BanG Dream!! ~rose of shadow~ 作:tora酸
月島 優はある事務所の前に立っていた。
その事務所はかなりの大きさで、上にはデカデカと看板がある。
来る前に、ここについて調べてみたが業界的には中堅にあたるぐらいらしく、有名な人もそこそこ多いようだ。
こ・・・・ここにパスパレが・・・・。
こんな経験が初めてということもあるが、何より自分が好きなアイドルに会いに行くのだ、緊張によって体をそわそわさせる。
「ゆーう、そんなに緊張する?」
日菜が、不思議そうに尋ねる。
いつもなら普通に返せるのだが、場所が場所だ。
そんな余裕あるはずがない。
「そ、そりゃね・・・・。推しに今から会いに行くってなって緊張しないファンの方がいないでしょ。」
「ふーん、そんなに彩ちゃんに会うのが楽しみ?」
日菜は少しムスッとした態度で質問する。
「彩さんもそうだけど、ほかのメンバーに会えるのも楽しみ。」
「アタシは?」
「日菜姉はいつも隣に行けば会えるし。」
あっと優は心の中で呟いた。
確実に火に油を注いでしまっていた。
横の日菜の顔をゆっくり見ると。
「!!!?」
「そっかぁ・・・そーだもんねぇぇ。」
その顔は、およそテレビに出ようもんならモザイクが入るレベルのものである。
「とりあえず優のことは何も包み隠さず皆に紹介しよー。優のあんな秘密やこんな秘密もね。」
そう言いながら、スタスタ中に入っていく。
「・・・・・・!!? やり方が姑息すぎんだろー!!」
今ここで置いてかれようものなら、迷子まっしぐらなので急いで日菜の後を追う。
事務所に入り、日菜と一緒に練習スタジオに向かう。
歩いている最中、通りかかる人からの視線がグサグサと刺さる。
当たり前だよなぁ。どう見ても、部外者な子供が歩いてたらそらぁ気になるわ。
日菜はそんな視線も意に介さず進んでいく。
こういう時この人は強いなと優は半ば感心していた。
「そういば、よく許可取れたね。」
「何の?」
「いや、僕の入場許可。普通一般人入れないでしょ。」
「あーそれなんだけどね。」
日菜は髪を弄りながら、何故だかよくわかっていない様子で返答する。
「その言いよう。もしかして、何かやばいことでも・・!?」
「いやいや、何もしてないから。 最初はダメもとで行ってみたんだけど。」
もったいぶった言い方をするので、優は日菜の服の裾を掴む。
「つまりどういこと? 日菜姉。」
「なーんか優の写真と名前を言ったら、許可してくれた。」
回答の意味を図りかねて、優は頭をかしげる。
「なんだそれ・・・?」
「アタシだってわかんないよ。ただその時、社長なんか驚いたような顔をしてた。」
なんで、ここの社長さんが僕を見てそうなるんだ?
僕の知り合いにそんな大層な役職に就いている人なんて知らないぞ。
一抹の疑問が生じるが今考えても仕方ないことなので、無視することにした。
そんなやり取りをしていたら、あっという間にスタジオ入り口に着いた。
「ここに・・・・いるんだね・・・・?」
ドアノブを握る手が震えるのがわかる。
どうしよう・・・会ったらまずは・・挨拶だよな・・・。
サインとか・・・してもらえるかな・・・。
考えるだけで・・・汗がががががが。
あまりにもドアを開けるのをためらっているので。
「もーう、開けるよ!!」
日菜が代わりに勢いよく扉を開ける。
「ちょっ!!? 日菜姉!!!!?」
扉に対してやや前傾姿勢になっていたので、思いっきり前にこけてしまう。
こける瞬間、即座に眼鏡を上に上げ、粉砕するのを防ぐ。
この前壊して時、まりなにこっぴどく叱られたためかつ今度壊したら優の貯金から引かれるため必死である。
「いてて、眼鏡が無いから、何も見えない。」
上に上げていた眼鏡を、元の位置に戻し、前を向くと。
「あのー、大丈夫ですか?」
眼鏡(どうしゅ)の女の人が心配そうにこちらを覗いてきた。
「た、大変です! 絆創膏か何かを!?」
優を見た白い髪の少女があたふたしながらそう言った。
「イヴちゃん、落ち着いて。僕、大丈夫?」
慌てる少女を、クリーム色の髪をした少女が宥める。
「え!?」
そして、何故かピンク髪の少女は、優を見て驚いた表情をしている。
「優!!、大丈夫!!?痛いところある!?あるならお姉ちゃんが!!?」
日菜姉・・・・ここまで来て、お姉ちゃんムーブはやめて・・・・。
頭の中で日菜への不満が漏れるが、今は気にすることではない。
「って!!? あががががががが/////」
不意に目に入ったパスパレ(おし)を見て、優は緊張が最高潮になる。
「顔真っ赤ですよ?」
眼鏡の少女がそう尋ねる。
「え、あ・・・あの・・!!・・・パスパレのドラムの人・・ですよね?」
気づいたら、自然と口から言葉が漏れていた。
わぁ・・・本物・・・本物だ!!!!
緊張もそうだが、それより会えたという感動の方が勝ってしまう。
「あ、はい。そうです。上から読んでも下から読んでも大和麻弥、どうも大和麻弥ですー。」
ライブで聞いた挨拶をしてくれる。
「おおお!! 本物のだぁ! サイン下さい!!!」
先ほどの緊張ぶりは何処へ行っていったのか、興奮しながら優は麻弥の手を握り話す。
「えっ!? ジブンにサインすか!? うへへへ、なんか照れるっすねー///」
この様なことは、初めてだったのか麻弥は優の反応に照れながら対応する。
事前に用意しておいたサイン色紙を麻弥に渡す。
「サインとかはよくわからないですけど、これでいいですかね?」
返してもらったサイン色紙、達筆な字で大和麻弥と書いてあった。
「はい!!書いてもらうだけで超超うれしいです!!!」
「そんなに喜んでもらえたなら、こっちもうれしいです。」
「ちょっと・・・。」
狂喜乱舞している優にクリーム色の少女が尋ねる。
「は、はい。 何でしょうかかかかかか。」
「落ち着いて! はぁー。」
急に話しかけられたことで優は応答がしどろもどろになってしまう。
そんな優を、一旦宥めて冷静さを取り戻させる。
「さりげなくいるけど、僕。ここ一般の人入れないのよ。」
至って当たり前な疑問が飛んでくる。
話そうとする優を日菜が前に入ってきて説明する。
「アタシが社長にお願いして、入れてもらったの。」
「え!? 社長が!?」
さらっと言われた事実に驚愕を隠せていない。
それを意に介さず日菜は進めていく。
「うん、アタシが連れてきていい?って聞いたら、なんか行けた☆」
「そ、そう。まぁいいわ。じゃあこの子は日菜ちゃんの何?」
「この子はアタシの弟だよ。」
質問に対してあまりに自然に答えるので、スルーしそうになったが優はすぐさま訂正を加える。
「いや、ただのご近所です。」
「何で双方で食い違い起きてるの・・・・。」
「日菜姉は自称姉です。」
それを聞いた日菜以外の全員が妙に納得したような顔になる。
「もういいわ・・。これ以上ツッコんだら野暮な気がするし。」
少女が諦めた表情でそう呟く。
あははは・・・・普通そんな反応になるよね・・・。
自分でも何言ってるかわかんないし。
もはや同情の念すら抱いてしまう。
周りのメンバーも深く考えるのは辞めようというな感じである。
優はそんな微妙になってしまった空間を修正するために口を開く。
「・・・あ! そういえば名前まだ言ってませんでした。 僕は月島優って言います。」
ぺこりとお辞儀をしながら自己紹介を済ませる。
ホントに今更だけど・・・。
優の名前を聞いた少女たちもそれぞれ自己紹介していく。
「キーボードの若宮イヴです! 優さん!互いにブシドーの心で頑張りましょう!!」
若宮イヴさん。見た目的にハーフ?だよな。
白い髪に、日本人離れした白い肌、透き通った青い瞳は彼女の可憐さを表している。
確か・・モデルさん何だっけ。だからあんなに綺麗なのか。
「ベースの白鷺千聖よ。よろしくね優君。」
この人が千聖さん。日菜姉から少し話を聞いたことがある。
本業女優で、小さいころから子役として活躍しているベテランらしい。
僕は、ドラマとか見ないから全然知らなかったけど・・・。
「えっと・・・さっき言いましたよね。ドラムの大和麻弥です、よろしくっす!!」
大和麻弥さん。何故だかこの人には親近感が湧いてくる。
なんというか、アイドルっぽくないのがそう感じさせるのかもしれない。
そして、ピンク髪の少女が満を持した様子で喋り始める。
「まん丸お山に彩を。パステルパレットのピンク担当丸山彩でしゅ・・。」
自信満々でやっていたのに一番最後に噛んでしまい彩は顔を赤らめている。
今、思いきり噛んだな。 凄い自信だったのに。
丸山彩さん・・・僕の推しである。日菜姉曰く元々アイドル研修生で、アイドル歴は一番長いらしい。
ただ・・・一つ違和感がある。僕はこの声を知っている気がする。歌の声ではなく、この話しているときの声でだ。
頭の中で考えるが、いくら考えても浮かんでこず、頭を悩ませてしまう。
「あのーごめんなさい。」
優が頭を四苦八苦させていると、千聖が何かを言いたそうに声を上げた。
「今から他のスケジュールがあるから私はこれで。」
そう言って、千聖はスタジオから出て行ってしまった。
日菜を覗く他のメンバーはいってらっしゃい、と言いつつも何か言いたげだ。
出ていく千聖すれ違った優は、彼女の顔を間近で見て、ポツリと呟く。
「仮面・・。」
その声は誰にも聞こえておらず、反応はない。
優は、人の観察が得意と思っている。
その人の顔、仕種、声色、言動から大体どのような人かがわかる。
そんな彼が、千聖から感じ取ったのは、偽りだ。
ただ本人からの情報ではない以上、これ以上の考察は邪推になってしまう。
千聖がいなくなってから、彩たち4人はそれぞれ練習を始める。
優は、スタジオ内にあるパイプ椅子に座り、見学する準備をする。
「優君は、アイドルがどんな練習するかわかる?」
彩からいきなり質問が飛んでくる。かなり不意だったので、崩れ落ちそうになりながら、答える。
「・・・・・・そうですね・・・・・///」
彩の顔が近く、優は顔を赤らめる。 そんな優と彩を日菜は、嫉妬の炎が籠った瞳で見ていた。
「大丈夫、ちょっと聞いてみたいだけだから。そんな緊張しないで。」
「えっと・・・・・・・・・アイカツ?」
「へ?」
優から放たれた謎の言葉に、彩は?を浮かべることしかできない。
その様子を、日菜はゲラゲラ笑いながら見ている。
イヴも?を浮かべているが、麻弥は何を言っているか分かった様で、苦笑いをしている。
優は言葉を続ける。
「アイカツ!って言いながら、練習するとかですかね?・・・・・。」
「・・・あはは・・面白いねー優君は・・・。」
何とも言えない雰囲気になってしまい、推しの目の前ということもあり優はみるみる自信を無くしていく。
「すいません、僕が変なこと言って・・・・。嫌でしたよね、それじゃ・・・おじゃましま・・・。」
しょんぼりとした様子で、帰ろうとするので急いで全員で引き留める。
「ごめんごめん。一生懸命考えてくれたんだよね、だからそんなしょんぼりしないで。」
「そ、そうっすよ!! なんも恥ずかしいことじゃないっすから!!」
「自分の意見をしっかり言うのもブシドーです!」
「イヴちゃんそれフォローになってるか怪しいから。」
自分の推しにここまでさせてしまったことに、またまた嫌悪感を抱いてしまうが、全員にこうも言われてしまったので何とか持ち直し、席に戻る。
「ふぅー。よし!!皆始めよう!!」
優を引き留められたことに安堵し、彩たちはそのまま練習を開始した。
アイドルの練習といったら、やはりダンス練習が主なのであろうかと優は思っていたが、意外にも最初に始めたのは、筋トレなどの基礎体力トレーニングである。
スポーツ選手みたいだな。でも、そう言えばそうだよな。歌って踊るしかも楽器までやるんだったら、体力がないとお話しにならない。
途中彩から一緒にやらないかと誘われたので、一緒にやってみたが想像以上にキツく、終わる頃には息が途切れ途切れになっていた。
「彩さん………たちは……いつも……こんな……はぁーきっつ。」
「大丈夫?ちょっときつかったかな?」
「いえ……こんくらい……大丈夫です!!」
疲れているとはいえ、推しの前である。優はいつもよりカッコをつけ強がる。
「なーんだよ、優のくせしてカッコつけて。」
どうやら日菜にとってこの状況は面白いものではないらしい。
「日菜さん、いつもとキャラ違いません?」
「そー見える?ま・や・ちゃん。」
顔には怨念が篭りにこもりまくっていた。
流石の麻弥もこの顔にはひっ!?、と言った悲鳴をこぼさずにはいられない。
隣のイヴも顔面蒼白になって、怯えている。
良いとこ見せたいじゃなかったのかとその姿をチラリと確認した優は静かに呟く。
練習がガヤガヤし始めた頃に優の携帯電話が鳴り始めた。
「あっ、すいません。」
スタジオの外に向かい、電話の主を確認する。
「誰だよー、今幸せの絶頂の最中なのに…………って友希那さんからだ。」
「はい、こちら優です。」
『ごめんなさい、今日何か予定があったかしら?』
「あった……というか現在進行形中です。」
『悪いけど、一旦こっちに戻ってくれないかしら?急ぎで来て欲しいの。』
電話越しの友希那の声はとても真面目な声色を帯びていた
よほどの事態なのだと思い、元に戻る決断を決める。
「わかりました、直ぐ戻ります。どこに行けば?」
『私の家に。大丈夫、今から言う所に行けば、リサがいるから連れてきてもらって。』
友希那も優の方向音痴に慣れてきたのか、そこら辺の手筈もバッチリである。
そのまま指定された場所についての情報を受け取り、戻る準備を開始する。
彩達にその旨を伝えたら、快く送り出してくれた。日菜も渋々納得してくれた。
ただ、急いで戻ろうとしているとある人物の姿が目に入った。
白鷺千聖だ。
別の予定があったはずであろう彼女がそこにいた。
誰かと電話をしているようで、いかにもな営業ボイスで話しているのが聞こえてくる。
一瞬だった為、詳しい内容はわからない。しかし、優が着目したのはそこではなかった。
声だ。
女子高生であんな声を出せるのかと優は戦慄した。
ひたすらに誤魔化しの色に塗りたくられた声、自分というより、白鷺千聖、と言う役を演じているような印象を与えられる。
芸能界を長く生きて彼女だからできることなのか?と優は疑問を持つが、今気にすることではないと思い、そのまま事務所を後にしていった。
優が事務所を去る数分前、白鷺千聖は事務所の少し外れにいた。
その手にはスマホが握られている。
「はい、はい。よろしくお願いします。」
そう挨拶した後、通話が切れるのを待つ。少しして、プツッと電話が切れ、スマホをポケットに入れる。
これでひとまずは安心ね・・・。後は・・あの子達がどこまでやれるかだけど。いえ、その不安も消しておきたい。そのためのまだ根回しが必要かも・・・・・・それに一番の問題は、月島 優。
何故、一般人の彼が出入り可能なのかわからないけど。マスコミなんかに見つかりでもしたら、今までの準備が水の泡になる。日菜ちゃんには悪いけど、彼は・・・・・・・・邪魔よ。
一人考えているとポケットからコール音が鳴る。相手は、先ほどの人物だ。
電話の内容は、確認し忘れていた項目についてである。
千聖が電話を取っていると、少年が走りながらこちらを見ていた。
月島 優だ。しかし、今は彼に取り合っている暇はない。
気づかぬふりをして、通話を続けていたら、そのまま去っていった。
通話を無事終え、事務所の道を引き返し始める。
コツコツと音を立て、ある一つの扉の前に立つ。
「失礼します。」
ノックをし、相手からの応答があったため中へ入る。
「どういうおつもりですか?」
千聖の声は冷静を装っているが、その声色は苛立ちを隠せていない。
しかし、千聖が相対している相手はそんな彼女に一切の同様のない瞳をして、彼女を見ていた。
「社長・・・・!!」
社長と呼ばれた人物は、ニコッと余裕の笑みを浮かべていた。
次回予告!!!
みなさーんお久しぶりでーす!!
月島 まりなですよー!!
いや、あのですね。こんなに遅くなったのは理由があるんです。
まぁ大体の人が察しついていると思うんですけど。
うちの作者(ばか)がルビコンに行ったり、禁足地に狩りに行ったり、印人になって怪異と戦ったりしてたら、こうですよ!!
今後もしばしばこうなることがあると思いますが、温かく見てくれると嬉しいです。
さぁ!!次回予告言ってみよー!!!!
’日菜ちゃんからの誘いで、再び事務所に赴くことになった優。
パスパレではイベントの出演が決まり、喜ぶ彩ちゃん達。しかし、彩ちゃんが放った一言に千聖ちゃんは怒りをぶつける。そして、千聖ちゃんは優に対して、牙をむく’
次回!!!!
「生き様」
お楽しみにー。