ロスカラ・ハリポタクロス短編集   作:そうおう

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時系列は前作と引き続きアズカバンの囚人となっています

・原作と違いバックビークのマルフォイ襲撃事件が起きていない設定なので、緒戦はグリVSスリでここでハリーが吸魂鬼に襲われスリザリンが勝利しております(先輩としてのルルーシュやライと接しているドラコは原作よりもハリーへの嫌がらせや純血主義思想はマシになるでしょうから)

・よってファイアボルトでの初試合であるレイブンクロー戦で守護霊の呪文を使った相手もドラコではなく、ドラコを除くスリザリンキャプテンのフリント達です。
その結果罰則でフリント達は次試合に出場できず結果レイブンクロー・ハッフルパフに大敗しています。

・グリフィンドールチームは原作チェイサーうち、ケイティ・ベルとアリシア・スピネットに代わりスザクとカレンが所属しています。

・ハッフルパフチームは原作にほとんど記載がないためオリジナル要素多めとなります。


クィディッチ グリフィンドール対ハッフルパフ戦

今年度最後の試合にして事実上の決勝戦となるグリフィンドールVSハッフルパフの試合当日の天候は大雨の中での初戦だったスリザリン戦とは打って変って、風らしい風もない気持ちのいいくらいの晴天だった。

 

「ついにこの日が来た」

 

グリフィンドールチームキャプテンのウッドが自分や他のチームメンバーに言った。試合直前にロッカールームでの激励演説はウッドの十八番だ。それでもいつにも増して自分自身にも言い聞かせるような言い方だった。

 

「俺たちはこの日の為に猛特訓を重ねてきた。グリフィンドール史上これほどのチームはなかっただろう」

 

ウッドはまず3人のチェイサーを見る。

 

「我がチームが誇るチェイサー3人はどんな相手からも得点を重ねてきた」

「ここまで来たんだ。楽しんでいつも通りプレイしていこう」

「スザクの言う通りよ。それにここまで来たんだもの、必ず勝ちましょう」

 

チェイサーのスザクとカレンが笑顔でウッドに応えた。キャプテンのウッドが守備の要ならこの二人がグリフィンドールチームの攻撃の中心だ。

 

「俺たちのビーターは迫る全てのブラッジャーを打ちのめしてきた」

「そんなに褒めてくれるなよウッド」

「まあ過大な表現を除いていうなら『殆どの』だけど」

 

フレッドとジョージ―はいつものように冗談めかして返す。この二人が緊張で固まるなんてことが果たして自分のホグワーツ在学中にあるのだろうかと、ハリーは思った。きっとそれはハーマイオニーが宿題を面倒くさがってやらないくらいありえなさそうだ。

 

「そして何より、我々には常に勝利と共にスニッチを手にしてきたシーカーがいる」

「あれ?最初の試合は確か手で、じゃなくって口じゃなかったっけ?」

「そこはわざわざ訂正しなくてもいいんじゃないかしらスザク」

 

スザクともう一人チェイサーであるアンジェリーナ・ジョンソンのやりとりを聞いてハリーは意識を現実にもどす。

 

「それに我らのチームには優秀なキーパーにして名キャプテンもいるからなジョージ―?」

「ああフレッド。クィディッチに対する意気込みがすこーーし高すぎる以外は確かに名キャプテンだな」

 

二人がいつものように軽口を言いつつもウッドの事を褒めている。ウッドもいつものように注意はせず少し照れてるみたいだ。

 

「今日もスニッチを絶対捕ってみせるよ。手でか口でかはわからないけど」

「その意気だぞハリー。スニッチか、然らずんば死かだ」

「おいおい言ってるそばから意気込み高すぎるだろ。」

「それに私たちが30点リードをしてからじゃないとスニッチを捕っても優勝杯はハッフルパフのものよ。いいハリー?それまでは見つけても相手に捕らせないようにするだけよ?」

「わかってるよカレン。この一カ月くらいウッドにずっと言われつづけてるんだ」

 

チームがいい具合に緊張を緩めてると見たウッドは話しを続けた。

 

「だがいいか、くれぐれも油断は禁物だぞ。相手はあのハッフルパフだ。キャプテンのライやシーカーのセドリックを要する強力なチームだ」

「この場にハッフルパフチームを侮ってる奴がいると思ってるのかい、ウッド?」

「カレンもスザクもあっちのキャプテンのライとは親友と言っていい仲だしね」

「そうだ。あのスリザリンのフリントなんかに比べたら優勝を競う最後の相手として不足のない好敵手だが、その分チームの指揮官としても比べられないほどの強敵だ」

 

話しがハッフルパフチームの話題になったことで、それまで笑顔で会話していた皆も少し気を引き締めた。そうだ、これから戦う相手は決して簡単に勝てる相手ではない。

 

「わかってるわよウッド。たとえ相手がライでも……、いえライ達だからこそわたし達は絶対に負けられない。」

 

カレンの言葉は後半、自分自身に言い聞かせているような響きを持っているように思えた。

 

 

※※※

 

 

「よーし、時間だ。行くぞ…!」

 

怒涛のような歓声の中、僕たちはフィールドに進みでていく。観衆は大きく分けて3つに分かれている。胸に深紅のバラ飾りをつけてシンボルであるライオンの描かれた深紅の旗を振ったり、『行け!グリフィンドール!』や『ライオンに優勝杯を!』といった横断幕を掲げて僕たちに声援を与えてくれているグリフィンドール生。一方相対する応援席側では黄色地にシンボルの穴熊の描かれた旗が翻り、『穴熊に栄光を!』などの横断幕を要するハッフルパフ寮生たち。そして残りのスリザリンとレイブンクロー生たちの占める観戦席はレイブンクロー生は純粋に試合を楽しむ生徒たちが中心で、一部がグリフィンドールやハッフルパフの応援をしているようだ。スリザリンは初戦でグリフィンドールに勝利したが次のハッフルパフ戦で大敗をしている為どちらのチームも応援をするつもりはない生徒がほとんどのように見えた(あきらかに一部例外が見えたが見なかったことにしよう)

 

「さあ、まずはグリフィンドールチームの入場です!」

 

いつものように実況解説を行う5年生のグリフィンドール生リー・ジョーダンの声が響いた。

 

「ポッター、クルルギ、シュタットフェルト、ジョンソン、ウィーズリー、ウィーズリー、そしてウッド。グリフィンドールが誇る近年最強のチームです」

 

リーの解説が終わるのとほぼ同時に、カナリア・イエローのユニフォームを着たハッフルパフチームが入場をしてきた。

 

「そして対するハッフルパフチームも入場です。キャプテンのフォーサイス率いるはディゴリー、スミス、ダールトン、ドーリッシュ、アンダーウッド、キャッドワラダー。こちらもグリフィンドールに負けず劣らず素晴らしいチーム」

 

解説を聞いてハッフルパフの応援席の歓声がいっそう大きくなった。その中を両チームのキャプテンが歩み寄っていく。

 

「キャプテンは握手をして!」

 

審判を務めるフーチ先生が合図をする。ウッドとライが互いの手を握りしめた。ライが微笑みそれに返すようにウッドも口元を緩めるのが見えた。

 

「箒の乗って!さーん、にー、…いちっ!」

 

フーチ先生の号令と共に地面を力強く蹴り上げた。それと同時に他の13本の箒が一斉に飛び上がり試合がスタートした。

 

 

※※※

 

 

「全員飛び上がって試合がスタートしました。さて前回試合でグリフィンドールのハリー選手の乗る最新の箒、ファイア・ボルトについて説明いたしましたが他にも目玉となる箒があります。まずはスザク選手の乗るアスプルンド社製試作モデル『ランスロット』。これは最速の箒を目指す同社が次期モデルの試作として作られ」

「ジョーダン、前にも言いましたが箒ではなく試合の解説をしてくれませんか?」

 

リーの箒トークにマクゴナガル先生の声が割り込む。

 

「はい、先生。さてまずはグリフィンドールの攻撃です。グリフィンドールのカレン選手がクアッフルを取りハッフルパフのゴールに向け前進。とここでカレン選手からアンジェリーナ・ジョンソンへとパス!よし!ここでゴールへ!-とだめです、クアッフルはハッフルパフのアルフレッド・ダールトン選手に移りハッフルパフ側の逆撃です」

 

ハッフルパフゴール近くから今度はグリフィンドールのゴール側に多数の箒が向かっていくのが見える。

 

「アルフレッド、凄まじい速さで飛んでいきます。クアッフルがザカリアスに移り、いえまたアルフレッドに戻った。――ウッド止めろ!ダメだ、ゴール!ハッフルパフ先制得点!10対0!」

 

ゴールを決めたアルフレッドがライやザカリアスとハイタッチしつつ、すぐにクアッフルを手に攻め込んでくるグリフィンドールに対応するためにUターンしていく。今度はスザクを軸にした攻撃でハッフルパフゴールに向かっているようだ。対してハッフルパフ側のビーターがスザクにブラッジャーを打ち込む。

 

「ハッフルパフ陣、スザク選手に猛追するが追いつかない!とここでハッフルパフビーターがブラッジャーを打ち込む!あれはリチャード・ドーリッシュ選手でしょうか?ブラッジャーがスザク選手に向けて突き進む!かわせスザク!よし!お見事かわしたスザク選手!そのままゴールエリアに向かい――ゴーール!!グリフィンドール得点、10対10!」

 

試合展開は一進一退の攻防となり、まだスニッチを捕っていいリードがつかないが、いつなっても良いようにスニッチを探すために箒の高度をあげていく。後ろにはピタリとくっつくようにセドリックの気配を感じていた。

 

 

※※※

 

 

グリフィンドール応援席では目の前での攻防に皆声を枯らさんとばかりに声援を送っている。

 

「ハリーはかなり高いところまで上がったけど、スニッチはまだ見つけられていないかな」

「ロン、ウッドがハリーに何度も言っていたのを聞いていなかったの?グリフィンドールが30点リードをしてからでないとハリーがスニッチを捕っても負けなのよ?」

 

双眼鏡を顔につけながらかなり上の方を仰ぎ見ているロンの横でハーマイオニーが言った。

 

「そんなことはわかってるさハーマイオニー。それでも早いうちからスニッチを見つけておかないと。ハッフルパフ側はスニッチを見つけたらいつでも捕れるんだから」

「それはそうね。でもセドリックはハリーの後ろをマークしてるみたいよ」

「どうもライ達はスニッチ狙いの速攻でなく長期戦も覚悟の正々堂々の正面決戦みたいだなー」

 

ロンとハーマイオニーの会話に割り込んできたのは同じグリフィンドール生で6年生の先輩リヴァルだ。首から紐を回して抱えている箱にはたくさんのガリオン金貨やシックル銀貨が入っている。

 

「リヴァル。その抱えているのはなんだい?」

「もしかしなくてもまた賭けの元締めをしているの?前にも言ったけど校則違反のはずよ」

「そーお堅いことを言うなよハーマイオニー。ただでさえフレッドジョージーもリーもクィディッチの時は忙しくて俺のワンオペで大変なのよ?それに今回は監督性であらせられるパーシー様のお墨付きを得てるのだ」

 

ジト目でみるハーマイオニーに対しリヴァルは誇るかのように芝居かかった口調で反論する。

 

「パーシーが許可したの?」

「まあ正確には黙認だな。それにしっかりグリフィンドールの優勝に10ガリオン賭けてる」

「まったく……仮にも監督性なのにそれでいいのかしら」

「兄貴、10ガリオンなんて金いつの間に持ってたんだ?」

 

パーシーの賭金を聞いてロンは訝しんだ。

 

「ということでお二人さんも一口どうだい?試合中だけど後輩の誼で特別に受け付けるぞ」

「んー、それじゃあグリフィンドールが優勝に2シックル」

「もちろん私はパスするわ」

 

即答で断るハーマイオニーに対して、悩みぬいて賭けへの参加を表明したロンが財布から銀貨を2枚リヴァルに渡した。

 

「はーい、参加ありがとうございまーす!」

「あーっ!もうリヴァルったら、仲間内だけじゃなくて後輩のハーマイオニーちゃんやロンくんにまで賭け事させようとしてるの?」

「シャーリー、なんかすごく俺が悪いことをしているみたいな言い方じゃないの。ちゃんと参加不参加はそれぞれの意志でだぜ?」

 

シャーリーに見つかり少しバツの悪そうなリヴァルの反論を聞き流しながらシャーリーはロンとハーマイオニーの隣の席に座った。

 

「ロンくんもダメだよ?同じグリフィンドールの先輩だからってリヴァルの悪い誘いに乗ったら」

「はーい」

「うー、俺の扱いがひどすぎる。俺泣いちゃいそう」

「あら、シャーリーはルルーシュと一緒じゃないの?」

「うん。ルルに一緒に観戦しない?って誘ってみたんだけど、さすがにグリフィンドール側で応援するのだけは勘弁してくださいってドラコくんに涙目で言われちゃってね」

 

シャーリーは少し残念そうにハーマイオニーに答えた。

 

「ライからアルフレッドにクアッフルがパスされる!と続いてザカリアスにいってシュー!しかしブラッジャーがザカリアスに直撃!これは痛いですがグリフィンドールビーターのナイス妨害です。あれはジョージの方でしょうか?」

 

グリフィンドール応援席の会話をしり目に試合は続く。

 

 

※※※

 

 

 

「試合は膠着状態のまま30対30で同点!グリフィンドールチーム果敢に攻め込むもハッフルパフも負けじと追い上げリードを維持できないでいます」

 

試合の流れは事前にチーム内で共有していたものから概ね外れることのないものとなっている。

 

「セドリック。スニッチはまだ見つからなさそう?」

「すみません先輩。一度見つけたんですが向かった時点でハリーのかく乱とブラッジャーの妨害で見失いました。ただ少なくともハリーもまだ見つけていないようです」

 

僕は一旦攻撃陣形から抜け出してスニッチを探すセドリックと併走飛行しながら状況確認をする。

 

「気にしなくていいよ。スニッチを見失ったのは惜しかったけど、相手も得点のリードをしないとスニッチを捕れないから、それまではこちらに心理的優位がある」

「わかりました。引き続きこっちはハリーをマークしつつスニッチ探しにあたります」

 

「アルフレッド選手のシュート!しかしこれもキーパーウッドにブロックされました!クアッフルを拾ったのはカレン!」

 

リーの実況を耳にした瞬間にセドリックとの会話を中断して急ぎ自陣側へと急速旋回する。ちょうど反対側をカレンとスザクが交互にパスをしつつゴールに向かっていくのが見える。懸命にアルフレッドとザカリアスがクアッフルの奪取と妨害をしているが勢いに変化は見られない。

 

「リチャード!ブラッジャーをスザクの予測進路少し右側へ打ち込むんだ!そうすればカレンとのパスを阻害できるはずだ。ジェーンは二人のウィーズリーがもう一方のブラッジャーでアルフレッド達に攻撃できないよう間に割り込んで打ち返しを頼む」

 

僕はビーターのリチャードとジェーンに指示を出しつつスザクの正面に回りつつやや右側下方に進路を変える。

 

「スザク選手とカレン選手の交互パスによってハッフルパフを上手くかく乱しています。スザク、カレン、スザク!そしてカレ、ここでまたリチャードによる的確なブラッジャーによる妨害!交互パスが止まりクアッフルはスザクが保持しています!」

 

指示通り、いやそれ以上のタイミングの的確さでリチャードが打ち込んだブラッジャーが自身の右側を飛行するカレンへとパスしようとしたスザクの飛行進路上に飛んでいったことでブラッジャーにあたりはしなくてもスザクはパスをつなげる事に失敗した。

 

「ここまでは予想通り。そしてカレンにパスができないのならば自分自身でゴールに向かう。と見せて本命は左後方にいるアンジェリーナへのパス!」

 

スザクが正面を向いたままクアッフルを左後方に手放すように投げた瞬間。僕はそのスザクの下方側から上昇しつつクアッフルを空中でキャッチする。

 

「え?……しまった!」

 

スザクの驚いた顔をしり目に今度はこちらがグリフィンドールゴールへと猛進する。追いついてきたアルフレッドが横に並ぶ。

 

「私とザカリアスで先輩の護衛と相手チェイサーのブロックをしますから、このままライ先輩が決めてください!」

「わかった、後ろは任せたよ!」

 

会話の終わりと同時に後ろに下がっていくアルフレッド達をおいて僕はさらに箒を加速させていく。

 

「クアッフルは依然ライ選手が持っている。さらに加速してこのままキーパーのウッドとのキャプテン同士の直接対決となるか!」

 

正面上方からブラッジャーが突っ込んでくるが構わず直進を続けつつ箒の進路を右側に少しずつずらす。

 

「フレッドの打ち込んだブラッジャーがライ選手の正面へと直撃!-しない!信じられない!まるでライ選手が透けたかのように直撃するはずのブラッジャーを避けた!ライ、変わらずゴールエリアに直進していきます」

 

左側ギリギリをブラッジャーが擦るような音をさせながら飛び去って行った瞬間は流石にヒヤリとしたが、箒にも自身にも影響はないようだ。そうこうしている内にゴールポストは目の前へと近づき、間に待ち構えるウッドの姿も次第に大きくなる。どのポストに投げるか。

 

「ライ選手直進して中央ポストを狙うか?っと投げた!違う右ポストへだ!キーパーのウッドも右側へと急ぎ飛ぶが、ゴール!ハッフルパフ得点、40対30‼」

 

よし!上手く決められたようだ。しかし喜ぶ間もなくクアッフルはカレンの手に渡る。試合はまだまだ続く。

 

 

※※※

 

 

試合の流れは未だ揺れ動くも主導権を自分たち側が握っていることでハッフルパフ側応援席は大いに盛り上がっていた。

 

「んー、さすがはうちのライちゃん率いるチームねぇ。これはわたしの卒業の年に優勝杯を持たせてもらえるかしら」

 

ハッフルパフ応援席の中心で最も応援に力を入れている最上級生の監督性であるミレイは楽しそうに笑った。もっとも彼女の場合、皆が楽しんでいるのを見るのが一番なので必ずしも優勝への拘りがあるわけではなさそうだが。

 

「わたしはあまりクィディッチには詳しくはないのですが、今のところはライさんたちの方が優勢ということなのですか?」

「そうですね。チェイサー陣を筆頭に突破力ならグリフィンドールチームの方が上ですが、今のところは上手くその勢いを抑え込めています。このまま点数差をつけさせずに長期戦になれば我々ハッフルパフの勝利は揺るがないでしょう」

 

隣に座るナナリーに現在の状況を説明しているのはクラウディオ・ダールトン。今ハッフルパフのチェイサーとして出場しているアルフレッド・ダールトンの義兄弟にあたる人物だ。ちなみに他にも兄弟たちが3人いてそれぞれグリフィンドール・スリザリン・レイブンクローに所属している。

 

「クラウディオも怪我をしてなければライやアルフレッドと一緒に出場してたのにねー」

「はい。まあこればかりは巡りあわせが悪かったと思うしかないですよ」

「お怪我の方はまだ良くはないのですかクラウディオさん?」

「もうほとんど完治しているから大丈夫ですよ。来年こそアルやライ先輩と共に試合にでますよ」

「その意気だぞ若者よ!あーでもわたしは今年で卒業だからクラウディオの雄姿を見れないのは残念ね」

「ミレイさんのかわりにわたしがしっかり応援しますね」

「お二人のご期待に応えられるよう頑張りますね」

 

二人の女子生徒に応えるクラウディオの姿はまるで騎士のようだった。

 

「しかしなぜ先輩は長期戦を選択されたのでしょうか?これまでの試合での得点差を考えればスニッチを捕ることを優先して速攻にかければグリフィンドール側はより不利となったでしょうに」

「それはたぶん、アレでしょうね」

「アレ、ですか?ナナリーさんはわかりますか?」

「いえ、わたしにもわかりません。ミレイさんアレとはなんですか?」

「ズバリ!カレンへの愛よ!」

 

胸をはって自信たっぷりに宣言するミレイに対してクラウディオは固まり、ナナリーは口を手で隠して驚きの表情をみせる。

 

「……ええと、ミレイ先輩?どういうことなのでしょうか?」

「ライとカレン。お互いが気になる恋する年頃。しかし、何の因果か二人は敵同士となってしまう……。戦うしかない、ならばせめて正々堂々と真正面から戦って君の事を受け止めよう!そうしてライは決心して箒で飛び立っていく!という感じかしら」

「いや、それはかなり先輩の脚色というか誇張の入った脚本ではないかと……」

 

真面目に回答するクラウディオを見て笑顔をみせながらミレイは続ける。

 

「まあ今言ったのは冗談だけど。たぶんライはこれがあくまで学校行事のゲームだってことを考えたんじゃないかしら」

「?どういうことですかミレイさん」

「つまりねナナリー。これはただ勝つことだけが目的の決闘とかじゃないんだから、プレイをする自分たちだけでなく、相手チームや観戦する生徒皆が楽しめるのが一番大切ってライは考えたんじゃないってことよ」

「なるほど。プレイヤーとしてだけでなくエンターテイナーとしての観点ということですね」

 

クラウディオが納得したように頷く。

 

「もちろん試合をするからには本気で勝とうとはしているわね。カレンやスザク達に対して礼を欠くような事をする子でもないし、自分の率いるチームやハッフルパフに優勝杯をって気持ちに嘘偽りはないでしょうから」

「それでしたら、なおのことわたし達もライさん達の事を応援しなくちゃですね」

「そのとおりね!よーし皆、我らがハッフルパフチームが優勝できるようにもっともっと元気よく応援するわよ!」

 

ミレイの声を聴いたハッフルパフ生の多くがそこかしこで返事をしつつ「ハッフルパフファイト―!」「その調子その調子!」等とより一層声援をかけていく。

 

「よーしわたし達も応援するわよ!ライー!セドリックー!この調子でハリーもカレンもスザクもまとめて倒しちゃいなさい!」

「アル!俺の分もあわせてゴールにクアッフルを叩き込んでやれ!任せたぞ兄弟!」

 

ミレイもクラウディオもそれぞれの想いを込めて応援をする。

 

「……ライさん、ファイトです!」

 

そしてもちろん、ナナリーも。

 

 

※※※

 

 

寮のカラーである緑色を基調としたローブを着たスリザリン生達の集まる観戦席の一角においてその場所は明らかに浮いていた。そんな中で僕はいつものように思わずにはいられない。どうしてこうなったんだろう。

 

「そこだっ!行けスザク!上方からブラッジャーが来るぞ躱せ!」

 

僕の右側に目を向ければライオンの描かれた赤い旗を手にグリフィンドールを応援している人物がいる。信じられないかもしれないがこの人はスリザリン生で、かつ監督性だ。そして今度は反対側へと顔を向けると。

 

「お兄様―!頑張ってください!今ならスザクさんやカレンさんは右側に集中していますから、逆側に隙があります!」

 

スリザリン生の集まる一角にハッフルパフを応援する横断幕を(しかも通常Verと違い黄色地に大きくライ先輩が描かれ『お兄様に勝利を!』とある一点ものだ)展開してハッフルパフを応援する少女がいる。これまた信じられないだろうがこの子もスリザリン生だ。そしてその間に挟まれるのはスリザリンチームのシーカーを務める僕、ドラコ・マルフォイだ。

 

「ドラコ先輩!先ほどから応援の声が全然聞こえていませんよ?さあ、一緒にもっと大きな声でお兄様を応援しましょう!」

「何を言っているんだサクラ。ドラコは俺と共にグリフィンドールを応援しているんだ。」

「いや……。僕はどっちの応援もしてはいないんだけど」

 

僕の意志など眼中にない自論を主張しているのは同じスリザリンのルルーシュ先輩と、同じくスリザリン寮で僕の1つ下の後輩であるサクラ・S・フォーサイスである。ファミリーネームを見ればわかる通り、ハッフルパフのライ先輩の妹だ。二人の主張に対して反論をするが、どうやら僕の声は届いていないようで口論は続く。

 

「ルルーシュ先輩こそ何を言っているんですか。スリザリンにとっての最大のライバルであり、シーカーでもあるドラコ先輩がグリフィンドールの応援をするはずがないじゃありませんか。だいたい先輩もナナリーのいるハッフルパフ(お兄様)の応援をするべきですよ。」

「ぐっ、た、確かにナナリーの事を想えばハッフルパフを応援すべきかもしれないが。それではライとナナリーがより近づいてしまう恐れがある!だからこそ、ここは何としてもスザクやカレン、そしてハリーに頑張ってもらわなければならないのだ!ライとナナリーが接近するのはサクラ。君にとっても不利益になることのはずだが?」

「そ、それは確かにそうですが。それでもわたしはお兄様の妹としてお兄様を応援するのです!そう例え相手がスリザリンであっても!」

 

口論で互いに打撃を与えつつも二人とも自論を下げるつもりはないようだ。そしてサクラ。スリザリン対ハッフルパフの試合の時に本当にハッフルパフの応援席に紛れてライ先輩の応援をしていたことを、僕はしっかり箒の上から確認しているぞ。

 

「だいたいドラコ。お前たちスリザリンチームがもっとしっかりしていればこんな事にはなっていなかったんだぞ」

「無茶を言わないでくださいよ先輩!チェイサー2人にキーパーが欠けてる状態でどうやってライ先輩率いるハッフルパフに勝てっていうんですか!」

 

ハッフルパフとの試合は思い返したくもない。初戦でイレギュラーがあったとはいえあのグリフィンドールに勝つことができたのに、次のレイブンクロー対グリフィンドール戦の時にキャプテンのフリントやキーパーのブレッチリ―が地上から(吸魂鬼)ディメンターの真似をするというポッターへの嫌がらせをして、それが大失敗の挙句にバレるという醜態をさらしてしまったのだ。結果罰則として参加メンバーのハッフルパフ戦への出場が禁止され、信じられないほどの大敗北をしたスリザリンはまさかの優勝争い最初の脱落チームになってしまった。今ではフリント達罰則組は身内贔屓の強いスリザリン寮内ですら怒りの対象となってしまっている(嫌がらせをしたことへ怒ってる人もいるが、最大派閥はあんな程度の低くバレるのが当たり前の嫌がらせをしたことが狡猾なスリザリンに泥を塗ったという考えのようだ)その反動としてグリフィンドールに勝ったことと、ポッターへの嫌がらせに参加しなかった僕への寮内での評判は上がったが、ポッターへの勝利があんなイレギュラーのおかげというふうなのと合わせて内心モヤっとする。

 

「とにかく!ドラコ先輩はわたしと一緒にお兄様を応援するんです!」

「いや、ドラコは俺と一緒にグリフィンドールを応援するんだ。そうだよなドラコ?」

 

どうやら僕の事をおいて二人の口論は続いていたようで先輩とサクラ、同時に僕に顔を向け決断を迫ってきた。ポッター、この際お前がスニッチを捕ったとしても構わないから。この全く僕に責任のない修羅場から僕を一刻も早く解放してくれ!考えてるのと同時にグリフィンドール側がタイムを要求するのが見えた。

 

 

※※※

 

 

「やはりハッフルパフは難敵だ、こちらの戦術をかなり読まれている」

 

ウッドがまるでペロペロ酸飴を舐めた時のような表情をして言った。

 

「むこうのチェイサーの動きもだけど、ビーターからの攻撃がこっちの動きを完全に読んでいるみたいだ。これだとどうしても連携攻撃に隙ができてしまうね」

「間違いなくライの仕業ね。飛行進路やパスの順番を読まれてるわ。」

 

スザクとカレンも少し疲れを見せつつも状況分析を語る。

 

「俺たちもブラッジャーで援護をしようとしてはいるんだけどなあ。」

「こっちが攻めてる時は必ず相手さんのビーターの片方が守備的に動いてくるんだよな。」

「そういえば相手のビーターのジェーンだっけ?なんだかカレンに対して打ち込む時だけ特に強いような」

「おおうスザクよ。わが校のモットー『眠れるドラゴンをくすぐるべからず』ですぞ」

「ジョージの言う通り。女心を敵に回すは正しくドラゴンを敵に回すようなものさ」

 

フレッド・ジョージの会話にスザクが疑問を呈してそれにからかうように返す。見慣れた光景が挟まることで皆少しリラックスしたようだ。ただカレンは少しムッとしている気がするけど。

 

「よし、タイムの時間もあまり長くは取れない。これ以上の長期戦はこちらに不利だ。ここは一気に勝負にでるぞ」

「それは少し危険な賭けじゃないウッド?」

 

ウッドの積極策にアンジェリーナは懸念をしめす。

 

「確かにリスクはある。だがこのままズルズル長引けば先に消耗するのはこっちだ。ならばリスキーでも仕掛けようと思う」

「僕もウッドの意見に賛成だよ。ここは多少強引でも一気に点数を取ってリードを確保しよう」

「そうね。ライにはわたし達の行動パターンを読まれているけど。逆にライの考えを予想できるのもわたし達だけよ。少しの間なら主導権を握れるわ」

 

スザクとカレンがウッドの意見に賛成する。フレッドとジョージも頷いている。皆を見たウッドは最後に僕に顔をむけた。

 

「ハリー、あとは君次第だ。タイミングもあるが、我々がリードを維持できる時間はそれほど長くはない。その間にスニッチをなんとしても捕るんだ」

「わかったよ。得点のリードができた時点で僕も勝負にでるよ」

「任せたぞハリー」

 

ウッドとのやりとりが終わったちょうどその時、フーチ先生が近づいてくるのが見えた。試合再開の時だ。

 

 

※※※

 

 

「ゴール!ここにきてグリフィンドール立て続けの得点です!決めたのはスザク、40対70でグリフィンドールリード‼」

 

タイムを終えてからグリフィンドールチームの勢いがさらに増している。立て続けに得点を入れられリードは30点。あっという間にスニッチ獲得時に逆転されてしまう危険ラインに入ってしまった。どうやら僕がスザク達の考えを読んだように、スザク達も僕の考えを読んでそれを上回る動きにシフトしたようだ。やっぱり簡単に勝たせてくれる相手ではない。

 

「――ここでシーカーに動きが!ハリー、セドリック共に急速降下していくぞ。二人の視線の先にあるのは……スニッチだ!よし行けハリーここで決めろ!」

 

リーの解説を響いた瞬間、僕を含めた全プレイヤーが一際緊張度をあげた。マズい!今スニッチを捕られればそれは僕たちの敗北を意味する。今、クアッフルを保持しているのは…、グリフィンドールのアンジェリーナか。

「ジェーン!リチャード!挽回のチャンスは今しかない!連続攻撃でアンジェリーナの隙を作ってくれ!」

 

二人からの返事を待たずに僕は箒をとばす。二人はしっかりと僕の意を汲んでくれたようで背後から僕を通り過ぎてブラッジャーが2つ飛び越していった。ジェーンとリチャードが連続して打ち込んだブラッジャーによって姿勢を崩したアンジェリーナからクアッフルを奪いとったザカリアスからアルフレッドにパスが繋がり、そして僕へとつながる。ハリーとセドリック、どちらが捕るにしろもう時間的猶予はない。

 

「ライ先輩!あとはお願いします!」

「ありがとうアルフレッド!スザク達への対応は任せた」

 

両チームのビーターは互いにシーカーの妨害をさせないようにするために、打撃戦の様相をていしている。そしてグリフィンドールチームのチェイサーはアルフレッド達のブロックで僕に追いつくには時間が足りない。ここで決める!そう考えた僕は箒の加速を限界まで引き上げて突き進む。目の前で待ち構えるウッド。狙いを左ポストに定め投げる。

 

「何っ!?」

 

そう、ここまでの動きはフェイントだ。いつものウッドならこんな咄嗟のフェイントには簡単には引っかからないだろうが、優勝杯に手が届くかどうかの刹那。そこに賭けた勝負に勝った!ウッドとクロスするように飛び込んだ僕は急減速と共に今度は右側へ空中でドリフトするように反転して先ほどとは反対側からゴールに正対する。ウッドはもう間に合わない。ここで決めればたとえセドリックがスニッチを捕れなくても僕たちの勝ちだ。そう確信してクアッフルを投げようとした瞬間…。

 

 

「え?」

 

眼に映ったのはとても美しい紅色だった。まるで空色の淡い青とコントラストを構成するかのように鮮やかに映える赤い色に僕は一瞬目を奪われ投げる動作を躊躇してしまった。それはカレンだった。

 

「ライーッ!」

 

耳に届いた声と同時に意識を取り戻した僕はすぐさまクアッフルを投げようとしたが、衝突するかと思うほどに速度を出してこちらに飛び込んでくるカレンと交差する瞬間に僕の手にあったクアッフルはゴールへと投擲されることなくカレンに奪われてしまう。そして

 

「やった!やりやがったぜハリー!ハリーポッターがスニッチを獲得!150点の得点と共に試合終了!40対220でグリフィンドールの勝利。そして、グリフィンドールの優勝だ!イヤッホー!!」

 

僕とカレンの戦いが終わるのとほぼ同じくしてシーカー同士の戦いもハリーが制したようだ。解説席では熱狂の中アナウンスを続けるリーの隣で自分の寮の久方ぶりの優勝に号泣しているマクゴナガル先生の姿も見える。グリフィンドールの応援席ではそこかしこで赤い旗や帽子が空を舞い互いに抱きしめあって喜びを共有しているようだ。

 

「先輩。すみませんあと一歩及ばなかったです」

 

僕の周りに集まってきたチームメイトの中からセドリックが悔しさを滲ませながらも申し訳なさそうに謝罪をしてきた。

 

「謝ることなんて何もないよセドリック。僕こそ最後の最後で決めることができなかったんだ。皆、本当にすまない」

「そ、そんな先輩、謝らないでください!セドリックもだ!私たち全員全力でプレイしての結果なんですから」

「ありがとうアルフレッド。そうだね、僕たちは敗れはしたけど全力で戦いぬいたんだ。胸をはってハッフルパフの皆の所へ行こう!それでもし責められたらその時は、お詫びに僕たちでケーキでも振舞おうか」

 

僕の言葉を聞いてチームの皆はハッフルパフの応援席へと飛んでいく。僕も向かおうとしたが、グリフィンドールチームの姿が目に映った。スニッチを捕ったハリーの方をフレッドとジョージがバシリ、バシリと二度叩いている。男泣きに泣いているウッドのことをアンジェリーナやスザクが笑っていてその隣でハリーに何か言おうとしていたカレンと目があった。

 

(おめでとう)

 

声にはださず口の動きだけでの言葉だったがカレンには伝わったようだった。こちらに嬉しそうな笑顔を見せるとカレンはハリーへ話しかけにもどった。それを見届けて僕も箒をハッフルパフ応援席へと進めた。

 

(ああ、やれるだけのことはやったから未練はないけど。勝ちたかったな)

 

自分たちに勝利したグリフィンドールチームへの称賛の思い、全力を出してこのチームで戦えたことへの満足感、それでも勝つことができなかったことへの悔しさがライの心を占めていた。そして

 

(もしも僕たちが同じチームだったら……)

 

ライは一瞬頭をよぎったとりとめもない考えを振り払うかのように一度頭を左右に振る。それはもしかしたら本人も気づかないようなわずかばかりの、でも間違いなく心の中にある嫉妬ともいえないような微笑ましい気持ちなのかもしれなかった。

 

 

 

 

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