第60話
ダシマカップが終わってからというもの、トレーナーは相変わらずウマ娘に囲まれていた。
トレーナー「まあ、トレーナー室にいるとウマ娘達が入り浸るから殆ど使ってないんよね…」
そんなある日の事。トレーナーはトレセン学園のとあるベンチに座っていた。
「トレーナー様…」
メジロアルダンが現れた。
トレーナー「ああ。アルダン先輩」
メジロアルダン「ごきげんよう。隣宜しいですか?」
トレーナー「あ、はい」
トレーナーがそう言うとアルダンはすっとトレーナーの隣に座った。それはもう素人だったら見逃してしまう程美しく、速かった。トレーナーはちょっと引いた。
**********************
メジロアルダン「最近は如何ですか?」
トレーナー「そうですね。ダシマカップが終わってから暇になると思われたのですが、前より忙しくなりましたね」
メジロアルダン「そうですか…そうですね」
トレーナーが忙しくなった理由に関してはアルダンも十分に察しがついていたので、クスッと微笑む。
トレーナー「此間なんかターボが…」
メジロアルダン「ターボさんが?」
トレーナー「ええ。ネイチャがあなた方に勝ったので、自分も鍛えて欲しいって」
メジロアルダン「まあ…」
トレーナーがそう言うとアルダンも相槌を打った。
メジロアルダン「…そのうちネイチャさんにもリベンジをしないといけませんね」
トレーナー「あいつ震えてましたよ。環境が180度変わったって」
メジロアルダン「そうですね。勝者は周りからの期待を背負う義務があります。厳しく険しいですが、ネイチャさんなら乗り越えられるかと」
トレーナー「ええ」
とまあ、このように世間話をしていてアルダンは心底喜んでいた。今までこんな事があっただろうか。思えばダシマカップ開催中は凪やラモーヌを中心に邪魔されて、一緒の時間が殆ど取れなかったのだ。もう本当に涙が出るほど喜んでいた。
メジロアルダン(ああ…!! 神に感謝…!!)
トレーナー(泣く程喜んでやがる…)
しかし、アルダンの目からは大粒の涙がこぼれていて、心の中に収めるつもりがもう丸出しだった。トレーナーに関しては別に嫌ではないのだが、そこまで喜ぶことなのか…? と、思っていた。
****
メジロアルダン「それはそうと…チームは解散しても、まだ活動は続くのですね」
トレーナー「ええ。思った以上に反響ありまして、今度また撮影があるんです」
メジロアルダン「…そうですか」
トレーナーの言葉にアルダンが俯いた。
メジロアルダン「…あの、トレーナー様」
トレーナー「なんです?」
アルダンがトレーナーの顔を向いた。
メジロアルダン「ダシマカップも終わりましたし、新しい一歩を…」
トレーナー「まあ、ひと段落しましたし、彼女を作ってもいいかもしれませんね」
メジロアルダン「……!」
トレーナーの言葉にアルダンは胸が高鳴った。まだ自分にもチャンスがある。何ならもうここで決めるべきだと思った次の瞬間。
「それは勿論、私だよな?」
シンボリルドルフが現れた。ルドルフだけじゃなくてマックイーンやマーチャン、タイキもいた。アルダンは深く絶望した。
トレーナー「…選んでも諦めなさそうだし、やっぱりいいです」
メジロマックイーン「そんな事仰らずに」
タイキシャトル「トレーナー! ワタシは諦めマセンヨ!?」
トレーナー「じゃあダメだ」
トレーナーがすっかり彼女を選ぶ気がなくなって、アルダンは深く絶望した。
シンボリルドルフ「それもそうだがトレーナーくん。チームはもう解散したというのに、ハルウララ達旧メンバーと一緒にいる事が多いじゃないか」
トレーナー「いや、そうでもないですよ。結構バランスよく…ていうか寧ろルドルフ会長も多い方」
シンボリルドルフ「それもそうだが、担当ウマ娘を入れる気はないのか!?」
トレーナー「いや、少なくとも会長はもう6年ですし…」
シンボリルドルフ「ベテラン枠として後輩たちの指導が出来るだろう」
メジロアルダン「ルドルフさん。もう貴女は喋らないでください」
思った以上に大人げないルドルフを見て、アルダンはすっかり呆れていた。
アストンマーチャン「それはそうとトレーナーさん」
トレーナー「なに?」
アストンマーチャン「トレーナー室は使われないのですか?」
トレーナー「いやあ、あそこ開放するといろんな奴が入り浸るから…」
シンボリルドルフ「…テイオーか。分かった。彼女には私から注意しておこう」
トレーナー「いえ、貴方もです…」
トレーナーがカミングアウトするとルドルフ以外のウマ娘達がルドルフに対してジト目で見ていた。
シンボリルドルフ「わ、私は生徒会長としてだな…」
メジロアルダン「理由になってません」
タイキシャトル「ショッケンランヨウしすぎデース」
メジロマックイーン「それはそうとアルダンさん。貴女はどうしてトレーナーさんと一緒にベンチで座っていたのですか?」
マックイーンもアルダンに対してジト目で見ていたが、アルダンは堂々としていた。
メジロアルダン「偶然ご一緒になったんですよ」
トレーナー「まあ、オレが座ってたら、隣座っていいかってね」
シンボリルドルフ「それなら私達もいいだろう…って、コラ!! マーチャン!!」
マーチャンが普通にトレーナーの隣に座っていて、ルドルフが突っ込んでいた。
アストンマーチャン「まあ、これからも色々あるでしょうが、マーチャンの事もお忘れなきよう、宜しくお願いしますね」
トレーナー「あーうん。そうね…」
メジロマックイーン「アルダンさん!! そこ代わってくださいまし! 十分にトレーナーさんの隣を堪能したでしょう!?」
メジロアルダン「嫌です!! 私が一番票あったんですから!!!」
思わずメタ発言をするアルダン。必死さが伺えますね…。
「あー!! いたー!!!」
ツインターボがやってきたが、ネイチャが慌てて止めようとしていた。
トレーナー「どうしたターボ。ネイチャが慌ててるみたいだが、また何か思いついたのか?」
ツインターボ「いつになったターボのトレーニング見てくれるの!! ずるいずるい!! ネイチャだけずるいー!!!」
ナイスネイチャ「だからトレーナーさんも忙しいって言ってるでしょ! ごめんトレーナーさん!!」
ネイチャの言葉にトレーナーはある事を考えた…。
ナイスネイチャ「…トレーナーさん?」
トレーナー「そういやネイチャ。お前優勝してからトレーニングちゃんとやってるか?」
ナイスネイチャ「ええ、そりゃあもう!!」
優勝してからというもの、ネイチャの学園生活は大きく変わってしまった。まさに追われる者である。
トレーナー「そうだな。まあ、ネイチャのバーターになるかもしれないが、前向きに検討するよ」
ツインターボ「約束だからな!!」
トレーナー「守れなかったらごめんね」
ツインターボ「破る前提で約束するなー!!!!」
シンボリルドルフ「トレーナーくん! その時は私も絶対に参加するからな!!?」
(お、大人げねぇ…)
さあ、トレセン学園の明日はどっちだ!!?
つづく