・またライの妹に関してもサクラ・S(皇)・フォーサイスとなります。
・物語時系列はアズカバンの囚人時となります。
僕の名前はマルフォイ。ドラコ・マルフォイだ。
英国魔法界でも名門の純血一族マルフォイ家の一人息子だ。
今は父上母上の下を離れてここ、ホグワーツ魔法魔術学校に通っている3年生だ。
組分け?当然スリザリンに決まっているじゃないか。
僕の家族は皆スリザリンだったんだ。もしもハッフルパフなんかに入れられていたら退学してるね。
だから組分け帽子が僕が帽子を被るか被らないかという段階ですぐに「スリザリン‼」と宣言した時は純粋に嬉しかったし、帽子も当然な仕事をしたなと思っていた。他の面子の組分けをみても帽子はどうやら正しい組分けを行う。
2年前に、いや去年の組分け儀式が始まる前の僕はそう思っていた。
でも今ではその自信がなくなってきている。
理由? それはもちろん
「ドラコ、ここにいたのか!ルルーシュ先輩がまたハッフルパフの談話室に乗り込もうとしているんだ!止めるのを手伝ってくれ!」
物思いにふける僕の思考は談話室に入ってくるなり僕に援軍を求めるジノの大声で中断される。
「またかよおおお!」
***
談話室を出て大広間に向かうとスリザリンのテーブルが騒がしい。
中心にいるのはわかっていたがルルーシュ先輩だ。
ルルーシュ・ランペルージ先輩。僕より3つ上の6年生で6人いるスリザリンの監督性の一人だ。
庶流ではあるがマルフォイ家と同じ純血一族であるブリタニア家の人間で、血筋だけでなく成績優秀で実技・理論共にとても優れた生徒だ。
人柄も一見他人に興味を持たない人に思えるが、実際は面倒見の良い人で同じスリザリンということもあって僕もとてもお世話になっている。
しかし、そんな完璧優等生な先輩にも欠点がないわけではなく、その一端が正に今目の前に広がる光景だ。
「ありとあらゆる手段を講じてハッフルパフ寮の合言葉を入手するぞ!」
「先輩落ち着いてください。いったい何があったんですか」
本音を言うなら聞きたくはない。
「ドラコちょうど良い所にきたな。一緒にハッフルパフの談話室に乗り込むぞ!普段は禁止している呪いや失神呪文の類も使って構わない」
完全に普段のクールな先輩が消えて残念な先輩になってしまっている。視線を追いついてきたジノに向けて、先輩がこうなってしまった経緯を問う。
「少し早めの昼食を先輩ととっていたらナナリーがバスケットを抱えて通りかかって、先輩が声をかけたら」
「ライと一緒に昼食をとる約束をしただと⁉しかもバスケットの中身はライの為にナナリーが作ったオニギリだと⁉俺は何も聞いていないぞ!」
それはたぶん二人がハッフルパフ生で先輩がスリザリンだからでしょう。
ルルーシュ先輩の数少ない残念なところが極度のシスコンということだ。
先輩には4つ下、つまり僕たちの1つ下の学年に妹がいる。ナナリー・ランペルージ。幼少期に足が不自由になってしまったとのことだがそんな境遇にも曇らずにいる子だ。
性格は根本で先輩と通ずる所があるがより穏やかで心優しく、直接言葉を交わした回数が少ない僕自身良い子だと思うしおこぼれで入ったのではない狭義の意味での「ハッフルパフ生」らしい子だ。
そう、問題はナナリーが先輩や僕たちと同じスリザリンでなくハッフルパフ生であることだ。
あのポッターやウィーズリーみたいな生意気で高慢な奴が多いグリフィンドールは論外としても、高貴で由緒正しいスリザリンに比べてハッフルパフは創設者が学びを求める者には区別なく受け入れる方針だったこともあり落ちこぼれが多いといわれている
(ここ近年のホグワーツを知っている人間が聞いたら間違いなく失笑される論評だ)
1年前の始業式、ナナリーが被った組分け帽子が大広間中に響く声で「ハッフルパフ!」と言った瞬間の先輩の顔とその後の行動は思い出したくもない記憶だ。
少なくとも僕はスネイプ先生がスリザリンから30点以上減点するのを見たことも聞いたこともなかった。
ただナナリーと同じ寮になれなかっただけだったらルルーシュ先輩もここまで残念な一面をホグワーツ中に見せる事はもっと少なかったのではと思う。きっと。
だけど問題をより大きくする人がまさにそのハッフルパフにいたんだ。
ライ・S・フォーサイス。ルルーシュ先輩たちと同学年のハッフルパフ生の先輩だ。
さっきの「落ちこぼれのハッフルパフ寮」論が今のホグワーツで失笑される最大の要因で、ルルーシュ先輩に勝るとも劣らない成績優秀者であり、さらにクディッチの腕前も学校上位陣に入る文武両道の人だ。
しかも老若男女誰に対しても分け隔てなく親身に接し、誰からも好かれる性格だ。
僕に言わせればライ先輩ほどの才能の人物はスリザリン寮にこそ相応しい。ハッフルパフにはもったいないと思う。
「ルルーシュ先輩落ち着いてください。ライ先輩はナナリーと同じハッフルパフ生で先輩後輩なんですから一緒に食事することは特別なことじゃないですよ!実際ジノも先輩と一緒に昼食をとろうとしていたじゃないですか」
「そ、そうですよ先輩。」
僕の説得にジノがすかさず追随する。
「相手はナナリーだぞ!しかもライが食事を用意するならまだしも何故ナナリーがあいつの為に用意する。ジノやドラコが一度でも俺の食事を用意したことがあったか⁉」
「「いや、それはないですけど…」」
だって学校じゃ料理は勝手に出てくるし、先輩の方が圧倒的に料理の腕前上じゃないですか。
「とにかく兄としてこんなこと認められない!なんとしてもライの毒牙からナナリーを護らなければ!」
言うが早いか先輩が広間の出口に向かって駆け出す。
「先輩!ダメです待って‼」
すかさず僕は先輩にしがみついて押し止める。
先輩は頭はとても良いが運動はからっきしなので後輩の僕でもなんとか引き留めることができる。
しかしこういう時だけ普段からは考えられないほどの力を発揮して、ジリジリとだが引きずられていく。
僕は先輩を止めるためにも助けを求めて回りを見渡した。
ある意味ホグワーツでの日常風景になりつつある先輩の凶行と、それを必死に止める僕とジノという状況を見る周りの奴らの反応もパターン化しつつある。
自分たちも認める知性の持ち主である先輩の凶行を見て見ぬふりをするレイブンクロー。
他人ごとだからと外野から囃したてたり観戦しているグリフィンドール(呪われてしまえ)
妹想いだなと感心する奴と妹想いの強さに若干引いている奴が半々のハッフルパフ。
そして我らが同胞たるスリザリン生はというと。
(マクゴナガルやスネイプ先生に見つかって減点される前に早くなんとかしろ)と火中の栗を拾うような真似はしたくはないが、減点もされたくないために全ては僕に懸かっているぞと他人任せなエールの眼差しを向けるだけで少しずつ距離を置いて行っている。
同じ寮の仲間を大事にするという僕らの寮の特徴はいったいどこに消えたんだ?
この光景を見たら墓の下のサラザール・スリザリンは泣くにちがいない。
***
「いいかいハリー?ルルーシュみたいに勉強ができても、ああなっちゃダメだよ?」
「は、はあ……」
必死にルルーシュ先輩に押し止めている僕の苦労を他所に、クルルギ先輩がポッターに注意しながら席を外そうとしているのが視界の端に見えた。
瞬間ポッターと視線があう。
やめろ、そんな同情するような眼で僕のことを見るな。
いつもみたいに生意気な目で僕のことを見ろよ、こっちがむしろ悲しくなってくるだろ。
「離せドラコッ!俺がライの手からナナリーを護らなければ!ナナリー‼」
父上はカリキュラムの内容を考え、最初僕のことをホグワーツではなく北欧のダームストラング(闇の魔術も教えているらしい)に入学させようとしていた。
母上が僕を必要以上に遠くに行かせるのを嫌ったためホグワーツに入学したけど、ホグワーツに入学させてくれたことには感謝している。
思っていたのとは少し違うかもしれないが良い友人や先輩と出会うこともできたし学校生活は基本楽しい。
それでも。これだけは声を大にして言いたい。
「組分けはもっとよく考えてしろよ、あのボロ帽子のバカヤロー!!」
騒ぎに気付いてライ先輩の妹が現れてルルーシュ先輩と共同戦線を結ぼうとし、僕とジノの胃に穴があきそうになるまで、そう時間はかからなかった。