BanG Dream!! ~rose of shadow~ 作:tora酸
氷川日菜は、暗い道を歩いている。
暗いといっても、辺りに街頭があるため真っ暗というほどではない。
意外と遅くなっちゃたなー。
自分の帰宅時間が遅くなったことをぼやきつつ、淡々と進んでいく。
まさか、1度口パクさせておいて、次は練習しろだなんて。
なんか、つまんないのー。
ライブが失敗した次の日、日菜たちは事務所のスタッフから活動の自粛と楽器の練習を言い渡された。
あまりにも唐突かつ無茶苦茶なため、皆困惑だけを浮かべていた。
元を辿ればスタッフが楽器未経験者がいるなか、たった2週間でファーストライブを実行しようとしていたことには、日菜は少し呆れていた。
パスパレにいる理由はあそこが面白いからであり、つまらなくなったらあそこにいる必要もない。
メンバーの子達を見てるのは面白いんだよね~。千聖ちゃんは気が気じゃなさそうだけど。
ライブの失敗以来バンドメンバーの一人である白鷺 千聖(しらさき ちさと)が脱退しようとしていることを日菜は感づいていた。
バンドメンバーと言っても所詮は仕事仲間程度でしかない、思い入れがない分切り捨てるのは容易だ。
これ、優が聞いたら怒るだろうなー。
自分の大切な弟の顔を思い浮かべながら、そう考える。
月島 優という少年は一見大人ぶってはいるが、根は純粋でかなり子供っぽい少年である。
音楽が大好きで、泣き虫ドジ。いっつも一人で抱えて、誰かを頼ろうとしない。
初めて会った時は、気に留めることもなかった。
でも・・・・なんかほっとけないんだよね。
彼は日菜にとって初めて、面白いという感情抜きで仲を深めた人物だ。
無論大事な人だ。
優は私のこと、嫌いになっちゃったよね………。
多くの人やあまつさえ大事な人を騙していた。
あの子が一番嫌いそうなことだもん。
だから、会いに来なくった。 全然ルンっ♪てしないな………。
ここ最近は、彼と一切の会話をしていない。
一度会おうとしたら、気まずそうなにどこか行ってしまった。 その時の感情を日菜には言い表せなかった。
それは今まで生きてきた感じたことのないものであったからだ。
そうこう考えていると、家の扉の前に着いていた。
ドアノブに手をかけ、ゆっくり扉を開ける。
??????????
日菜は最初に目に入ったそれに疑問の嵐が巻き起こる。
「あ、日菜姉おかえり。」
月島 優ご本人が何故か体操座りをしていた。
「・・・・何やってんの優?」
「なにって、日菜姉が帰ってくるまで、ずっとスタンバってたんだけど。」
優はたいそう真面目な顔でそう言った。
「日菜姉と話したいことがあって。」
「うん・・・・・とりあえずアタシの部屋来る?」
「そのほうがありがたいかも。」
何が起こっているかわからぬまま、優を部屋に移動させる。
部屋に入った優は、ご挨拶ばかりにベットにダイブする。
長時間の待っていたのか、かなり気怠そうである。
普段との変わり具合に日菜は、何かあったのかと思うが、口には出さなかった。
「で。今日はどうしたの? こんな遅くまで待ってて、まりなさん心配するよ。」
優がここにいる理由は大抵検討がついてる日菜だが、あまり気が乗るようなものでもないため、話を逸らす様に言う。
「日菜姉、僕がなんで来たかくらいはわかってんでしょ。」
鋭い眼差しを日菜に向けながら、そう言った、
流石に誤魔化しが効かないと思ったのか、日菜は諦めたようにして言う。
「パサパラのライブのこと………でしょ。」
コクリッと優は相槌を打つ。
何言われるかな………。
でも、優にはその権利がある。
何を言われてもいいように、日菜は構える。
寝転がっていた優が体を起こし、真面目なトーンで話始める。
「単刀直入に言うと、僕はただ日菜姉に聞きたいことがあるんだ。」
聞きたいこと?
最初から何か皮肉った言葉でも飛んでくるのではないかと思っていた日菜だが、これを聞いて拍子抜けの表情になる。
「まず確認、パスパレのライブは本当に口パクだったの?」
少し黙ってから、日菜は口を開いた。
「・・・・・・そうだよ。」
それを聞いた優だったが、顔色一つ変えず話を続ける。
想定内という様な面持ちだ。
「あと一つ、これが一番重要。」
さっきまでの様子から一変して、今まで見たことのないような表情を浮かべる。
こんなに真面目な優見たことがない。
彼が喜んだり、沈んだりしている姿は見たことがあった日菜だが、付き合いの中でこんなことは初めてであった。
「日菜姉はさ。」
「うん・・・・。」
「口パクに納得してた?それとも嫌々?」
優から放たれたのは意外な言葉であった。
てっきり事実確認だけして見限るかを決めらると思っていた。
「え・・・・・。」
それだけが、口からこぼれた。
「そんな難しい質問じゃないよ。日菜姉に限って、何も考えなしやったなんてありえないし。」
それは日菜を信頼してのものでもあった。
日菜と優は出会って、2年ほどしか経っていない。だが、その短い年数で日菜に強い信頼を寄せれるほど濃いものでもあった。
日菜は優の言葉を聞いて、自分の思いを巡らせる、
あたしは…………。
日菜に一瞬の沈黙が訪れる。
もし本当のことを言ったら、もう自分は優と一緒にいられなくなるのではないか。
そんな考えが頭の中に浮上した。
そう考えた途端、急に悪寒が走り始めた。
嫌だ、嫌だ、と体中でこだましている。
日菜は、余程のことでは慌てない。
自分にとって物事というものは面白いか面白くないかその二択だけだ。
面白いなら素直に離れる、面白いなら観察もしくは追求する。
それが、天才(ひかわ ひな)というものだ。
ただ、今回はそんな二元論で片付けられるようなものではなかった。
恐怖、氷川日菜が感じたことのない感情だ。
その恐怖が全身を蝕み、一瞬と思われた沈黙は続いてく。
何も見えないや・・・・。
お姉ちゃんにさえこんなこと感じなかったのに・・・・・・。
困惑と恐怖の板挟みにあい、日菜は俯く。
そして、2つの感情は過った思考に彼女を導く。
そうだ・・・・・ごまかしちゃえば・・。
そう思い立った瞬間顔を上げる。
しかし、目の前には・・・。
「日菜姉・・・・。」
優が真っすぐな目をしていた。
ただひたすらこちらを強く見ている。
・・・・! アタシは・・・・!!!!
この時、日菜は自分の犯そうとした過ちに気づいた。
嘘をつこうとした・・・・・また・・・しかも大好きな弟に。
そんなの・・・・そんなのって・・・・・・・・全然ルンってしない!!!
「ごめん・・・・やっぱ嫌だよね。」
優は申し訳なそうにする。
「違うよ、優。アタシが弱かっただけだから。」
「え?」
「話すよ。アタシの思い。」
そう言って、日菜は心情を吐露し始める。
「最初はさ、正直どうでもよかった。口パクだろうが、演奏しようが。でも、そういう方針で決まったから、アタシは言った。どうせやるなら騙し切った方が面白いって。」
「うん。」
優は表所を変えずただ返事をするだけだった。
「でも・・・・」
「でも?」
「優にライブのチケットを渡した後気づいたの・・・・・。自分が騙す観客の中に大好きな弟も入ってしまったことを。」
「・・・・・・。」
優はただ沈黙するしかなかった。
「そう思った途端、怖くなった。 やっとまた一緒にいれたのに、それが壊れるんじゃないかって・・・・。笑っちゃうよね、優がいなかったら、こう思うこともなかったなんて・・・・・。優は・・そんなアタシなんて大っ嫌いだよね。」
日菜は悲しい笑みを浮かべ、そう言った。
その言葉を聞いた優は、はっきり強く述べた。
「嫌いになんかならいよ!!! だって決めたんだ!! 日菜姉が間違いを犯しても、味方でいるって、見限ったりしないって。 だって日菜姉は僕の大切な・・・大切な・・お姉ちゃんなんだから・・・・。」
熱が籠った言葉の中に、水滴が滴る。
日菜もつられて、涙が頬を流れていく。
そのまま強く優を抱きしめた。
「ありがとう・・・・ありがとう・・・・!」
日菜は感謝の言葉だけを述べていた。
アタシ・・・勘違いしてんだね、優。
優だって強くなった・・・・てね。
日菜は実感していた彼の成長を。
そして、そんな彼に助けられたということを。
「日菜姉・・・・・・。」
「何?」
日菜の胸の中で優がもぞもぞと喋る。
「・・・そろそろ離してくれないと・・・・息が・・・。」
よく見ると、優の顔が酸素不足によって青くなっている。
それに気づいた日菜は急いで優を離す。
「ふぅー、死ぬかと思った。」
「なんか、ごめん・・・。」
少し黙って互いの目が合い。
「「ぷ・・・ぷははははははは。」」
二人そろって、笑いが出てくる。
数分後
「そういえば、これからパスパレはどうするの?」
「な~んか、一時は楽器の練習に専念させるらしいよ。 あたしはしなくても出来るけど。」
「なるほどねー、なんで最初からしなかったのやら。」
優はかなり呆れた様子で、文句を言っている。
「正直あの人たちには頑張ってほしい。」
「えー意外。」
日菜が不思議そうに物を言う、そのせいか優は顔を少しムスッとさせている。
「別に良いでしょ。」
「いやーだってさ、優のことだから’音楽を侮辱した人達なんて・・・’てきなことを言いそうだけど。」
人を何だと思ってるんだと優は心の中で思ったが、口には出さなかった。
「それでいくと、日菜姉も入るけど。」
「アタシは、優のお姉ちゃんだから特別♪」
「うるさい、自称姉。」
強めに言ってはいるが、意外と嬉しそうにしている。
それを見逃さない日菜は、ニヤニヤと優を見つめる。
「結局なんで頑張ってほしいなんて思ったの?」
「それは・・・・・。」
モジモジしながら、黙るので。
「ほれ、そういう時ははっきり言う。」
日菜が優に目線を合わせて言う。
「それは・・・・・好きだから。」
「ん?聞こえない。」
「パスパレが好きになったから!!!」
「・・・・・・・・えええええええ!!?」
あまりの驚愕の事実に日菜は驚きを隠せてない。
「ち・・ちなみに、誰が・・・お、おおお推しななななののの」
「えっと・・・あの・・・ボーカルの・・ピンクの人。」
「彩ちゃんのことかぁぁぁ!!!」
いや、クリ●ンかよ。
冷静なツッコミを脳内でかます。
ただ日菜は、気が気でないらしく荒れ狂っている。
「あああああ、寝取られた!!バンドメンバーに弟寝取られたぁぁ!!!」
言っている言葉の意味を分からない優はただひたすら頭をかしげるしかない。
そうしていると。
「日菜、うるさい! 今何時だと思って・・・・・・なんで優君が?」
あまりにうるさかったのか、紗夜が扉を勢いよく開け、入ってくる。
「お姉ちゃん!!! 取られた!!メンバーに弟寝取られたぁぁぁ!!!」
「は? 寝取られた・・・って!! 優君がいる前でそんなこと言わないでよ!!」
「紗夜姉ー、寝取られって何ー?」
「優君には、一生関係ない言葉ですから、今日は遅いですし帰って寝なさい。」
「いや、だから意味・・」
「関係ないですからーーーーー!!!」
食い気味に言ってくるので、これは従った方がいいと、本能が告げていた。
「え! ちょ、まだ話は!!」
「日菜はこっちに来なさい、お説教です。」
日菜が部屋に引きずらていったのを見送り、優は家に戻った。
月島家自室にて
氷川家から帰宅して、優はスマホをいじっている。
何だか色々ありすぎて、眠れないんだよなー。
しかし、明日もあるので、スマホを充電しに行こうとすると。
ピコンっと通知が鳴った。
どうやら日菜かららしい。
まったく……次は何を……!?
確認したメール内容は優にとって、信じ難いものであった。
え、いやまさか………。
その内容は。
『優の推しを彩ちゃんからアタシにするために、次の練習の日一緒に事務所ついてきて⭐︎』
…………………。
「どういう脈絡でそうなったぁ!!!!!!?」
次回予告!!!
はいはいどうもー。
アイドルの新田みな………じゃなくて、月島まりなでーす⭐︎
いやー、驚きですよほんと。
まさか、優がパスパレファンになってたなんて。こりゃーグッズ買い始めたら大変ですよ、我が家の家計が。
今日のぼやきはこの程度で。
それでは!
’日菜ちゃんによって、パスパレの練習に付き添いに行くことになった優。本物のアイドルに調子を崩しまくってしまう。そして、日菜ちゃんは目的通り、優の推しになれるのか!! そんな中、暗躍する影の姿が・・・。’
次回!!!
「アイカツって言いながら、練習すればいいですか?」
お楽しみにー!!