一応八雲紫が手を打ったと記載しているので今後八雲紫が何をしたかといった具体的な描写があると思います。
今日は休みなんですが、ちびっ子が暴れ回っているので少し短めです。また次の休みに続編上げます。
多分休みは金曜日です。
ーーーナザリック地下大墳墓・第九階層 ロイヤルスイート・モモンガの私室
「……なるほど。」
ナザリックに属する全てのシモべ達へ向けた八雲紫の説明が終わり、シモべ達以上に衝撃を受けた
彼は同じ人間であると思っていた八雲紫が実は別の世界の住人で、それも人外であると聞かされた上、更に一介のサラリーマンである自分が
いきなり組織のトップとして君臨し、重すぎるシモべ達の忠誠を向けられて何が何だか分からなくなっていた。
「……いきなりでごめんなさいね。でも事実、私はリアルで殺されるまではただの人間だったし、八雲紫としての記憶は無かったの。」
悟としても、彼女を責める気は毛頭ない。ちょっと現実離れした事が起こり過ぎて情報を処理出来ていないだけなのだ。
「いえ、仕方ないです。自分もまさかこんな事が起こるなんて予想出来なかったですし……」
やり込んだゲームのアバターと能力を持って異世界に転移するなど、まんま一昔前のラノベそのままである。
「あ、それと一つ相談がありまして……この身体、アンデッドなので三大欲求もほぼ無いですし、精神が沈静化されて凄く不健全な気がするんです。」
それは、今はまだ小さな違和感であるが、この世界での生活においてその内何か決定的な綻びを生みそうな漠然とした不安。
それを悟は友人である八雲紫へ打ち明けた。
「……まあ、間違いなくいいものでは無いわね。ただ、三大欲求が薄いという事は、完全には消えていないの?」
「んー、それも分からなくて……何せ食事は取れないし、性欲に関してはそもそもブツが、あ……」
失言。これ以上ない失言である。彼は男友達の前でも無闇矢鱈と下ネタを口に出したりはしない。
それが何故想い人の前で未使用のまま無くなってしまった自分の息子の話をしているというのか。……それは本人が至って真剣に悩んでいるからである。
「ふふ……いいわよ別に、気にしないで。とりあえず、話を聞く限りでは無くなった訳では無さそうね。少し試してみましょうか。」
そういうと、紫はスっと立ち上がり、同じく椅子に腰掛けていた悟をお姫様抱っこし始めた。
「……ん!?」
あまりに自然な動作なので、違和感を覚えた頃には既に悟はベッドに転がされていた。そして、相変わらず物凄く自然な動きで同じベッドに入る八雲紫。
「え……いや、あの……」
何故か無言の紫に軽い恐怖を覚える悟だが、想い人が相手である為か若干の興奮はある。
そのまま寝転がった状態で紫に抱き締められ、豊満な胸に頭を抱かれる。
国を傾けるのも容易な程の美しさの女性にこのような事をされれば、通常は性的な興奮を覚えるハズだ。
だが、抱き締められている鈴木悟が八雲紫に抱いたのは母性……であった。
彼は既に天涯孤独の身である……為なのかは不明だが、この様に下心無く抱き締められると彼は興奮では無く安心を覚えてしまう。
「ねえ……」
「……はい。」
「悟くん、本当に男の子?」
「……失礼すぎませんか?」
そもそも勃つモノが無いというのに、この言い草である。まあ、今回に限っては鈴木悟という男が特殊過ぎた。
これでは三大欲求が消えたのかどうかも分からない。……とはいえ全く無い訳では無さそう、というのが二人の考察である。
八雲紫は起き上がりながらため息を吐く。
「好意を抱いている相手に抱き着かれて興奮を覚えないのは不思議ねぇ。」
「え……」
またしても爆弾発言、まさか気付かれているとは思っていなかった鈴木悟は、今の発言を聞き返す事が出来なかった。
そしてまた沈静化される骸骨。
「まあ、とりあえず今回は私が何とかしてあげるわ。私の能力と、特殊アイテムならどっちが良いかしら?」
「……人間に戻れるんですか?」
「そう、勿論ステータスなんかはそのままね……特殊アイテムの場合はアンデッド特有の種族特性やパッシブスキルは消えてしまうけど。」
ユグドラシル由来のアイテムの場合、多少のデメリットは仕方がない。
通常の亜人種や異形種であれば幾らでも手に入る人化の指輪が使用可能だが、それらはアンデッドには使用出来ない。
アンデッドが人化するには、ワールドアイテムを使うか逆にアンデッドにしか効果のない特殊アイテムが必要になる。
「紫さんの能力でお願いします。」
「分かったわ。」
とはいえ、紫が能力を使用した場合だと自分ではアンデッドに戻せない。なので緊急用として紫は悟にとあるアイテムを手渡した。
「……これは?」
悟が受け取ったのは、神社などでよく見かける御守りと呼ばれるもの。
これには紫の能力が込められており、一度限りだが自身の姿をアンデッドに戻す事が出来る。
とはいえ、一応紫の能力を使用して人化した場合、ステータスや種族特性は据え置きな為、アンデッドに戻る利点はあまり無いが。
本当に肉体をアンデッドから人間に置き換えるだけである。とはいえ、これだと悟の心配していた懸念事項がそのままである。
なので紫がマニュアル操作で悟のカルマ値を人間の時と同じ善よりの中立へと戻し、種族特性から精神の沈静化だけをオフにする。
「……凄いですね。ありがとうございます。」
悟からすると有難い限りだが、紫のやっている行為はチートそのものである。種族特性の都合の悪い部分だけオフにする。
ゲームで同じ事をやるとBAN待ったナシである。
「……ねえ悟くん。いえ、悟。」
「え?あ、はい。」
急に呼び捨てになった紫に疑問符を浮かべる悟。
「アナタ、食事は?」
「え?一応朝食は摂りましたけど?」
紫はあからさまに大きなため息を吐くと、悟の手を取って食堂へと移動を始めた。
理由は色々あるが、一番は悟の見た目が最後に会った時より痩せ細っていてとても不健康そうだからである。
あのクソみたいなリアルでは仕方の無い事ではあるが、食事も摂らずにゲームをしていた事に憤慨しているのである。
ちなみに、悟の容姿についてだが……
素の顔は別に悪くは無い。目元は優しげで、年齢に見合わず少し童顔だが、顔のパーツ自体は整っている方である。
本人は自分の顔は良くないと言っていたが、それには明らかに不健康な生活が関係していると紫は思う。
雰囲気も目元も優しげだが、痩せこけているせいで病人が無理して笑っているようにしか見えないのだ。どこぞのもやし以上にもやしである。
「とりあえず、私はここまでよ。くーちゃんだけはどうにかして連れて来るから安心しなさい。」
仮に、の話だが我らがギルド長がリアルに転移出来たとして、ギルドメンバー達を勧誘する事は間違いないだろう。
一緒に暮らしませんか、と。だが、彼らがそれを否定すれば間違いなく彼は身を引く。
そして、ぶくぶく茶釜は性格的にリアルを捨ててナザリックに戻ってくる事は無い。逆にその弟は喜んで帰って来るだろう。
今の紫は妖怪である。人間であった頃の謙虚さも今は無い。欲しいものは自力で手に入れる。時には力ずくで、それが難しければ知略を駆使して。
と、ぶくぶく茶釜の元へ赴こうとしていたが、一つ不安要素がある事に気付き、紫は指輪の力を行使する。
◆
ナザリック地下大墳墓守護者統括アルベド
彼女は異世界への転移前から少し特殊な事情を抱えている。創造主はタブラ・スマラグディナ、
本来彼女はモモンガを愛している、とフレーバーテキストを書き換えられる筈なのだが、モモンガこと鈴木悟の心境の変化により別の設定に変更された。
それはナザリックに牙を剥く可能性はあるが、モモンガと八雲紫に対して牙を剥く可能性は存在しない。
だが、仮にNPC達が至高の御方と呼ぶ面々がナザリックへと帰還を果たした際、モモンガと八雲紫の頭を悩ませる原因になるだろう。
八雲紫はその懸念を払拭するべく、事前にとある手を打った。
◇
私はとある実力派売れっ子声優だ。
同人ゲームの声当てから始まり、今では有名作品のメインヒロイン役のオファーが来るほど名が売れた。
私の、売れっ子声優の生活を羨む人間は山ほど居ると思う。……だけど、その生活は皆が想像するほど楽なものじゃない。
基本的に、今担当している作品の収録が始まるのは昼前からだ。
朝は七時に起きて溜まった洗濯物を回し、今期アニメが終わった後のラジオ番組の予定やスケジュールの管理をマネージャーと相談する。
そして身体を洗って軽く食事を取ったら、もう仕事が始まる三十分前だ。軽く化粧をしたらすぐに向かわなければいけない。
遅いと収録が終わるのは深夜で、休みの日も次のシーズンのオーディション等の予定が入る。
自由時間はほとんど無い。
私よりも厳しい生活をしている人は沢山居るのかもしれないけど、私はこの生活で割とギリギリなのだ。
今収録している作品の都合上、スタジオ近くの寮で生活が出来ているが、今期の収録が終わった頃にはまた引っ越さなくちゃいけない。
「はあ……好きな事だけして生きていければな。」
あの頃は色々なゲームを嗜む弟とは違い、ほとんどゲームをしない私が唯一ハマっていたゲームがあった。
「紫ちゃん……」
プライベートで会ったのはユグドラシルが初めてだったけど、それまでに仕事で何度か顔を合わせた事があったのは驚いた。
私を色眼鏡で見ないし、個人的にも話があって色々と新鮮だった。
私が忙し過ぎてログイン出来なくなっても、リアルでの交友は続いた。
たまにプライベートで時間が出来たら軽くショッピングに行ったり、自分の出演したアニメを鑑賞してみたり。
少なくとも、私にとっては親友だった。
それがまさか、あんな事になるなんて……それに、モモンガさんも。
基本的にゲームの中でしか関わる機会はなかったけど、私達のプライベートに必要以上に踏み込まないから、色々と有難かった。
彼も意識が戻らないらしい。
何でもユグドラシルのサービス終了までログインしていた十数人の、意識が戻らないと。
このご時世、富裕層はともかく働けない一般の人達にお金を掛けて延命措置を図る物好きは居ない。
案の定、ニュースになったり大騒ぎになったものの……すぐに騒ぎは収まった。
流石に、あんな事があった次の日は仕事にならなかった。
弟にも、一応伝えたけどアイツも信じたくなかったのか他のゲームにのめり込んで部屋から出てこなくなったらしい。
アイツは実家にいるから、親から聞いた。
アイツ、特にモモンガさんと仲良かったしな……他のゲームにも誘っていたみたいだし。
いっその事、今収録してる作品みたいに異世界で元気に生活しててくれれば……なんて、馬鹿らしい。
本当に異世界なんてものがあるのなら、私も行きたいくらいだ。
「……ごめんなさい、くーちゃん。」
なんて、馬鹿なことを考えながら化粧をしていると、私は唐突に意識を失った。……死んだはずの、友人の声に誘われて。
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