私は聖女じゃねえんですよ   作:苦闘点

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 セーフ!

 過去ルドラもルシアも原作にほとんど描写がないから、上手く書けてるか分かりません。今後原作をちゃんと読んで修正入るかもしれません。先に謝っておきます、ごめんなさい!


第10節 ナスカ王国

 

 

 さて、悠然と村を出た俺であったが、向かっているのは俺が住む教会である。

 

 ここからナスカ王国までは徒歩で数ヶ月はかかる。俺は魔法で短縮可能だが、それでもかなり疲れるのだ。

 なので、ルドラに迎えを頼んだ。以前来た時に元素魔法:拠点移動(ワープポータル)で俺の教会に転移できるようにしていたらしいので、体良く使わせてもらおう。

 

 

 ちなみに、俺の教会はここに残すことにした。

 ルドラに「何とかこの教会ごと転移できませんかね」と相談してみたが、「転移自体はできるが、王都に余ってる土地となると城から遠い。却下」とあえなく言われてしまった。ケチ臭い王子様だ。

 

 まあ、この教会は村以上にマジな聖域になっているので、魔物除けとして置いていくのも吝かでは無い。無断侵入だけが心配なのだが、それは今日ルドラが持ってくるもので解決するそうだ。

 一体何を持ってくるのだろうか。

 

 教会に着いた俺は、長年連れ添ってきた教会をソッと撫でた。

 

 

「そうだ、神父様にも言っておかないと」

 

 

 庭にポツンと建った小さなお墓の前に膝をつく。

 この下に神父様は居ないけど、何事も形が大事なんだ。

 

 

「ちょっと離れますけど、元はと言えば神父様が原因ですからね。悪く思わないでくださいよ。……行ってきます」

 

 

 さて、これでもういつ離れても問題無くなったわけだが。ルドラはいつ来るのかね。

 なんて思ってると、玄関前に青白い魔法陣が浮かび上がった。転移してきたのはルドラと、桜金色(プラチナピンク)の長髪をなびかせた少女だ。

 

 年は俺より少し下くらいかな。綺麗な蒼い瞳がよく映えた美少女だ。格好からして魔法使いっぽい。

 

 

「お、来てんな」

 

「この方が、ヴェルダナーヴァ様の言っていた……」

 

「久しぶりですね、ルドラ。今日まで待たせてしまい申し訳ありません」

 

「全くだよ。我が友も待ちくたびれてたし、コイツに関しちゃここまで着いてくる始末だ」

 

「それで、其方の方は?」

 

 

 俺が促すと、少女は優雅にスカートの裾を掴んでお辞儀した。おお、凄い。こういうの初めて見たけど、ちゃんと様になると高貴さが伝わってくるな。

 

 

「初めまして。私はナスカ王国王女、そして"始まりの勇者"ルドラ・ナスカの妹、ルシア・ナスカと申します。よろしくお願いしますね、カレンさん」

 

「は、はぁ……どうもご丁寧に……。え、ルドラの妹さん? こんなしっかりした方が? え?」

 

「おいどういう意味だ」

 

「本当に血繋がってるんですか?」

 

「開口一番に失礼過ぎやしねえか!?」

 

 

 こんなイケメンじゃなきゃそこらのチンピラにしかならない男の妹が、こんなにしっかりした美少女って……人としてしっかりした部分を全部妹さんに吸い取られちゃったのかな。

 

 

「また何か失礼な事考えてやがんな。喧嘩なら買うぞコラ」

 

「もう兄様! 女性になんて口の利き方するのですか! カレンさんが怖がってしまうでしょう!」

 

「いいですよルシアさん。後でルドラにはローキックでもお見舞いしますから」

 

「ほらなルシア。コイツはこういう奴だ」

 

「挨拶が遅れましたね。私はカレンです。数ヶ月前に其方のお兄様にセクハラ紛いのことをされた聖職者です。どうぞよろしく」

 

「……兄様?」

 

「ちょっと待て誤解を解かせろルシア。そしてカレンテメェ後で覚えてろ、キックじゃ済まねえからな」

 

 

 朗らかな笑顔から凄みのある笑みに変わったルシアに、ルドラがたじろいでいる。ふむ、大体の力関係は把握できた。

 「お説教は後です」と言ったルシアは、先程の凄絶な笑顔をしまって俺に向き直した。

 

 

「コホン……兄がご迷惑をかけたようで、申し訳ありません。でも、こうしてナスカ王国に来ていただけて嬉しいです。兄様とヴェルダナーヴァ様にお話を聞いてから、ずっと会いたかったんです」

 

「そこまで大した人間ではありませんよ、私は。それとさっきも言ってましたけど、ヴェルダナーヴァ?って誰ですか?」

 

「あぁ、それは……」

 

「それは本人から言いたいんだとよ。ほら、さっさと行くぞ」

 

 

 半ば無理やり話を切り上げたルドラに手を引かれ、2人の近くに寄せられる。

 ヴェルダナーヴァ……初めて聞いた気がするのに、なんか他人って感じがしないんだよなぁ。この感覚は、丘の上から二つの流星を見た時と同じやつだ。

 

 もしかして、前にルドラが言ってた俺に会いたがってる人なのかな。

 

 

「ではカレンさん、準備はよろしいですか?」

 

「はい、特に持っていくものもありませんから」

 

「んじゃ転移すんぞ。ほれ」

 

 

 ルドラが軽い感じでそう言い指をパチンと鳴らすと、以前ノワールがやったように視界に映る景色が真っ白になった。見るのは二度目だけど、やっぱり不思議だなこれ。

 

 そして視界が晴れると、俺の目の前には広大な城下町と巨大な城が飛び込んできた。

 

 

「おぉっ……!」

 

「は〜ん、カレンは見た事無いんだったか。まあ無理もねえな、あそこクソ田舎だったし」

 

「兄様、そういうことは言わないように。改めましてカレンさん。ようこそ! ナスカ王国へ!」

 

 

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼

 

 

 

 

 

 俺は生まれてこの方、村を出たことがなかった。小さい時から教会に篭もりがちだったし、物品も村内で済んだり、たまに来る商人から本も買えたので特に不便はなかった。

 

 そんなだから、村の外に行ったことがあるという神父様は世界の色んなところを見ないか、なんて言ったのだ。

 あの時から八年経ってようやく重い腰を上げて村を出た俺だが、あの時の神父様の言っていたことが今になってよく分かった。

 

 

「おぉ……なんか……スゴイです」

 

「語彙力が無くなるほど凄ぇか」

 

「とても楽しそうですね」

 

 

 多分今の俺、年甲斐もなく都会に来て目を輝かせている田舎者でしか無いんだろうな。

 しかし、そんな事も気にならないくらい凄い。後ろから誇らしげなルドラとルシアに見守られながら、俺は城下を観光していた。

 

 いや、高台から見下ろした時はここまではしゃいではいなかったのだ。早くヴェルダ何某に会いたかったし。

 なのに、ルドラがあんなこと言うから……

 

 

『早速王城まで……といきたいが、まずはカレン、ド田舎もんのテメェにこの国の素晴らしさを存分に分からせてやる』

 

『別にそれは後日でもいいのでは? あと誰がド田舎もんですか』

 

『ふ〜ん……城下には出店もあるんだがなぁ、城で出しても文句ねぇくらいの味なんだがなぁ……』

 

 

 あんなこと言うからっ!

 

 

「まさかアレで説得できるとは……」

 

「コイツが食い気に忠実なのは俺の読み通りだったな。……けどどんだけ食うんだ。串焼き三本目だぞ」

 

「まははんほんへふほ(まだ三本ですよ)」

 

「お行儀が悪いですよカレンさん」

 

「んぐっ……すみません。あ、果物ありますね。買ってくださいルドラ」

 

「構わねえけどお前、腹も胆力も思った以上だな……」

 

 

 確かに普通より食べる方だって自覚はあるが。そんなでもないだろ。神父様からも沢山食べなさいってよく言われたし。

 

 

「胆力? 何のですか?」

 

「忘れてると思うがな、俺ら一応王族だから。別に構いやしないが、遠慮とか無いのかってな」

 

「失礼な。ルシアさんが王女なのはさっき紹介されましたから知っていますよ。そこまで鳥頭じゃありません」

 

「俺様も王子だから! 始まりの勇者だから!」

 

「頭では分かってますけど肉体が貴方を王子扱いしないんです、ごめんなさいルドラ」

 

「俺様にはさん付けもしねぇってか」

 

「まあいいじゃないですか兄様。兄様だって、仰々しい態度を取られるよりはこちらの方がいいでしょう?」

 

 

 「そうだけどよぉ……」と不貞腐れるルドラ。どっちが上の兄妹かこれじゃ分からないな。

 

 因みに、二人は普通に城下を歩いているが、それはルシアの魔法のおかげで街の人からは別人に見えているからだそうだ。幻覚魔法の一種らしい。もし魔法が無かったら、街中がパニックになるそうだからな。

 

 見たところの装備と溢れるオーラからして、ルシアも確実に俺よりは強い。魔素量には多少自信のある俺だが、この兄妹のエネルギー量がハンパないせいで俺が霞んで見えた。

 それも街では完璧に抑えてるんだから、やっぱりレベルが違う。

 

 ぶーたれるルドラを放っておき、ルシアは俺の隣へ歩いてきた。

 

 

「あんな事言ってますけど、兄様は嬉しいんですよ。小さい時から、こんなに真正面から物を言ってくれる人が私くらいしかいなかったものですから」

 

「そういう所は王族らしいですね。別に狙ってやってる訳じゃありませんけど、それなら気にする必要は無さそうですね」

 

「はい、寧ろ機嫌が悪くなるので今のままでお願いします」

 

 

 不敬罪とかあるのかなと地味に心配だったので、ルシアの嬉しい気遣いである。

 

 しっかし、この兄妹揃って顔が良いな。どちらかと言うと『美しい』に寄ってる俺の顔と違い、『可愛い』にステ全振りしたみたいな顔だ。その顔で見つめられるとちょっと心臓に悪い。男子高校生みたいな反応しちゃう。

 

 

「…………ルシアさん? ちょっと、見過ぎでは? 顔に何か付いてますか?」

 

「いいえ? ただ……カレンさん、さっき私のこと何て呼んでました?」

 

「? ルシアさん」

 

「(じー……)」

 

「……ルシア様」

 

「(じーー……)」

 

「…………ルシア殿下?」

 

「(むすー……)」

 

「………………ルシア」

 

「! はい!」

 

 

 

 可愛い。

 何この子。何この可愛い生き物。呼び捨てにして貰いたかったの?

 王族で友達が少なかったのはルシアも同じって気付いたら早かったけど、最初は何か不味いことあったんかと思ったわ。普通に可愛い理由だったわ。

 今の俺同性だし抱き締めていいかなこの子。ちょうどルシアの方が背低くて抱きしめやすい位置だし。

 

 

「……お前ルシアに変な気起こしてねえだろうな」

 

「何で妹はこんなに可愛いのに兄の方はこんなに可愛げがないんですか」

 

「悪かったなぶっ飛ばすぞこの野郎」

 

 

 上機嫌で歩くルシアの後ろ姿を見ていると、可愛げの欠けらも無いルドラが小突いてきた。マジで兄妹が疑わしい。

 出会って二回目なのに悪態が板に付いてきたルドラだが、俺の顔を見て何故か鼻で笑った。ムカついたのでローキックしといたがノーダメージだった。

 

 

「チッ。何なんですか、人の顔がそんなに面白いですか?」

 

「あぁ、めっちゃ面白い。お前もたまには可愛げあるじゃねえか」

 

 

 そう言ってルドラは、魔法で作った鏡面で俺の顔を見せてきた。

 

 口の端にさっき食べた串焼きの欠片が、お弁当よろしく引っ付いていた。

 

 

「〜〜! ルシア! さっき何も付いてないって言ってましたよね!?」

 

「ふふふ、どうだったでしょうか?」

 

 

 ああ、やっぱりこの2人兄妹だわ!

 

 

 

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼

 

 

 

 

 

 やけ食い気味になった俺はあれからもう三本ほどいった。おかげで腹パンパンだわ、どうしてくれんだルドラ。

 

 

「……いい加減機嫌直ったかと思えば、何でこっち睨むんだよ」

 

「この落とし前はどう付けようかなと」

 

「食い過ぎたのはテメェの自業自得だろうが」

 

「まあまあ、それだけ美味しかったということですから。それよりカレン、ナスカ王国の雰囲気は分かって頂けましたか?」

 

「ヤケ食いの原因はルシアにもありますよ? ……ですがまあ、それも置いといておこうと思うくらいには、良い国だと思いますよ」

 

 

 国の雰囲気とは即ち、そこに住む民の雰囲気だ。

 国が衰えれば民も落ち込む、国が栄えれば民も自ずと活気に溢れる。

 

 城下をある程度見て回ったが、どこもかしこも喧しいくらいに笑顔と活気に溢れていた。

 無論、ここが国で最も栄えている場所だからということもあるだろうが、それでもこの国は良い国なんだなと率直に思えた。

 

 俺の回答にルシアは微笑み、ルドラは最高のドヤ顔をキメている。自分の国が大好きなところも似てるのな、この二人は。

 

 

「ふん、まぁいいだろう。本当はあと五行くらいの感想が欲しいところだが、今日はその辺で許しといてやる」

 

「あなたへの評価は相変わらずですけどね」

 

「どういう意味だ」

 

「お二人は本当に仲が良いですね。少し羨ましいです」

 

「「何処がだ/ですか」」

 

 

 男友達感覚なのは否定しないがな。仲良しと言われると背筋がゾワゾワするからやめてほしい。

 

 

 

 

「そろそろそんなに仲良くいがみ合わないでくださいね。もうすぐ城に着くんですから」

 

「ですから、仲良くなんかありません。って、もうこんな近くですか。今はもう口に何も付いてませんよね……」

 

「安心しろよ、さっきの話はちゃんとヴェルダナーヴァにもしてやるから」

 

「したらぶっ殺しますよマジで」

 

 

 

 

 

 

 

 

「───それには及ばないよ」

 

 

 

 

 

 ふと、目の前から声がかけられた。

 

 さっきまで前を向いていたはずなのに、ルドラに少し振り向いた瞬間、その人は現れた。

 

 

 夜空をそのまま落としたような髪をなびかせた、美少年とも美丈夫とも言えそうな不思議な美貌を持った人。

 男女どちらとも取れない、包み込むような声を聞いた俺は、一瞬思考が停止してしまった。

 

 

 ……あの日と、同じ反応だ。

 

 

 その人も、あの時、俺がこの世界に産まれた日と同じ、神秘的で柔和な笑みを浮かべ、言葉を続けた。

 

 

「ルドラ達がナスカ王国に転移した時点から見ていたからね。だから、カレンが可愛いお弁当を付けていたことも知ってるさ」

 

「もう! 見ていたなら言ってくださればよかったのに!」

 

「ごめんねルシア、ボクも今日を楽しみにし過ぎて、少し舞い上がっていたようでね」

 

「見てたのは途中から気付いてたけど最初っからかよ…………カレン? どうした」

 

 

 ルシアがちょっと拗ねていたり、ルドラがつまらなさそうにしているのも、今の俺の視界には入っていなかった。お弁当のことも全く……少ししか気にならなかった。

 

 俺の中の深いところ……魂とか心とか、そういったものが強く反応しているのが、肉体で分かる。

 

 

 この人が……いや、この竜が…………

 

 

 

「…………貴方が、()……私に名前をくれたんですよね?」

 

 

 

「……うん、その通りだよ。ボクは“星王竜”ヴェルダナーヴァ。この世界を創造(つく)り、そして……君に名付けた者さ」

 

 

 

 そう言って彼……ヴェルダナーヴァは、満足そうに笑みを深めた。

 

 

「久しぶりだね、カレン」

 

 






 ルシアはきっとめちゃくちゃ可愛い。絶対に可愛い。異論は認めない。だってヴェルダナーヴァを落とした女だぞ? 可愛い上に強かじゃない訳ない。これで魔法の腕も世界最高峰とか、カレンが食われる……。恐ろしい子。


カレン「と、シスコンが申しております」

ルドラ「シスコン言うな。事実を述べたまでだ」

カレン「紛うことなきシスコンじゃないですか」


 ルドラにシスコンの波動を感じた。どんどん過去を捏造していこう。
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