私は聖女じゃねえんですよ   作:苦闘点

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第02節 転生してのそれから、あとスキル

 

 

 目が覚めたら、知らない爺さんに抱きかかえられていた。

 一瞬「不審者!?」と思ったが、今の俺は赤ちゃんだったのを思い出し矛を収めた。今は猫でも知らない爺さんでも手を借りたいんだ。借りなきゃ死んじゃう。

 

 俺が寝てる間に、この爺さんが拾ってくれたんだろうか。あのキレイな人が届けてくれたのか。

 どっちにせよ、キレイな人ありがとう! この恩は忘れたり忘れなかったりする!

 

 

 目を開けた俺に爺さんは豪快に笑い、よく分かんない言葉で話し掛けた。

 何言ってんだろ。つーか何語だ? 顔立ちは西洋系っぽくもアジア系っぽくも見えるけど。礼服?みたいなの着てるな。宗教関係者か? そういうの間に合ってるんですけど。

 

 ……あ、そうだ転生したんだ。ならもしかしなくても、ここ異世界か。あのクソデカ黒蛇からして、明らかに地球じゃないしな。

 

 

 この爺さんの意図は分かりかねるけど……乗り掛かった船だ。ココが異世界である以上、非力オブ非力な赤ちゃんである俺は誰かを頼る他ない。

 

 とりあえず言語を習得。それからこの爺さんの思惑を把握。まずはそこから始めよう。

 

 食い物にされそうになったら、その時はその時だ。未来の俺に丸投げしよう。

 

 

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼

 

 

 

 

 

 爺さんに拾われ、早五年。

 

 俺は現在、箒を持って玄関周りの掃除をしている。

 

 

 して、この五年の成果であるが……

 

 タラリラッタッタッター。俺は異世界語をマスターした。

 

 いや〜、この爺さんが本を大量に持ってくれて助かった。おかげで自然に猛勉強できた。爺さんもノリノリで色々教えてくれた。

 赤ちゃん期の覚えの良さを全力行使したスピードラーニングも上手くいった。俺は拾われて半年で言葉を発し、一歳半になる頃には舌っ足らずだけど普通に喋れる程度にはなった。

 

 それにより分かったが、どうやらあの爺さんは神父だったらしい。森の中にポツンと建ったこの小さな教会に一人で住んでおり、その前に置いてあった俺を拾ってくれたそうだ。

 神父というのも頷けるように、この神父様は底抜けの善人。ただ単純に善意から俺を拾って育ててくれたらしい。

 まあ、言動はあんまり神父っぽくないがな。

 

 それは本当にありがたいし感謝しか無いが、そのせいで俺もお祈りやらをさせられている。別にそのくらいならするけど。神様とかあんまり信じてないので、ちゃんとしたお祈りではないけど。

 

 

「掃除終わりましたよー、神父様ー」

 

「あぁ、ありがとうなカレン。あと言葉は伸ばさない」

 

「はーい」

 

「カレン?」

 

「はい」

 

 

 あと言葉遣いも注意されている。最初自分のことを"俺"って言ってたら、懇々と数時間に渡って説教されたので、それからは不本意ながら"私"を使っている。

 敬語は慣れた。今は口では敬語、心の中では普通に喋るという器用な事も出来るようになった。よく混ざるけど。

 

 

 

 …………で、何で"俺"はダメなのか。何で"私"なのか。何で神父様は俺のことを"カレン"と女の子のように呼ぶのか……。

 

 その答えは単純明快、俺の姿を見れば一目瞭然である。

 

 

 俺は、女の子である。

 俺は、女の子である!!

 

 

 とても大事な事なので二回言ったぞ。

 そう俺は女の子なのだ!!(三回目)

 

 何故だ神! お祈り中何度も言ってるが何でだ!? 我前世男ぞ? 我ギリ成人男性ぞ? 生まれ変わっても男になりたかった男ぞ!?

 判明したのは最初におしめを変えられた時だったのだが、絶望し過ぎて泣いちゃったね。おかげで神父様を困らせてしまった。

 

 うぅ、俺のエクスカリバー……お前のことは忘れないぞ。男は皆、心の中に少年心という名の聖剣を携えるものだ。俺の心のエクスカリバーは永久に不滅だからな……!

 

 え? 前世でそのエクスカリバー、鞘から抜いたことあるのかって? ハハハ、ぶち殺すぞ?

 

 あぁ、思い出したら泣けてきた。

 でもまぁ、もう八割方諦めてる。無いものは無い。

 今は無いけど、まだ見ぬ双丘を夢見て生きていこう。外面は女の子として、心は成人男性として。

 

 ちなみに外見としては、少し金髪の入った白髪に黄金色の瞳の美少女である。自分で言っちゃうくらい可愛い、というか美しい見た目だ。完全に凝り性な神様が数日かけて描いた顔である。

 これでまだ五歳なんだから、今後の成長が楽しみで仕方ない。将来美人確定。

 美しさなら、俺を助けてくれたあの人にも引けを取らないと思う。神秘的さは絶対負けるけど。

 できることなら自分がなるんじゃなくて、この顔を眺める壁になりたかった。

 

 

 そして、"カレン"という名。これが俺の今生での名前らしい。

 神父様が付けたのかと思ったが、どうやら俺を拾った時のお包みに書いてあったらしい。

 俺の生みの親が付けたということだろうか。自分の子を捨てるような親が付けた名前とか嫌だったけど、神父様がずっとそう呼んでるので俺も愛着が湧いてる。

 

 

 色々ツッコミたい事満載な五年間だったが、それなりに悪くなくやっていけている。

 それもこれも、大体は神父様のおかげだ。食べるのには苦労しないし、知識も聞けば教えてくれる。本は書庫にたくさんある。至れり尽くせりだ。

 

 

「今日は特に用事も無いから、好きにしていなさい。昼晩のお祈りは忘れないように」

 

「分かりました。じゃあ私は書庫にいるので用があれば呼んでください」

 

「カレンは本当に勉強熱心だなぁ。読むのは経典かい?」

 

「いえ、それはもうあんまり興味無いゲフンゲフン。まあそれも読みますよ」

 

「それで誤魔化せるとでも?」

 

「それじゃ私は行きますので」

 

 

 ピューと逃げるように俺は奥の書庫へ消えてった。

 

 

 この教会には書庫がある。神父様が大きな街に行った時に買ったり、近くの村の人から貰ってるものが置かれている。

 ジャンルは問わず。物語から論述書、さっき言ってた経典まで置かれてる。

 結構中世チックな世界だと最初は思ってたが、本を刷れるくらいの技術はあるらしい。昔存在した、超魔導帝国の産物とか何とか。もうその国は滅ぼされたらしいけど。

 

 

 で、俺がここで何をするかと言うと、もちろん読書などでは無い。ここの蔵書は去年全部読み終わったし。

 

 俺がするのは───スキルの鍛錬だ。

 

 

 スキルって何ぞ? と俺も思ってたが、神父様が俺に教えてくれた。

 

 

 これは俺が二歳の時、歩くのも慣れてきてお皿を運ぶのを手伝った時の事だ。

 誤ってお皿を落としてしまい、その破片で俺は腕を怪我したのだが、不思議と痛みを感じなかった。

 その時神父様が「もしやスキルがあるんじゃないか?」と言って教えてくれたのだ。

 

 神父様の説明を噛み砕いて言うと、スキルとは『不思議現象発動システム』みたいなものだ。

 何らかの成長を世界が認めた時に、その者に与えられる能力らしい。

 神父様は神が与えたのかと考えていたが、多分そんなことは無い。

 

 それで思い出したのが、俺が前世で死ぬ間際に聞いた幻聴と思ってたもの。

 痛覚無効とかキヨキモノとか言ってたヤツ。アレがスキルというものらしい。

 

 まあ痛覚無効は分かる。単純に痛みが無くなるだけだ。

 痛みって肉体の危険信号だから、無くなったら困るんじゃないかと思ったが、今の所不便はしてない。薬草採取の時に指を切っても痛くないのは助かる。神父様にはよく注意されるけど。

 

 問題は残り二つだ。

 

 

 

 まず一つ目、『贖罪者(アガナウモノ)』。

 

 このスキルの権能は、『量刑審判』、『罪業浄滅』の二つ。

 

 『量刑審判』は、文字通り相手の罪を量る能力。

 罪状、動機、無罪か有罪か冤罪か。罪に関するあらゆる情報を閲覧、その沙汰を掌握出来る。

 しかもコレ、対象は人間だけじゃなく動物や魔物にも当てはまる上に、罪は俺の尺度、つまり日本の法で決められる。

 前に一度、近くの村を襲おうとしたバカでかい熊に使ってみたら、出るわ出るわ罪罪罪。熊に人間の法を当てはめられるのはちょっとどうかと思った。

 

 で、これと相互的に作用するのが『罪業浄滅』。

 『量刑審判』で掌握した罪を(きよ)め、滅ぼす事が出来る。

 この際の浄め方として、"(ユルシ)"を与えた者には精神干渉が可能になる。有り体に言えば懐柔できる。

 試しにバカでか熊を赦してみたら、不自然なくらいに懐いたので、今は村の守護を任せている。正直不気味なので、人間にはあまり使いたくない。

 

 逆に赦さなかった者には、"(バツ)"を与える。

 この罰を与えられた者は、ランダムなペナルティが課せられる。ある程度は罪の重さに比例にするが、内容はやってみないと分からない。

 

 

 試しに、ちょうど近くにいたネズミに使ってみる。

 罪状は器物破損、窃盗。……教会のどっかを齧って、置いてある食べ物を盗み食いしたんだろうな。やはり毎度思うが、動物に人間の法を適用するのはどうかと思う。

 この程度普通に赦せばいいんだけど、今回は"(バツ)"を与える。

 

 

「汝に"(バツ)"を」

 

 

 すると、ネズミは動きを止めた。

 そして何となく、コイツの物理的な耐久力が弱くなったのを感じた。

 ふむ、体を静止、さらに防御力低下ね。格ゲーなら強いけどネズミ相手ならそんなにだな。この状態ならデコピンでも死ぬんかな。やらんけど。

 罪の重さがヤバそうだったあの熊に罰をやったらどうなってたんだろうか。死刑とかになってたのかな。

 

 

 まあ今使ってみたけど、このスキル本当に使い勝手が悪い。というか使い所が限られてる。全然便利じゃない。

 そもそも対象がいなきゃ意味無いしな。一人で鍛錬なんて出来ない。

 

 

 そもそも何で鍛錬なんかするんだい、って話だが、この世界には魔物という普通の動物じゃなく、人間に敵対的な生物がいる。

 神父様は偶に、近くに出た魔物を退治してる。去年あたりから連れてってくれるようになったので、その手伝いが出来たらなと思ったんだ。

 

 『贖罪者(アガナウモノ)』はランダム性と使いにくさがあるので、いつももう一つのスキルの方を伸ばしてる。

 

 

「さーて、今日も頑張りますか」

 

「カレン、頑張ろうとしてる所悪いんだが、ちょっと来てくれるか?」

 

「神父様、今日の晩ご飯のオカズ一つ減らしますよ」

 

「それは困る。オカズは山菜炒めで頼むぞ」

 

「はいはい分かりましたよ。早く行きますよ」

 

 

 書庫の扉が開いて神父様が笑顔で出てきた。

 

 はぁーー、たまにあるんだよね。神父様も俺がスキルを伸ばしてるのは知ってるから、こうやって呼び出されること。

 

 ま、丁度良い。最近新しいのも開発したし、試し撃ちしよ。

 

 

 

 神父様に着いていき、森の中を歩く。

 

 

「村でブラックスパイダーを見た人がいたらしい。今日はその退治に行く。頼んだぞカレン」

 

「そですか。私は蛇じゃなきゃ何でもいいですけど」

 

「カレンは本当に蛇が苦手だな。そういう所は女の子らしくて可愛いんだが」

 

「うるせえですよ。女の子らしいも可愛いも余計です」

 

「そういう口の悪さは、早急に直して欲しいがな」

 

「無理ですね」

 

 

 無駄口を叩きながら森を進む。

 

 ちなみに俺はこの世界に転生してから蛇が嫌いになった。何もかも黒蛇が悪い。

 

 迷いなく歩く神父様について行くと、十数分で魔物の気配がしてきた。

 

 

「見えたな。近くに行くと危ないから、ここからやろう」

 

「危ないんなら来させないでくださいよ」

 

「儂はもう老いぼれだからな。これでも若い頃はあのくらいの魔物でもチョチョイっと……」

 

「あーいいですいいです。経典より興味無いですからその話。早く終わらせましょう」

 

「ハッハッハ! ありがとうカレン。でも指はポキポキ鳴らさない。はしたないから」

 

「はいはい分かりましたよ。あ、一応離れといてください。巻き込んで怪我されたら、後で治すのが面倒なので」

 

 

 神父様を下がらせ、俺はブラックスパイダーに右手を伸ばす。

 

 まず『贖罪者(アガナウモノ)』を発動する。

 量刑審判によるコイツの罪状は、傷害、暴行、etc……魔物相手に使うと罪が多すぎて頭がパンクしそうだ。

 ひとまず殺人はやってないと。良かった、犠牲者がいなくて。でもこれから殺るかもなんで、ここで殺させてもらう。

 

 次に、罪業浄滅を発動する。

 

 

「汝に"(バツ)"を」

 

 

 さてさて罰の結果は……魔法耐性低下、身体能力低下、触覚無効。

 結構えげつない罰だな。特に触覚無効。野生動物からしたら危機察知能力が無くなるんだから、実質的な死だろ。

 まあ、適正な罰ってことで受け入れろ。これでゆっくり狙いを定められる。

 

 

 そして、俺が持つもう一つのスキル『聖者(キヨキモノ)』。

 

 その権能『思考加速』により、感覚が引き伸ばされ視界がゆっくりになる。これで狙いが定めやすくなった。

 そして『詠唱破棄』。魔法の詠唱がある程度要らなくなる。俺が今から使うものなら、何も唱えずに使える。

 

 サラッと言ってるけど、魔法があるって凄いよね。スキルなんてのがある時点で今更だけど。

 自分の手の平に光が集まるこの光景、今は慣れたけど初めての時は度肝抜かれたな〜。懐かしいな〜、神父様めっちゃ褒めてくれたっけ。

 

 あぁ、いかんいかん。思考加速してるからってつい気が逸れた。時間感覚がズレるから気を付けないとすぐこれだ。

 

 

 よーく狙って…………ココだ。

 

 

聖霊閃光砲(サンクトゥスレイ)

 

 

 俺の手から閃光が放たれ、瞬く間にブラックスパイダーを赤い霧に変えた。

 

 

 『聖者(キヨキモノ)』の能力、『聖属性付与』。

 あらゆる魔法、物体、その他様々な物体に聖属性を付与させる。ただし生物は除く。

 聖属性が何なのかは俺も知らない。

 

 

「おぉ、スゴい威力だな。カレンが作った魔法か?」

 

「スキルを使っただけですよ。閃光(フラッシュ)に聖属性を付与して、ちょっと指向性を与えただけです」

 

「十分さ。五歳でそれだけ出来るんだから」

 

 

 聖属性を付与すると、よく分かんない事が起こる。何も起こらなかったり、攻撃力が上がったり、単純に効力が上がることもある。

 聖霊閃光砲(サンクトゥスレイ)に関しても、魔物相手で贖罪者を使った後なのを加味してもここまで強力だとは思ってなかった。正直俺もビビってる。

 

 今は色んなものに付与してみてる。そのうち教会の物が全部聖属性になるかもしれない。

 

 

 ちなみに、俺は聖属性について殆ど何も分かっていないが、魔物に対してはクリティカルヒットになる事は分かってる。それ以外は変なオーラが出たりするくらいしか分からん。

 その研究もこれからやっていかないと。力なんてなんぼあってもいいからな。

 

 

「さ、帰りましょ。たくさん歩いて疲れました」

 

「いいじゃないか。儂が言わないと、カレンはずっと引きこもってるだろ? 偶には村にでも行って遊んできたらどうだ。子供たちも会いたがっていたぞ。今から魔物を退治したと村に報告に行くしな」

 

「うるせえですよ。私は教会にいた方が落ち着くんです。…………でもまぁ、今日の晩ご飯の材料切らしてますし、私も行きますよ」

 

「相変わらず素直じゃないな〜」

 

「ぶん殴りますよ神父様」

 

 

 はぁ、また歩くのか。魔法は使えても体力は普通だから疲れるんだけどなぁ。

 疲れなくなる魔法でも考えながら歩こ。……神父様と話しながら行くから無理か。はぁーーー。

 

 ま、いいか。別にそれも楽しくない訳じゃないし。

 

 

 

 ……あ、昼のお祈り、まだやってない。

 

 





 ユニークスキル
 『贖罪者(アガナウモノ)
 …… 量刑審判・罪業浄滅
 量刑審判…対象の罪を量り、裁決権を掌握する。罪の基準はスキル保有者に依存する。
 罪業浄滅…量刑審判にて裁決権を掌握した罪に対し、"(ユルシ)"か"(バツ)"を与える。この際、"赦"を与えた者はその精神に干渉し、"罰"を与えた者には罪に見合ったペナルティがランダムで与えられる。


 『聖者(キヨキモノ)
 ……思考加速・詠唱破棄・聖属性付与
 聖属性付与…生物以外のあらゆるものに対し、聖属性を付与する。



ステータス
 名前:カレン(五歳)
 種族:人間
 加護:星王の紋章(秘匿)
 称号:なし
 魔法:元素魔法
 能力:ユニークスキル『聖者(キヨキモノ)』『贖罪者(アガナウモノ)
 耐性:痛覚無効
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