BanG Dream!! ~rose of shadow~ 作:tora酸
ちょっと時系列に関するミスがあったので、修正しました。
「本当に大丈夫かなぁ。」
僕は、サークルの入り口前で不安気に呟く。
今日は、あるバンドとの合同練習を控えている。
一昨日の顔合わせの時、香澄さんの提案によってやることになったのだが。
はっきり言って、胃が痛くなる要素しかない。
今回参加する5バンドは皆一癖も二癖もある。
果たして、それがうまく調和できるのか?
悩んでいても仕方がない、何かあった時は僕が対応するしかない。
時間はまだ12時を越してはいないが、現代の夏ではこのような時間帯でも活動するのが辛いレベルで暑い。
僕は、額の汗を拭い、そそくさとスタジオへ向かう。
しっかりしろ、僕。ここは元気良くだ。
扉の前で、息を整え、勢いよく扉を開ける。
「おはようございま………。」
扉の先には、赤メッシュの髪の人が煩わしいかのように、こちらを見ている。
「……誰?」
「えっ………と、あの………そのー。」
あまりの気迫に押し負けてしまう。
こえー!!
何で、初対面であそこまでの殺気出せる!?
しかもこの感じ……経験したことあると思ったら、友希那さんに似てるんだ。
怯えて、動けなくなっている僕に、茶色の髪をした人が近寄ってくる。
「ダメだよ、蘭ちゃん。小さい子にそんな態度じゃ。ごめんね、こっちも悪気があったわけじゃないの。」
優しい声に僕は、何とか心を落ち着ける。
「あ、ありがとうございます。」
小さい子供ではあるが、大っぴらに言われると何だか複雑である。
「それに誰?じゃないだろ。この子確か、あこのバンドメンバーだろ。」
続けて、赤い髪の人が言う。
しかし、赤メッシュの人は気迫を緩めない。
そんな状況に僕は自分が何かしてしまったと思い、探り探りに聞いてみる。
「ごめんなさい、僕何か気に触ることしましたか?」
「!!! アンタいつまで他人のフリしてんの!?」
しかし、僕の言葉で余計に苛立ったらしく、赤メッシュの人は僕の胸ぐらを掴み、より一層怒りを増した顔でこちらを睨みつける。
「 アタシ達がどれだけ心配したと思ってんの!?」
彼女の言葉に他の皆がざわつき始めた。
しかし、思い当たる節があったらしくそれもすぐに治る。
「何なんです!? そもそも僕とあなた達に繋がりなんか………まさか!? 」
僕の言葉を聞き、全員がこちらを向く。
「やっと気づいた?」
思い出した。彼女達のことを。
1年近く顔を合わせて無かったせいか、気づかなかった。
彼女達に最後に会ったのは彼女達が中学三年生の時だが、どうやら僕はあまり記憶力が良くないのかもしれない。
「久しぶりですね、蘭さん、モカさん、巴さん、ひまりさん、つぐみさん。」
「なに呑気なこと言ってんの!!アンタ、あんなこと言っといてよくそんな状態でいられるよね!!」
僕はただ黙ることしかできない。
彼女達への罪悪感もある。しかし、それ以上に僕はもう
例えそれで彼女達に嫌われようと思い出したくない。
すると、不意に扉が開いた。
「すいません、少し遅くなりまし………。」
Roseliaの皆がやってきた。
全員今の状況に頭の処理が追いついておらず、ただ茫然と立っている。
だが、紗夜姉がこれを見た瞬間、即座にスイッチを切り替えやってくる。
そして、蘭さんの腕を力強く掴み。
「あなた、どういう要件ですか。」
ドスの聞いた声で、詰める。
「そっちには、関係ないことでしょう。」
「大アリよ!! 優君に何をしようとしたの!!事が事によっては、どうなるかわかってるわよね!!!!!」
「紗夜、落ち着いて。蘭達も……ほら!」
リサさんが仲介に入り、2人は不貞腐れた顔でそっぽを向いた。
「優、何があったのかしら?」
そんな中、友希那さんは冷静な面持ちで僕に尋ねてくる。
「すいません、僕が何か気に障るようなことを言っちゃったみたいで。」
「ダメだよー。優、お姉ちゃん達に変なこと言ったたら。」
「……………優君が……すいません。」
話を聞いた友希那さんは、無表情のままである。
「どうやら、優にも非があるみたいね。…………ただ、胸ぐらを掴むのはやりすぎよ。仮にも相手はあなたより年下。しかも高校生と小学生ときてるのだから。」
「まぁ〜〜側から見たら完璧に蘭が虐めてるようにしか見えないね〜,」
「モカまで何?」
「蘭、あっちの言う通りだ。お前の気持ちもわかるが。」
「………………ごめん。」
蘭さんは渋々引き下がる。
そして、最悪の幕開けを以て僕らの合同練習は始まった。
※数分後
「だから、うちの音楽が最高なんです。これだけは譲れない。」
「それは、聞き捨てならないわね。」
ボーカル2人が喧嘩し始めた。
何となく予想はついてたが、こうも的中すると嫌になってくる。
2人とも自分たちの音楽に対して、強い誇りを持っている。
そうなってくると、彼女らはS極とS極が反発し合う様なことになるのは必然であろう。
僕は、止めようと言葉を発っしようとするが。
「……………!!」
行こうとした瞬間、蘭さんから強く睨まれた。
あれだけの事があったから、これはそっとやちょっとでは話を聞いてくれないな。
「………………。」
後ろから紗夜姉のオーラがダダ漏れしてる。
変なところで確執作っちゃったな。これ。
またしばらく平行線のやり取りが続く。
「リサさん、いつ終わると思います?」
「わかんない。巴と紗夜も一触即発の状況だし。ひまりも何か言ってみたら?」
「いやー、あそこまで熱が入っちゃったら止められ無いというか何というか。」
よくここまで喧嘩できるな、ホント。
こういうのも何だが、僕は若干呆れている。
そう思うと、なんだか焦ったくなってきた。
仕方ない、これを言うしかないか。
少し咳払いをし、彼女達の方へ向かう。
蘭さんに睨みつけられようが関係ない、今はこの事態の収拾を最優先だ。
「ちょっと、2人とも、いつまで喧嘩してるんですか。」
「アンタは口出さないで!」
「優割り込んでくるなんて、良い度胸してるわね。」
仮にもボーカルが言うセリフか、それが。
「アンタらいい加減にしろって言ってるんです。口出さないでなんてことは通じるわけないでしょう。そんなに口論するぐらいなら、音で語ってください。」
僕にしては、珍しく強めな言葉を使ったせいか、2人の動きがほんのり止まる。
「紗夜姉達もね。わーきゃー喧嘩するなんて、Roseliaらしく無い。After growもそんなにお喋りが大好きな方々でしたっけ?」
逆効果になるかもしれないが、今の彼女たちにはこれぐらいの荒療治が必要だろう。
「ムカつくけど、一理はあるね。」
「アタシ達にとっては、それが一番手っ取り早いわね。」
ボーカル2人は、何とかいきそうだ。
後は……。
「………わかりました。」
「そもそもアタシ達はバンドだしな。」
紗夜姉達もどうにか納得してくれた。
After grow の皆に説教がましいことを言う資格がないのは、わかってる。
でも、今回のライブを成功させる為には、このぐらいは覚悟してる。
1人で抱えることには、慣れてる。
あの日以来から………。
まずは、僕達から演奏する事になった。
そして、その後にAfter growが。
※互いの演奏後
「やるわね。」
「そっちこそ。」
全力を出し切った2人は、清々しい表情で互いを見合っている。
意外に似たもの同士なのかもしれない。
かく言う僕は。
「モカさんは、ここが少し。ひまりさんは苦手な所が走りやすいので、落ち着いて。巴さんは特にはないので、安定を意識して。つぐみさんはミスタッチが幾つかあったので、そこはこう意識すれば多少楽になります。」
専らコーチみたいことをしていた。
4人は複雑そうだが、アドバイスは真剣に聞いているようだ。
これは合同練習、僕の視点から改善できる事があるなら、やっておくべきだ。
そうじゃないと意味がない。
「お前良くわかるな。」
「うん、アドバイスがすごく的確。」
「ありがとう優君、改善してみるね。」
少しだけ嬉しいような申し訳ないような気持ちはあるが、そこの公私はつけるつもりだ。
しかし、蘭さんは気に入らないらしく。
「アタシはいいから、アンタの話なんて聞きたくない。」
まぁ、想定のうちだ。
不要かもしれないが、Roseliaの皆にも同様のアドバイスをしておく。
「そういえば、思うんだけど。」
ひまりさんが不思議そうに尋ねる。
「優君、人の得手不得手とか癖とか知ってるけど、どうやってるの?」
「見て、模倣する。」
「えっと、それはつまり。」
流石にザッパすぎたか。
すかさず、燐子さんがカバーを入れてくれる。
「優君……の場合………洞察力が凄いのと………人の演奏を……ほぼ再現できるから………そこで…わかるんだって。」
僕より言語化出来てるな、これ。
おかしい話だが、そう言われると妙に納得がいく、
「すごい、そんな事出来るなんて。」
つぐみさんが、驚いた顔でそう言う。
「ただ、これが出来るのは優の並外れた基礎能力があってこそだとワタシは思うわ。」
友希那さんからそう言われると少し照れるな。
「……でも、それは強みでもあり、弱みでもあるの。」
「え、それってどう言うことですか?友希那さん?」
あこさんが驚き顔で尋ねる。
「簡単なことよ。優は模倣が得意。でもそれは裏を返せば、自分独自の音がないということ。」
鋭い指摘だ。ほぼ当たってる。
そうだ、僕は他人の模倣は得意かもしれないだが、自分の音というやつを作るのは、大の苦手だ。
これまで、自分の音というものを一度でも使えたことはない。
全て他人の模倣である。
友希那さんの言葉に、蘭さんは鼻で笑うような感じで答える。
「つまり、そっちのギターは誰かの音に寄生しなきゃまともにできないってことだよね。」
友希那さんはその言葉に目の色を変え。
「あなたがどう思うかは勝手よ、でも私の仲間を侮辱するなら、ただじゃおかない。」
まずい、このままだとまたさっきの二の舞だ。
僕は急いで2人に割り込み、
「まぁまぁ、友希那さん落ち着いて。蘭さんの言ってることはあながち間違いじゃないですし。そう言われるだけのことを、僕は彼女達にしてます。だから、一旦ここは。」
2人は、互いにそっぽを向く形で、離れていく。
僕は、ため息をつき、スタジオ内の時計に目を向ける。
「あっ、もう時間です。皆さん、片付けお願いします。」
僕にそう言われ、皆は手際良く片付けを行なっていく。
その後、僕はサークルでまだやる手伝いがあるため、残って作業の準備へと向かった。
◯
「ごめんなさい、少しだけ時間良いかしら?」
「は、はぁ。」
アタシは、その質問に困惑が混じった返答しかできない。
時刻は、昼過ぎ本当ならラーメン屋で行っている時間帯なんだが。
さっきあこに呼び止められ、ほんの少し待つように言われた。
面倒だったので、蘭達には先に戻ってもらっている。
「と言っても、ここでは話しづらいわね。」
「なら、近くのファミレス行こっか⭐︎」
そう言われ、アタシはされるがままあの人達に着いていく。
6人で座れる座席に全員で腰掛ける。
相手は、一息吐くと、態度をやや和らげ、話しかけてきた。
「本当にごめんなさい、聞くならあなたが良いってあこが。」
あこが言ったのか、特段問題があるわけではないから良いのだが。
「友希那先輩、アタシ何か聞きたいんですか?」
「ええ。」
そう答えた友希那先輩の表情は真剣だった。
いや、この人だけではない。リサ先輩やあこ、燐子さんも同様だ。
だが。
「……………」
紗夜さんだけはこちらをじっと見てくる。
「紗夜、いくら優が心配だからといって、そんなに睨みつけたら宇多川さんも話しづらいわ。」
「………すいません。まだ、苛立ちが治らなくて。」
「蘭の件はすいません、あいつ熱くなったら、暴走しがちな所があるんで。」
アタシは、深く頭を下げる。
その中でアタシは、今日のことについて考えていた。
不意にいなくなっていたアイツ—-月島 優が今になって現れた。
いや、これ自体は優も予期していなかったのだろう。
一目見たときは気づきもしなかった。恐らく、モカと蘭だけは勘づいていたのだろう。
なぜ気づかなかった?
アタシ達と優の仲は悪い方ではなく、むしろ皆優のことを弟分のように可愛がっていた。
アタシもその1人であったし、はっきり言って見間違えることはないと思っていた。
でも、今日会った優は何だか別人のような気がした。
見た目が変わったわけではない、たぶん優の纏っている雰囲気これだろう。奥底で何かが蠢いているそんな感じの雰囲気だった。そのせいかアイツのことが少し不気味にさえ思えていた。
Roseliaのメンバーと話しているときは、それがほんのり和らぐのを感じる。しかし、何故だか根本的な何かは消えていない気がしていた。
アタシがずっと黙っているので、あこが痺れを切らして問いかける。
「あこ達が聞きたいのは、お姉ちゃん達と優の関係なの。」
「えっと………それはだな。」
アタシはちょっとばかり口をどもらせる。
いくらあこの頼みとはいえ、あの時のことはアタシ達にとっても苦いものがあるんだよな。
「宇多川さん、私からもお願い。私達は仲間としてあの子の過去を知りたい。前までは無理に詮索する必要はないと思ってた。でも、状況が変わったの。」
「ごめん、巴。嫌な思い出なのかもしれないけど話してくれない?」
「優君の………こと……もっと……知りたいんです……。」
「お願いします。もしかしたら、あなたの情報で私も
Roseliaの皆が、一斉に頭を下げる。
優………お前はいい仲間に恵まれたんだな。
心の中でその一言だけが漏れた。
その言葉と彼女達の姿勢で、アタシも覚悟を決める。
「お話します。アタシ達とアイツの出会いを。そして、アイツがいなくなった時の事を。」
次回予告
よぉ、待たせたな。
次回予告の時間だよ。
今回は、After growの初登場回ということでね。
私としては、After growは声優さんが豪華というイメージが強いです。
始めたての頃、2番目に出た星4がモカちゃんだったので、意外と思い入れもあるんですよ。
個人的には、蘭のお父さんの親バカっぷりが好きです。
では、無駄話はこれまでにして。
コホン。
‘巴の口から語られるAfter growと優の出会い。そして、優が失踪するまでの経緯。その話によって、Roseliaメンバーの優の過去について疑問はますます深まることとなる。’
次回!!!
「失われた君との夕日」