「お、いたいた!ライここにいたのかよ。ずっと探していたんだぜ」
サクラとナナリーと別れて課題を共に仕上げる約束をしていたルルーシュとスザクの待つハグリッドの小屋に向かうため、玄関ホールから出ようとしているとむこうからリヴァルが駆けてきた。後ろには同じグリフィンドールのフレッドとジョージも一緒のようだ。
「やあリヴァル、それにフレッドとジョージも何か僕に用かな?」
「なにか用かって?おいおいラーイ、それはとっても薄情な台詞じゃないか?」
「そうだぜライ。俺たちとライの仲なのに、今日そのセリフを言うのは薄情だ」
「つまり、俺とウィーズリー兄弟が言いたいのはだ。誕生日おめでとう!」
どうやら3人も僕の誕生日を祝ってくれるためにずっと僕のことを探していたようだ。
「ありがとう!そのために僕を探してくれていたんだね」
「何を仰られる!寮こそ違えど常日頃、我々はライを名誉グリフィンドール生として実の先輩のように崇めてるんだぜ?」
「何時でもハッフルパフから亡命してこられるよう寮内にベッドだって用意してるしな」
ハッフルパフの皆が聞いたら怒り出しそうな冗談を言う兄弟をしり目にリヴァルがライに手渡したのは見慣れないお菓子がいくつも入った袋だった。
「このお菓子は何だいリヴァル?」
「これは俺たちからの誕生日プレゼントさ。その名も」
「「ずる休みスナックボックス!」」
3人は待ってましたとばかりに商品の紹介をする敏腕セールスマンのように語りだした。
「これはなライ。双子が考案して」
「我らグリフィンドールの誇る悪戯師達が試行錯誤の末作り出した」
「退屈な授業をずらかるための素晴らしい味方さ!」
使い方や効能の説明をうけ、改めてフレッド・ジョージの悪戯にかける情熱とそれを実現する才能に目を見張った。
「プレゼントしておいてなんだけど、実はこれまだ試作品なんだよ」
「もちろん試作品と言っても効果や安全性はお墨付きだぜ?」
「その点は俺や双子が身を張って確認しているからね」
「何かまだ改良が必要なのかい?」
「効果は完成といっていいんだけど、商品として安定供給をするには作成工程や費用がなー」
「まだまだその点は改良の余地がふんだんにあるのさ」
どうやらとても貴重なものをもらってしまったようだ。改めてお礼を言うと3人は
「いいのさ。ライにはいつも世話になってるからな」
「優等生のライは使う機会がないかもしれないけど、まあいざという時に使ってみてくれよな」
「あと一つお願いできるならライの写真を一枚撮らせてもらえればありがたいかな」
とのことだった。写真を撮られることを了承し撮影が終了すると3人は満足そうに校内に戻っていった。3人と別れ校庭に出て歩いていると、突然背後からとても大きな爆発音がした。振り返ると大きな花火が空に打ちあがり炸裂したところだった。蒼いドラゴンの形をした閃光とその下に輝く銀色の文字で【Happy Birthday Lie】と浮かび上がっている。これは間違いなく3人がマクゴナガル先生からの罰則を受ける未来が予言者でもないライにも視えたが、そこまでしてでも自分の誕生日にサプライズを用意してくれたリヴァル達に再度感謝の念を思いながらハグリッドの小屋へと足を進めるのだった。
……ライは知らない。この二日後、あるグリフィンドール生の誕生日を祝うために3人組が再び花火を打ち上げることを。その花火がその時写真に撮られた自分の笑顔と共にその生徒への祝福の言葉が炸裂することを。
※※※
ハグリッドの小屋に着くとルルーシュとスザクは既に到着していた。到着そうそうハグリッドがプレゼントのお手製ケーキと共に出迎えてくれた。しばらく歓談をしたあと、課題の邪魔をしちゃなんねえと言って愛犬のファングと共に出かけて行った。よって今はルルーシュとスザクと3人で課題中だ。
「スザク、そこの記述間違っているよ。生ける屍の水薬の最終工程は薬を時計回りでなく反時計回りに撹拌だよ」
「あれ、そうだっけ?」
「そうだな。それに催眠豆を入れたあとの段階の色はライラック色だ。赤茶色じゃないぞ」
今はスザクに出された生ける屍の水薬についてのレポートをルルーシュと一緒に添削している。
「でも教科書の記述だとそうだけど実際に作るとなると記述通りだとうまくできないよね」
「確かにそうだな。スネイプ先生に聞いたら撹拌は7回毎に一回時計回りの撹拌を入れると良いと言っていたな」
「え?そんなことを言っていたのか。僕が聞きに行ったときは特にアドバイスはもらえなかったんだけどな」
「それはしかたないよライ。スネイプ先生はスリザリン生には親切だけど他の寮へは基本塩対応だからね。」
そんなふうに雑談も交えながらレポートを進めていき、ようやく終わりとなろうとしていた頃
コンコン
ハグリッドの小屋の扉がノックされる。3人で顔を見合わせる。目線での譲り合い会話の結果、スザクが代表して対応することとなった。スザクがゆっくりと扉を開けると
「ユフィ?どうしたんだい?」
「こんにちはスザク、ルルーシュとライもごきげんよう」
扉の前に立っていたのはユフィだった。ぼーっとしたまま立っているスザクの横を通り抜けて部屋に入ったユフィは椅子に座った。
「ライの事を探していてシャーリーさんにお伺いしたらこちらでスザクとルルーシュと一緒に課題をされているとお聞きしたので、来ちゃいました!」
「僕を?」
「今日ライを探してといったらお前の誕生日からみしかないだろう」
「そうですよライ。まずは私からお誕生日おめでとうございます」
「ありがとうユフィ」
ユフィも自分の事をわざわざ探してまでお祝いの言葉を言ってくれたことにお礼をいった。けれど「まずは」というのはどういうことだろう。
「ん?まずは、とはどういうことなんだユフィ?」
ルルーシュも同じ疑問をもったようでユフィに聞く。
「それはですね。こういうものが私の下に届いたのでライに渡そうと思いまして」
そう言ってユフィが取り出したのは緑色の封筒だった。
「これは?」
「まさか吠えメールか?いや、確かあれは赤い色をしていたはずだな」
ルルーシュと何だろうと考えていると、突然封筒が空中に舞上がり開封されると同時に……
『あー、聞こえているかな!ライ!無事に郵便は届いているかな!』
封筒は小屋を揺るがすほどの大きな声で喋りだす。この声は、ノネットさん?
『まずはライ、誕生日おめでとう!久しぶりだな、ちゃんと覚えているか?お前さんたちの防衛術の先生だったノネットさんだぞ!』
やっぱりノネットさんだ。ノネットさんは二年時に闇の魔術に対する防衛術の臨時講師として一年間赴任していた人だ。本職は魔法省で闇祓いをしている。
『さて、伝え聞いた話によると今日はお前の誕生日だとのことじゃないか。わたしに教えずにいたなんて水臭いじゃないか!本当は直接ホグワーツに乗り込んで祝ってやりたいところなんだが、これでなかなか忙しい身でな。次善の手段としてこの手紙を書いたんだ』
『エニアグラム卿、やはり私も書くというのは些か気が引けるのですが』
「ん?この声は姉上じゃないか?」
「はい!この手紙自体はお姉さまのフクロウが運んできたんですよ」
こんどはユフィの姉で同じく二年時に臨時講師としてお世話になったコーネリアさんの声だ。親戚であるルルーシュにとっても実の姉のような存在だ。
『ハハハ、そんなふうに照れずにどうぞ喋ってください』
『う、うむ……。ライよ、今日はお前の生まれた日と聞いた。周囲の皆から祝われていることだろう。だが!その幸福に浸って自己鍛錬を怠り、信念なき脆弱者へと堕落するようなことのないように、今日という一日が過ぎたら気を引き締めて学業に励むことを忘れないようにするのだぞ!』
先生としてお世話になった時と変わらずコーネリアさんは自身にも他人にも厳しい人だ。だけれど。
『フフフ、せっかくの誕生日の祝いのメッセージなのですから。少しは励ましの言葉もかけてあげてくださいよ』
『……コホン。一度しか言わないのでよく聞くのだぞ。……誕生日おめでとう。お前の事だ、先に私が言ったことは既に己でもよく理解していることと思う。だから、今日一日はお前がこれまで成してきたものを甘受せよ。そしてこれからもその道を進み続け、一日も早くここへ来い。お前のような奴がここには必要だ、待っているぞ』
だけれど、決して厳しいだけでなく固い信念と優しさを持っている人だということも知っている。ありがとうございます、コーネリアさん。
「まったく姉上はライの卒業後の進路は闇祓いともう決定事項のように思ってるんじゃないか」
「お姉さまは普段は口に出されなくともライやスザクの事をすごく買っていますからね。もちろんルルーシュのことも」
「それは、光栄なことではあるけど、同時に大きなプレッシャーでもあるね」
再生される封筒からの会話を聞きルルーシュ、スザク、ユフィは苦笑しながら会話をしている。
『急務につきこの執筆には参加できなかったがダールトンも、「息子たちがいつも世話になっているな。感謝する、これからも励めよ?」と言っていた。お前を気にかけている者が大勢いるということを覚えておくことだ。……私からは以上だ』
『もちろん、その大勢の者の中に我々二人も入っているということだぞ?』
『エニアグラム卿!』
『アハハハ!申し訳ありません。ライ、来年の誕生日こそ直接祝いに行くから楽しみにしていてくれよ?それでは、ごきげんよう』
そう言うと話していた便箋は元の通りに折りたたまれ封筒の中に入る。と思ったら後ろからもう一枚便箋が飛び出してきた。
『わるいわるい、肝心の事を忘れていたな。同封して私たちからの誕生日プレゼントを贈った。かくれん防止器だ。だがただのかくれん防止器じゃないぞ?うちの闇祓い局の人間用に改良を加えた特注品だ。販売されているものより更に使い勝手がいいぞ!』
もう一枚の便箋が語り終えると同時にポンッ、という音と共に僕の手の上に落ちてきたのはガラス製の小さなコマのような道具だった。これはかくれん防止器といい、持ち主の周りに怪しい人物が接近したり、闇の魔術が使われた時に音と光を出しながら回る防犯グッズだ。
「姉上とエニアグラム卿に先を越されたような形になったがライ。俺たちからもプレゼントがあるんだ」
「タイミングがおそくなったけど誕生日おめでとう!」
そういうと二人はそれぞれに用意していたプレゼントであろう本を手渡してくれた。まずはルルーシュから。深緑色の革で装丁されている表紙に【実践的防衛術と闇の魔術に対するその使用法】とある。
「この本は!」
「この本、前から読みたがっていただろう?」
「そうだけど、この本は図書室にもない珍しい本じゃないか!いったいどうやって?」
「フッ、俺にかかれば稀覯本の一冊や二冊を手に入れることなど造作もないさ」
ルルーシュはそう言うがホグワーツに居ながら貴重な本を所有する書店等を調べ購入し学校に届くよう段取りを整えるのは決して楽なことじゃなかったろう。
「なに、お前には俺自身いつも世話になっているし、遺憾ではあるが寮が異なることで傍にいる事のできないナナリーにもよくしてもらってるからな」
「ありがとう、ルルーシュ。僕の方こそルルーシュにもナナリーにもいつも助けられているよ」
「それじゃ次は僕の番だね。ライ、僕からはこの本を贈らせてもらうね」
スザクがそういってくれた本は空色のカバーの中心に箒と日本に住む魔法生物である天狗のイラストが描かれた日本語の本だった。
「【高度飛行術のすすめ】っていうタイトルなんだけどクィディッチ日本代表チームの監修で書かれた本なんだ。日本語で書かれてる本だけどライなら問題なく読むことができると思って」
「イギリスではなかなか読めない本だね、ありがとうスザク。でもいいのか?これから対戦する相手チームに箒の飛行術に関する本をあげて」
お礼を述べつつ僕が少し意地悪にも聞こえる質問をスザクにすると、一瞬きょとんとした顔をしつつすぐにいつもの人好きのする笑顔をした。
「大丈夫だよ。その本は僕ももう読んでいるし、たぶんカレンも読んだことがあるんじゃないかな。それにたとえクィディッチの試合が控えていても、友達にプレゼントしちゃいけない理由にはならないさ」
「そういうことなら遠慮なく読まさせてもらうよ。ごめんねスザク、せっかくプレゼントしてくれたものに対してつまらない事を気にしてしまって」
「いいんだよ、クィディッチで戦うからには正々堂々フェアプレイをしようって思ったからだろ?僕も同じ気持ちさ。いい試合にしよう」
「ああ、こちらこそよろしく。だけど勝つのはこちらだ」
「ハハハ、僕たちも負けるつもりはないよ?」
そうやって僕とスザクがクィディッチの話しで火がついていると、ルルーシュが何かを決心したかのように表情を引き締めていた。
「こういう機会だから言っておく。俺はこの学園で得たものの中で一番はスザクとライ。お前たち二人と共に過ごせていることだ。」
「ルルーシュ?」
「ライとスザク、そしてこの俺。この3人が共にあたってできないことはない。俺はそう確信している。……だから、これからもよろしく頼む」
突然の事に僕もスザクも、聞いていたユフィも驚きを隠せないが、だんだんと笑いが漏れてきてそれは大きな笑い声にかわった。ルルーシュは「なんだ、人が真面目に話しているというに!」と怒っているが、それでも笑い声は絶えない。
ルルーシュの言う通りだ、僕たち3人が一緒ならできないことはなにもないだろう。
※※※
プレゼントを貰い課題も無事に終えた僕たちはハグリッドにお礼を言い学校へと戻った。
夕食を済ませて談話室に戻ろうとした時だった。スリザリンのテーブルからドラコがやってきた。
「ライ先輩こんばんは。少し時間いいですか?」
「こんばんは、ドラコ。どうかしたのかい?ルルーシュを探しているとかかな?」
「いえ、今日は先輩の誕生日だとポッター達が話しているのを聞いたんですけど、そうなんですか?」
「ああ、実はそうなんだ」
「やっぱりそうだったんですね。おめでとうございます。」
「ありがとう!」
「もう少し早くに知っていればちゃんとプレゼントを用意できたんですが……」
「そんな気を使ってくれなくていいんだよ?僕は声をかけてもらえただけで嬉しいし」
「いえ、ここでプレゼントも用意しなかったとあれば純血一族としての名が廃れます。それにポッターやウィーズリーはちゃんと先輩に渡しているのに僕は渡さないなんてそんなこと許されません!」
「アハハハ……」
ハリーやロンへの対抗心もあるが、それ以上に家族や友人など身内には特に情が深い目の前の後輩はそう宣言すると当たりを見まわし、誰も僕たちに注意を向けていないことを確認すると懐から光沢のあるねずみ色の布のようなものを取り出した。
「本当はちゃんと先輩へのプレゼント用に用意したかったんですけど、ちょうど父上にお願いしていたものが届いたので、よければこれを受け取ってください」
「ドラコ、これはもしかして……透明マントかい?」
透明マント。身にまとうことで使用者の姿を透明にして周りの人間からは全く見えないようにできる魔法道具だ。僕の身近な人だとハリーもこのマントを持っているそうだ。
「ポッターが学校に持ち込んでいることは知っていましたから、父上に頼んで僕も持ち込んだんです。あ、もちろん新品ですよ」
「これってすごく高価な品なんだろう?それにお父さんにお願いしたものなのにいいのかい?」
「透明マント自体は家にも何枚もあるので大丈夫ですよ。それに父上もライ先輩への誕生日プレゼントにと理由を聞いたらわかってくれますから」
「ポッター達が何をプレゼントしたかは知りませんけど、これで間違いなく僕のプレゼントの方が凄いですよね!」
「ええと……、他の人と比べるのは良くないことだと僕は思うけど、このプレゼントはとても嬉しかったよ」
僕がそういうとドラコは大広間の真ん中でガッツポーズをしていた。スリザリン生らしい、またはスリザリン生らしくはない?勝ち誇ったかのような笑みを浮かべながら。
※※※
ドラコと別れ、談話室に戻った僕はセドリックやナナリー、アルフレッド達と雑談をしていた。やがて時間が消灯時間の10時に近づくにつれて、一人また一人と寝室へと入っていった。僕ももうそろそろ寝ようかな。そう思いつつ小さな欠伸をした時だった。ポンッとい音と共に目の前に突然姿を現したのは一人の屋敷しもべ妖精だった。
「ああ、よかった!ライ・フォーサイス、まだ起きてらっしゃいました!」
「ドビー、どうしたんだい!?」
かつてドラコの家に仕え、今はわけあってホグワーツの厨房で働いているドビーだった。
「はい。ドビーめはライ・フォーサイスへのお手紙を届けてほしいようお願いされたのです!」
そういうとドビーは小さな封筒を渡してくれた。
「こんな遅い時間に、どうもありがとうねドビー」
「いえドビーはハリーポッターや皆様のお役に立ててとても嬉しいのです!それでは、失礼いたします!」
そう言うとドビーは現れた時と同じくポンッという音と共に姿をくらました。ドビーが去って僕はすぐに届いた封筒の中身を読んだ。これは……。
「……さっそくプレゼント、使わさせてもらうねドラコ」
ホグワーツ校内で一番高い塔である天文塔。満天の星空が良く見えるその場所は、この時間は当然誰もいない。はずなのだが、誰もいないはずの時間に一人の女子生徒の姿があった。
「ッ!誰かいるの?」
女子生徒は何かに気付いたのか小声で呼びかける。
「僕だよ、カレン」
そういってマントを脱いだことでライの姿は他者からも見えるようになった。
「よかった、ライだったのね。その透明マントはどうしたの?」
「ドラコがね、僕にってくれたんだ。カレンこそどうやって寮を抜け出したんだ?」
「私も透明マントをね。ハリーにお願いして借りたの」
そういうとカレンも手に持っていた透明マントを見せた。
「ごめんなさい。消灯時間も過ぎているのにこんな場所に来てもらって」
「いやぜんぜん構わないさ。ヒヤヒヤもしたけどちょっと楽しくもあった」
そういってライは笑った。
「それでカレン。いったいどうしたんだい?」
ライは質問したが、なぜカレンが自分のことを呼び出したのか、凡その答えは出ていた。今日一日をいろんな人と過ごしたのだからわからないことはないのだ。
「えっとね……。今日は、いや今日もあともう少しで終わっちゃうのだけれど。本当はもっと早くにと思っていたんだけれど、だから絶対今日中にって」
だがそれに対してのカレンの答えは緊張をしているのか、なんとも容量を得ないものだった。
「カレン?」
ライに名前を呼ばれたことで我にかえったのか、カレンは一度深呼吸をして会話を再開した。
「あのね。今日はライの誕生日でしょ?本当はもっと早くに、一番にライに会いに行こうと思っていたんだけれど、ハリー達やハッフルパフの後輩達にライが囲まれているのを見てタイミングを図っていたらどんどん遅くなっちゃったの。まずはその事を謝らせて、ごめんなさい」
「そんな謝ったりしないでくれ。何もカレンは悪くないじゃないか!」
「……ありがとう。それじゃあ、一番最後になってしまったけど。ライ、お誕生日おめでとう」
カレンは笑顔でライに伝えた。一番に言いたかった言葉を。
「ありがとう、カレン。順番なんか関係ないよ。最後でも、いやどのタイミングででもこの嬉しいっていう僕の気持ちは変わらないよ」
ライも笑顔で伝えた。変わらないその言葉を。二人で笑顔で見つめあう時間。それに気恥ずかしさを覚えたのか。ほとんど同時に相手を想う笑顔を苦笑に変えて会話を続ける。
「それでね。私からのプレゼントがあるの。受け取ってくれるかしら」
カレンはそう言いながら赤い円盤のようなものをライに手渡した。よく見るとその赤い面は裏面のようであり、表面は鏡になっていた。
「これは……」
「これはね両面鏡っていう道具なの。二対でセットの道具でね、もう一枚はこっち」
話しながらカレンが出したものは同じ形の鏡だった。こちらは裏面が青色なのが違いだ。
「この鏡はね、もう一方の鏡の持ち主の名前を鏡に呼びかけるとお互いの姿を相手の鏡に写しだして、離れたところにいても相手の顔を見て話すことができる道具なのよ」
「この鏡の片方を、もしもよければライに持っていてほしいの」
カレンは顔を少し赤らめながらも話しを続ける。
「私たち、寮が違うからどうしても授業だったりスケジュールだったりのせいでいつも一緒にいられたり、会えない時もあるでしょ?そういう時でもライとお話できたり、顔を見る事ができたらいいなと思って」
「……」
「ライへのプレゼントなのに、自分がしたいからって理由のプレゼントになったの。ごめんなさい、ライの事を考えてのプレゼントじゃないわよね」
「……」
「ライ?」
自分が話しているあいだ、ずっと無言になっているライに声をかけるカレン。
「……驚いた」
「!そ、そうよねプレゼントなのに自分のためのものを贈ろうとするなんて」
「いや、そうじゃなくてね」
そう言ってライが取り出したのは、カレンがプレゼントとして用意したものと瓜二つの両面鏡だった。
「これって!」
「実は僕も準備していたんだ。明後日のカレンの誕生日プレゼントにと思って」
「‼」
「でも、僕がカレンと離れている時でも一緒にいたいっていう理由でプレゼントすることに、カレンはどう思うかな?って悩んでいたんだ。」
そういってライは頬をかきながら笑った。
「だからカレンが両面鏡を見せてくれた時、とても驚いたし、すっごく嬉しかったんだ。カレンも僕と同じ気持ちだったんだって」
「ライ……」
「もちろん鏡の片方を喜んで受け取らせてもらうよ。これからもずっと宜しくねカレン」
「……ええ、こちらこそよろしくね、ライ」
そうして二人はどちらからともなく抱きしめあう。相手の鼓動が聞こえるように。相手に想いが伝わるように。
「呼び出した張本人が言うことじゃないけど、校則を破って夜間にずっとこうしていていいのかしら?」
「校則は守らなくちゃいけないルールだけれど。今はもう少しこうしていたいかな。こうしてカレンと一緒にいたい」
「……私もよライ」
そして互いの唇が近づきキスをする。
やがてその唇同士が離れ互いを見つめあう中、カレンは改めてと微笑みながらいい言葉を紡ぐ。
お誕生日おめでとうライ。生まれてきてくれて、私と出会ってくれてありがとう。