メジロになれなかった男   作:ダシマ

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第51話「ダシマカップ・3」

 

 

 16名中12名が勝ち上がれるダシマカップ本選1回戦。メジロ4人の戦いが繰り広げられていた。

 

メジロアルダン「姉様…」

メジロラモーヌ「遠慮はいらなくてよ。今はもうトレーナーも凪もない。一人のウマ娘として全力を尽くし、勝利をつかむ。それだけよ」

 

 ラモーヌの言葉にドーベルやマックイーンにも緊張感が走っていたが、ネイチャは困惑していた。

 

ナイスネイチャ(な…なんかアタシ、場違い?)

 

 ネイチャがそう思っていたその時、

 

メジロラモーヌ「…とはいえ、こういう時こそ思いがけない展開が待っているものね。そうでしょう? 貴女」

 

 ラモーヌがネイチャの方を見つめると、ネイチャは青ざめて傍にいたキタサンとダンツが苦笑いしていた。

 

メジロラモーヌ「もうここまで来たからには退路は断たれているわ。全力を出しなさいな」

ナイスネイチャ「わ、分かりました…」

 

 こうして7人がゲートの前に立ち、トレーナー達は静かに見守っていた。

 

 そして運命の時が来た。ゲートが開いてレースが始まる。観客は今までと同様に選手にエールを送っていた。勿論トレーナー達もライアン達もそうである。

 

 そして走っているネイチャ達はその声援を受けて走っていたが、ネイチャはその声援から来るプレッシャーに襲われていた。

 

ナイスネイチャ(ああ…遂に始まった! けど、1回戦脱落だけは絶対に避けたい!!)

キタサンブラック(ダイヤちゃんの分まで…トレ兄と勝つんだ!!)

ダンツフレーム(私だって負けられません!!!!)

 

 皆それぞれ秘めた思いを胸に走る。だが、そんな中でラモーヌは圧倒的な走りを見せていた。

 

メジロパーマー「ラモーヌさん…!」

 

 トレーナーの指導だけではない。メジロのウマ娘としての誇りと意地が彼女を強くさせていた。それは同じメジロのアルダン達も、同じチームのネイチャ達も、敵味方問わず蹴散らす勢いで力強く、そして美しい走りを見せる。

 

メジロアルダン(…やはり姉様は遠い。でも!!)

 

 アルダンもこの1年間、凪の元でトレーニングを積んできた。自分もまたトレーナーに好意を寄せてはチームに入れて欲しかったものの、最終的には選ばれず、そればかりか最終的には姉が選ばれた。こんなに悔しい事はなかった。

 

メジロアルダン(私だって!!!)

 

 アルダンがラモーヌに追随すると、他のウマ娘達が驚いていた。

 

メジロライアン「ラモーヌさん!!」

凪「……!」

 

 アルダンの気迫にライアンやパーマー達は勿論、凪も反応した。

 

メジロマックイーン(私達だって!!)

メジロドーベル(負けられない!!)

 

 マックイーンとドーベルもアルダンに続こうとしていた。

 

キタサンブラック(やっぱり先輩たちは強い…。でもあたしだって!!)

ダンツフレーム(私だって!!)

 

 そしてネイチャもまた周りのオーラに気圧された。

 

ナイスネイチャ(…そうだ! アタシだって負ける為にここに来たんじゃない!! 勝つ為に来たんだ!!)

 

 7人が他の選手を圧倒する力強い走りを見せた。

 

(勝つのは私だ!!!!!)

 

 

 

 そしてすぐさま決着はついた。

 

「ゴール!!! 1着は…メジロラモーヌ!!!」

 

 1着はメジロラモーヌ、2着はメジロアルダン、3着はナイスネイチャ、4着はメジロマックイーンとなった。

 

メジロラモーヌ「…ふぅ」

 

 他のウマ娘が息を切らす中、ラモーヌは一息ついた。

 

ハルウララ「ラモーヌさんが1着だよ! ネイチャちゃんも3着で…」

トレーナー「ああ。皆勝ち上がったな」

 

 ウララが身振り手振りで自分の言いたい事を表現しようとすると、トレーナーは理解したと言わんばかりに、簡単にまとめた。

 

マンハッタンカフェ「…長距離もそうでしたが、やはり油断はできませんね」

トレーナー「ああ。アルダンさん達はそうだけど、少なくともアイツはこのダシマカップに全てをかけている」

 

 そう言ってトレーナーは凪を見つめると、凪は口角を下げた。

 

メジロライアン「…凪」

凪「まだ終わりじゃない。次の準備を知ろ」

 

 そう言って凪は去っていくと、ライアン達が心配そうに凪の背中を見つめた。

 

 そして準決勝も同じように行われた。12名から8名に減らされたが、トレーナーチームと凪チームは全員進出した。

 

 ちなみに勝者は全ての部において1回戦と同じである。

 

メジロアルダン・ナイスネイチャ「……」

 

 ラモーヌに勝てず、アルダンとネイチャは落ち込んでいた。決勝戦ですべてが終わるのだが、ラモーヌの力は衰える様子はない。寧ろどんどん磨きがかかっていて、勝てる見込みがない。

 

 そしてラモーヌはそんなアルダンとネイチャを見たが、特に言葉をかける様子はなかった。

 

ウイニングチケット「やっぱりラモーヌ先輩は強いね」

ナリタタイシン「それはそうと、あのメジロ相手に全勝なんて…」

ビワハヤヒデ「ああ。だが、次勝てなければどんでん返しになる」

 

 BNWが観客席から雑談をしていたが、トレーナー父は考え事をしていた。

 

ビワハヤヒデ「東トレーナー…」

ナリタタイシン「何かずっと考え事をしてるけど…」

トレーナー父「…いいや。ここまで本当に長かったと思ってな」

 

 トレーナー父が一息つくと、ハヤヒデとタイシンは理解出来なさそうにしていて、チケットに至っては…。

 

ウイニングチケット「東トレーナー。まだ大会は終わってないよ?」

トレーナー父「分かってる。だが、泣いても笑っても次で最後だ」

ナリタタイシン「それは分かるけど…」

 

 結局BNWはトレーナー父の意図が分からない状態だったが、トレーナー父はそんな3人に構わず、凪を見つめた。

 

 

 そして決勝直前。トレーナーは8人の担当ウマ娘を集める。

 

トレーナー「皆。今まで本当によく頑張った」

キングヘイロー「な、何よいきなり…」

ダンツフレーム「本当にここまで来たんですね…」

 

 TSといった大きな舞台ではないものの、役者は大物ばかりでもはやTSに引けを取らなくなっていた。そしてその舞台で戦うのも次で最後だった。

 

トレーナー「もう皆分かってるとは思うけど、次で最後だ。決して悔いのないように戦って欲しい。凪やメジロ家の事もあるけど、それ以上お前たち自身が1人のアスリートとして、全力を出しきってくれ!」

 

 トレーナーがそう言うと、ウマ娘達は静かにうなずいた。

 

 そんな中、凪がやってくると皆が驚いたが、ラモーヌのみ意図に気づいて何も言わないでいた。

 

トレーナー「…分かってる。凪」

凪「ああ。オレとお前、どっちがメジロに相応しいか…次で決着をつける!」

 

 凪の言葉にトレーナーは静かに目を閉じると、そのまま凪を見つめた。

 

 

トレーナー「もうお前との喧嘩もこれで最後だ! かかってこい!!」

 

 

 

つづく

 

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