからすぐこれだよ」
凪が現れた。
トレーナー「朝っぱから何騒いでんだよ」
凪「てめえ! ラモーヌ姉さんに一体何をしやがったんだ!」
トレーナー「これが何かしてるように見えるかよ…」
どう考えてもいちゃもんをつけたいだけの凪にトレーナーだけでなく、キタサンブラックもサトノダイヤモンドもあきれ果てて、ラモーヌは舌打ちしていた。
キタサンブラック「イヤさ加減が尋常じゃない!!!」
その時だった。
「やっと来た!! トレーナー!!」
「!?」
また新しいウマ娘2人が現れた。
キタサンブラック「テイオーさん!」
サトノダイヤモンド「マヤノ先輩も…」
トウカイテイオー「トレーナーをずっと待ってたのに、どうしてキタちゃん達が一緒にいるのさ!」
マヤノトップガン「ずるーい!!」
そう、トウカイテイオーとマヤノトップガンもまたトレーナーを狙っていたのだが、トレーナーはガチで消極的だった…。
トウカイテイオー「…え、何その顔」
トレーナー「いや、お前らはオレじゃなくてもよくない? ていうか正直つまらん…」
マヤノトップガン「なんでそんなこというのー!!!?」
トレーナーの冷たい態度にテイオーとマヤノが涙目で憤慨していた。そう、この2人は中等部でありながら、才能は群を抜いておりクラシック三冠と呼ばれているのだが、才能がありすぎるが故に、メンタルの方に課題があったりしていたのだ。
キタサンブラック「まあ、テイオーさんは強いから…」
メジロラモーヌ「指示を聞かなければトレーナーなど不要だもの。当然よ」
トウカイテイオー「ちょっと勝手に決めつけないでよぉ!!」
マヤノトップガン「そうだよぉ!!」
とまあ、収拾がつかない事態になった。
凪「もういい!! そんな事はお前らで勝手に話し合え! とにかくラモーヌ姉さんは返してもらうからな!!」
メジロラモーヌ「…いつから私が貴方のものになったのかしら?」
ラモーヌが凪に殺気を放つと、下級生たちは震え上がった。
凪「オレのものじゃなくても同じメジロだろうが!! それにそいつの親父も関わりたくなさそうにしていただろう!!」
トレーナー「お前もその原因の一つだけどな…」
凪「ハッ! 何とでも言え! とにかくお前らみたいな貧乏人がオレ達メジロに勝てるわけがないんだよ!」
キタサンブラック「なっ…!」
サトノダイヤモンド「今の発言。私からあなたのご家族にお話ししましょうか?」
凪「いいのか? ラモーヌ姉さんたちがそいつとくっつく可能性があるんだぞ?」
キタサンブラック「そんなこと…」
凪「第一、このシリーズでとってるアンケートだってラモーヌ姉さんが1位だ! 今のままだったらラモーヌ姉さんがお前らより先に仲間になるかもな~???」
凪の煽りにキタサンブラックとサトノダイヤモンドはこれでもかという程ブチ切れた。ONEPIECEでいえば、キッドに煽られて切れているルフィとローみたいな感じだった。
トレーナー「そういやあの後、ナミがルフィぶん殴ってたけど、ウソップとチョッパーが止めている間何してたんだろう?」
キタサンブラック「そんなことはどうだっていいよ…!!」
サトノダイヤモンド「兄様!! 早く私を仲間にしてください!!」
キタサンブラック「そうだよトレ兄!!」
と、キタサンブラックとサトノダイヤモンドがヒステリック気味に叫んでいた。
メジロラモーヌ「…それなら勝負してみる?」
「え?」
ラモーヌがキタとダイヤを見つめていた。
メジロラモーヌ「どちらがトレーナーの傍にいるかふさわしいか…レースで決めましょう」
キタサンブラック「い、いいですよ!」
サトノダイヤモンド「望むところです!!」
トウカイテイオー「僕も参加する!」
マヤノトップガン「マヤだって!!」
トレーナー「……」
そんなこんなで急遽草レースが勃発したが…。
トレーナー「…勝者! メジロラモーヌ!」
芝の中距離で行われていたが、ラモーヌはキタ達を見事に蹴散らした。4人は息を切らして絶望していた…。そしてラモーヌは冷徹な目でキタ達を見つめていた。
メジロラモーヌ「どうかしら? 上級生に『遊んでもらった』感想は?」
「!!」
メジロラモーヌの言葉にキタ達は目を大きく開くが、そんな彼女たちにお構いなしに黒い笑みを浮かべると、背を向けた。
メジロラモーヌ「出直してきなさい。こんなレベルなら、トレーナーの傍に立とうと思うこと自体、恥だと思いなさい」
そう言ってラモーヌは去ろうとしたが、トレーナーの元に戻ってきた。
メジロラモーヌ「行くわよ」
トレーナー「オレ?」
メジロラモーヌ「当たり前じゃない」
凪「いや、ラモーヌ姉さん! オレと…」
「姉様!! いったい何をやっているのですか!!」
ラモーヌの実妹であるアルダンがやってきた。
凪「アルダン姉さん!」
メジロアルダン「…姉様! トレーナーくんと一緒に何をしていたのですか!」
凪の事はマジで最初からいなかったかのようにふるまうアルダン。よほどの事をしでかしたのである。
メジロラモーヌ「丁度良かったわ。あとは頼んだわよ?」
メジロアルダン「え?」
するとラモーヌはトレーナーの手をつかんでその場を走り去っていった。
メジロアルダン「え、ちょ、どういう事ですか!! 待って姉様…」
アルダンも追いかけようとすると凪がつかんだ。
凪「ダメだ!! せめてアルダン姉さんだけでも一緒にいろ!!」
凪が漫画の主人公っぽく説得するが、アルダンは凪の顔を一瞬だけ見て舌打ちした。
凪「離さない…!! この手だけは絶対に…!!」
さっきまで悔しそうに打ち震えていたキタサンブラックたちも凪の茶番を見て、一気に冷めていた…。
「…まさかテイオーたちが全く歯が立たないなんて」
そして陰からテイオーたちの同期であるナイスネイチャが見ていたが、圧倒的なラモーヌの実力に震えていた。
ナイスネイチャ「け、けどアタシだって…!!」
つづく