まずは冒頭、ちょっと短いけどは~じまるよ~!
いつの間にか自身の生徒手帳にダウンロードされていたイセカイナビ。
それによって事故同然に引き込まれる事となった、認知の異世界。
そして、その中で目覚める事となった反逆の意思。――心の内のもう一人の自分を仮面として使役する、ペルソナ能力。
最初はレンの買い物に付き合うだけだったのに、いくつもこの世の物とは思えない体験をするハメになった昨日から日を
まぁ、あくまで何事も無かった
「おーいミオリネー!
「そこ置いといてー」
入り口の方から聞こえた少年のような声に、返事をしつつ振り向くミオリネ。
果たしてその視界に入って来たのは、両肩に肥料の袋を
「大丈夫、ここで? 結構重いよ?」
「そーだぜ。お前あんまり体力無い方なんだろ? 素直に蓮に運ばせたらどうだ?」
「大きなお世話」
肩から肥料を下ろしつつもやや心配げに尋ねるレンと彼に同調するモルガナに、彼らの方へ向かいつつミオリネはそう返す。
肥料の袋が重いのは知っているし、他の場所なら彼らから提案される前にそう指示しているところであるが、この温室については別。確かにレン達には何かと世話になりはしたが、されとて
そのまま、レンが下ろした袋の片方を受け取り、口の方から両手で持ち上げようとしたところで、水臭いなー、と不満げな少女の声がどこからか聞こえて来る。
「もうボクら同じペルソナ使いじゃん、メメントスで一緒に暴れた怪盗仲間じゃん。良いじゃん、中に入ったって」
「
水臭いって何よ、と肥料の袋を引き
「私、アンタ達の取引にまだ乗ったワケじゃないし、大体その怪盗ってのになった覚えも無いし」
「――確かにその通りだ」
ったく、と袋を床に置いて作業に戻ったミオリネは、後ろで、ふぅ、とレンが肩を
「俺と取引をするかも、
そう、彼の言う通りだ。
昨日、あの駅で改めて持ち掛けられた取引と、それに
何故そうしたかといえば――当り前じゃない、と細めた目で肩越しに彼女はレンを見遣り、再びその理由を告げる。
「もし次の決闘でアンタが負けたら、アンタも私も
つまりは、まだ彼女達を取り巻く状況が不安定だから。そんな状態で応じても、万が一の事態が起きて
ただし、この理由も、保留自体も一応程度のものだ。
取引の内容そのものは極めて魅力的。それを為す手段の一部――認知の異世界、ペルソナ――も既に示されている。
何より、宣言通りにグエルとの一戦目に勝ち、自らが
だからこそ、彼に手にしていたスコップの切っ先を向けて、こうも告げる。
「次もちゃんと勝ちなさい、レン。ちゃんと勝って、私とアンタの取引を成立させなさい」
そうなれば、彼は正式な取引相手だ。温室内に足を踏み入れる許可だって、考えても良い。
そう宣言し、ニヤリ、と笑い掛けるミオリネに、
「そういう事なら、次も
レンもまた口角を吊り上げ、不敵に笑い返す。
……なお、
「どんな言い回しだよ、取引を成立させろって……」
「うっわー……すっごい上から目線」
彼の足下の猫と、ポケットの中のキーホルダーがドン引きする声も聞こえていたので、すぐにミオリネはそちらにもスコップの先端を向けて怒鳴る事となった。
「そこの猫とキーホルダー、うっさい!」
そんな感じでモルガナとエリクトを引き連れたレンがミオリネと話していたのと、ほぼ同時刻。
アスティカシア高等専門学園内、ジェターク寮。
その地下に停留している学園艦内の格納庫に収容された2体のMSを、グエルは見上げていた。
一体は彼がこれまで愛用し続けて来た、専用チューンナップのディランザ。
鮮やかなマゼンタに
しかし、問題は無かった。
次の――やり直しの――決闘には別の機体を使う事が、既に決まっている。
その機体こそが、半ば残骸と化しているディランザの、その隣のスペースに収まっている真紅のMSだ。
MD-0064“ダリルバルデ”。
次の決闘でグエルに勝たせるため、先の決闘で少なからず傷付いたジェターク社の威信を取り戻すため、優秀なスタッフと最新技術を惜しみなく投入して作り上げられたその新型機は、ロールアウトし立てならではの
御三家ジェターク・ヘビー・マシナリーの現時点における最高傑作と言っても過言ではないその威容を前に、しかしグエルが浮かべている表情は優れない。
昨日行った、ダリルバルデの機動試験がその原因だろうか?
確かにそうかもしれない。この機体に備えられた
だが、それらは違う。
もっと別の、もっと
そこにこそ、自身の左頬に手を
「ここにいたんだね、兄さん」
ふと掛けられたその声に、意識を現実に引き戻されたグエルは振り返る。
視界に入って来たのは、歩み寄って来るラウダの姿だった。
そのままラウダはグエルの隣に着き、つい先程まで彼がそうしていたように、ダリルバルデを見上げる。
「凄いね、ダリルバルデ。さっきスペック表を見て来たところなんだけど、あの通りの性能ならディランザの比じゃない。そこに兄さんが乗り込むなら、正に鬼に金棒だ。――次は、絶対に兄さんが勝つよ」
熱の
その返答を不思議に思ったのか、どうしたの、と彼の方を振り向くラウダに、
「――なぁ、ラウダ」
一拍間を置いて、グエルは問い掛ける。
「父さんって、
「え?」
ポカン、とラウダが固まる。
明らかに意図が伝わってないその反応に、いや、とグエルは質問を訂正する。
「何というか……そうだな……その、昔の父さんは、もう少し優しかった気がしてな」
言葉の選びながら告げたためか、少々口調がぎこちないものになってしまう。
そんなグエルに呆気に取られてか、それとも彼の様子を訝しんでかは定かでは無かったが、いつものように前髪を
「昔は……そりゃ、今より優しかったと思うよ、父さん」
「! やっぱり、そうだよな? 昔の父さんは、もっと、俺やお前の話をちゃんと聞いて――」
弟の返答に、それまで浮かなかったグエルの気分が少しだけ盛り返す。
しかし、でも、と続く言葉が盛り返した気分をすぐに
「昔は僕達も今より小さくて、幼かったから」
「――!」
「単に、僕達の歳に合わせて父さんも対応していた。――
「……そう、か」
返す言葉が
正直なところ、ラウダからの回答は期待外れだった。――
その気持ちを何とか隠そうとしたが上手くいかず、逆にグエルを見る弟の目は不信感半分心配半分といった感じの物に変わる。
「どうしたの兄さん? ――何かあったの、父さんと?」
「い、いやっ! 何でも無いんだ! 本当にただ、少し、気になっただけで……」
そう言い
止むを得ず、少し一人にしてくれ、とグエルは強引に会話を切り上げ、弟をその場から退場させようとする。
そうして、その指示に従いつつも心配げな視線を最後まで向けたままのラウダが見えなくなるまで見送ったグエルは、再びダリルバルデを見上げ、左頬に手を当てる。
その脳裏に、先の機動試験の際、平手打ちと共に父に浴びせられた言葉が脳裏を過った。
「……分かってるさ」
言われずとも分かっている。
次は勝つ。
あの田舎者に勝ってホルダーを取り戻し、会社の信用に付いた傷を消し去る。
それこそが
何としても果たす。未来のドミニコスのエースとして!
改めて固めたその決意を眼差しに込め、いずれ己が操る事になる真紅の機体をグエルは睨む。
その一方で――未だ掌に覆われたままの左頬が、ズキリ、と当に失せている筈の痛みを訴えた気がした。
我ながらみ、短いっ!(愕然
何で、次の話は近い内に投稿予定。次もどうかお楽しみに~。