BanG Dream!! ~rose of shadow~ 作:tora酸
パスパレの初ライブから1,2日後。
月島 優は憂鬱な気持ちを抱え、ライブハウスへの道を歩いている。
何故そうなっているのか。
端的に言うと、日菜と会うのが気まずくなったのだ。
日菜が所属しているバンド、パステルパレットの初ライブにて彼女たちが口パクを行っていたことが原因である。
彼女たち自身が望んでやっていたかはわからない。しかし、そうであっても優にとってあの行為は、腹が立つものである。
そんな後で日菜と話したら、自分は何を言うか想像についてしまう。
紗夜の時の様に、怒りの感情に身を任せ、話を聞かずただ非難する。
そのことによって日菜を傷つけたら? そう思うだけで足が竦む。
紗夜達との日常を取り戻すことはできた。しかし、大切な何かを自分が壊してしまうのではないかという恐怖は未だ優の心に強いトラウマを残している。
確かめなきゃ・・・いけないのに。
サークルへ向かう一歩一歩が重く感じる。
いつもなら、行くのが楽しみで仕方ないのに、ここ最近は辛くてしょうがない。
でも、練習中はちゃんと切り替えないと、みんなに迷惑がかかっちゃう。
無理やり感情を押し込み、走りながら向かう。
サークル到着後、予約していた部屋をおとずれる。
扉を開け、みんなの姿が真っ先に目に入った。
「優、あなたにしては遅かったわね。もうみんな集まってるわよ。」
友希那が不思議そうな顔でそう言う。
他も、珍しがった様な顔をしている。
「ごめんなさい、少し考え事をしてて。」
作り笑いをしながら、応答する。
不自然かもしれないが、ちょっとごまかすなら、これで十分だ。
「・・・そう。なら、早く準備して、練習始めるわよ。」
「はいっ!」
いつもより大きめな声で返事し、急いで楽器の準備を始める。
ギターをしょって、アンプを刺し、音を確認する。
「よし、もういけます。」
「じゃあ始めるわよ!」
友希那の掛け声と共に練習が始まる。
いつも通り・・・いつも通りに。
そうは言っているが、自分のことは自分が一番わかる。
明らかに、音に不協和音が出来ている。いつものような安定感がない。
それに気づいたのか、友希那はすぐさま演奏を中断させる。
心配そうな顔をしながら、優のもとへ近づいてきた。
「優、どうしたの。普段の音はかけ離れているのだけど。」
友希那の指摘に優はただ黙ることしかできない。
「友希那の言う通りだよ。優、何処か調子でもあるの?」
「何かあったなら、あこ達に相談してよ。優のためにあこお姉ちゃん頑張るから!」
「二人とも・・・・そんなに・・・・詰めたら・・。」
リサ達も気になっていたようで、優のもとへグイグイ接近してくる。
「えっと・・・・・・あの・・・・その・・・。」
急に詰められたせいか、回答がしどろもどろになってしまう。
そして、きまずくなって。
「あの・・なんでもありませんから!!!!」
そう言って、スタジオの扉を開けて出ていく。
「あっ! 優君!!」
走り出した優に驚いた紗夜が、引き留めようとするが、一歩遅く逃してまう。
何も考えられず、ただひたすらに走り続ける。
知らない道を訳も分からず、行ったせいか気が付いたら見たこともない公園についた。
ここ・・・どこだ?
一瞬の感情でここまで来てしまったのか・・・・・・。
ハハ・・・・・何も学んでないな・・・僕は・・。
自分の馬鹿さ加減に呆れの感情だけがただ出てくる。
トボトボとベンチへ歩こうとすると。
「・・・・・!!」
石につまづいて、顔から飛び込む。
にぶめの音が辺りに鳴り響く。
「・・・・痛てて・・・・・・・・・・あ。」
立ち上がると、ある違和感に気づいた。
「・・・・もしかして。」
手元を見ると、自分の眼鏡が割れていた。
違和感はそれによる視界の衰弱である。
辺りがぼやけてほぼ何も見えない。
何とか手探りしていると、座れそうなものを見つけた。
椅子?の様なものに座って、ひたすら空を見つめる。
どれだけ時間が経ったのかわからない。
見続けていると、目に水滴が付く。
雨が降ってきたのか・・・あんま見えないけど。
勢いが強くなるが、居座ることを辞めない。
ずっと・・・・ここでこうしていたい。
今更戻って何になる?ずっと日菜姉に気まずいぐらいなら、ここ居たほうが。
気持ちもひたすら沈んでいく。
このまま消えているようなそんな感覚が体の中を巡っていく。
すぅーっと一つまた一つ何かが消えている。
しかし、突如その感覚が遮断され、一気に現実に引き戻される。
一体だれがと前を向く。
「君大丈夫!? ダメだよ!こんなに雨が降ってるのに。」
ぼやけて顔はわからないが、恐らくピンク色の髪をした女の人というのは理解できた。
その人物は優の頭の上に傘をさしてくれている。
「・・・・・・。」
「取り合えず何処か雨宿り出来そうな場所を・・・。」
「お姉さんは・・・どうします?」
「えっ?」
まったく脈絡のない言葉にピンク髪の少女は困惑の表情をしている。
優には、それが見えてないのでそのまま続ける。
「お姉さんはもし自分の大切な人が、自分にとって許せない事をしたらどうします?」
少女は少し黙って、口を開く。
「そうだね・・・・まずはその子がそれをどんな気持ちでやったのか聞く・・・かな? そして気持ちを受け止めて、その子の味方になる。」
凛とした声でそう言い放つ。
なんだよ・・・それ。
そんなの自分にとって都合のいい時だけだろ!!
激情が頭の中を巡る。
「それって相手が悪びれもない様な態度でも出来るんですか?」
落ち着いたように聞こえるがその言葉には強い感情がこもっている。
「出来るよ、というかしなきゃいけない。」
はっきりと彼女は述べた。
「本人が悪いと思ってないなら、その間違いを正す。その人が大切ならそこまでやるのが筋なんじゃない?」
彼女の言葉に、優はただ黙ることしかできない。
「自分が許せないからその人に関与しなくなる・・・・・それってホントに大切に思ってるのかな? 大切ならその人を叱ったりして、正してあげようと思うはずだよ。」
大切に思うなら・・・間違いを正す。
その言葉が頭の中をこだましている。
よくわからない感情が、湧き出ているのが感じられる。
「強いですね・・・・お姉さんは・・僕には模倣(まね)できない。」
「そう?君だって覚悟はできてるんじゃない?ただ、あと一歩踏み出す勇気がないだけ。」
「あと一歩踏み出す勇気?」
意外な言葉が返ってきたのに疑問の言葉で返してしまう。
「君を見たらなんとなくだけどわかるよ。君を覚悟を持った強い子だって。多分、今までの経験から踏み込もうと思っても出来ない何かがあるんじゃない?」
的確な言葉だった。
一回だけで自分のことをここまで的確に当ててくる彼女に優は尊敬の念を抱いた。
そうだ・・・・ここで踏み込まなきゃ変わらない。
昔と何も・・・変わらない!!!
大切な人を失い続けた僕と何にも変わっちゃいないんだ!!!!
そう勘違いしていたんだ・・・日菜姉との関係を壊すのは、僕が彼女を感情のまま批判することなんかじゃない。
彼女と向き合うことから逃げる・・・それが一番日菜姉を殺すんだ。
僕が逃げれば逃げるほど、彼女が傷つくんだ。
少年の目に一つの勇気がこもった。
自分の間違いに気づいたのだ。
もう立ち止まる時間は終わった、これからはまた走り出す時間が始まる。
優はおもむろに立ち上がり、少女に言う。
「ありがとうお姉さん、おかげで気づけました。」
「君の役に立てたなら、それで十分だよ♪」
少女を可愛いげにピースを作って少年を見送る。
「夢・・じゃないけど、こうやって誰かを励ますのもアイドルとしての姿なのかな。」
優が去ったその後、雨が降っている公園片隅でピンク髪の少女もとい丸山 彩(まるやま あや)はそう静かに呟いてた。
次回予告
・・・・・皆さん、どうも月島まりなです・・・・。
今ちょっと、落ち込んでまして・・・・お許しください・・・・。
聞いてくださいよぉ!!!!
優から電話が掛かってきたと思ったら、迎えに来てだの眼鏡が壊れただの、散々ですよ!!
迎えはいいんですよ、優の迷子には慣れてますから。
ただ、眼鏡壊すのはやめて!!! 高いの!!あれ!!!!
という感じでございます。愚痴にお付き合いありがとうございます。
それでは、
’謎の少女(丸山 彩)とのやり取りで大切なことを学んだ優。 日菜ちゃんとのやりとりで優は新たなる場へ赴くことになる。’
次回!!!!
「守りたいもの」
お楽しみにー。
はぁ・・・・今度眼鏡買いに行かなきゃ・・・・・。