メジロになれなかった男   作:ダシマ

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第53話「ダシマカップ・5」

 

 

 芝の長距離の部はライスシャワーの勝利で終わり、トレーナーと凪との決着が1つついた。そして今度は芝の中距離でぶつかる事になったのだが、次はキングが出走する芝の短距離となった。

 

キングヘイロー「さあ、キングを祝福する準備は出来たかしら?」

トレーナー「それ完全に負けフラグなんよ」

メジロラモーヌ「今は勝つことに集中なさい」

 

 とまあ、最後だというのにいつもと変わらないキングヘイローにトレーナーとラモーヌは呆れていたが、

 

キングヘイロー「…ラモーヌさんはともかくトレーナー。貴方はそれでも私が勝つことを信じているでしょう?」

トレーナー「当たり前だよ」

キングヘイロー「だからこそよ。行ってくるわ」

 

 そう言ってキングがゲートに向かうと、トレーナーは意味深な表情を浮かべてキングの背中を見つめた。

 

 そして選ばれなかった同期達も見ている中で、いよいよキングヘイローの最後の大舞台が幕を開ける。他の7人と短い距離を駆け抜けて、見事に優勝を果たした。

 

トレーナー「まあ、強力なライバルもいなかったとはいえ、最後まで堂々とした走りを見せた。これで満足かな」

 

 大会の規模もライバルのレベルもTSには及ばないものの、勝ちは勝ち。という事でトレーナーは満足げに笑ってみせた。

 

キングヘイロー「オーッホッホッホッホッホ! 最後に勝つのはこのキングヘイローよ!!」

 

 キングは堂々と高笑いをしたが、その目にはうっすら涙が浮かんでいた。

 

トレーナー「おう。いい最終回だったぜ」

キングヘイロー「最終回じゃないわよっ!!」

 

 キングがトレーナーの元に戻ってくるなり、トレーナーは冗談を言ってはキングが突っ込んだ。

 

ハルウララ「でもキングちゃん! 本当に優勝おめでとう!!」

キングヘイロー「…ウララさん」

ライスシャワー「おめでとう」

キングヘイロー「…ありがとう」

 

 と、仲間たちからの祝福を素直に喜んだ。

 

エルコンドルパサー「ううう~!! エルも戦いたかったデース…」

グラスワンダー「今度勝負を挑みましょうか」

 

 同期達はキングの勝利を祝福しつつも、ダシマカップが終わればチーム解散になるので、改めてキングより実力が上だという事を証明しようと誓うのだった。

 

 そしてまたダートと芝のマイルが行われ、そこでも勝者が決まった。彼女たちもまたライスやキングのように喜んでいた。

 

「…やっぱり芝の長距離や短距離に比べるとな」

「ああ。やっぱりレベル低いよな」

 

 と、一部のトレーナーが心無い発言をしていて、それをトレーナー父とBNWが聞いていた。

 

ウイニングチケット「ひ、酷い!!」

ナリタタイシン「ほっときなよ。そのレベルの低いウマ娘にすら相手にされないんだから」

ビワハヤヒデ「それもそうだし、公共の場だ。トレーナーとしての品性に欠ける」

 

 チケットがショックを受けるもハヤヒデとタイシンが軽くあしらうと、トレーナー達に聞こえていたのか、バツが悪そうにその場を後にした。

 

トレーナー父「…全く。誰かと思えば怠け者の若手じゃねぇか」

ウイニングチケット「知ってるの!?」

トレーナー父「ああ。だが今はレースに集中しろ」

ウイニングチケット「う、うん…」

 

 そして5種目目。なんと『ダート・短距離』が選ばれた。

 

ハルウララ「わたしの出番だね!」

トレーナー「そうだな」

 

 トレーナーとウララが見つめ合う。

 

ハルウララ「トレーナー。わたしも1着取ってくるね!」

トレーナー「ああ。だが、ウララ。最後に一つだけ言っとくぜ」

ハルウララ「なあに?」

 

 トレーナーが口角を上げた。

 

トレーナー「今からお前が走る場所は、今までで一番最高の舞台だ。そこでも思いきり楽しんで走ってこい!」

ハルウララ「分かった! じゃあ、行ってくるね!!」

 

 そう言ってウララは去っていくと、トレーナーは満足そうに見守った。

 

メジロラモーヌ「…あの子には随分優しいわね」

トレーナー「まあ、最初に受け持ったからっていうのもあるけど、凪たちの事で色々あった中でずっとそばにいてくれたのはアイツだからな」

キタサンブラック「トレ兄…」

 

 トレーナーの言葉にキタサンブラックがそう呟くと、どうしてその場に自分がいなかったんだろうと内心悔しがっていた。

 

 だが、今はトレーナーとウララを見守ることにした。

 

 そして運命の第5試合が始まる。ウララと一緒に走る7名のウマ娘はTSにも出走しておらず、実力はそんなに変わらない。しかし、油断は出来ない状態だ。

 

 皆が見守る中、レースは始まった。ウララもまた差しの体制を取り、終盤まで体力をキープし、最後に一気にゴールに向かう。

 

ライスシャワー「ウララちゃーん!!!」

ダンツフレーム「いっけー!!!」

キングヘイロー「優勝はすぐそこよー!!!」

 

 チームメイトは勿論、ウララと親しいウマ娘や観客たちも彼女を声援する。そしてトレーナーも口角を上げてこう言い放つ。

 

トレーナー「ウララー!!!!」

ハルウララ「!」

トレーナー「この試合、勝つぞー!!!!」

 

 トレーナーがそう声をかけると、ウララも反応してペースを上げた。

 

ハルウララ「うん!!! うりゃりゃうりゃーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 ウララはペースを上げていたが、疲れは一切なく力が沸いていくという感じで、それこそ楽しく走っているという状態だった。

 

 30m、20m、10mとゴールまで近づいていき、遂にその瞬間が訪れた。

 

 

 

 ウララが笑顔でゴールインしたのだ。

 

 

 

 この瞬間、会場は静まり返った。だが…。

 

『ゴ、ゴール!! ダート・短距離の部優勝は…ハルウララー!!!!』

 

 アナウンサーの声に会場に大歓喜に包まれた。

 

 

ライスシャワー・ダンツフレーム「やったやったぁー!!!」

 

 ライスとダンツが抱き合って喜んでいた。そしてトレーナーはウララを見つめると、今までの事が蘇ってきた。

 

キングヘイロー「…トレーナー」

トレーナー「ああ。本当に長かった…」

 

 そしてウララが戻ってきて、トレーナーの前に立った。

 

ハルウララ「トレーナー! わたし、勝ったよ!」

トレーナー「見てたよ。本当に今日までよく頑張ったな」

ハルウララ「うん…うん…」

 

 トレーナーの言葉にウララは今にも泣きだしそうな顔で笑うと、ライスやダンツが号泣していた。

 

ライスシャワー「ウララちゃん…。本当におめでとう…」

ダンツフレーム「おめでとう! 凄かったよ!」

ハルウララ「ライスちゃん、ダンツさん! ありがとう!! それからみんなにもありがとう!!」

 

 ウララが笑顔でそう言うと、ライスやダンツがまた号泣したし、涙をこらえていたキングも涙腺が決壊した。

 

ウイニングチケット「うおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!! ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!」

ナリタタイシン「うるせぇ!!!」

 

 チケットはそれ以上に泣いていて、タイシンが怒鳴った。

 

イエローリリー「ウララちゃんは本当に凄いなぁ…」

ビワハヤヒデ「ああ。レースだけではない。こんなに沢山の人間に祝福されている。TSで結果を出してもここまで愛される選手はいない」

トレーナー父「……」

 

 息子の最初のパートナーであるウララに対し、トレーナー父も彼女に対して祝福すると同時に、父親として感謝の気持ちを抱いていた。

 

ハルウララ「ありがとう! 本当に…ありがとう!!」

 

 

 

つづく

 

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