私は聖女じゃねえんですよ   作:苦闘点

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 筆が遅くて申し訳ありませんが、どうかお付き合いください。


第08節 “黒”の悪魔

 

 

 その男は商人だった。

 

 それなりに名の知れた大国から偶然ナスカ王国方面へ商品を仕入れに来た帰りだった。男は森にほど近い小さな村に立ち寄ることになった。

 

 その村は、普通の村とどこか違った。

 護衛の魔法使いが言うには、ここらの森は魔素溜りが発生しやすく、魔物が出やすい。

 故に、この村もしばしば魔物の襲撃を受けるはずだと言う。

 

 にも拘らず、その村には活気と陽気さに溢れていた。怪我人など一人もおらず、皆魔物の脅威に怯えていないようだった。

 

 村の者に聞いた。この村には凄腕の魔法使いでもいるのかと。

 

 

『魔法使いではありませんが、カレン様がこの村を守ってくれてるんですよ。怪我も治してくれるし、本当に助かっています』

 

 

 この村にいる、カレンという者が原因らしい。

 曰く、この村近くの教会に住むシスターであり、この村の守護や怪我人の治癒をほぼ一人で担っているらしい。

 

 いかにここが小さな村と言えど、その人口は100を超えるはず。その皆を治癒し、あまつさえ魔物まで倒すなど、普通のシスターに出来ていい所業では無い。

 その商人が住む街にも、そのような者は居ないというのに。

 

 しかも、そのシスターはキリングベアを手懐け、村の守護を一部任せているそうだ。

 どんな冗談かと思ったが、村の住人が指を差す方に居眠る巨大な熊がいた為、すぐに信じたくない事実だと分かった。

 

 

 とにかく、この村の異常性は全てそのカレンというシスターの仕業なのだ。

 商人はその女が気になった。もしかしたら、金を積めばその女をものに出来るかもしれないという下心もあったが。

 

 村の端にある教会へ行った。

 

 

 そして見た。─────聖女を。

 

 

 

『…………あ、すみません。昼のお祈り中でして。何か御用ですか?』

 

 

 

 純白の修道服とローブを纏った、美しい女性。

 すぐに分かった。この女性こそ、カレンというシスターなのだと。

 

 商人は特に信心深くはなかった。しかし、カレンの神聖さは商人の心を奪うには十分だった。

 

 

 商人はどうにかして、カレンを物にしようとした。

 欲深いその男が間違えた選択のうち、一つ目はここであろう。金でも力でも、商人とその護衛の魔法使いでは到底カレンを手に入れるには足りなかった。

 

 村の中では諦めたようであった。しかしその道中で、魔法使いが進言してきたのだ。

 

 

 ……悪魔を召喚し、あの村を滅ぼしてしまえば、かの聖女は行き場を無くすだろうと。

 

 

 如何に村の守護をしている聖女であっても、上位悪魔(グレーターデーモン)を呼び出すことに成功すれば、あのような小さな村を滅ぼすには十分であろうと。

 ただこの案に誤りがあるとするなら、カレンの実力は上位悪魔を上回っていることだろうか。

 

 だが、ここでも商人は選択を間違えた。

 

 呼び出してしまったのだ、悪魔を。

 本来護衛の魔法使いのレベルであるなら、上位悪魔を呼び出せれば御の字、という程であった。

 

 召喚は成功したように思えた。呼び出した悪魔の力は肌で分かるほど凄まじいものだった。

 

 

 ………そこできっと、商人の運は尽きたのだろう。

 

 

 今まで商売で成功してきた運は、その時に命運と共に尽きたのだと確信した。

 

 何故ならば……

 

 

 

『───クフフフフ……気まぐれに来てみれば、(ゴミ)しかいないではありませんか。契約の対価も不十分ですし、現界もそう長くは出来なさそうですね』

 

 

 

 呼び出された黒い悪魔を見た瞬間、護衛の魔法使い諸共、商人の身体は塵になり消えた。

 

 舌なめずりした悪魔は不敵に笑い、跪く商人の仲間を無視し視線を上げた。

 

 

『……ふむ、この対価なら契約は多少無視しても問題なさそうですね。では、この聖浄な気配でも探ってみましょうか』

 

 

 そして、悪魔は外套のような翼を広げ飛び立とうとした。

 

 最後に、恐怖で動けずにいた商人の仲間に目を向けた。

 

 

『ああ、お前はどうぞご自由に。大した力もありませんしね。しかし……クフフ、此処は魔素濃度が高いので、無事に帰れるとよいですね』

 

 

 見逃してくれた。だからその男は逃げた。昨日のあの村へと。あの聖女なら、助けてくれるかもしれないと。

 

 しかし、忘れていた。あの時商人の命運は尽きていた。同時にあの場にいたこの男も、同じ運命を辿ることは決まっていたのだ。

 

 

 悪魔が出たと村の者に伝え、住民の静止も聞かずに一人で教会に走ったその男は……

 

 人知れず、魂を奪われたかのように、ひっそりと息絶えた。

 

 

 

 

 

△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼

 

 

 

 

 

 俺は筋力増強(ストレングス)速力増強(アジリティー)を全力でかけて、村へ駆けていた。

 

 ルドラの言っていたことが本当かどうかはどうでもいい。

 悪魔が村へ行ったという可能性が少しでもあるのなら、俺は絶対に止めなくてはならない。

 

 

「間に合って……間に合ってください……!」

 

 

 村には結界を張ってきた。しかしそれもルドラが言うには長くはないらしい。

 

 

 ものの数分で、俺は村の近くまで戻ってきた。

 魔力感知を全開にする。……上だな。やけに小さいが、オーラの抑え方が上手いな。

 

 飛行魔法は苦手なんだが……四の五の言ってる暇は無いな。

 

 

「……貴方ですか、悪魔ってのは」

 

「おや、其方から来てくれるとはありがたい。探す手間が省けました」

 

 

 やけに慇懃な態度で返答してきたのは、全身真っ黒な仕立ての良さそうな服を着た悪魔だった。

 

 つっても、見た目は完全に人間だな。もっと山羊みたいな見た目をしているのかと思ってたぞ。

 赤いメッシュの入った黒い短髪は人間ぽいが、白目の部分が黒く、金色の瞳に赤い瞳孔だ。目だけは完全に人外だな。

 

 

「探す? 私に用があったのですか?」

 

「用、という程でも無かったのですが……クフフ、貴女を見て考えが変わりました。少々、遊びましょうk

 

「ちょいタンマ、ちょっと待ってください」

 

「おや、どうしましたか」

 

 

 ちょっと待って欲しい。遊ぶとかどうとかはこの際置いとくから、一回整理させて欲しい。

 

 

「えっと、あなたはこの村に用があったのではないんですか?」

 

「いえ、妙な結界が張られていたので、興味本位で来たまでですよ。これは貴女が張ったものでしょう?」

 

「そうですが、それが何か?」

 

「神聖魔法ですら無いのに、この魔に属するものを寄せ付けない聖なるオーラ……クフフ、久方振りの現世です。確認しない目は無いでしょう」

 

「あぁ……そですか」

 

 

 すごい楽しそうな様子で話す悪魔にゲンナリした返事しか出来なかった。

 なんか、死ぬほど慌てて損した気分だ。いやでも、まだコイツが無害な奴だと確定した訳じゃないし、気を緩めないようにしないと……。

 

 

「あの、村に用が無いなら此処からちょっと離れません? 村の人たちが心配なので」

 

「ほぉ。では、了承と受け取って宜しいですね?」

 

「え、何のですか?」

 

「確かに、此処では少し狭いですね。場所を変えましょう」

 

 

 悪魔が指をパチンと鳴らすと、周囲の景色が切り替わった。俺の住む教会の真上あたりだな。どうやったの今の。転移魔法ってやつかな。

 というか、別に害意が無いなら俺も無理に戦いたくはないんだけど……。

 

 

「えっと……もしかして戦うつもりですか?」

 

「えぇ、言ったでしょう。少々遊びましょうと」

 

「何でですか。私としては、戦わなくていいのならそうしたいのですが」

 

「そうですか。なら、やる気にさせるまでですよ。例えば……貴女は、あの村の人間を大層大事に思っているようですしね」

 

「…………」

 

 

 ……訂正だ。コイツは無害なんかじゃない。今まで遭遇した魔物の中で最悪の存在だ。

 今ここで戦わなければ、村の人が犠牲になる。安い脅しだが、俺にはこの上なく有効だな。

 

 訳の分からない魔法も使うし、力量ではこの悪魔の方が強いだろう。

 だからと言って、負ける気は無いがな。

 

 

「分かりましたよ。一応言っときますが、村には絶対に手出ししないでくださいよ」

 

「クフフ、やる気になって頂けたようで何よりです。心配せずとも、貴女が私を楽しませてくださる限りは手を出しませんよ。それにしても、あの村がそれ程大事ですか」

 

「えぇ、私にとっては自分よりもね」

 

 

 俺はそう言うと同時に、悪魔に対し『贖罪者(アガナウモノ)』を発動させた。

 相手は悪魔、そして少なくとも二人の人間を殺している。俺が知る法が適用させるこのスキルなら、コイツには相当の(バツ)が下るはず。

 

 案の定、コイツは殺人を引くほどやってる。思わず顔が引き攣るが……今は好都合だ。

 

 

「汝に"(バツ)"を」

 

 

 これで何かしらのペナルティが……与えられてない!? どういうことだ!?

 

 

「ふむ……スキルを使ったようですが、抵抗(レジスト)への対策がなされていませんね。弾くのは容易でしたよ」

 

抵抗(レジスト)……初耳ですよそんなの」

 

 

 知らんわ何それ。そんなのあるんならもっと早く気付きたかった! 今までの魔物たち、素直に受け取り過ぎじゃ!

 『贖罪者(アガナウモノ)』が効果なしとなると……アレをやるか。

 

 

絶対封魔聖域(プリズン・サンクチュアリ)

 

「む……これは……」

 

 

 俺たちを囲むように、正八面体の結界が構築される。

 元素魔法:万物隔離結界(マテリアルエリア)に聖属性を付与したものだ。外界と隔絶させ、内部にいる魔物を浄化する。

 発動した瞬間、悪魔の体が少し傾いた。多少の効き目はあるようだ。

 

 しっかし、黒蛇くらいなら完全停止するってのに、コイツときたら飛行まで維持してやがる。化け物かよ。また笑ってるし。

 

 

「クフ、クフフフフ……素晴らしい。私をこれほど弱らせるとは、やはり貴女は面白いですねぇ」

 

「弱ってるなら、もうちょっと弱ってる感じ出してくださいよ」

 

 

 快楽主義者か? それとも被虐趣味か。さっきルドラのことを変態とか言ったが、マジモンの変態が来てしまったか。確かにこんなのと一緒にされたら怒るわ。ごめんなルドラ。

 

 兎にも角にも、これで多少は俺に有利になっただろう。村に張った結界は解除したが、今度はこの結界の維持で魔力が消費される。範囲が狭いおかげで抑えられてはいるが、それでも二割は持ってかれてるな。

 

 

 黒い悪魔は両手を鋭い爪のように変えた。げっ、近接やるつもりかよ。俺魔法しか使えねえぞ。

 しゃーない、殺られる前に殺るしかない。

 

 

「手早く終わらせましょう。聖霊拡散光(サンクトゥスショット)!」

 

「クフフ、そう焦らずとも、逃げも隠れもしませんよ。そして、これも元素魔法ですか。相変わらず聖属性を備えているようですが、やはり貴女のスキルの関係でしょうか?」

 

「避けながら喋らないでくれません? 本当に弱体化してるんですか?」

 

 

 一発一発が聖霊閃光砲(サンクトゥスレイ)と同等の威力と速さを持つ光線が十発はあるというのに、危なげもなく避けやがって。

 

 避け終わった悪魔は俺へ肉薄し、鋭い爪を俺の顔目掛けて振るってくる。思考加速が無ければ即死だったな。それでもギリギリなんだけど。あっぶね今掠った! 痛覚無効があって良かった!

 

 クッソ、戦闘スキルの差が大き過ぎる。今まで苦戦らしい苦戦をしたことが無かった弊害がこんなところで出てくるなんて。

 設置型の魔法も避けられるし……! 段々イライラしてきた!

 

 

「……チッ、強過ぎでしょう! 何なんですか!」

 

「いやいや、手加減しているとは言え、私相手にここまでやれるのです。誇っていいですよ。強いて助言するのなら、設置型の魔法は目線を向けない方がいい。バレバレです」

 

「ご丁寧にアドバイスどうも。 これはお礼です、どうぞ受け取ってください。 聖炎嵐葬(イグニス・テンペスト)!」

 

「っ!」

 

 

 俺自らも巻き込んだ炎の嵐が、黒い悪魔を呑み込んだ。

 聖弔炎(イグニス)は俺の望むものしか燃やさない。しかも今は結界で空間を仕切っており、火力も上がるだろう。

 

 この悪魔がコレで倒せるなんて思っちゃいないが、火傷くらいは負ってほしいものだ。

 

 

「───クフフフフ……! ただの火炎魔法がここまで化けますか。あぁ、痛みを感じたのは何時ぶりでしょうか」

 

「……貴方の化け物度合いにもいい加減慣れてきましたよ、ドM悪魔。今の食らって痛いで済ましますか」

 

「とんでもない。私が魔法に防御障壁まで展開したのは、貴女が初めてですよ。今の魔法も、上位悪魔(グレーターデーモン)程度なら消し飛ばせていたでしょうね」

 

 

 嬉しくね〜。お前に褒められても1ミリも嬉しくねえわ。こちとら長年鍛えてきた魔法が不発過ぎて自信無くしてきたよ、チクショウ。

 

 聖炎嵐葬を発動した瞬間は驚いたような顔をしていたので、割と有効ではあると思うんだが……あまり擦っていると本気で殺しに来そうなんだよな。さっきも手加減してるって言ってたし。

 

 楽しむのが目的なら、もうそろそろ満足して欲しいんだけど。

 

 

「それで? 私では楽しめましたか? いい加減気が済みましたか?」

 

「ご冗談を。貴方のスキルへの興味は尽きませんよ。それに、貴女の魂に根付く、私ですら詳細を見通せない加護の正体も気になりますし、ただの人の身でそれ程のエネルギーを持つ理由も……クフフ、貴女こそ、どれだけ私の好奇心を刺激すれば気が済むのですか?」

 

「早口で私ですら把握してない情報を捲し立てないでください」

 

 

 加護? エネルギー? 何言ってんだコイツは。

 いきなりそんな事言われても困るんですけど。俺そんなワード聞いたこともないんですけど。

 

 悪魔は口元に手を当て、何かを考えた後、より一層笑みを深めた。

 

 

「……ともすれば、貴女を窮地に追いやれば加護の主も見えてくるやもしれませんね……」

 

「? 何する気です?」

 

「クフフフ……殺しはしませんのでご安心を。しかし……死にはするかもしれませんね」

 

「は?───」

 

 

 

 ……瞬間。俺の文字通り目の前に、奴の爪が迫っていた。

 さっきまでの近接戦闘がお遊びに思える程のスピード。思考加速を発動させる暇もなく、悪魔は俺の頭を貫こうとしていた。

 

 手加減ってのは本当だったらしい。コイツが初めから本気を出していれば、俺は出会った時点で殺されていただろう。

 

 殺しはしないと言っていたが、目だけ潰す気だろうか。でも死にはするとか言ってたし、やっぱ死ぬのかな。思考加速は発動してるが、ぶっちゃけコレ走馬灯だろう。

 

 

 けど、タダで死んでやるつもりはねえぞクソ悪魔。目を潰されても魔法は発動できる。全魔力使ってお前を焼き尽くして…………

 

 

 

 ─────バリン

 

 

 

 俺が自爆の策を考えていたその時、硝子が割れるような音が俺の耳に届いた気がした。

 

 音のした方に目を向けるまでもなく、ソイツは俺に迫っていた凶爪を剣で弾いていた。

 

 

 

「───中々やるじゃねえか、カレン。さっき変態だの散々言ったのは、テメエの頑張りに免じて不問にしてやらあ」

 

 

「あ、貴方は……」

 

「ほぅ……?」

 

 

 

 ソイツ、ルドラは俺を庇うように立ち、俺に向けてニカッと笑った。

 

 

「えと……ありがとうございます? ていうか、どうやってこの結界の中に?」

 

「あ? 普通に斬って破っただけだ。俺様のスキルなら造作もねえ」

 

「……貴方といいそこの悪魔といい、今日だけで自信がゴリゴリ削られたのですが……」

 

「そうか、そりゃ災難だったな。だが、上位魔将(アークデーモン)相手……ましてや()()相手に死なずにいれたんだ。十分だと思うぜ?」

 

「遊ばれてただけですよ」

 

 

 俺はそこの変態悪魔の気まぐれで生かされてただけだ。上位魔将(アークデーモン)? 原初? とやらが他にいて、ここに来たのがソイツじゃなかったら、俺はプチッと殺されて終わってただろう。

 

 だから、少しも褒められてるとは思えない。もっと強くならないと……。

 

 

 

「……クフ、クフフフフフ!」

 

「人が真面目に反省会してる時にツボらないでください、クソドM悪魔」

 

「俺以上に辛辣だが、何したんだアイツ」

 

 

 突然顔を覆って爆笑(?)しだした悪魔。ヤバイよォ、コイツの笑いのツボが1ミリも分かんないよォ。

 

 白い目を向ける俺たちに、悪魔は一頻り笑ったあともう一度俺へ向いた。

 

 

「成程成程……始まりの勇者が出てきた、という事は、やはりその加護は…………()()()()の物ですか。……クフフ! 俄然興味が湧きましたよ。…………おや?」

 

「あれ、体が……」

 

「悪魔は精神生命体、仮初の体を作らねえと現世には留まれねえ。時間切れだな」

 

「やはりあのような塵では、この程度が限界ですか……。致し方ありません。本日はここまでのようです」

 

 

 悪魔の体から青紫色の炎が吹き出てきた。

 という事は、粘り勝ちってことでいいんだろうか。

 

 

「……今なら消し飛ばせますかね」

 

「やめとけ。今のお前じゃ無理だ」

 

「ムッ……」

 

「テメェはやる気あんのか? 黒」

 

「クフフ……いえ、今日のところは満足致しましたので、もう戦う気はありませんよ。では最後に、一ついいですか? 勇者ではなく、貴女に」

 

「私にですか?」

 

 

 ろくな事聞かれる気がしないんだけど。俺が知らないスキルのアレコレや、加護がどうとかの話されたら、答えられんぞ。

 

 

「貴女の、名前をお聞きしても?」

 

「? その程度なら……カレン、それが私の名前です」

 

「カレン、ですか……では、今後は私のことは(ノワール)とお呼びください、カレン」

 

「は? 何で今さら自己紹介を? もう会いませんよ」

 

 

「クフフ……そう言わずに。またいずれ会いましょう。聖女カレンよ」

 

 

 それだけ言って、黒い悪魔……(ノワール)はどこかへ消えてしまった。

 ……って、最後に何を口走りやがったアイツ。俺が聖女とか言ってたか。

 俺が怪訝な表情をしていると、ルドラが苦笑いでこちらを見ていた。

 

 

「何ですか」

 

「いや、テメェも変なのに目をつけられたな、って」

 

「……クソが」

 

「ずっと思ってたけど、シスターのくせに何でそんな口悪ぃの?」

 

 

 

 はぁ〜……今日は色々、ついてない。

 

 






 ユニークスキル『贖罪者(アガナウモノ)』の隠し仕様
 ……使用者により、対象の罪の選別が可能。例えば、殺人と窃盗を犯していれば、殺人のみに絞って"(バツ)"や"(ユルシ)"を与えることができる。
 神父様に使用した際は、『神父がカレンに対し犯した罪』と無意識に限定して使用した為、"(ユルシ)"による精神干渉が発動しなかった。

 また、罪を限定せずに罪業浄滅を使用すると、抵抗(レジスト)されやすくなる。単一の罪に絞って使用した方が、確実に相手へ"(バツ)"を与えることが出来る。
 (ノワール)へは何も限定せずに使用した為、簡単に弾かれてしまった。


 備考:カレンの近接戦闘技術は一般人並。純粋な力比べなら魔法があるので問題ないが、戦闘スキルは無い。教えてくれる者がいれば、或いは……。
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