BanG Dream!! ~rose of shadow~ 作:tora酸
紗夜さんとは、あの一件以来話すことが少なくった。
普段も多くはないが、今はほとんど、話してはいない。
気まずいというのもあるが、何よりあれ以来紗夜さんの顔が険しくなることが多くなっている気がする。
そんな中でも、僕たちのFWSに向けた練習は一心不乱に続いていた。
友希那さんはいつもの練習より内容をハードにしていく。
それは、今日の練習も同じだ。
「優、あなたがこんなに早いなんて珍しいわね。」
サークルに入ってすぐ、友希那さんと会う。
「僕が、早く来るのがそんなに珍しいですか?」
「ええ。いつもは紗夜が連れてこない限りはあまり早くないじゃない。」
友希那さんの言う通り、自分でこんなに早く来るなんて思ってもいなかった。
ここ最近早く起きることが増えた。
それに伴って、集合に行く時間も早くなっている。
みんなが来るまで、僕と友希那さんの気まずい時間が続いた。
紗夜さんとは、また別ベクトル気まずいんだよなーこの人。
僕と同じで、自分の本意をあまり人に言わない。
知っているのは幼馴染のリサさんぐらいだろう。
「あ・・あの・・。」
「何かしら?」
「友希那さんはなんで、FWSに?」
「あなたに教える意味はあるのかしら。」
「あるかはわかりませんけど。僕、気になります。」
「Roseliaに私情を持ち込むつもりはないわ。それは、あなたもよ。」
「Roseliaではなく、月島優として湊友希那(あなた)に聞く分はいいでしょう?」
「ダメよ。あなたにそこまで言うつもりはない。」
「そうですか。残念。」
まぁ、元から聞けるとは思っていなかったのでこの程度は想定内だ。
ただ、彼女の目標に対する理由が気になったのは事実だ。
彼女のストイックさは何か深い理由から来ている可能性が高い。
彼女が打ち明けたいというまで、無理に聞く必要はなかったな。
そのやり取りの後、僕たちはずっと黙ったまま、次の人が来るまで待った。
ーーー紗夜視点
私は今、江戸川楽器店にいる。
目的としては新しい器具などが出ているかを確認することがメインだ。
私が器具を見ていると、店員さんが話しかけてきた。
「紗夜ちゃん、この前のライブ凄かったらしいね。話題になってるよ。ほら、ここ。」
私は、店員さんが見せてきた音楽雑誌を見ようとすると、あるポスターが目に入った。
「あの・・、これは。」
「ああ、これ最近デビューしたバンドでPastel*Palettesっていうらしいよ。」
「っ!!」
このポスターに載っているギターを持っている子は、
日菜だ。
間違いない私の妹の日菜が載っている。
「そういえば、このギターの子紗夜ちゃんにそっくりだね。」
「!!!私これから練習ですので・・。」
店員さんの言葉を聞き、私は足早に店を去る。
「紗夜ちゃん?」
日菜、よりによってギター。
私の唯一を!!!
私は、日菜に対する気持ちをなんとか抑えながら、サークルに向かった。
優視点に戻る
友希那さんと二人黙って過ごしていると、紗夜さんがやってきた。
なぜだか、顔が少しこわばっている様に思えた。
「紗夜さん、こんにちは。」
「・・・こんにちは。」
「少し遅かったわね。」
「すいません、楽器店に寄っていたもので。」
「別に攻めるつもりはないわ。」
そんな風に話していると。
「やっほ~今来たよ☆」
「皆の者、あこ姫の降臨なるぞ!」
「あこちゃん・・・声が大きいよ・・。」
3人がやってきた。
あこさん今回は普通に言えてるな。
ある意味練習の成果かもしれない。
「全員集まったようね。」
「なら、僕は受付手続きしてきますね。」
「お願い。」
「了解です。」
僕は受け付けに向かい、部屋の貸し出しのやり取りをし、カギをもらう。
「じゃ、行きましょうか。」
僕たちは、スタジオに向かう。
スタジオに入り、練習の準備をする。
「それじゃ、前回送った曲からいくわよ。」
友希那さんの合図だみんなと合わせ始める。
ちなみに僕は、今回もギターだ。
合わせをしていると、僕はある違和感に気づく
うん?
紗夜さんの音が少しおかしい。
いつも感じられる強い決意に満ちた音が
今日はあまり感じられない。
調子でも悪いのかな?
数十分後、休憩にはいる。
休憩中、あこさんとリサさん、燐子さんが話している。
「でねっ、その時もりんりんがあこを攻撃から守ってくれて・・
りんりんはゲームでもかっこいいんだよ!」
「ははっ☆あこの向こう見ずはリアルでもゲームでも変わらないんだね~。」
「ホントです。それがあこさんのいいところかもしれませんが・・。」
「優~、お姉ちゃんにそんなこと言うの~?」
「お姉ちゃんじゃないでしょ!?あこさんは。」
「あこはいつだって、優のお姉ちゃんだよー。」
「なんでこんなことに・・・。」
「私はいつになったらお姉ちゃんって呼んでくれるの~優ー。」
「いつでしょうかね!!」
「あこちゃん・・は・・お姉さん・・いるもんね。」
「あーっ!巴ね、アタシ仲いいよ?男前だよねー。」
あこさんのお姉さんは巴さんっていうのか。
昔あった人に、同じ名前の人がいたな。
・・・・・・もう関わるつもりはないけど・・。
僕たちが雑談をしていると、ちょっと奥で友希那さんと紗夜さんが何か言っている。
「紗夜、どうかしたの?」
「・・・えっ。私がどうかしましたか?」
「こういう時いつもあなたが先に音楽以外の話をやめさせるのにって思って。」
何を言っているかはわからないが、そんなことを余所目に4人で雑談を続ける。
「お姉ちゃんのドラムはこう、どーーーーんって!ばーーーーん!!」
「あははっ!いっつもその説明だよね!『どーーん!ばーーーーん!』」
「まぁ、凄いということだけは伝わります。具体的なことはなんにもわからないけど・・・。」
ふと、紗夜さん達の方を見ると、紗夜さんの顔がいつもより確実に沈んでいる。
あこさんを見て、そうなっていることがなんとなくわかる。
何だろう・・・嫌な予感がする。
僕たちの何かが壊れる、そんな予感がする。
僕の不安に思っている間もリサさん達3人は話を続ける。
「つい最近まで、一緒にお風呂入ってたんでしょー?」
「・・・! そう・・なの・・・!」
「えっ?みんなそうじゃないの?」
「私は妹いないからわからないなぁ。」
「・・・私も・・いないから・・。」
「流石に中学生3年で一緒に入ってるのはレアケースと思うんですけど・・・。」
「ふんっ。3人にはおねーちゃんがいないから、わからないんだよっ。おねーちゃんってのはね、
一番かっこいい、妹の憧れなのっ。」
「友希那さんがかっこいいはどこ行ったんですか・・?」
「1番カッコイイのは、おねーちゃんだけど、超超超かっこいいのは友希那さ・・。」
「・・・っ。いい加減にしてよ!!」
紗夜さんの怒号がスタジオ内に響く。
「「「「「っ!?」」」」」
「お姉ちゃんお姉ちゃんってなんなのよ!憧れられる方がどれだけ負担か・・・わかってないの!!」
それは、彼女が今まで溜めてきたあの人、日菜さんへの鬱憤だろう。
「なんでも。真似して!自分の意思はないの!?
姉がすることがすべてなら自分なんていらないじゃない!!」
「紗夜・・・、それってヒナのこと・・。」
僕は、ここで冷静にこの人を鎮めるべきなのに。
何故か、怒り湧き出てくる。
なんだよ・・それ・。
あんたにとって、自分の妹は鬱陶しいだけの存在なのか!!
なんで・・・なんで!!!
3人でいた時から、そんなことを思っていたのか・。
もう・・今の紗夜姉は紗夜姉なんかじゃない!!
僕はこの時理解していなかった。自分の視野の狭さを・・。浅はかさを。
過去の状況で彼女の思いを共に背負って、徐々に解決まで導けたかもしれないのに。
僕は、それから逃げていたことに。自分勝手な理由で。
この時はわかっていなかった。
「紗夜姉!!!!」
「「「?!」」」
僕の大声も周りに響く。
僕が、珍しく大声を出したので、3人は少し驚いている。
「自分がいくら辛いからって、あこさんに当たるのは違うでしょ!!!」
「っ!!!、あなたに何がわかるんですか!!何も知らないあなたが!!」
「わからないよ!!!なんで・・、そんなことで・・日菜姉を憎めるんだよ!!」
「・・・そんなこと!?あなたはじぶんのやることすべてが妹に超えられていく辛さを知ってるんですか!?」
「超えられて何が悪いの!?自分が身近な人に劣ってるからって大事な人にそんな感情抱けないよ!!!」
「・・・・っ!」
ここで止めればいいのに僕の口から最悪な言葉があふれてくる。
「昔の紗夜姉はそんなんじゃなかった!!昔はもっと優しくて凛々しくて僕の憧れだった・・・。」
「今の紗夜姉なんて嫌い・・・、大嫌いだ!!!!」
言ってしまった。
自分の感情に任せて言ってしまった。
何が・・、大切な人を守るだ・・・。
今傷つけてるじゃないか。
その大切な人を・・・・。
僕の目から涙が出る。
泣きたいのは紗夜姉のはずなのに。
自分の行動への罪悪感からか涙が止まらない。
ハハ、ハハハハハハハハハハ・・・。
「私は・・・・。」
「優!今のはあこが悪いの。紗夜さんに前にも言われたのに。あこがまた言っちゃっただけだから。」
「紗夜・・。優。」
「どんな事情があったかは知らないけど、Roseliaに私情を持ち込まないで。」
「それに、紗夜は練習にも集中できていなかった。帰ってちょうだい。」
「・・・・。言い返す言葉もないわ。お先に失礼します。迷惑をおかけしました。」
そう言うと、紗夜さんは部屋を出ていってしまう。
「紗夜さん、あこまた何か悪いこと言っちゃったんだよね・・・。」
「日菜の・・・ことだよね。紗夜の双子の妹の。」
「日菜?」
「氷川日菜。聞いたことない?」
「あ!あの毎回テスト1位で有名な人。」
「休憩は終わりよ。何度も言うけど、Roseliaに私情は禁止。これ以上話すなら、あなた達にも帰ってもらう。」
「「は、はい。」」
「優君・・。大・・丈夫?」
燐子さんが優しく話しかけてくれる。
「いつまでもそんな様子ならあなたも・・。」
「ダ・・・大丈夫でス・・。」
「ぼく・・なら・・だい・・じょうぶでス。」
いま彼女たちに僕はどのように見えているのだろうか?
壊れた機械?身勝手な愚か者?
分からない、ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ。
「・・・・そう、なら行くわよ。1,2,3・。」
今日の練習は何とか終わらせることはできた。
でも、この日以来僕は眠れなくなった。
寝ようとすると、あの時の会話がフラッシュバックして、
永遠に罪悪感が巡ってくる。
彼女の苦しみを理解しようとしなかったくせに!!
自分からいなくなったくせに!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・。
数日後 羽沢珈琲店にて
「紗夜さんも友希那さんも連絡したのに来ない。
祝 Roselia雑誌掲載記念お茶会。」
「ふ……ふたりとも…『そんな暇ない』って。」
「そういえば、優は来るって言ってたけど遅いね。」
「ま……迷子になってる…のかも。」
3人そうこう話していると、
「すいません、遅くなりました。」
「あっ!遅いよー。優。あこたちずっと待ってたんだよっ。」
「優が遅刻なんて珍しいね。」
「どうか・・したの?」
「少し行き慣れてなかったので迷ってただけですよ。ハハ・・・。」
僕は、自分の疲れを全員に気づかれないように、繕う。
「そ、そう。ちょっと疲れてるように見えるけどほんとに大丈夫?」
「大丈夫ですって。昨日ゲームしすぎたかなー。」
「ゲームは程々にね。」
なんとか、この会話を終わらせる。
僕は、コーヒー(普段ならぜっったいに頼まない)を眠気覚まし代わりに頼んだ。
「そういえば、雑誌掲載の写真・・・見て、3人とも・・・どー思った?」
「あ、えーっと・・・・。あ!友希那さんの「孤高の歌姫」っていう二つ名?が超カッコイイって思った!」
「あ、あれは・・・かっこよかったよね、あこちゃん・・・・」
「僕は、そもそも雑誌の写真を見てません。」
雑誌掲載もあこさん伝いに聞いたし。
そんなに、やばい写真だったのか・・。
「ちょっ・・ねぇもう、そうやって誤魔化されると余計凹むからぁ~。
3人ともはっきり言ってよ~。」
これ、僕も気を遣ったと思われてるな。
「じゃあ・・・いうけど・・リサ姉だけ、ギャルっぽくて浮いてる・・・」
あ~、確かに。リサさん僕たちの中では、結構派手だしなー。
「ううっ!やっぱり・・友達が言ってた通りか~。」
「ほ、ほらでも紗夜さんも演奏あんななのにちょっと地味だしっ、り、リサ姉だけじゃなくて!」
何気にそれは、紗夜さんに失礼では?
確かに、あの人一緒にいた時も服装にこだわるようことなかったけど。
「・・・統一、感・・・とか?」
「なるほど、確かに全員服装バラバラですしね。」
「それだよっ・・Roseliaに足りないのは。」
「でも、燐子と友希那って、二人ともモノトーンコーデで、結構服装の趣味似てない?」
「あっ、それならあこも!」
「あこさんのそれは、モノトーンなんですか・・・。」
服に関しては全く分からない僕でも、あこさんの服がモノトーンではないのはわかる。
「だって、この服、りんりんに作ってもらったんだもんっ。りんりん、自分の服も作れるんだよ?」
「「えっ!」」
僕とリサさんの言葉が重なる。
服手作りって、どれだけ器用なんだ。
「それって、結構すごくない!?これが手作りなんてわかんなかった。」
「わたし・・・いつも・・家にいて・・時間が・・あったから・・・」
「それでもですよ。僕なんて縫物しようとしたら、
待ち針を指に刺しすぎてそれ以来トラウマになりましたよ。」
あの時は指が血だらけで、紗夜姉と日菜姉にものすごい心配されたなー。
「優、手先器用なのに変なとこおっちょこちょいなんだね~。」
「否定はできません・・・。」
「・・・あっ!!」
「どうしました、あこさん?」
「ひらめいたっ!・・Roseliaで、バンド衣装作るってどうかな?」
「いいじゃん☆それ。」
「それなら、統一感も出そうですね。」
ただ、あの二人が許すかな・・。
でも、二人とも音楽以外はどうでもいいっていうスタンスだし、やりすぎなければ大丈夫だろう。
「友希那には私から聞いておくね♪」
「紗夜さんは、あこがメールで聞いてみるっ!」
紗夜さんにはあこさんが聞いてくれるのか。
今の僕には彼女にどんな顔をして聞けばいいのかわからない。
その後、僕たちはそれぞれ注文したものを食べ、解散した。
この時の僕はまだ知る由もない。
この出来事から歯車(Roselia)が少しづつ壊れていってるということに・・・・・
そして、僕自身に限界が来ていることに。
ーーーーーーーーー
次回予告
みなさん、こんにちは!!
毎度ど~も月島まりなです。
いや~、優言っちゃいましたね。
でも、私としては1度くらいはああやってぶつかることも悪いことではないと思います。
それを乗り越えて初めて人は成長できるんです。
ただ、あの子の精神状態は心配ですね。
優、なんでも背負いすぎちゃうからなー。
おっと、仕事はしないと。作者から次回予告くびにされる。
それでは。
’自分の言動で紗夜ちゃんを傷つけてしまい、優は後悔と罪悪感にむしばまれる。
徐々に精神を摩耗していく優に、とどめを刺すかのような非情な出来事が突きつけられる。'
次回!!
「壊レた影」
お楽しみに!