GW中にたくさん投稿します。予定では3~6日です。死ぬかもしれませんが頑張ります。連日できたら褒めてください。
前回の感想、ほぼシモンでしたね。何で死んでねえんだアイツ、って私含め作中の全員が思ってます。
あれ? カレン、どうかしました?
聞きたいこと? はい、何でもどうぞ。
……なるほど、そういった話でしたか。
あ、いえ! 別に話しづらいという訳ではありませんよ。ただ、私はあまり城下にも出ないし、そういった経験が兄様よりも乏しいので。それでも良ければお話ししますよ。
……私の最初は、お母様でした。そのすぐ後にお父様が。もう400年以上も前の話ですが。
その頃には私も兄様も“聖人”に進化していて、肉体年齢も今のままでした。
ハッキリ言ってしまうと、私は昔から今のように研究で一人で部屋に籠ることも頻繁にあって、成人してからはあまり話せてはいなかったんです。食事も滅多に一緒には。だからこそ、今は皆さんと食べるようにしているんですよ。
カレンと養父様のように、特別仲が良かったということもありませんでしたよ。……え、何で知ってるのかって? 普段のカレンの話を聞いていれば分かりますよ。
それに私は、カレンのように褒めてもらったこともあまり無かったですね。私自身周りの評価を全く気にしていなかったこともありますが、両親は基本的に兄様を王として期待していましたから。存命の時から、兄様は勇者でしたし。
ああ、気にしてはいませんよ。親の愛は確かに受け取っていましたし、適度に放任されていたおかげで自由に研究できましたから。
まあそのせいで、今は自由過ぎると宰相に叱られるのですがね。
……二人の最期は、穏やかなものでしたよ。善政も敷いていましたから、テロも暗殺も無く天命で。
ああでも、一つだけ驚いたことがあったんです。
お母様とお父様、最期に私に言ったことが同じだったんですよ。
『兄を最後まで支え続けなさい。けれど、自分自身の幸せも必ず掴みなさい』って。
示し合わせた訳でも無かったらしいのに、凄い偶然ですよね。
……恐らく、私の生き方が明確に決まったのはその時です。
元々“聖人”に進化したのも兄様の為でしたので、さほど変わったことはありません。けれど、今まで漠然と行っていたものに、確かな意味が生まれたんです。兄様の為に、お父様とお母様の為に、という意味が。
私は今も昔も自分自身の為に魔法の研究をしていますが、それは巡り巡って兄様の大願の為にもなります。そして勿論、私自身の為にも。
仲睦まじい家族とは言えなかったかもしれませんが、お母様とお父様の残してくださったものは、私の生き方として確かにここにあるんです。
人が死んでもその軌跡は、確かに未来に生きる人の後ろに残ります。生きている者は偶に振り返り、その軌跡を見て
私にとってはそれが両親でした。兄様は……ご本人に聞いてみるのがいいのではないでしょうかね。
要するに、です。無理に忘れようとする必要はありません。確かに、別れとは辛く悲しいものですが、それには必ず意味があります。
その意味を見出すのが、我々残された者の義務なのですよ。
……そういえば、一つ気になることがあるんですよ。
お母様もお父様も『幸せを掴みなさい』と言ったのですが……研究についての事なら、この表現は適切なんでしょうか?
え、カレン? どうしてため息なんて吐くんですか?
こっちもクソボケ? な、何で私がヴェルダナーヴァ様に向けられるような罵倒を言われるんですか!?
聞きたい事だあ? お前が俺様に?
まあいいぜ、ヒマだし。ほれ、兄弟子様に何でも聞いてみろよ。
おい何で帰んだよ! は、なんかウザかったから? めんどくせぇな! ホラ、いいから早く話してみろって!
……なるほどな。お前はホント、クソ真面目っつーか何つーか。めんどくせえ性格してるよな。
その感じなら、もうルシアには聞いたんだろ? アイツは何て言ってたんだ?
ふーん、ブレねえなアイツも。そういう所はお袋似なのかね。
あー、俺様は親父に似ただろうな。親父も俺様程じゃねえが、立派に王様やってたし。
世界を統一しようって決めたのは、親父関係無いけどな。でも親父が死んで、俺様が勇者であり王になってから、やっと決意は固まった感じだったかな。
そん時にヴェルダナーヴァに野望の事言ったら、「まだ貧弱過ぎるから、夢のまた夢だね」なんて腹立つ顔で言いやがって……それは今関係ねえか。
で、死人についてだったか? あ? 言い方は別に何でもいいだろ。
そうだな。俺様はルシアみてえに、親父たちに思い入れはねえな。俺様に
俺様が“真なる勇者”に覚醒した時に手に入れたのが『
その声は希望を願うものとか、救いを求める祈りとか、その他諸々の願望。俺に向けられた、様々な“願い”だ。
死んだヤツの思いも、もちろん俺様には聞こえてた。なら、道半ばで途絶えたその声は、聞いてた俺様が未来に持って行かなくちゃだろ?
なんせ俺様は、未来の統一国家の皇帝だからな。
言わば俺様は、全人類の希望を一身に背負ってんだ。その希望の二つが、親父とお袋のだってだけだよ。特別扱いは特にしてねえ。
そりゃあもう、親の他にも途方も無い数の者達が俺様に色々託して逝きやがったからな。こっちの身にもなれってんだよ。まあそれも俺様の使命だし、満更でもねえが。
生まれついての勇者である俺様にとって、死んでいったヤツがその先の俺様に影響を与えるなんて事は無い。俺様は何があろうと、俺様であり続ける。
だがその思いは、願いは、希望は、今もこれからも俺様と共にあり続ける。何も残らず死ぬなんて事はありえねえし、そんな事は起こさせねえ。
お前にもいるだろ? お前を信じるヤツらがよ。そいつらのほとんどは、あと100年もせずに死ぬんだ。何ならそれよりも早くにな。
その死を、てめえの個人的な悲しみとか孤独とかの感情で無駄にさせるな。これから何人を見送ることになろうと、お前に託された全ての思いを背負って、繋いでいけ。
それが、未来を生きる強者である俺たちの責務だ。
……ん? どうした、そんなポカンとした顔して。そんなに真面目な話する俺様が珍しいかよ。
まー、俺様もルシアも元から結構ドライだからな。情に厚いお前にはやりづらいとこもあるかもしれん。でも大丈夫だろ。お前切り替え早いし。
……だから何だよ、その顔は。俺様がてめえを気遣っちゃ悪ぃのか?
てめえにはまだまだやって貰いたい事がたくさんあるんだから、今潰れてもらっちゃ困んの! 分かったか!
そうだよ、お前は俺様に素直に感謝してりゃ良……気持ち悪いけどって何だ!? おいコラ待てカレン! 逃げんな! 偶には俺様が真面目に説教してやるよ!
─── それで二人に聞き終えたから、最後にボクの所に来たってことだね。
でもそれなら、ヴェルグリンドの所には行かないのかい?
……いや、確かに彼女はそう答えるだろうけど。それ本人には言わないようにね? 拗ねちゃうから。
まあその話は置いておいて。ボクに言いたいのは、ルシアやルドラに聞いたものとは違う事だろう?
分かるさ、最近のカレンのお祈りを聞いていれば。聞いてなくとも、日頃から散々『人の心が無い』なんて言ってるボクにそんな相談はしないでしょ。
そうそう、カレンはそうやっている方が似合っているよ。
さて……君も、最初にボクに会って殴りかかった時から気付いていると思うけどね。
寿命というシステムは、色々世界を試したけど無くてはならないものだ。生命の数が増え過ぎれば世界の容量を超え、いとも容易く崩壊してしまうからね。それが人間のように高度な“魂”を持つ者ならば尚更さ。
だからこの世界でも、ごく僅かな者達しか寿命を超越出来ないようにしたんだ。
その中でも、人間の中で寿命を超越した者に共通するのが、その強い精神力。精神生命体の強さにも直結する物だね。
でも強い精神力を持ってるから、寿命差による別れも辛くない……なんて、それこそ人の心が無い事を言うつもりは無いよ。
カレンも進化する前言ってたけど、『辛いものは辛い』んだよ。ルドラやルシアだって、親しかった人の死に何も思わない筈がない。彼らも少なからず落ち込んだりもするし、ルシアは両親が亡くなった後には泣いてもいた。
それでも……辛くても苦しくても、前に進める者……そういう者でないと、“聖人”にはなれない。
逆に言えば、もう“聖人”になっているカレンは大丈夫ってことだよ。如何にカレンが異質な形で進化したと言っても、そこは変わらない。カレンはきっと乗り越えられると信じているよ。
それとも、これからの事を考えて怖くなったのかい? 進化した時はきっと大丈夫とか思ってたのに。
ハハハ、そう怒らないでよ。ボクは信じてるって言ったじゃないか。だから燃やさないでね、またルシアに怒られちゃうから。
……実際、君がこうなる事はずっと前から分かっていたんだ。
君は優しいし、寂しがり屋だからね。失われる命に対して思い詰め過ぎるのも予想できたし、故郷の村から君を一人の人間と見てくれる人が居なくなる事は、君にとっては耐え難い事だろう。
否定してても、事実今そうなってるだろう? やっぱり聖女って言われるだけは……待って待ってゴメン、真面目な所だったね。
まあ、たくさん考えるといいよ。思い詰まったら誰にだって相談してみるといい。信頼できる人にね。
そうしたらどこかで、腑に落ちる結論に至れると思うよ。
相談してみるといい、か。
今は城に戻ると色々決壊しそうだし、村にはもうこんな相談をできる程仲の良い人もいないんだよな。
「……だからって、こうしてお墓にしゃがみ込んで話すのは、傍から見たら結構ヤバいですよね? 神父様」
昨日、ライラが亡くなった。
葬式もつつがなく行われ、その日のうちに荼毘に付された。この世界だと、死体を放置してると腐る以前に
しっかり俺の
そしてそのお墓は、うちの教会のすぐ近くに作った。生前にちゃんと聞いた人は、この墓地につくっているのだ。
もうすっかり共同墓地になっており、何十基もあると壮観だ。
「ここだけで昔の村の皆が揃っちゃいそうですね。……ハァー、コレ城に戻るより精神にきますね」
何とか気丈に神父様のお墓に話しかけてるが、どうしても俯瞰しちゃって心を病んじゃってる感じが否めない。実際今はかなりナイーブになってるので、それを否定出来ないのも余計辛い。
流石にライラが死んだのは堪えた。クラリスが40年前に急死した時とはまた別種の辛さだ。
あの時は途方も無い無力感で、神父様が弱ってきた時のように自暴自棄気味になっていた。あの時はルシアやグリンドに多大な迷惑をお掛けしてしまった。
それは色々あって立ち直れたのだが、今回は立ち直れるようなものなのだろうか。
日を経るごとに親しい人が減っていく。そんな中でも新しい人と関わることもあったし、仲良くなった人ももちろんいる。
けれど、共に居た時間の長さというのは重要だった。特に、俺が村を離れる前から知っている人達は。
ある意味でライラが心の支えだったのだ。聖女や聖職者以外の目線で話してくれる人が、もうライラしか残っていなかったから。
ライラを失うことも、過去の俺が忘れられたような気がすることも、同じくらい怖かった。
「別れの意味、託された思い……そりゃ、何となくは分かりますよ。神父様だって、私に色々残してくれましたから」
今でも神父様が俺の基軸にあるように、ライラやクラリスやジェイルの存在も、俺の中には間違いなく残っている。
その子ども達を始めとした、形あるものもたくさん残っている。
「……まあつまりは、切り替えの問題なんですよね。神父様が死んじゃった時と同じで」
神父様も言っていた。変わり身の早さはある意味俺の美点だと。今回も同じようにすればいいだけ。
でもやっぱり、ただの人間だった頃の俺を知る人が居なくなったのは、相当クるものがあった。そのせいでこんなに落ち込んでしまっているんだろう。
「時間が解決してくれる、と良いんですけど。ああでも、キリングベアはまだ生きてるんですよね。あの子も含めるなら、まだいいのかもしれません。……でも、最近見てないんですよ。冬眠する時期じゃないのに。何処行っちゃったんでしょうか」
村全体が聖霊属性になっているが、元々キリングベアは村の中には入ってくる事は無いので問題は無かった。しっかり俺の言いつけの通り、村を守ってくれていた。
ただ魔物にも寿命はあり、進化しなければそのまま死んでしまう。あの子も、もうかなりの年月を生きて少し衰えが見え始めていた。
「しばらく修行お休みしちゃいましょうかね。孤児院の方にも連絡すれば、ちょっとくらい此処に居てもいいでしょうし。キリングベアを見つけて、折角だし名付けなんかも……」
そう、少しだけ自分に甘い方に逃げようとした。
……その時、俺に逃げることを許さないかのように。俺が抱いた些細な希望を吹き飛ばすように。
嵐の前の不吉な風が、俺の頬を撫でた。
同日、ナスカ王国王城。
「そう、じゃあカレンは少し城を空けるのね」
「みたいだな。今回は特に仲の良かった友達だったみたいだし、三日くらいは帰って来ないんじゃねえかな」
「もう少し休んでも、誰も責めないのですけどね。最近のカレンは、目に見えて弱っていましたから」
カレンの居ない広間で、いつもの四人が話していた。
妹分が精神的に弱っていて、ヴェルグリンドとルシアは心配を募らせていた。ルドラは平気そうにしているが、色々根回ししてカレンの心労を少しでも減らしていたので、二人とどっこいどっこいな心配度合いである。
唯一ヴェルダナーヴァだけは、少しも変わった様子も無く紅茶を飲んでいた。
「確かに、今回は少し長く休みそうだね。でも心配はいらないさ。カレンはきっと戻ってくるよ」
「ヴェルダナーヴァ様はカレンと“魂の回廊”が繋がっているから、そんな呑気な事が言えるのですよ! 私たちは不安でいっぱいなんですからね!」
「でも、俺様たちに相談してきた時の様子を見るに、時間で解決しそうな気もするぞ」
「それは、そうかもしれませんが……」
「ちょっと待って? 相談って何のこと?」
ヴェルグリンドのその問に、ルドラは露骨に『しまった』という顔をした。他二人は無言でヴェルグリンドから目を逸らした。
ヴェルグリンドはルドラか身内にしか興味が無い。そして両者とも寿命が無いので、カレンは最初から相談相手から外していたのだ。聞いても建設的な話は聞けないだろうと。
そしてそれを知られると間違いなく拗ねられるとも分かっていたので、ルドラが今口を滑らせるまで何も知らなかったということだ。
「ねえルドラ? 私何も聞いてないんだけれど?」
「ま、まあアレは、元々人間だった俺様達が適任だからよ。カレンは今も根っからの人間だし、グリュンとヴェルダナーヴァは外したんじゃねーかな?」
「そ、そうですよ! ね、ヴェルダナーヴァ様!」
「うん。ボクもカレンを覗き見ただけで、相談は受けてないよ」
「なんだ、そういう事なのね。てっきりカレンが私にだけ頼ってくれてないのかと思ったわ。だとしても私を頼ってくれないのは寂しいけど」
実際にはヴェルダナーヴァには違う相談をして頼っていたのだが、ヴェルダナーヴァは空気を読んではぐらかした。
ここ70年でカレンと接した事により、ヴェルダナーヴァも成長しているのだ。昔なら普通に全部バラしてヴェルグリンドが暴れていただろう。
「とにかくだ。カレンの精神力の強さは、ボクのお墨付きだ。何か激的な動きが無くても、次の段階に足を掛けられるくらいにね」
「……マジか。もうそんなになのかよ。ったく、妹弟子のクセに……」
「フフ、ルドラも頑張らなくちゃね。カレンなら凄いことに巻き込まれて、いきなり強くなっても驚かないしね」
「グリン義姉様ったら、不吉な事を言わないでください。カレンなら本当にやりかねないんですからね」
ルシアはそう言って、念の為にカレンのいる村の方へ“万能感知”の権能を伸ばした。
……そして知り得たものは、果たして嘘から出た真か。
不幸にも、カレンは巻き込まれていた。
しかも───限りなく最悪なものに。
「───ヴェルダナーヴァ様! 今すぐカレンの所へ!」
「…………そうだね。確かにコレは、行かないとマズイかもしれない。まさかこんな突発的に生まれるとはね」
「おい、何だ? カレンに何があった?」
「なっ!? ちょっとあの子、何してるのよ!」
「だから何があったんだよ! 俺様探知苦手だから分かんねえんだよ!」
ルドラ以外の三人が、遥かの情報を今知り混乱していた。
ヴェルダナーヴァはカレンのいる方角を見つめ、吐き出すように言った。
「……まさか、そこに居合わせるとはね───」
───ヴェルドラ───
災禍の暴風が、今カレンの元に迫っていた。
「貴方まで死んだら、私はどうすればいいんですか……」
「さっきからっ! 釣り合ってねーんですよ!」
「実戦で使うのは初めてですが……仕方ありませんね」
「───彼方へ祈りを捧げ奉る───」
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