私は聖女じゃねえんですよ   作:苦闘点

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 感想、評価、ここすき、全ての読者の皆様に感謝を。
 そして400000UA、総合評価13000pt突破! 額を地面に擦り付けて感謝と謝意を申し上げます。
 
 はい、謝意です。申し訳ありませんでした、力尽きちゃいました。流石にGW最終日に書き始めるのは無理がありました。準備はちゃんとしとくべきですね。
 定期週一投稿はこれからも続けます。次の連続投稿はいつになるかは分かりません。


第31節 “能力魔改造(オルタレーション)

 

 

「………………」

 

「落ち着け、ルシア」

 

「これが落ち着いていられますか! カレンのピンチなのですよ! 兄様はどうしてそんなに落ち着いていられるのですか!」

 

 

 カレンのいないナスカ王国王城、いつもの居間でルシアは挙動不審にあちこちを歩き回っていた。

 

 

 暴風大妖渦(カリュブディス)を観測し、カレンの元にヴェルドラが迫っているかもしれないと分かった時はまだ良かった。

 カレンが暴風大妖渦(カリュブディス)に圧勝した時は、ルシアとヴェルグリンドは一緒に手を取り合って喜んでいた。

 

 

「やりましたよカレン! しっかりと精神体(スピリチュアルボディ)ごと仕留めました!」

 

「私たちと一緒に練習した魔法だもの。ヴェルドラの眷属ごときに遅れを取るわけが無いわ」

 

「妹馬鹿だなお前ら……にしてもコイツ、こんなに脳筋だったっけ?」

 

 

 こんな風に、三人で戦闘の様子を観戦していた。

 ヴェルダナーヴァが万が一の為に助けに行ったし、最悪何かあっても大丈夫だろうという安心があった故のことだ。

 三人とも、暴風大妖渦(カリュブディス)が出たからヴェルドラも近くにいるんじゃないかと心配していたが、そんな事も忘れてカレンの活躍に夢中になっていたところ……。

 

 

「……え? なっ、感知が途切れました!」

 

「ちょっと! ヴェルドラちゃん来てるじゃない! あーもう! 魔素嵐のせいで何も分からないし! もう私が行ってこようかしら!」

 

 

 一瞬にして観戦ムードから阿鼻叫喚になる二人。ルシアは当然中継が途切れてパニクり、ヴェルグリンドは接近していたヴェルドラに気付かなかったことで自分を責めていた。

 

 だがただ一人ルドラだけ、カレンの心配はせずに別のことに気付いていた。

 

 

「……ヴェルダナーヴァの野郎、帰ったら詰問だな」

 

「に、兄様! 今すぐ転移しましょう! ヴェルダナーヴァ様だけでは不安です!」

 

「そうよ! 最悪お兄様なら放置しかねないわ!」

 

「そうだなー。確かに有り得るな。つか今起こってるな」

 

 

 そう言ってルドラは、自身の“万能感知”により知り得た情報を二人に共有する。

 

 そこには、カレンの故郷の村が()()()()()()()()()()()()()()に守られている様子が映っていた。

 それはヴェルダナーヴァが持つ究極能力(アルティメットスキル)正義之王(ミカエル)』の権能、“王宮城塞(キャッスルガード)”を応用した結界だった。

 

 その様子を見て、ルシアとヴェルグリンドは固まる。そして同時に思い至った。

 

 

 ……またヴェルダナーヴァ(バカお兄)様がやりやがった、と。

 

 

 思えばカレンを助けに行こうと言った時から、おかしいと思えるところはあった。

 

 

『ボクが行ってくるよ。あんまり大勢で行くと、ヴェルドラが興奮して暴れ過ぎちゃうかもしれないからさ。様子はルシアに繋ぐから、ボクが連絡したら来てくれるかな。大丈夫大丈夫、危なくなったらちゃんと助けるからさ』

 

 

 ヴェルドラが一番興奮するであろう相手がヴェルダナーヴァだし、興奮しても大勢でリンチにすればいいだけだし、そもそもヴェルダナーヴァがいてヴェルドラの魔素嵐が起こるなんて有り得ない。

 しっかりカレンの憂いとなる故郷のケアをしているあたり、確信犯であった。

 

 

 というわけで、どうせ今から転移してもヴェルダナーヴァに邪魔されるので、ルシア達は城でカレンの心配をするしか無くなったのだ。

 ヴェルグリンドにしても同様に、イライラした様子でカレンの帰還を待っていた。

 

 二人に共通してるのは、カレンの心配をしつつもヴェルダナーヴァの沙汰をどうするか、冷えきった思考で考えていることである。

 近寄り難いオーラ全開の二人に対しビビりながら、ルドラは特にカレンの心配はしていなかった。

 

 

(ヴェルダナーヴァがいて滅多なことは起きないだろ。さっきの話からして、多分今がカレンの正念場なんだろうな。でも“勇者の卵”もねえのに、スキルの進化なんざ……いや、アイツならありうるか〜)

 

 

 直感でほぼ完璧にカレンの状況を当てていた。ちょうどこの時、カレンは究極能力(アルティメットスキル)に覚醒してヴェルドラをボコっていた。

 

 

 そしてその十数分後、カレンとヴェルダナーヴァが転移で帰ってきた。

 

 

「ただいまでーs……うわっ!? どうしました二人とも!?」

 

 

 転移した瞬間、ルシアとヴェルグリンドはカレンにタックルして抱き着いた。カレンは驚きはしたが、孤児院の子どもで慣れている為ルシアは問題なくキャッチできていたが、ヴェルグリンドは加速の権能を使っていたのでダメージがキツイ。

 ルシアは前からヴェルグリンドは後ろから、割と長時間抱きしめていた。さながらデカイぬいぐるみである。

 

 

「…………カレン」

 

「は、はい?」

 

「とっっっても! 心配したんですからねっ!」

 

 

 ルシアは目尻に涙を浮かべ、怒ったようにカレンに言った。

 ルシアがカレンを心配していたのはヴェルドラが現れたこともあったが、直前でカレンからされていた相談もあり、余計に心配していたのだ。

 ヴェルグリンドは相談こそ受けてないものの、自身の弟たるヴェルドラの凶悪さは知っている。遊び半分でカレンを吹き飛ばす想像しか出来なかった。

 

 二人の心配度と自分の身体の圧迫度をひしひしミシミシと感じ、カレンは絞り出すように言う。

 

 

「ふ、二人とも……心配をかけ……グッ、ちょっ、一旦離して……」

 

「そろそろ離してやんねえとカレンが潰れんぞ。そいつただでさえ体薄いのにグッハ!?

 

「何か言ったかテメエ」

 

「お、俺様の絶対防御が……」

 

 

 霊子を用いた攻撃なら『誓約之王(ウリエル)』の絶対防御も貫通できるのである。今は関係無いが。

 

 圧死しそうなカレンはルシアに任せ、ヴェルグリンドはその様子を見ていたヴェルダナーヴァに詰め寄った。

 

 

「あらお兄様、逃げないなんて今回は随分と潔いじゃない。じゃあ今からもう一度ヴェルドラと遊んでくる? あの世で」

 

「ヤダなぁ、ヴェルグリンド。“竜種”は滅んでも輪廻には乗らないよ?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「“灼熱深紅炎覇(カーディナルフレア)”!!」

 

「“王宮城塞(キャッスルガード)”」

 

「ちっとも反省してないじゃない! ルドラ! 『誓約之王(ウリエル)』ならコレ(結界)破れるわよね! お願い!」

 

「別にいいけど、そしたら中のヴェルダナーヴァも一緒に斬れるぞ」

 

「いいわよ別に!」

 

 

 妹からヒドイ扱いだが、この場においてヴェルダナーヴァの地位は一番低いのだ。“星王竜”がこんな扱いを受けるのはこの空間だけだろう。もし異界にいるヴェルダナーヴァの側近がこの光景を見たら、泡を吹いて卒倒するかもしれない。

 ヴェルダナーヴァも笑いつつも、少しだけ微妙な表情をしている。そんな顔をするなら初めからカレンを助けておけという話だ。

 

 だが、ヴェルダナーヴァにだって考えがあってあんなマネをしたのだ。いつも笑っているからって頭まで空っぽな訳じゃない。ヴェルドラの馬鹿は兄の遺伝では無いのだ。

 

 

「まあまあ、ボクが限界の見極めを誤ることなんて無いさ。ちゃんと危ない攻撃からは守ったし。それにおかげで、カレンもかなり早く次の段階に進めたしね。ね、ルシア」

 

「……究極能力(アルティメットスキル)の獲得、おめでとうございます、カレン。色々……決まったようですね」

 

「え、ええ。おかげさまで」

 

 

 ルシアはカレンの胸に顔を埋めたまま、“解析鑑定”でカレンの変化を見抜き控えめに祝った。

 ルシアだって、ヴェルダナーヴァがカレンのスキルの覚醒の為に何もせず見守っていたのは重々承知している。それでしっかりと覚醒できたのだから、結果だけ見れば文句は無い。

 

 結果だけ見れば、だ。

 付け加えると、ルシアは過程も重んじる研究者だ。

 

 ルシアは数回カレンをニギニギした後、離れてヴェルグリンドの炎に焼かれるヴェルダナーヴァの前へ来た。

 そして、ルシアのみが放てるヴェルダナーヴァに必殺となる技を言った(放った)

 

 

 

「ヴェルダナーヴァ様、今すぐ結界を解いて私たちに燃やされるか、半年間私と口をきかないか。どちらを選びますか?」

 

 

「…………ゴメンナサイ」

 

 

 もう一度言うが、ヴェルダナーヴァがこんな扱いを受けるのはこの空間だけだろう。

 

 

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼

 

 

 

 

 

「さて、じゃあ気を取り直して……」

 

「貴方は気を取り直す前に、顔面の状況を取り繕わなくていいんですか?」

 

「だって治したらまた殴られるし……」

 

「調教バッチリですね、グリン義姉様」

 

「カレンに免じて止めてあげただけで、私は全然収まってないけどね」

 

「もう許してやれよお前ら。あとカレン。俺らの気が散るからヴェルダナーヴァの顔面治してくれ」

 

 

 俺はちょっと気乗りしないけど、確かに気が散るので岩石地帯になっていたヴェルダナーヴァの顔面を治した。こんな事しなくても自分で治せるだろお前。「染みる〜」じゃねえよ気持ち悪い。

 顔が治ったヴェルダナーヴァは、今度こそ気を取り直して話し始めた。

 

 

「よし。それじゃあまずはルドラに話があるんだけど……」

 

「カレンじゃねえんだ。何だ?」

 

「ルドラ、スキル貸〜して♪」

 

「よしカレン。もっかい治す準備しとけよ。また怪我人が出る、つーか出す」

 

「まあまあまあ聞いてって。まずは剣をしまって」

 

「まずお前は順序だてて話をしろ」

 

 

 したい話を順序をすっ飛ばして話すヴェルダナーヴァの悪癖は今も健在である。俺もルドラもいつも苦しめられている。

 と言っても、今回俺は予め聞いていたので文句は無い。無いけど便乗して殴っとこ。

 

 

「ふぅ……では、私から話しましょう」

 

「なんかいつにも増してボクの扱いが雑じゃないかな? さっきはカレンにカッコイイところ見せたはずなんだけど」

 

「まず私は、色々あって究極能力(アルティメットスキル)を獲得しました」

 

「それなんだが、結局きっかけは何だ? お前“勇者の卵”持ってないだろ。ヴェルダナーヴァが何かしたのか?」

 

「きっかけはありましたが、多分自力ですよ。それとヴェルダナーヴァが何かしてないから、今から言う話に繋がります」

 

 

 究極能力(アルティメットスキル)を自力獲得と言ったあたりで、三人から「コイツ……」という視線を感じたが、俺は悪くないので無視させていただく。

 

 

 ヴェルダナーヴァが一撃でヴェルドラを屠った後、俺は回復してもらって気になっていた話を聞いた。

 

 

『で? 貴方は何をそんなに怒ってるんですか?』

 

『……怒る? ボクがかい?』

 

『自覚無しですか。いつもと雰囲気違いますよ』

 

 

 ヴェルダナーヴァが俺を助けに来た時から、若干だが空気が違った。何考えてるのか分からない笑顔は健在だが、なんか違ったんだよな。“魂の回廊”のせいか。

 超然的な思考を持ってるが、日々人間らしくなっている気がするヴェルダナーヴァ。喜怒哀楽のうち喜楽しか標準的じゃなかったが、やっと三つ目を獲得したらしい。

 

 

『ふむ……カレンを傷つけられて怒っちゃった☆』

 

『御託はいいので』

 

『……いやぁ、実はさ。カレンがそろそろ究極能力(アルティメットスキル)を獲得するんじゃないのかって、薄々感じてたんだけどね。でも……』

 

『でも?』

 

『最初の究極能力(アルティメットスキル)は、ボクからあげようと思ってたからさ〜……カレンが自力で獲得しちゃったからさ〜……』

 

 

 拗ねた子どもかよ。ヴェルドラとそう大差無いじゃねえか。指をイジイジさせるな気持ち悪い。

 というか、お前それで八つ当たり気味に弟をボコったのかよ。イライラしてたから発散しただけじゃん。

 俺だって獲得しようと思って獲得した訳じゃない。なんかライラ達に背中を押されたらノリで獲得出来ちゃっただけだし。

 

 

 

「ということで、『聖者(キヨキモノ)』は進化しちゃったので、残る『贖罪者(アガナウモノ)』をヴェルダナーヴァに進化してもらおうということです。あとついでに皆の究極能力(アルティメットスキル)から権能貰っちゃおうとも話してました」

 

「ハァッ!? ズリいぞカレンてめえ! 俺様だって究極能力(アルティメットスキル)くらい自力で獲得したわ!」

 

「ルドラとは“魂の回廊”が繋がってないからね。ボクの予想を上回ったカレンへのご褒美ってことで。ルシアもいいかな?」

 

「一向に構いません! カレンの為なら何でもしてあげますし、ヴェルダナーヴァ様の能力改変(オルタレーション)を見たいので!」

 

 

 ルシアは魔法狂であるが、スキル狂でもある。『知識之王(ラファエル)』だけでは他人のスキルをどうこうすることは出来ないので、ヴェルダナーヴァの権能が無いと能力改変(オルタレーション)は見れないのだ。

 別に派手なことはやらないと思うのだが、ルシア的にはお祭り的な事らしい。ヴェルダナーヴァをボコボコにして晴れた機嫌もすっかり直っている。

 

 とここで、一人ハブられているヴェルグリンドが抗議した。

 

 

「ちょっとお兄様、私の『救恤之王(ラグエル)』からもあげるわよ、というかあげなさいよ。私だってカレンに何かしてあげたいわ」

 

「あ、それなんですけど。すみませんグリンド」

 

「二人の分でカレンの容量オーバーでね。権能の統合のために、一回スキルを全部カレンに集める必要があるんだけど、流石に究極能力(アルティメットスキル)一つに美徳系の権能三つを無理やり突っ込んだら、カレンが……」

 

「“魂”が耐えきれなくてパーン! ってなっちゃうそうです。ごめんなさいまだ未熟で」

 

「パーン?」

 

「やめておこうか。絵面的に」

 

「パーン……」

 

 

 究極能力(アルティメットスキル)のいくつかに、『天使系』と呼ばれるヴェルダナーヴァがかつて持っていた14のスキルがあるらしい。そしてその中でも、ルドラが持つ『誓約之王(ウリエル)』、ルシアの『知識之王(ラファエル)』、グリンドの『救恤之王(ラグエル)』は『美徳系』という凄いスキルらしい。

 そんなの三つから一部とはいえ権能を貰うと、流石の俺の“魂”も耐えきれないらしい。

 

 それとルシア、「パーン」にそんな反応するな。見たそうにするんじゃない。上目遣いでもダメ!

 

 

「チャチャッと終わらせちゃいましょ。貴方に何かしてもらうのなんて“聖人”に進化した時くらいですし、そんな仰々しいもんじゃないでしょう?」

 

「一応究極能力(アルティメットスキル)を獲得しようってんだよな。んなついでの用事みたいな」

 

「実際ついでにご褒美貰うみたいなもんですし」

 

「よし、じゃあ始めようか」

 

 

 前置きが長くなったが、ようやくヴェルダナーヴァによる“能力改変(オルタレーション)”が始まった。

 

 

 

《……告。固体名:ルドラ・ナスカより、究極能力(アルティメットスキル)誓約之王(ウリエル)』を借用。また、固体名:ルシア・ナスカより、究極能力(アルティメットスキル)知識之王(ラファエル)』を借用……確認しました。続けて“魂の回廊”を用い、能力改変(オルタレーション)を開始します》

 

 

 俺の頭にさっきぶりに“世界の言葉”が響き、『贖罪者(アガナウモノ)』が形を変えていく。

 ヴェルダナーヴァは自身の権能により、世界のシステムをある程度自由に弄ることができる。そして『正義之王(ミカエル)』の権能、“天使長の支配(アルティメットドミニオン)”を応用し、ルドラとルシアの二人の権能を勝手に使用できる。

 

 そしてこの能力改変(オルタレーション)はヴェルダナーヴァが前々から準備をしていたもの。なので俺が言ったように本当に仰々しいものではないのだ。

 ……ほら、もう終わるぞ。

 

 

 

《…………確認しました。ユニークスキル『贖罪者(アガナウモノ)』が、究極能力(アルティメットスキル)聖裁之王(カマエル)』へと進化……成功しました》

 

 

 はい、終了。マジでほんの数秒だった。

 よっぽど前から準備していたんだろう。一切の無駄なく権能を選別し複製し統合し、能力改変(オルタレーション)はすぐに終わった。

 これだけ綿密に準備していて先を越されたら、そりゃ弟に八つ当たりの一つでもしたくなるな。

 

 

 さーて、元は二つしか権能が無かった『贖罪者(アガナウモノ)』だが、進化して何が変わったかな〜。

 

 究極能力(アルティメットスキル)聖裁之王(カマエル)』……『罪障支配・天罰・法則操作・空間支配・万能結界・並列演算・森羅万象』。

 

 

 …………うわぁ。

 

 

「……結構やりましたね、貴方」

 

「いやぁ、久しぶりだから興が乗ってね。いい感じになっただろう?」

 

「フフ、フフフフ……どうにかして『知識之王(ラファエル)』も改変して能力(スキル)を好き勝手できるようになりませんかね……。私ならグリン義姉様の権能も調整して統合するのに……」

 

「したらパーンってなるんだろ。俺解析系のスキル持ってねえから、どうなったか分からねえんだけど。グリュン分かる?」

 

「ルドラから三つでルシアから二つなら、私から一つくらいあげられない?」

 

「待ってそんなにやったの?」

 

「やってますよ。私としては嬉しいですけど……ちょっとやり過ぎでは?」

 

「えー? ボクとしてはまだまだ足りないくらいだよ?」

 

 

 足りないって、権能の数3.5倍はやり過ぎだろ。改変ってか魔改造じゃねえか。原型留めてないぞ。

 こんなに権能があったって、使いこなせなければ意味は無いんだよ。 七個中五つはルドラとルシアと同じだし、教えてもらうか。冷静に整理するとすごいな、俺由来の権能が二つしかない。

 

 

「まあ、明日から頑張ってスキルの鍛錬ですかね。ちょうどいい星王竜と勇者(練習台)もいますし」

 

「ルビがおかしいのは置いとくが……いいのか? お前昨日までひでえ顔してたじゃねえか」

 

「そういえば……カレン、大丈夫なの?」

 

 

 ああ、そのことか。

 ルドラもグリンドも心配してくれていたようだけど、帰ってきたらいつもと変わってないもんな。

 

 確かにここ最近みんなに心配をかけたようだし、ここでケジメでも付けておこうか。

 

 

「……ヴェルダナーヴァ」

 

「何かな? カレン」

 

「やっぱり、寿命とか天命とかってクソですよ。ライラさんを看取って、改めて思いました」

 

 

 ヴェルダナーヴァに最初に会った時も言った。元々ヴェルダナーヴァを殴りたいと思ったきっかけも、神父様の死の原因の寿命なんてものを作った腹いせだった。

 今に至るまで何十人も看取ってきて、その度に寿命という不条理を恨んだ。そして同時に怖くなっていた。こんな喪失感を、これから数え切れない程見ることになるという事が。

 

 実際、今もその恐怖はある。きっと俺は、どんなに時を重ねても人の死には慣れないんだと思う。

 

 だが……

 

 

「けど、もう迷いません。もう下は向きません。私が託されたものを見つける為に。そしてそれを繋いでいく為に。……親友に、そう喝を入れられたので」

 

「……何があったのかと思ったけど、そっか。彼女に会ったんだね。それなら納得だね」

 

「というわけで、もう一度貴方に宣言します。決意の更新ってことで」

 

 

 そう言って俺は、拳をヴェルダナーヴァの胸に突きつけ、真っ直ぐと見上げた。

 

 

 

「必ず───貴方を越えてみせます。やっぱりそれが、私がこの未来()を生きる指針ですから」

 

 

 

 神父様との約束も俺の鬱憤も、皆から託されたもの、今俺が守らなくてはならないものも沢山ある。

 それも全力でやるとして……結局俺の最大の目標は、この神のニヤケ面をぶん殴ってやる事だ。

 

 

「貴方も覚悟を決めましょうか。元はと言えば私をこんな(聖人)にしたのは貴方なんですよ。しっかり、責任取ってくださいね」

 

「フフ……ああ、楽しみにしているよ。ボクの『()()』に届くことを」

 

 

 ヴェルダナーヴァは笑い、寸止めしていた俺の拳を掴んで自分の左の胸……心臓の位置に当てた。

 精神生命体だから鼓動なんてしないが、こうして触れるとより覚悟が実感できるな。

 

 

「狙ってほしいのは、首じゃなくてここなんですね。ならルドラより私の方が有利ですか」

 

「俺様は別にヴェルダナーヴァのこと狙ってねえよ。てか本気で殺すなよ?」

 

「殺すなんて言ってませんよ。ただこのスカした神様を、完膚無きまでにボコボコにしたいってことです」

 

「より難しい事になってますがね。……でも、やっぱりカレンはそうしてる方が安心できます」

 

「お兄様を負かすなら、まずは私たちの誰より強くならないと。私のルドラに勝てるかしらね」

 

「上等ですよ。500年の遅れなんか、すぐに追いついてみせます」

 

「ほお〜? んじゃ今から早速修行再開といくか? スキルの確認も兼ねてよ」

 

「いいでしょう、私はもう究極能力(アルティメットスキル)二個持ちなんですよ。一個しか無い貴方よりワンチャン強くなってんですからね」

 

「お? 俺様も二個持ってっけど?」

 

「ハァ!? 『誓約之王(ウリエル)』だけじゃないんですか!?」

 

 

 

 いつものように、騒がしくなる王城。

 俺とルドラとルシアとグリンドとヴェルダナーヴァ。きっとこの先もずっと一緒に居ることになるであろう……故郷の村と孤児院の子どもと同じくらい、俺の人生の大部分を占める人達。

 

 覚悟を新たにし、新しい力も手に入れた。

 この先どこまで続くか分からない人生の節目として、再び始めていこう。

 

 いつか……俺の師匠()を越えるまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───ワチャワチャし始めた四人を見つめ、ヴェルダナーヴァは自身の心臓に手を当てた。

 

 そこには()()鼓動は無い。

 だが、恐らくそう遠くないうちに来てしまうだろう。

 それまでに準備しなくてはならない。弟子達の事も、弟妹の事も、愛する者の事も。

 

 

「ボクも──────覚悟を決めないとね」

 

 






 新しい究極能力(アルティメットスキル)の説明は次回です。ということで、

次回 『聖典史料 ─勇者一行─』
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