私は聖女じゃねえんですよ   作:苦闘点

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 感想、評価、ここすき、全ての読者様に感謝を。

 あと一日です。明日の昼12時に投稿できるかは今日の私のやる気にかかっています。夜の12時になっても怒らないでください。


第30節 究極の力

 

 

 ヴェルダナーヴァが創造したこの世界は、“管理者権限”を有していればその法則に影響を及ぼすことができる。その権限を有しているのは、竜種や精霊女王、あと例外として一人の賢者がいる。

 

 スキルとは、その権限が無くとも世界の法則に干渉できるよう、ヴェルダナーヴァがシステムとしてある程度の定型を作ったものだ。

 その干渉できるレベルによって、コモン、エクストラ、ユニーク、アルティメットにランクが上がっていく。

 

 スキルの獲得方法は多種多様だ。種族進化によるもの、名付けによるもの、強い意志によるもの、種族的に先天的に有しているもの、能力獲得系のスキルなんてものも存在している。

 色々方法は存在するものの、最終的には本人の資質と運が要因の多くを占める。

 

 

 ……これらの情報を加味した上で、究極能力(アルティメットスキル)はどうやって獲得するのか。

 スキルを使いこなせる十分な実力を有している事。

 莫大な情報量を持つ能力の受け皿となる、“魂”が強靭である事。

 更には……何らかの成長を、『世界』が認める事。

 カレンはヴェルドラと戦う以前まで、この二つの条件をクリアしていた。

 実力は70年の修行を経てゆっくりと。“魂”に関しては転生初期から既に水準に達していた。

 

 そして……今。

 カレンが張った防護結界により滞留していたライラの“魂”と偶発的に言葉を交わし、諦めぬ意思を、託された思いを繋いでいく覚悟を決めた。

 それにより、『世界』はカレンの存在を、その確かな成長を認めた。

 “勇者”の覚醒でも、能力の自己改変でも無い。

 カレンは()()()()()()()()で、究極能力(アルティメットスキル)を獲得したのだ。

 

 “世界の言葉”が言い届けたその知らせは、“魂”に根付いたスキルと共にカレンも即座に自覚した。

 

 

究極能力(アルティメットスキル)を獲得……? え、今? 『聖者(キヨキモノ)』が進化……え、今?)

 

 

 いきなりの知らせに、カレンも寝耳に水であった。

 ヴェルダナーヴァからは「いつか獲得できるさ。具体的には……あと100年くらいかな」なんて何の参考にもならない事を言われていたから、特に今まで意識もしていなかったのだ。

 それがいきなり、なんの前触れも無く獲得できたのだから、カレンの驚きもさもありなんである。

 ……しかし、今のカレンにとっては、困惑も当惑も二の次だった。

 何せこのスキルのおかげで、自分がヴェルドラに勝てる可能性が格段に上がったからだ。

 

 何となくハイになってるカレンは、難しい事は考えずに構えを取った。

 

 

究極能力(アルティメットスキル)至聖之王(パナギア)』……いいでしょう。じゃあ今から貴方で、試運転と行きましょうか!」

 

 

 カレンは自分に発破をかけるようにそう言うと、思い切り踏み込んでヴェルドラの目の前へと跳んだ。

 それに反応したヴェルドラが“死を呼ぶ風”を放とうとする。先の戦いでは左肩を掠めたが、今はもう違う。

 

 元々『聖者(キヨキモノ)』の権能であった“思考加速”は、進化に伴いその加速倍率を飛躍的に向上させていた。その倍率は約100万倍。思考加速系統のスキルを持たないヴェルドラの動きは、カレンには止まったも同然に見えていた。

 更に、『魔力感知』が統合され、ルシアなども持つ“万能感知”に進化している。

 精度も範囲も『魔力感知』の比ではない。現にろくに制御していない今、5km以上離れているはずの村まで感知範囲は広がっていた。

 

 

(性能アップなんてもんじゃないな、もはや別モノみたいだ。色々見え過ぎて頭いてぇ……けど、上手く使えば……やってみるか)

 

 

 “思考加速”の倍率の最適化。そして、“万能感知”の効果範囲を可能な限り小さくし、精度を限界まで向上させる。

 それはルドラも使用する、間合いの極致。高密度察知領域により、どんな攻撃であろうと反射で最適な反応を行う技術。

 この高度な技を、カレンは土壇場で成功してのけた。

 

 目の前に迫り来る“死を呼ぶ風”を、一つ一つ丁寧に。大雑把に付与された『暴風属性』の合間を縫い、舞い落ちる桜の花弁を全て掴み取るように。

 カレンはヴェルドラの技を、全て見切って無傷で受け流した。

 流石のヴェルドラも、暴風の中から涼しい顔をして出てきたカレンに目を見開いていた。

 

 

「なぁッ!? どういう事だ!? 何をしたのだ貴様!?」

 

「“天聖(アニマ)”で触れても問題無い部分を狙って叩き落としただけですよ。にしても属性付与が大雑把過ぎます。こうやってもっと……」

 

 

 手本を見せるつもりで聖化魔法を一つぶち込んでやろうと、カレンは普段のように“聖属性付与”を起動させようとした。

 させようとして、その権能も進化している事に気が付き、カレンは口角を自然とつり上げた。

 権能の詳細を確かめるべく、カレンは単細胞そうなヴェルドラに笑いながら言う。

 

 

「ま、説明したところで無駄ですね。どうせ貴方の攻撃、私にはもう効きませんから」

 

「な、なにィ!?」

 

「悔しかったら、もう一度撃ってみればいいじゃないですか。結果は同じですけど」

 

「く、クアハハハハ! そこまで言うなら食らうがいい!

我必殺! 雷嵐咆哮(サンダーストーム)ッ!!」

 

 

 やっぱり単細胞生物だったヴェルドラは、カレンの煽られて馬鹿正直に大技を放った。

 先程カレンがモロに食らって気絶した大技。“破滅の嵐”と“黒き稲妻”を組み合わせ、それに志向性を付与したヴェルドラの持つ数少ないロジカルな技だ。

 

 核撃魔法すらも容易く消し飛ばすその破壊の嵐に相対し、カレンはゆっくりと片手を伸ばした。

 

 

 

「─── “聖別(ベネディクション)”」

 

 

 

 カレンの短い言葉と同時に、ヴェルドラが放った嵐の咆哮は眩い光を纏い静止した。

 

 

 元々“聖属性付与”には、付与できる物に限りがあった。

 無生物なら何でも付与できるのではないかと、ルシアが撃った魔法に付与しようとしたところ、不発に終わりカレンは吹き飛ばされた。

 その後試して分かったのは、他人の魔法や放出された闘気(オーラ)には、権能の効果が及ぼせない事だった。

 現にカレンは気絶する前、“黒き稲妻”を弾き落とした時に既に試していた。結果はやはり不発。

 そもそも付与できたとしても、聖霊属性になった攻撃になるだけで何の意味も無くカレンはダメージを食らう事になる……と、ルシアに吹っ飛ばされたカレンは思い至った。

 

 権能に小さな不満を持っていたカレンの思いを世界が汲んだのか、“聖属性付与”は新たな権能となった。

 

 

 そうして生まれ変わったのが、“聖別”と“聖霊支配”という二つの権能。

 “聖別”は“聖属性付与”の強化版。本当の意味で無生物ならば()()()聖霊属性を付与可能になった。

 たとえそれが、ルシアの魔法でも、ヴェルドラの暴風魔法でも。カレンが捉えられさえすれば、それは神の祝福により聖化される。

 

 だが……『至聖之王(パナギア)』の真骨頂はこれでは無い。

 もう一つの権能、“聖霊支配”だ。

 

 カレンは“聖別”した雷嵐咆哮(サンダーストーム)に伸ばした手を、そのまま上に上げた。

 その手を追うように、嵐の奔流はカレンの意思に従い流れゆく。

 

 

「せー……のっ!!」

 

「ぐぉわああっ!!?」

 

 

 一本背負いの要領でカレンに放り投げられた雷嵐咆哮(サンダーストーム)は、本来の技の主であるヴェルドラの体を穿った。

 

 これは“聖霊支配”の効果によるものであり、その権能は至ってシンプル。『聖霊属性が付与された事象の完全支配』である。

 一度“聖別”により聖霊属性が付与されれば、カレンは意のままに操れる。“聖別”と組み合わせることにより、この権能は支配系の権能の中でも突出した特異性と凶悪性を併せ持っていた。

 

 極端に言ってしまえば、聖霊属性が付与された故郷の村全体も、カレンはその土地ごと移動させることか出来る。どういう状況でならそんな事をするのかは謎だが。

 

 何はともあれ、カレンは“聖別”と“聖霊支配”のコンボにより、事実上ほぼ全ての飛び道具が無効化できるようになったと言っていいだろう。

 

 

「ハハッ! 凄いですねコレは。流石は究極能力(アルティメットスキル)!」

 

「ぐ、グオオ……我の技なのに、何故かすごく痛いぞ……」

 

「でしょうね。これで少しは他人の痛みってものを……」

 

「ぬうぅ、つまらんっ! もう一回だっ! 次は我が勝つ!!」

 

「子どもか」

 

 

 実際、子どもである。カレンとは数歳しか違わないが、精神の未熟度で言えば成人してない人間の子どもと同レベルなのだ。

 しかも暴君気質なので反省なんかしない。ヴェルドラはすぐさまダメージなど気にせず飛び立った。自分の攻撃を反転されても物ともしない。“竜種”の耐久力は伊達では無いのだ。

 しかし、いくら耐久力が高かろうと、もうヴェルドラの攻撃はカレンには通用しない。

 

 

「くうっ! なぜっ、当たらないのグオワァ!?」

 

「言ったでしょ、大雑把過ぎると。それに単純過ぎる。避けるのも弾くのも、カウンターを当てるのも容易です」

 

「ズルい! インチキではないかっ!!」

 

「だから子どもか」

 

 

 ヴェルドラの攻撃の破壊力は世界でも随一だが、それをヴェルドラ自身は全くと言っていいほど使いこなせていない。避けながらアッパーカットを決めることも容易いことだ。

 ヤケクソ気味に纏った“破滅の嵐”も“黒き稲妻”も、カレンは高密度“万能感知”と“聖別”により全くの影響を受けない。

 

 もう勝敗は決したかのように見えた。

 究極能力(アルティメットスキル)の覚醒により、今までに無く絶好調なカレン。対して、いくら暴れようとも空振りしてイライラを募らせるヴェルドラ。

 

 

「覚悟はいいですか? やった事の精算はしてもらいます。ゲンコツ一発じゃ済みませんよ!」

 

 

 カレンは拳を握りしめ、全力の一発をヴェルドラの脳天目掛けて見舞おうとする。

 

 

 ……だが、その拳はヴェルドラには届かなかった。

 

 

「───あれ?」

 

 

 拳が空を切ったカレンは、飛行魔法も維持出来ずに落ちていく。

 

 カレンはスキルの進化、ライラとの会話により迷いが無くなった事により、アドレナリンが過剰に出たかのような興奮状態にあった。

 その昂る精神に身を任せ、自身の限界など考えずに高密度“万能感知”を維持し続けていた。

 更には、“聖別”による攻撃の無力化も、カレンの精神力を大幅に消費していた。ヴェルドラの攻撃のエネルギー量は尋常ではなく、それを丸ごと属性変化させていたのだから、精神力の消費も比例して莫大なものとなる。

 

 故に今、精神力が本当の本当に限界を迎えたカレンは、自身の存在を維持するだけでも精一杯の状態となっていた。

 もうすっかりクレーターだらけになった森林だった場所に落ち、カレンは霞む視界の中、歯を噛み締めた。

 

 

(クッソ……指一本も動かせないし……。意識保つだけでもキツイ……。皆に背中押されて調子乗り過ぎた……)

 

 

 聖霊属性のリジェネも、魔素や生命力を回復出来ても精神力までは癒すことはできない。

 最高な気分から一気に命の危機に瀕することになった。

 しかしカレンは、調子に乗った反省はしているが命の心配はしていない。

 

 

「ん? 急にどうしたのだ?」

 

「調節間違えました。もう動けません」

 

「?……? よく分からんが、我の作戦勝ちということだな! これも狙っての事よ! クアーッハッハッハァ!!」

 

「……ハァー……いっそ清々しいくらい馬鹿ですね」

 

 

 もはや馬鹿過ぎるヴェルドラにカレンは一周まわって庇護欲さえ覚えていた。孤児院の子どもより精神年齢が幼いんじゃないだろうか。

 

 雷嵐咆哮(サンダーストーム)を食らって無傷だったカレンを見た時から、何かおかしいとは思わなかったのだろうか。

 

 

「ま、今回は私の負けでいいですよ」

 

「クアハハハハァッ! やはり我は最強ということだな! ならば手向けに最後の一撃を……」

 

 

 

「───てことで、後はお兄さんにお任せしましょう」

 

 

 

 ヴェルドラが発動させようとした全力の“破滅の嵐”。

 台風もかくやという規模のそれは、周囲に何の影響を与えることも無く不発に終わった。

 

 いつの間にかカレンの前に立っていた、“()()()()()の手によって。

 

 

 

「上出来だね、カレン。流石はボクの弟子だ」

 

「ったく……来るのが遅いんですよ」

 

「ごめんごめん。でも、後はボクに任せてよ。…………さてと」

 

 

 カレンの不満気な言葉に笑って返すと、翻って弟の顔を見上げる。

 

 

「───兄弟喧嘩しようか、ヴェルドラ」

 

 

 “星王竜”ヴェルダナーヴァは目を細めて笑い、同じ黄金色の瞳を交差させた。

 

 

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼

 

 

 

 

 

 地形を変えるレベルの攻撃を受けて無傷な時点で、カレンはヴェルダナーヴァがいることには気付いていた。

 というか、カレンを守っていた結界には残滓がありありと残っていたし、ヴェルダナーヴァも隠す気は無かったのだろう。

 「最悪ボクがいるから、全力でやってごらん」ってところだろう。カレンは癪に障りつつも、お言葉に甘えて出し惜しみせずに究極能力(アルティメットスキル)を試させてもらったわけだ。

 

 いきなり現れたヴェルダナーヴァに、ヴェルドラも目を剥いて驚いている様子だった。

 

 

「ゲェッ!? 兄上!? なぜ此処に!?」

 

「ゲェとはヒドイなぁ。可愛い愛弟子のピンチに、たまには師匠らしく出張ろうと思ったまでさ。それに、少し君の世話を妹達に任せ過ぎたとも思ってね」

 

「む? それはつまり……」

 

「うん、ボクが遊んであげるよ」

 

 

 ヴェルダナーヴァがニッコリ微笑むと、ヴェルドラは表情を輝かせた。

 それはそれは嬉しそうに、魔素を撒き散らしながら雄叫びまでしている。普段構ってくれない兄と遊べるとあって、よっぽど気合いが入っているようだ。

 

 対するヴェルダナーヴァはその様子を微笑ましそうに見ている。

 ……のだが、カレンはその微笑みに少し違和感を覚えていた。

 

 

(……なんか、怒ってる?)

 

 

「クアハハハハハ!! 兄上と遊べるとは、今日は運が良いな! ならば我も、全力でいくとするぞ!」

 

「うんうん、存分に暴れるといいよ」

 

「ちょっとヴェルダナーヴァ、離れてるとは言え村があるんですよ。もう私は結界の維持も出来てないんですからね」

 

「心配無いよ、もうボクが新しいのを張ってあるから。それよりカレン、ちゃんと見ていなよ…………少しだけ、ボクの本気を見せてあげる」

 

 

 ヴェルダナーヴァは背を向けたままカレンに伝えると、右手を虚空に翳した。

 そして、短く呟く。

 

 

「おいで───“星王(スター)”」

 

 

 右手の時空が軋み、一振の光り輝く長剣が顕現した。

 

 “地神(デーヴァ)”をルドラに譲り、残るヴェルダナーヴァの手ずから創造した武具も友人の魔王や精霊女王に譲った。

 その中でも、ヴェルダナーヴァ以外を所有者として認めなかった武器が一つだけあった。

 

 それが───神剣“星王(スター)”。

 宇宙の輝きを一つに纏めた一振。現在世界に八つのみ存在する、武具の秘匿されたもう一つの位階……創世級(ジェネシス)の剣である。

 

 まだ神話級(ゴッズ)になったばかりの“天聖(アニマ)”の数千倍のエネルギーを誇る、ヴェルダナーヴァの肉体の一部でもあり、その『本気』の一端だ。

 

 

「? 兄上が剣を握るのを見るのは初めてだな」

 

「君に見せるのは、確かに初めてだね。本気の時にしか使わないから、滅多に見せることは無いよ」

 

「っ! ……ククク、クアーーッハッハッハッ!! ならば我は、兄上に本気を出させるに足るということだな!!」

 

「貴方の弟さんは誰に似たんでしょうね」

 

「厳密に言えば“竜種”に血の繋がりは無いから、これはヴェルドラの生来の性格だよ」

 

「単純に馬鹿ってことですね」

 

「うん、可愛いよね」

 

「うおおおぉーッ!! ゆくぞぉーッ!!」

 

 

 カレン達の大変失礼な会話には耳もくれず、ヴェルドラは己ができる最大出力の攻撃を構える。

 自身が司る風、嵐、雷、それらの強大な権能を使いこなせておらずとも、それすら己の莫大なエネルギーによりねじ伏せる。

 ヴェルドラの頭上を中心に雲が渦巻き、雷鳴が轟く。天変地異さながらの光景が、一体の竜種の手によって引き起こされていた。

 

 それを見ながらも、ヴェルダナーヴァは邪魔をしない。ヴェルドラにしっかりと全力を出させようとしていた。

 カレンは、「自分はこんな奴の攻撃を無効化していたのか」と自分の新たな権能に少し引いていた。そりゃ精神力を使い果たすわけだと。

 自分の命に関しては、やはり微塵も心配してはいない。

 

 ……ヴェルダナーヴァの規格外さは、自分が一番近くで見ているのだから。

 

 

「死んでも恨むでないぞ兄上ッ! 我が全力の超必殺!! “轟雷暴嵐咆哮(テンペストデストロイヤー)”ァッッ!!!」

 

 

 ヴェルドラがちょっと我慢して溜め込んだ破滅のエネルギーが、その咆哮と共に一気に放出される。兄達すらも超えるエネルギー量を持つヴェルドラの、文字通りに全力の一撃。

 先程の雷嵐咆哮(ストームブラスト)を軽く凌駕する、星の磁場にさえ影響を与える可能性のある暴風。

 

 それを目の前にしても、ヴェルダナーヴァには一部の変化も無い。カレンでさえ少しだけ焦っているというのに。

 ただゆったりと剣を構え、無造作に振り抜いた。

 

 

 

「─── 星王竜閃覇(ノヴァブレイク)

 

 

 

 ……瞬間、空が割れた。

 ヴェルドラが放った咆哮も、ヴェルドラの肉体も、その先の曇天さえ、僅かな障害になること無く切り裂かれた。

 

 ヴェルダナーヴァが持つ“竜種”としての権能。そして究極能力(アルティメットスキル)正義之王(ミカエル)』の権能。

 それらを使用して再現した『誓約之王(ウリエル)』の権能、『絶対切断(アプソリュートエンド)』により放たれる必殺の一撃───超絶聖剣義(オーバーブレイド)の一閃。

 

 その一撃はヴェルドラの魔素により汚染されていた大気も、周囲に溜まっていた魔素も吹き飛ばした。『正義之王(ミカエル)』による結界が無ければ、目を当てられない程悲惨なことになっていただろう。

 

 

 嵐が突然消滅したかのように、驚く程に呆気なく、“竜種”同士の兄弟喧嘩は一刀のもとに幕を下ろした。

 

 首も“魂”も“心核(ココロ)”も斬られ、訳も分からずに消滅していくヴェルドラを一瞥し、ヴェルダナーヴァは優しくも恐ろしい微笑を浮かべながら、最後に弟に言葉を投げかけた。

 

 

 

「ボクの勝ちだね、ヴェルドラ。何で負けたのか、数百年くらい眠ってよく反省するといいよ」

 

 






「とっっっても! 心配したんですからねっ!」

「ルドラ、スキル貸〜して♪」

「ハァッ!? ズリいぞカレンてめえ!」


「嬉しいですけど……ちょっとやり過ぎでは?」


次回 『第31節 “能力魔改造(オルタレーション)”』



 『至聖之王(パナギア)』の詳細に関しては、第31節の後に投稿予定の設定資料で公開します。
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