メジロになれなかった男   作:ダシマ

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第56話「玲那と凪」

第56話

 

 一先ず、ダシマカップ閉会式を迎える事となった。トレーナーチームも凪チームも整列し、理事長である秋川やよいの言葉を聞く。

 

やよい「脱帽ッ!! 生徒諸君! この1年間本当にご苦労であった! 今回の大会を糧にこれからもそれぞれの道で励んでくれたまえ! 今回活躍できなかった生徒達もまたいつか、活躍できる機会の場を設けるから、ここで諦めずに勉学に励んでほしいッ! 以上だ!」

 

 式が終わり、トレーナーはウララ達と一緒にメジロ家の屋敷に向った。そして凪やメジロ家のウマ娘も一緒である。

 

 そしてトレーナー、トレーナー父、凪、メジロ家のウマ娘7人、おばあ様はとある応接室で話をする事となり、それ以外のメンバーは別室で待機となった。

 

 おばあ様、トレーナーと凪が2対1で向かい合うように座っていた。

 

「…さて、改めてトレーナーさん。凪、そしてラモーヌ達。長きにわたるダシマカップの参戦。本当にお疲れ様でした」

 

 おばあ様がそう言うと、皆が一礼した。

 

おばあ様「…そして、今後の事についてお話ししなければなりません。凪」

凪「…はい」

 

 凪はもうかつての粗暴さが消え失せており、すっかり大人しくなった。

 

凪「もう覚悟は出来ております。ダシマカップで結果を出せなかった以上、メジロを名乗る訳には行きません」

「!」

おばあ様「…そうですか」

メジロライアン「お、おばあ様!」

 

 凪の言葉におばあ様が否定せずにいると、ライアンが待ったをかけた。

 

おばあ様「ライアン。あなたが言いたい事は心得ております。確かに凪はこの1年間でトレセン学園…特にトレーナーさんに対して多大なご迷惑をおかけしました。メジロの人間としては相応しくありません」

 

 おばあ様の言葉にマックイーン、アルダン、ドーベル、パーマー、アルダンは困惑すると、トレーナーやラモーヌは無表情だった。だが、おばあ様は俯く。

 

おばあ様「…しかし、全てを凪一人に負わせる気はございませんし、彼だけが問題を起こしたわけではありません。二宮や小神、一部の社員もメジロの名前を妄信しすぎました。これはもう特定の人間だけを責めるのではなく、メジロ全体で猛省し改善しなければなりません。凪、先ほどの言葉に嘘はありませんね?」

凪「はい。追放も覚悟しております」

おばあ様「とんでもない。寧ろ何のケジメもつけないまま追放などさせませんよ」

 

 おばあ様が厳しい態度で凪に迫るも、凪は追放せずに残してくれる事に驚いた。

 

おばあ様「凪。あなたには改めて再教育を受けて貰います」

凪「再教育…?」

おばあ様「ええ。本当の意味でメジロの名前を背負うのに相応しい『後継者』の一人として、今から教育を受けて貰います。その為に…トレセン学園を離れて貰います」

 

 おばあ様の言葉に皆が驚いたが、凪は特に嫌がる様子はなかった。

 

凪「…分かりました。おばあ様がそう仰るのであれば、受け入れます」

トレーナー「……」

 

 今までの凪だったら、アルダン達はおろか、ハーレム生活を手放したくないという理由からごねていただろうが、今回のダシマカップの件で色々考える所があったのか、大人しく受け入れる事にした。

 

メジロライアン「凪…。本当にそれでいいの?」

凪「ああ。もういいんだ」

 

 凪はライアンに対してそう言うと、アルダン達も驚いていた。ただ、ラモーヌは無表情だったが…。

 

おばあ様「もし、この再教育をやり抜いて、あなたが本当の意味で心身ともに成長したその時は、改めてメジロの名前を背負って貰いましょう」

凪「分かりました。お心遣い、ありがとうございます」

おばあ様「ええ。そして私もメジロ家当主として、全ての役員たちに改善を施すように手配し致します。そして、私自身も当主として恥じぬように研鑽する所存です」

メジロマックイーン「おばあ様…」

 

 自分自身もきちんとけじめをつけるその姿勢に、マックイーン達は改めて感心する。そしておばあ様はトレーナーとトレーナー父の方を向けて立ち上がる。

 

おばあ様「玲那さん。そして…ルイさん。この度はうちの者が多大なご迷惑をおかけしました。改めてメジロ家当主として深くお詫び申し上げます」

 

 おばあ様が頭を下げると、トレーナー父は無言でおばあ様を見つめた。

 

おばあ様「そしてラモーヌ達に関してもこの9か月間本当にお世話になりました」

トレーナー父「…ああ。しっかりあの連中達の手綱を握ってくれ。もう言いがかりはうんざりだぜ」

トレーナー「親父…」

 

 トレーナー父がここぞとばかりに暴言を吐くので、トレーナーは呆れていた。

 

********************

 

「別に来なくて良かったんだぞ」

「そう言うなよ。折角仲直りしたんだ」

「…癇に障る奴だ」

「へいへい。そりゃあ悪かったよ」

 

 後日、凪は再教育の為、再教育の舞台となる海外へ行くこととなった。そんな凪をトレーナーは見送りに来ていた。

 

凪「…いや、謝らないといけないのはこっちだったな」

トレーナー「ん?」

凪「ケジメだ。今までごめん」

トレーナー「凪…」

 

 凪が頭を下げて謝ると、トレーナーは一言だけ呟いた。

 

トレーナー「…これでやっと仲直りだな」

 

 凪が顔を上げるとトレーナーは苦笑いした。

 

トレーナー「いいよ、もう」

凪「お前…」

トレーナー「まあ、でもこれからは無茶すんなよ」

凪「…ヘッ。本当にお前って奴は」

 

 すると後ろから様子を見ていたラモーヌ達も前に出てきた。

 

メジロラモーヌ「変わったわね。貴方」

凪「…ラモーヌ姉さん」

メジロアルダン「凪。私達もあなたの気持ちをきちんと理解してあげられませんでした。本当にごめんなさい」

メジロライアン「ごめんね」

 

 アルダン達が謝ると、凪は悲しそうに俯いた。

 

トレーナー「まあ、これからどうなるかは分からないけど凪」

 

 トレーナーの言葉に凪が顔を会えた。

 

トレーナー「もう昔の事を忘れるなんて訳じゃないけど、こっからがまた新しい道の始まりだ。しっかり歩いて行こう」

凪「…分かったよ。じゃあ、オレはもう行く」

トレーナー「ああ。達者でな」

凪「お前もな。姉さん達を頼んだぞ」

トレーナー「まあ、ラモーヌ達なら大丈夫だろうけど、分かったよ。風邪ひくなよ」

 

 そう言って凪は保安検査場の中に入っていき、ここで本当にお別れとなった。

 

 

トレーナー(またな…凪)

 

 

 ずっと憎み合っていた幼馴染と和解して、トレーナーの心は雲一つない青空のように澄み渡っていた。

 

 

つづく

 

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