BanG Dream!! ~rose of shadow~   作:tora酸

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第五話 生き様

 

パスパレの事務所に行った日から数日後、優は再びその場へ向かっていた。

 

 

まさか、もう一回チャンスがあるとは思ってもみなかった。

まぁ、ありがたいことだ。まさか友希那さんが緊急で呼んだ理由が・・・・パソコンの画面に変な物が映ったから、だなんて誰がわかるんだよ・・・。

何があったかというと、本人曰く『少しネットで調べ物をしていたら。』だそうだ。確認してみたら、パソコン上部に『40000円の支払いが完了しました。』と書いてあった。これは典型的なワンクリック詐欺の文であった。

この様な文書を送り、焦った被害者に電話をかけさせ個人情報を抜き取る。ただ、このタイプは無視したら何の問題もないので、本人は無視すると良いと言っておいた。不安そうだったけど、何とか納得してくれた。

 

 

戻った後は、日菜から優が帰って以降のことについて教えてもらった。

 

彩がいつも同じところでミスするのがわからないのが面白いとかイヴのことや麻弥のこと主に他のメンバーについてのことだった。

 

容赦なくそういう事を言うのは日菜らしいと優は思った。

 

ちなみに、日菜はどうしているかと言うと。

 

「今日こそアタシの良いところ見せちゃうんだから。」

 

普通に隣にいる。当たり前である、月島優という人間は極度の方向音痴だ。近場でさえ、行き慣れたかつスマホのマップ機能を使ってやっとたどり着けるほどだ。

 

そんな人間が、一度行った程度の場所にたどり着けるわけないのである。もう一度言おう、たどり着けるわけないのである!!

 

結果として、必然的に日菜と一緒になる。日菜自身も優と二人きりで何処かに行くのは、久しぶりだったので何だか嬉しそうである。

 

二人で他愛のない会話をしていたら事務所に到着した。中に入り、練習スタジオの方へ向かう。

 

スタジオ内には既に千聖を除く3人がいた。

 

「あ・・あの・・おはよう・・ございます。」

 

「おはよう、優君。」

 

「おはようございます!!優さん!!!」

 

「おはようございます。」

 

二回目の対面とはいえ、やはり慣れないのか言葉が途切れ途切れになってしまう。

 

「もしかして、また緊張してるのー?」

 

彩はおちょくる様な声でそう言った。

 

「えっと・・・・はい///」

 

「可愛い~。それっ!」

 

そう言って、彩は優に抱き着く。

 

優は何が起きたのか、理解できず固まってしまっている。

 

そんなことはいざ知らず、彩は抱き枕のように優を扱っている。

 

日菜はその姿を見た瞬間、即座に戦闘態勢に入ろうとするが、ヤバいと思ったのかイヴと麻弥は何とか抑えようとする。

 

「日菜さん・・っ!!気持ちはわかりますけど、落ち着いて。」

 

「日菜さん!!ここで行くのはブシドーではありません。」

 

「止めないでっ・・・・!!!!!麻弥ちゃん、イヴちゃん。このままじゃ・・・推しがアタシに傾くどころか今まで以上に彩ちゃんに没頭する。アタシのお姉ちゃんの立ち位置が揺らぐっ・・・!!!!!!」

 

スタジオ内にほんわか?した雰囲気が流れる。

 

しかし、そんな空気はある一つの音によって消失する。

 

「皆話が・・・・・ってどういう状況?」

 

何か言うことがあるらしい千聖が、入った場所の謎の状況下に困惑が隠せない。

 

ただ、もう気にしない様なのかすぐさま気持ちを入れ替え話を再開しようとする。

 

だが優のことが目に入ると一瞬だけ顔が険しくなった。

 

ほんの数秒のことなので、誰も気づかない。優を除いては。

 

千聖の纏うオーラが変化したことに若干の恐怖を抱いてしまい、抱きしめている彩に体を寄せる。

 

 

この人・・・・怖い。なんであの一瞬で隠せるんだ・・・・・・・。

ほんのちょっとだけ見えた、千聖さんの憎悪が。

 

 

彼女の憎悪が並のものではないことに、わかっていたからこそ、隠し通せることに驚愕している。

 

「優君がいるけど、まぁいいわ。今日は皆に話があるの。」

 

「お話って何ですか?」

 

イヴが不思議そうに尋ねる。

 

「えっとね、私たちパステルパレットがイベントのライブに出演させてもらえることになったの。」

 

千聖はもったいぶらず、さらっと言う。

 

その言葉を聞いた全員が、喜びの表情を浮かべる。

 

心なしか日菜も嬉しそうだった。

 

 

つまり、これがある意味ほんとの初ライブになるのか。

流石にあの件でスタッフも懲りているだろう、もう口パクなんていう提案はしないと考えたい。

 

 

優は嬉しいと思いつつも、スタッフへの懸念がある。

 

 

まぁ、そこまで無能ではないでしょ。

 

 

そんなことを言い聞かせて、自分自身を納得させる。

 

皆で喜んでいると、彩は余程うれしかったのかある言葉を言い放つ。

 

「きっと、みんなの努力の成果だね!がんばって練習続けてよかったなぁ・・・!」

 

生き生きとした様子で彩は言う。

 

その言葉を聞いた千聖は、何とも言えない顔で黙り込む。

 

しかし、彩はそんな千聖を気にもせず続ける。

 

「先生も、私たちの演奏、上達したって言ってくれたし、やっぱり、努力すれば・・・・」

 

やがて、耐え兼ねたようにして千聖が口を開く。

 

「本当に、その自主練や努力の成果として、ライブが決まったと思っているの?」

 

声色は冷静ながらも、何処か冷めていて、苛立ちがにじみ出ている。恐らく’努力 ’という言葉が彼女の何かに触れたのだろう。

 

千聖の急な鋭い言葉に、皆驚き、固まってしまっている。彩は、特に動揺している気がする。

 

「鉄仮面が外れた。」

 

誰にも聞こえない様な声で優は呟く。ただ、その言葉はひたすらに悲しそうである。

 

わかってしまったのだ、白鷺千聖がどのような生き方をしてきたのかを。

 

 

そんなことで外してほしくはなかった・・・・・・千聖さん・・・・・・・。

 

 

少年の思い虚しいまま、千聖は続ける。

 

「確かに、あなた達が短期間で上達したことは先生たちも褒めていた。それは、自主練の成果なのかもしれない。

でも・・・それはあなたの研究生時代と何か違う?」

 

「それは・・・・・」

 

「ライブが努力の賜物なら、あなたはとっくに研究生なんて卒業してるはずよね?」

 

「・・・でも、それじゃあ、努力しなかったら何を・・・・!」

 

「努力は結構。夢を見るもの結構。だけど・・・」

 

「努力が必ず夢を叶えてくれるわけじゃないのよ」

 

それは努力を信じ続けてきた、彩にとって残酷以外の何物でもなかった。

 

「・・・あ、あはは・・・私、努力していれば夢は叶うって思ってたけど・・・・ちょっと、思い違いだったのかな・・・。」

 

「なんか私・・・バカみたいだね。・・・・ごめんね」

 

今の彼女に、いつもの様な明るさはない。当たり前だ、自分の信じていた生き様を真っ向から正論で否定されてしまったのだから。

 

「千聖さん、アンタ何がしたいんですか?」

 

優はいたって冷静に千聖を詰める。

 

彼にとっても、今のは気分のいいものではない。無論わかってはいるのだ、努力だけで夢は叶うものではないことを。才能、運、環境、人脈。夢を叶える、結果を出すということはそのような要因が複雑に絡み合っているのだ。

 

「あら、あなたにも不快な話だったかしら?」

 

「ある意味不快ですね。」

 

「・・・・どういうこと?」

 

千聖が眉をしかめるが、優はひるまない。

 

「千聖さんが言ってること・・・僕自身は間違いではないと思います。」

 

「なおのこと意味が分からないわね。じゃあ何が不快なのかしら。」

 

「それは、アンタの考えであって、アンタの生き様だ。彩さんの生き様を否定する様なものじゃない。アンタ、それを彩さんが傷つくと分かっていて言ったでしょ。そこが不快なんです。」

 

淡々と冷静に優は言葉を述べていく。もう同じ轍を踏むつもりはないらしい、感情的になることはない。

 

千聖の纏っているものがより一層強くなるのを感じる。

 

「一つ勘違いしていることがあるから教えてあげる。」

 

「何がですか?」

 

両者の間に火花が燃えているのは、他者から見ても一目瞭然だろう。

 

二人を除く全員がただ様子を見守ることしかできない。

 

「あれは考え方ではなくて、事実よ。わかる?ぼ・く・?」

 

千聖は嫌味ったらしい口調でそう言った。

 

しかし、優は何も反応しない。自分に対しての批難など彼にとっては痛くも痒くもない。

 

「あと、もう一つあなたに言うことがあるわ。」

 

「また嫌味ですか?」

 

「違うわ。」

 

そう言うと、彼女は優の方へ近づいていく。

 

そして、彼の前に立つ。10cm以上はあるだろうか。大体の女性が優より身長が高い、年上なら尚更だ。

 

今だけは、その身長差が異様に大きく見えた。

 

妙に威圧的な感じで、千聖は話す。

 

「あなた、もうここには来ないで頂戴。」

 

「え………。」

 

「千聖ちゃん勝手なこと言わないでよ。ちゃんと許可は取ってるんだよ。」

 

声を上げたのは、日菜だった。弟を邪魔者にしている様な言葉に苛立っているらしい。

 

千聖は少し驚いたが、何事もなかったかのように続ける。

 

「許可………ね。そもそもそれは、正式な書類を通してるの?」

 

「それは………。」

 

「口約束程度じゃ、なんの効力を持たない。日菜ちゃんならわかるでしょ。」

 

「じゃあ、なんで今更そんなこと言うの?優が来るのは、これが初めてではないはずだけど。」

 

「状況が変わったのよ。というかそもそも私自身は、認めたつもりはなかったわ。因みに、なんでそう思っているのかはわかるかしら?優くん?」

 

優はそう言われて、少し考えたのちハッとした顔で答える。

 

「マスコミ……ですか。」

 

「どういうことですか?」

 

イヴが不思議そうに尋ねる。

 

「つまり、僕がもしここに入るもしくは、出ていくのを見られた問題になるし、万が一日菜姉または彩さん達の誰かと一緒に出てこようものなら、軽いスキャンダルになる。」

 

「意外と頭が回るのね。」

 

「お褒めにいただき光栄です。」

 

もちろん互いに嫌味である。

 

 

マスコミも小学生がアイドルといて、熱愛報道とは言わなくてもネタとしては不味いでもない。むしろ、あることないこと言いまくって、盛り上げられる。ただでさえ、パスパレは一度炎上騒動を起こしてる。2回目があろうものなら、彼女達の再起の確率はほぼ0になる。しかも前回からさほど時間は経っていない。

 

 

「…………………わかりました。」

 

「そんなっ!」

 

「いいんだ日菜姉。ここで僕が意地を張ったら、パスパレの皆んなを不幸にしてしまうかもしれない。推しの未来を奪うなんてのは、ファンが1番やっちゃっいけないことなんだから。」

 

日菜や彩達は沈黙することしか出来ない。

 

千聖の言っていることに対して反論できるものなどいない。全員がそのリスクの重さを重々承知しているからである。

 

「じゃあ、僕は行きます。ライブ絶対に見に行きますから。」

 

スタジオを優が出て行こうとしたその時。

 

「あっ、そうだ最後に一つ。彩さん。」

 

不意に立ち止まり、優は呟く。

 

「…………‥何。」

 

答えた彩の声には覇気がない、よほど応えているらしい。

 

「あなたの生き様は、あなたのものです。誰に何を言われようと、最後に生き様を決めるのは自分です。それだけは覚えといてください。」

 

そう言うと、返答も確認せず優はスタジオを出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石にあそこまで言われるのは、少し堪えるな。」

 

優はそう言いながら、帰路につこうとする。

 

 

まったく…………僕もバカだな。なんで、その可能性に気付かない。

冷静になれば、すぐわかることだ。これじゃ前と何も変わらない。

せっかく身につけた能力を活かせずにいつか誰かを傷つける。

それじゃ…………あの時と変わらない。

 

 

何かを思い出したのか、優は苦虫を潰した様な顔になる。

 

自分の忌まわしい記憶が、全身を苛立たせる。

 

怒りと後悔が混ざり合って、ぐちゃぐちゃになりそうな感覚に襲われる。

 

おぼつかない足取りで、先に進んでいると。

 

「っ!?」

 

誰かにぶつかったらしい、体が少しよろめく。

 

ぶつかったことで冷静になった優は、顔を青くさせながら謝る。

 

「す、すいませんっ!! ぼーっとしてて。」

 

「大丈夫だよ、それより君、少し顔を見せてくれないかい?」

 

聞こえた声は優しく、どこか安心感を感じられる。

 

「えっ……わ、わかりました。」

 

顔を上げ、見えたのは老齢のスーツを着た男性だった。

 

恐らく年齢は60代ほどだろう。髪は白髪になっており、体型はかなり細めだ。しかし、この老人からはただならぬ何かを感じられる。歴戦を生き抜いてきた戦士の様だ。

 

 

何だろう………スペースのオーナーといい、僕の出会う老人は只者ではない様な人が多い気が…………。

 

 

マジマジと顔をのぞいている、老人の顔を見ながら、優は心の中でため息をつく。

 

見終わると、老人はいきなりスマホを取り出す。

 

何か後一つ証拠が欲しい様な顔つきでスマホを探っている。

 

少しして目的のものを見つけたのか、指がピタッ止まる。

 

ふむふむといった後、スマホを直し、和やかな表情で優に話す。

 

「君が、月島君か。」

 

「は、はい。月島優です。」

 

なぜ名前がわかったのかと疑問になったが、すぐに理由に気づいた。

 

「もしかして………この事務所の社長さん………。」

 

「遅れて申し訳ない。私はこうゆうものだ。」

 

優の言葉と同時に老人は名刺を取り出す。

 

名刺には、会沢 友徳(あいざわ とものり)と書いてある。

 

どうやら、これが老人の名らしい。

 

「会沢……さん。えっと………その社長さんが僕に何か御用が?」

 

自分でぶつかといって、なんだがこの老人、会沢さんが名乗った意味が優にはわからなかった。

 

「氷川君が連れてきたいと言った少年と話をしてみたかったんだよ。」

 

会沢はそう言う。

 

「ここで立ち話もなんだ少しこちらに来てくれ。」

 

会沢に連れられ、辿り着いたのは社長室と書いてある部屋だ。

 

「そんなに時間は取らせない。すぐ終わるよ。」

 

優しく会沢に言われるが、優はバツが悪そうである。

 

「あぁ、白鷺君のことなら問題ない。ここに来ることは滅多にないよ。」

 

それもそうなのだが、優はもっと別の事を心配していた。

 

「あの………僕がこれ以上長居すると、マスコミとかそこら辺に撮られませんかね………。」

 

その為に、ここを去ろうとしているのだ。もしこれが原因で、マスコミに見られようものなら、と優は思う。

 

「問題ない、この時間帯に張っている記者は少ない。」

 

「そうですかね……。」

 

「それに、もし見つかっても向こうも簡単には記事にしずらい。流石に一般人1人だけを晒したら問題になるからね。」

 

「じゃあなんで千聖さんは………。」

 

「彼女は用心深いからね。そういう一つのリスクも残しておきたくないんだ。」

 

 

確かに、芸能界を長く生きてきたあの人ならありえる。

だが、それが普通の感覚な気もする。

社長の会沢さんが、これは大丈夫なのか?

もしかしたら、バレても問題ないような対策を講じているのかも持っているかもしれない。

 

 

「……………わかりました。」

 

ある程度納得は出来たので、優は提案を呑むことにした。

 

了解を得た会沢は、ガチャリと扉を開ける。

 

その中に優はゆっくりと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告!!!

みなさん、どうもいつも通りの月島まりなです。

やぁ〜、自分の息子が芸能事務所に出入りしたと聞いた時は、青ざめましたよ。

日菜ちゃんの行動力どうなってんの………

変なことに巻き込まれないことを祈るだけです。

マスコミに………撮られるわけないかぁ(笑)

撮られた時は、それ相応の対応しますけど………………。

じゃあ、次回予告行ってみよぉ!!!

‘会沢さんの提案で、彼と話すことになった優。何故優の入室が許可されたのか?彼の思惑とは? 一方、彩ちゃんは千聖ちゃんの言葉によって自分の生き方に苦悩することになる。’

 

           次回!!!

          「丸山彩」
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