BanG Dream!! ~rose of shadow~   作:tora酸

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シリアスな雰囲気を崩したくないので、今回から数話は僕の死ぬほどどうでもいい無駄話をカットしておきました。


第六話 仲間として

 

もし、自分の仲間に辛いことがあって、それを乗り越えられないでいるとき、どうするのが正解だろうか?

 

アタシの頭によぎったその一言が、今の現状を表している。

 

「・・・・・・・」

 

この場にいる誰もが口を開かない。

 

ただ重苦しい雰囲気だけが、場を支配している。

当然だ。

 

これはアタシ達の今後を左右する大事な問題。

たった一人の仲間に関する重要なことなのだ。

 

そんな空気を最初に壊したのは友希那だった。

 

「とりあえず、リサ。今日見たという優の変化を教えてくれないかしら。問題はそこからよ。」

 

皆の目がこちらに向く。

 

アタシは緊張しているためか、体全体に力が入っている気がする。

 

先にリラックスしておかないと気が持たないよ。

 

そんなことを心の中で呟き、一呼吸を置く。

そして、アタシは今日の出来事について、話始めた。

 

 

 

 

 

「皆、頑張ろー!」

 

サークルの楽屋に、香澄の声が響く。

 

それに合わせて、各バンドそれぞれで気合入れを行っていた。

 

楽屋内は、扉を入って右手側に3人ほどが座れそうなソファーにテーブルが置いてあり、その反対側にはドレッサーが設置されている。

 

そんなに多くの人数を収容できるわけではないので、やや息苦しい。

 

そんな中アタシ達Roseliaも気合を入れていた。

 

「ライブは慣れてきたとはいえ、流石にこれだとやっぱ緊張するねー。」

 

「何を言ってるの、リサ。どんな場であろうと私達は私達の音を奏でるまでよ。」

 

弱気なアタシに対して、友希那はいつもの調子を崩さない。

 

やっぱり、友希那は強いなぁ。アタシもしっかりしなきゃ。

 

強張った肩を何とか押さえ込む。

手の震えも収まった。

少し余裕が出来たので、アタシはあこ達の方を見た。

 

あこ、燐子、優、紗夜も覚悟を決めている。

 

「りんりん、がんばろーね!!」

 

「………うん…。」

 

あこの問いに燐子が強く頷いた。

 

あこもそうだけど、燐子も変わったね。

 

アタシは何だか嬉しい気分になった。

 

次に優と紗夜を見た。

 

紗夜はドレッサーで優の髪を整えていた。

寝癖だろう、優の髪はいつもよりボサボサだった。

櫛で髪を均一の方向に直していく。

 

「はい、終わりですよ。」

 

紗夜は優の頭にそっと手を添えて、言った。

 

その顔は愛おしさに満ちている。

 

「……もう、こんなことまでしなくて良いのに。」

 

「ダメです。誰かと出かける時、困るのは優君です。それはお姉ちゃんとしては不本意なので。」

 

「……わかったわかった。でも、これからは自分でやるから。紗夜姉にずっとやってもらうのも恥ずかしいし。」

 

この2人は本当の姉弟のようで見ているこっちもほっこりしてしまう。

 

「優君。」

 

紗夜の顔が強張る。

 

紗夜……まさか……。

 

紗夜のやろうとしてる事に冷や汗が止まらない。

 

しかし、それは杞憂だった。

 

「お姉ちゃんはずっとあなたのそばにいますから。」

 

「…………ありがトう。」

 

もしかしたら、優の過去に踏み込むつもりだと思っていた。自分をぶちたくなる。

 

紗夜は優のことがただただ心配なのだろう。

姉を自称するほどだ。優への想いはとても大きい。

アタシも弟がいるから、その気持ちも理解はできる。

 

すると紗夜はポンと優の肩に手を置く。

 

「さ、もうすぐ本番です。行きましょう。」

 

「……うん。」

 

優も椅子から立ち上がり、あこ達と一緒にアタシと友希那の方に来る。

 

その際、優とAfter grow と目が合う。

 

「………!」

 

蘭はそっぽを向いていた。優と視線を合わせたくはないらしい。

 

蘭は気の合わない相手には強い態度が出ることはあっても、無視をしたり激情に身を任せることはないと思う。

 

それがこのような態度になるとは、余程優に言われたことがショックだったのだろう。

 

でも……巴の話を聞く限り、優は蘭のこと…………。

 

「リサ姉?」

 

ボーッとしていたらしく、不思議に思ったあこが話しかけてきた。

 

「あ、ごめんごめん。」

 

ハハと誤魔化し笑いをするが、優以外は何となく気づいているだろう。

 

そうこうしていると、本番の時間になり、最初のバンドであるハロハピがステージに向かっていた。

 

そして、一バンドまた、一バンドと向かっていき、ついにアタシ達の出番になった。

 

「さぁ、行くわよ。」

 

凛々しく歩いてく友希那の後ろにアタシ達は続いていく。

 

コツコツと音が辺りに響く。

 

優のこともあるけど・・・・まずはライブを成功させなきゃ。

 

何とか不安を拭い去り、燦々と光るステージに立つ。

 

観客の沸き立つ声が聞こえる。

 

アタシ達はそれぞれのセットを終え、全員で顔を見合わせる。

 

友希那が首を縦に振ると、あこのスティックがカッカっと乾いた音を立てる。

 

それを合図に演奏が始まった。

 

本番に入ると、さっきの肩の緊張や腕の痺れ、強張った表情はなくなっていた。

 

この感覚はいつだって忘れられない。

 

一曲が終わると、体が慣れてきたのだろう。

 

血液が全身を激しくめぐり、心臓が高鳴る。

 

興奮しているのがしんしんと伝わってくる。

 

・・・・そして、事態は起こった。

 

2曲目の途中、ライブの演出でアタシと優が背中合わせをしながら、演奏していた。

 

優も興奮しているのが背中越しに感じられる。

 

今までの不安がかき消させるほど、優は頼もしかった。

 

このまま全身を預けても問題ないほどに。

 

しかし、その流れは不意に途切れた。

 

優が・・・・ミスタッチをした・・・。

 

あまりに一瞬でわかりずらいが、優の音がほんの少しずれていた。

全体に響くほどのミスではないため、近くにいないと分からない。

確かに誰にもミスはあるものだが、優の場合はそうとも言えない。

 

優はRoseliaの誰よりも基礎に重きを置いている。ちょっとしたことで、テンポを狂わせるはずがない。

 

アタシは優が向いている方向を演奏に支障が出ないほどに凝視してみた。

 

はっきりとは何処を見ているのかはわからない。

 

ただ、目につくのは一人の男性だった。

 

客層的には女性が多い中で、男性がポツンと一人でいる。

恐らく、年齢は40代前半ほどで、整えられた黒髪で、少し厳しい印象を与えられる顔つきだ。

何よりこちらを見ている表情はライブの熱に晒された興奮の顔というより、何かを審査している様な顔だ。

 

その人を見る優の顔は歪んでいて、目を見開いている。

 

驚きを隠せない・・というものだと思う。

 

それでいて、手のずれをすぐに修正しているのは流石だと思った。

 

あの人は・・・?

 

さっきまで消えていた違和感が再発している。

 

たぶん・・・優の過去に関連している人だ。

 

直感的にそう思った。

 

優がここまでの反応を示しているのが良い証拠だ。

 

友希那は、最後まで気づかなかったらしく、ライブが終わると、汗を掻いた髪をたなびかせ、楽屋に戻っていく。

 

アタシは先ほどの状況がかなり気になったので、戻る途中に優に話しかけた。

 

「・・・・ねぇ・・優。」

 

頭に気が回ってなかったのか、ビクッと体を揺らしていた。

 

「どうしました・・・・リサさん。」

 

心なしか元気が無いように感じられた。

 

「いや・・・・優がミスするなんて珍しいと思って。」

 

「・・・気づいてましたか・・・ごめんなさい・・。」

 

「あ、いや!別に攻めてるわけじゃないよ。ちょっと心配でね。もしかして、体に疲れが溜まってるとか?」

 

「そうかもしれませんね・・。最近気を張り詰め過ぎたのかも。」

 

「そう。辛いことがあったら、おねーさんが話聞くよ。」

 

アタシは優の肩に手をまわして、そう言った。

 

「ふふ。リサさんまで紗夜姉みたいこと言わないでくださいよ。」

 

その時の優は弱った笑みを浮かべていた。

 

「偶には誰かに甘えるんだよ。」

 

「・・・・・」

 

その言葉に優は答えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、無事サークル合同ライブは大成功を収めた。

 

後日、打ち上げを行うことになり、とりあえずアタシ達は解散することになった。

 

優はまだ残ってすることがあるらしいので、アタシは友希那達に今日の出来事で伝えたいことがあるといって声を掛け、皆を自宅に招いた。

 

だから、今アタシはこのことを話しているのだ。

 

「これで全部だよ。皆何かわかったことがある?」

 

アタシの問いにみんなぎこちない表情を浮かべている。

 

「とりあえず、その男性がカギという事はわかったわね。」

 

「ええ。その人を辿れば、優君の過去が分かるかもしれません。」

 

「でも、あの場にいたお客さんを探すのは難しい思うんだよねー。ね、りんりん。」

 

「そう・・・だね・・・。そこを・・・・追うのは・・・現実的では・・・無いと思う。」

 

「何か他に手掛かりは無いの?」

 

一歩進んだと思ったら、また行き詰ってしまった。

 

どうすれば・・・・・。

 

アタシの部屋に沈黙が流れる。

 

アタシは必死になって頭を回転させる。

 

思い出すんだ・・・・。

 

優と会ってからこれまでのことを・・・・。

 

何処か・・・・何処かの記憶に・・・ヒントになりそうものが・・・。

 

優と深く結びついてて、尚且つアタシ達がちょっとだけ行ったことのある場所・・・・。

 

あ!!!!

 

「あそこだ!!!」

 

アタシの大声に皆キョトンとした顔をしている。

 

「どうしたのリサ姉?」

 

「わかったんだよ!優の過去が探れそうな場所を!!」

 

「「「え!!!」」」

 

「・・・・まさか!!」

 

どうやら紗夜も思うことがあったようだ。

 

「何処!!何処なんですか!!」

 

「リサ、紗夜、お願い。」

 

「うん。たぶんだけど、あの施設なんじゃないかな。」

 

「施設?」

 

友希那がはてなを浮かべている。

 

「ほら、優が失踪したときに居た。あそこだよ。」

 

「ああ~!!確かに!!」

 

「でも・・・あそこは・・・優君が・・・適当に行った場所・・・なんじゃ?」

 

「いえ、それはありません。あそこへ向かう前まりなさんはこう言ってました。

『思い出したの。優が行きそうな場所。』と」

 

「・・!そう・・・ですね。」

 

「なら、そこを追ってみるのが良いわね。」

 

「じゃあ今から行きましょうよ!」

 

部屋を勢い良く、出ていきそうなあこをアタシは何とか引き留める。

 

「待って待ってあこ。今日はもう遅いし。それはまた明後日にしよ?」

 

興奮しているあこを宥める。

 

すると、紗夜がある提案をしてきた。

 

「調べるのは賛成ですが、それなら二手に分かれませんか?」

 

「二手・・・・ですか・?」

 

「はい。」

 

「紗夜、どういう事かしら?」

 

「あの施設についてPCなどのインターネットで調べるチームと直接現地に行って調べるチームに別れるのはどうでしょう?」

 

「え?現地だけで良いんじゃ?」

 

アタシはインターネットで調べることの意味を掴みかねて、尋ねる。

 

「いや、インターネットなどの情報媒体からのアプローチも必要です。なぜなら、あそこは建物が()()()()()()()()()()ですから。」

 

「・・・つまり・・・あの施設・・・周辺の事件・・・または・・事故を探りたいわけ・・・ですね・・・。」

 

「そうです。そして、現地班は近所から施設についての情報の収集をメインにしたいと思っています。」

 

「あこはそれでいいと思います!!」

 

「ええ、私も概ね賛成よ。」

 

「うん、アタシも良いと思う。」

 

何となく話が纏まってきた。

 

・・・・でも一つだけ懸念すべきことがある。それは・・・。

 

アタシは友希那の方を見た。

 

この時、アタシはどんな顔をしていたのだろうか?

 

少なくともいい顔はしていないと思う。

 

「皆、よく聞いてほしいの。」

 

友希那の声から真面目なことだと察した皆が鋭い顔つきになる。

 

「これから私たちのやることは、仲間とはいえ、人の触れられたくない過去に踏み込むことよ。一般的に考えたら、これは人として正しいこととは言えない。一度踏み入れたら、もう後戻りは出来ないわ。今からでもやめるべきだと思う人は言ってほしいの。」

 

その言葉はアタシ達に重くのしかかる。

 

そうだよね・・・・。これが本当に正しいとは自信をもっては言えない。というか、正しくはない。

 

・・・・それでも、アタシはやりたい。

 

あの子に今でも伸し掛かっている重い過去、せめてその苦しさを一緒に背負ってあげたい。

 

これは、自分勝手な行為だ。何度だって言う、これは自分勝手な行為だ。

 

アタシは決意を固める。

 

皆も同じようなことを思ったのかもしれないが誰も何も言わない。

 

友希那はその沈黙を肯定と受け取った。

 

「皆の覚悟はわかったわ。なら、調査開始は明後日から。情報媒体班は、燐子とあこ。現地班は私、紗夜、リサ。いいわね?」

 

全員が首を縦に振った。

 

ついにバラバラだった点が線になるのかもしれない。

 

だが、これが仲間としてこれが正しいとは思わない。もう一度強調する正しいとは思わない。

 

それでもあたしの心は調査に向かう覚悟をしていた。

 

 

 

 

 




                  次回予告

”今まで謎だった優に関する手がかりを得た、Roseliaの面々。自分たちの行動に疑問を持ちつつも、彼女たちは少年の暗い過去に向かっていく。しかし、それは影の一端に過ぎない。”



                  次回

                 「花畑」

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