ミオリネ・レンブラァン!
何故君が突如モノレールの車内から謎の場所へ引き込まれたのか?
何故レン達の恰好が突如変わったのか?
何故あのシャドウとかいう怪物相手にレン達が戦えたのかァ!?
その答えは唯一つ……。
アハァ……(吐息)
ミオリネ・レンブラァン!
……な感じの嵐の前の静けさ説明回、は~じまるよ~。
「かい……とう……?」
怪盗? ……
返って来た答えの意味が分からず、一層困惑が強まったミオリネは目を
そんな彼女のリアクションはある程度予想していたものだったのか、ふっ、と目を伏せて苦笑したレンが、続けて周囲を見渡した後、
「出口まではまだありそうだな。――モナ」
一度だけモナの方を見下ろして何か指示を出してから、ズボンのポケットに両手を入れてミオリネの方へと歩み寄って来る。
「増援が来ないとも限らないから、まずはここを離れよう。訊きたい事は山ほどあると思うが、それは――」
コートの裾を揺らし、話し掛けながらミオリネとの距離を詰めて行くレン。
その後方で、先程彼から指示を受けていたモルガナは、
「モルガナ~、変っ身! ――とぅ!」
その場で高く跳び上がったかと思いや、一瞬の内にその姿を
もう今日だけで何度目になるか分からない、はぁっ、という絶叫を上げて目を見開くミオリネ。
そんな彼女にも、また自らの後方でクラシカルな造形の、
全く動じる様子など無いままレンがミオリネの眼前まで辿り着き、手を差し伸べて来る。
「――車の中でゆっくり話そう」
「……」
為されるがまま、ミオリネはその手を取り、レンに引き上げられて立たせられる。
そうして、先行く彼に付いていくまま、多大な疑念を胸の内に抱えつつ彼女もモナの方へと向かう。
「君がそこら中へ放り投げてくれた俺の買い物を拾ってから、ね」
「……あ」
――先程自らに迫るシャドウを追い払うために
「――認知の、異世界ぃ?」
「そうだ」
車と化したモナの後部席に座ったミオリネの動揺が
「この世界は、人の認知が作り上げた
「い、異世界って……アンタねぇ……」
そんなバカな、とミオリネは眉を
異世界などと、そんなコミックかシネマでしかお目に掛かれないような単語を堂々と、しかも実際に存在するものとして大真面目に告げられようとは、思いもしなかった。
……しかし、先程己の目で実際に見たあの光景は――およそ現実のものとは思えない赤黒いメメントスの情景、シャドウという怪物、人間離れした動きで戦っていたレン達、アルセーヌなる怪人は、それこそここが異世界とやらでもなければ、説明が付かない。例え、どれだけ信じ難い話であったとしても。
なので、この場が実際にその認知の異世界とやらなのかどうかについて一旦保留する事にしたミオリネは、気を取りなおして別の質問を投げ掛ける。
「……なら訊くけど、何で私達、その異世界とやらに来てんの?」
先程まで、間違いなく自分達はアスティカシアへ戻るモノレールの中にいた。それが、何なの前触れも無く突然この異世界とやらに辿り着いていたのだ。当然、そうなった原因は知りたい。
そう思って問い掛けたミオリネに、フロントガラス上から伸びるバックミラー越しに、仮面を額の辺りまで持ち上げている事で顕わになっている黒い双眸をレンが向ける。
「君の手帳にいつの間にか入ってたっていうアプリ、覚えてるかな?」
「あのウィルスかもしんない奴?」
ミオリネは懐から生徒手帳を取り出し、スリープ状態を解除する。
液晶に光が灯り、現れる例の黒と赤の目玉模様のアプリ。
ダウンロードした覚えも無く、いつの間にか待機画面の一画を占拠していたその怪しげなアプリを、これよね、とミオリネはバックミラー越しにレンと、助手席に座っているエリィに見せてみる。
すると、うげっ、とレン同様に仮面を額の辺りまで上げたエリィが、顕わになっている大きな青い目を歪めた。
「ホントに入ってる……」
「って事は……はーぁ、こうなっちまったのは
「? どういう事?」
何でアンタのせいになんの、と車の中に響き渡るモナの溜息混じりの声に問うミオリネに、代わりにレンが答える。
「それは“イセカイナビ”。名前の通り、
「はぁっ!?」
ガバリ、と掲げていた生徒手帳を引っ込めたミオリネは、慌ててその画面を――件の目玉模様のアプリ――“イセカイナビ”を凝視する。
このアプリが、このメメントスなる場所へ自分達を引き寄せた原因?
「レンブランさん、多分手帳の音声入力ONにしてるよね? ――そのアプリ、結構な地獄耳でね。傍で誰かが
「あの時、ワガハイとエリィで丁度異世界の事話しててな。……口に出して言っちまったんだよなぁ、
「な……何なのよそれ」
まさか、お前も持ってるとは思わなくてよ、とぼやくモナに、ミオリネは
つまり、音声入力が有効になっている彼女の生徒手帳にこのイセカイナビがいつの間にやらかインストールされ、そこに偶然起動して異世界に渡るためのキーワードが告げられてしまったために起きた、意図せぬ事故だった、という事らしい。――その
だとすれば――このイセカイナビというアプリ、あまりにも危険過ぎる。
すぐさまミオリネは手帳を操作し、もう一度、今度こそイセカイナビを削除しようとする。
しかし、
「無駄だ」
そこにレンが待ったを掛ける。
「そのナビは普通のアプリじゃない。――いくら削除しようと、アンインストールしようと、すぐに復活する」
「じゃ、じゃあどうすんのよ? 直接言ったワケでも無いのに言葉拾って勝手に動いてこんなトコに連れて来るアプリなんて、そんな
「取り敢えず、手帳の音声入力をOFFにしておくんだ。そうすれば、勝手にナビがキーワードを拾う事は無くなる」
俺もそうしているよ、と対処法を告げるレンに、正直一時
はーぁ、と肩を落としたミオリネは、そのまま
それから暫くその姿勢で居続けた後、それじゃあ、と首を正面に戻してもう一つ質問を投げ掛ける。
「アンタ達って、
「何、っていうと――怪盗だけど?」
「それさっき聞いた!」
その怪盗というのは怪盗というので意味が分からないが、それはともかくとして、ミオリネが知りたいのはもっと全体的にだ。
一体その恰好は何なのか? さっきの幾体ものシャドウ達を苦も無く
そして――。
「アルセーヌ、だっけ? アレも何なのよ、一体?」
人間とは思えず、されど動物でもなければMSのような機械でもない、異形の怪人。
その見た目だけならばアレもシャドウかと思うところだが、しかしそちらと違ってミオリネを襲うような事は無く、逆に危機にあった彼女を救い出していた。――というよりも。
「アイツ、アンタに
最後に残った数体のシャドウ達を一掃した、あの凄まじい赤と黒の奔流。
アレを放つ直前、確かにレンがアルセーヌ向けて叫んでいた。――ナイフを
その姿がミオリネに確信を持たせていたのだ。――あのアルセーヌという怪人はシャドウとは違う。レンのコントロール下に置かれている、全く別の
その印象を率直に告げると、流石に鋭いね、とレンが笑い返す。
「お察しの通り、アルセーヌを動かしていたのは俺だよ。アレは、俺の“ペルソナ”だ」
「ペルソナ?」
聞き慣れない単語に、何それ、と即座に返したミオリネは、次いで、ううん、と引っ掛かりを覚える。
ペルソナ……PERSONA……
思考がそこに行き付くと共に、ミオリネの視線はバックミラー ――そこに映るレンとエリィの額の
そういえば、あのアルセーヌが出ていた時、レンの顔に仮面は無かったような……?
「ペルソナってのは、言ってしまえば
ミオリネの疑問の答え合わせを行うように、モナの声が車内に響く。
「人は誰しも仮面を被っている。自分の外から来た何かに触れたり向き合ったりした時、自分の心を守るために
「ペルソナ、使い……ねぇ」
モナの説明を、自分なりにミオリネは噛み砕いてみる。
外から来た何かに触れたり向き合ったりした時に被る、仮面――自分ならば、学園の教師のようなある程度目上の人間と、それ以外、例えば同じ生徒相手で態度や言葉使いを変えたりしているが、そういう事だろうか?
いまいちしっくりと来ないが――まぁいい、とミオリネは思考を一旦止める。
そんな事よりも、彼女には重要な事があった。
それを、運転席の背凭れ越しにレンを見ながら、ボソリ、と自分にしか聞こえない程度の声量でミオリネは呟く。
「……アレもアンタの
「!?」
声が聞こえた、気がした。
その場の、誰の物とも違う声が。
ビクリ、と思わず体を強張らせたミオリネは、すぐさま首を振り回して周囲を確認する。
視界に映るのは、変わらずレンとエリィと、車に変じているモナの車内のみ。――ミオリネが聞いた声の主らしき存在は、何処にもいない。
「……気の、せい?」
ポツリ、と呟くその間も、周囲からは車その物の駆動音やタイヤと地面が擦れ合う走行音、ついでに何故か猫が喉を鳴らすようなゴロゴロ、という音まで時折聞こえて来る。これだけ様々な騒音が飛び交っていれば、不意にそれが何かの声のように聞こえたとしてもおかしくはない。――きっと聞き間違いだ。
そう結論付ける一方、ミオリネの内にはまだ違和感があった。――そもそもあの声が
と、その時であった。
「だはぉっ!?」
キィッ、という甲高いブレーキ音を上げて車が突如急停止。それによって体に掛かっていた
すぐさまミオリネは顔を背凭れから引き剥がし、先の急ブレーキへの非難を叫ぶ。
「ちょっと! なに雑な止まり方してんのよ! アンタパイロット科でしょ!? 止まるなら止まるでもっと優しく――」
そう激しく捲し立てている途中で、ふと気づく。
レンも、エリィも、二人共ミオリネの方を向かず、じっとフロントガラスの向こうを見据えている事に。
そして、二人揃って纏う空気が
一体どうしたのか? 二人の視線を追ってミオリネもフロントガラスの方へ目を遣ってすぐ、その理由を知った。
「――!」
――シャドウだ。
先程と同じ、ずんぐりとした巨体のシャドウがフロントガラスの向こうに何体も並んでいた。十や二十どころではなく、それどころか先程よりも更に多いかもしれない数が所狭しと
「あーあ、しつこい奴ら」
エリィが後頭部に手を回し、うんざりしたように音を立てて背凭れに背を押し付ける。
「さっきより多く来たからってやられる数が増えるだけなのに、良くやるよね」
「
「何で?」
渋るモナの声に、きょとんとしながらエリィが尋ねる。
その問いへの答えを告げたのは、肩越しにミオリネの方を見て来たレンだった。
「――レンブランさんだな?」
「ああ」
モナの声が肯定する。
「あの数相手にミオリネ守りながら戦うのは、ワガハイら全員が最初から全力でいったとしても、流石にキツい」
その上、先程と違って地形も良く無い。
先程の戦闘の際は一部が壁だったため、そこにミオリネを置く事で防衛を容易に出来たが、現在値は四方にそういった障壁は見当たらず、開け放たれた赤と黒の闇が全方位に渡って広がっている。――どこからでもシャドウが表れる、という事であり、単に戦うだけならまだしも、非戦闘員が襲われないよう気に掛けながらとなれば戦闘の難易度が跳ね上がる事は避けられない。
「だがこの感じ……恐らく、出口も近い。あのシャドウ共の壁を抜ける事が出来れば、現実に戻れる筈だ」
「本当!?」
モナの言葉に、喜色の声を上げてミオリネは体を突き出す。
彼の言葉が本当ならば、あと少しでこの意味の分からない異世界とやらともおさらばだ。喜ばない理由が無い。
その一方で、何かを察したような面持ちでレンが少し上を見上げ、言う。
「良い考えがありそうだな?」
その問い掛けに、にゃっふっふー、と自信有り気な声が返した。
「流石ジョーカー、察しが良くて助かるぜ。――というワケでお前ら、今からワガハイが言う事、よーく聞けよ?」
そうして、モナの声が車内の面々に
当然、その内容にはミオリネも耳を傾けていた。
聞けば聞く程、何故か心の奥底がざわつく様な感覚を覚えつつも。
君の生徒手帳が、A.S.世界で初めて、イセカイナビに感染した生徒手帳だからだァーハッハハッハッハッハァ!
アーッハッハッハッハッハァ!
次回、大乱闘!? こうご期待!
……コメント欲しいな~……評価欲しいな~……(チラチラ