ペルソナ5G 水星のトリックスター   作:shisuko

15 / 41
前話で約束した通り、ちょっと早めの次話投稿!

今回はGo to 決闘委員会!
金髪半裸スケコマシ(見た目だけ)と銀髪褐色ムッチリギャルが巣食う伏魔殿! 一体レンは、というかレンの体は、どうなっちゃうんでしょうか!? それでは、ぁ、突・入、して来ま~す!(シャドウ完二並感)

は~じまりはじまり~!


#14 Alea Jacta Est.

「……ねぇアレ、噂の……」

 

「……ああ、水星から来たっていう……」

 

 授業のため学園の廊下を渡る(かたわ)ら、そんな風に周囲の生徒達が噂をする声が引っ切り無しに続く。

 彼ら彼女らの噂の対象は、学園指定の(かばん)を胸元に下げて歩くレンだ。

 

「……ズルして退学になったんじゃないのか? 何でまだいるんだ? ……」

 

「……決闘やり直しになったんだと。今度は一体どんなズルしたのやら……」

 

「ヒデー言われようだな」

 

 (わず)かに開いた鞄の中から、中に入っているモルガナが青い目を覗かせてぼやく。

 

「決闘やり直しにしたのはミオリネとグエルの親父で、ワガハイらは別に何もしてねーってのに。――これじゃ、“シュージン”にいた時と変わんねぇぜ」

 

「ま、エアリアル(ボク)については()()()()()()しね」

 

 嘆息混じりのモルガナの言葉に続いて、同じように鞄の中に入っているエリクトのキーホルダーが発した声に、違いないな、と周囲の陰口(かげぐち)を特に気にした風も無いあっけらかんとした声色で、レンは返す。

 ()()()()扱い自体はもう慣れっこだし、エリクトの言うように、()()と違って今回は()()()()()()()()()()()()()()。多少はこうなっても仕方ないと、当に彼は開き直っていた。

 そういうワケで、周囲の奇異の目や噂話を一切に気にも留めず、レンはハーフパンツのポケットに両手を突っ込みながら堂々廊下を進んでいたのだが、

 

「しかし、()()()()()()……」

 

ふと、物憂(ものう)げにモルガナが呟く。

 

「分かっていた事だが――今回の件、本当に()が裏にいるんだな」

 

「ああ」

 

 返すレンの返事も、また重苦しさを(はら)んだものになる。

 そして、続くエリクトの言葉もまた、同じように重いものが(にじ)む。

 

「最初にボクや“イゴール”達が言った通りだよ、君達は信じたくなんて無かったろうけど。――でも、前に()()()倒した事あるんでしょ? もう一回やれないの?」

 

()は色々と重なった結果の勝利だ。同じ事()()()でもやれって言われても……何とも言えねぇな」

 

「それに――」

 

 エリクトの問いに、(うな)るモルガナに続いてレンが告げる。

 

「――()も前とは違う」

 

 ()()()()がその証拠だ。――()()と同じ方法が通用するかも分からない。

 その言葉を最後に、重苦しい雰囲気のまま三人の会話は終わる。

 それから程無くして、目的地であった教室の入り口を視界の右側に見つけたレンはその前に立ち、彼に反応した自動ドアが開くと共に中へ足を踏み込んだ。

 途端、既に教室内にいた生徒達の大半が彼を一瞥した後、廊下の生徒達と同じように視線を()らして噂話を始め出す。

 が、そんな周囲の反応は早々に静まる。

 レンが入室するや席を立ち、怒り肩で彼の方へと向かうその人物の剣呑(けんのん)な様子に、それを目にした生徒達が余計な火の粉を浴びないように口を(つぐ)んだために。

 

「――来たな、田舎者!」

 

「やぁ、ジェターク」

 

 自分の眼前に立ち、特徴的な形の眉を吊り上げて明らかに気が立っている様子のその人物――グエルに、そんな彼の様子を特に気にしない平常のまま、おはよう、とレンは挨拶を返した。

 

 

 

PERSONA5G ―― TRICK STAR from MERCURY ――

#14 Alea Jacta Est.

 

 

 

 教室に現れたその黒い癖毛を認めるや、先の決闘での敗北の屈辱と怒りが込み上げて来たグエルは、隣の席に座るラウダが慌てて呼び止めるのも無視し、威圧も兼ねてレンの方へと向かったが、返って来たのは特に怯えも警戒も無い挨拶のみ。

 先の決闘を始める直前にされたのと同じその気安い言葉にその場で激昂(げっこう)しそうになるグエルであったが、それをどうにか抑えて彼は言葉を続ける。

 

「貴様は知らんだろうから教えてやる! この前の決闘は無効だ!」

 

「ああ、らしいな」

 

 カテドラルの協定に反したMSの使用だとかでフロント管理会社に拘束されていたらしいレンはこの事実を知らない、と踏んで告げたその事実は、しかし当に知っているとでも言うようにあっさりと彼に頷かれる。

 何で知ってるんだよ、とまた一つ怒りを刺激されたが、何とか口角をヒクつかせるに留めつつ、グエルは更に続ける。

 

「今度こそ決着を着けてやる! 精々、水星に帰る準備でもしておくんだな!」

 

 そう何とか言いたかった事を言い切った後、深い溜息を吐いてまだ(くすぶ)る怒りを(しず)めようとするグエル。

 しかし、それは叶わない。

 

「“決着を着けてやる”。――そういう言葉が出て来るなら、次の相手は変わらずお前のまま、って事だな?」

 

「そうだ、俺だ! 次こそ俺が貴様を――」

 

「それは良かった」

 

「良かっただとぉ!?」

 

 安堵しつつのレンの発言が、ブチン、とグエルの堪忍袋(かんにんぶくろ)の緒を切ったからだ。

 瞬間放たれた激怒の言葉に、周囲の生徒達の何人かが悲鳴を漏らす。

 しかし、やはり当のレンには(ひる)む素振り一つ見られない。

 

「一度勝った相手だから、次も余裕で勝てると、そう言いたいのか!? ()め――」

 

「ああ、違う違う。そういうつもりで言ったんじゃない」

 

 掌を向け、気炎を上げて吠えるグエルを(なだ)めるレン。

 しかし、続けて訂正された言葉は致命的なものとなる。

 

「別の誰かのせいで、お前自身が戦わずに()()()()()()()()()()()のは流石に理不尽過ぎるな、って思っただけさ」

 

「なっ……!?」

 

 その物言いで察した。

 勝てる(可能性の話)、じゃない。勝つ事は――グエルだろうと、それ以外の誰が相手だろうと――この男にとって、最早既成事実(きせいじじつ)なのだ。勝つ()()なのだ。

 

「どうせ謝るなら、ちゃんと自分の意思で戦って、その結果を受け入れて謝った方が、後腐れも無くてスッキリする。――俺はそう思うけど、お前も()()()()()()?」

 

 そう当然のように告げるレンの、眼鏡越しの黒い瞳がまっすぐにグエルを見る。

 その視線に思わず一瞬(ひる)んでしまうも、変わらず彼が負ける前提で物を言うレンに、貴様ァ、とグエルは更に怒りを(たぎ)らせる。

 一触即発(いっしょくそくはつ)。次の瞬間には――主にグエルの方から――殴り合いの喧嘩でも始まり兼ねない危険な空気が(ただよ)い出す二人の間に、しかしその空気を読まず声を掛ける者がいた。

 

「レン・アマミヤ」

 

 その声に反応し、グエルと向き合っていたレンが左に顔を向ける。

 そして、一瞬驚いたように目を丸くした後、やぁ、と声の主と朗らかな挨拶を交わした。

 

「おはよう、ケレス」

 

「おはよう」

 

 声の主は、エラン・ケレスだった。

 いつも通りの何を考えているのか分からない仏頂面(ぶっちょうづら)の彼の唐突な登場に、思わず固まるグエル。

 そんな彼を余所に、レンとエランが話し始める。

 

「この前は食事ありがとう。――ここにいるって事は、君も3年のパイロット科だったんだな」

 

「うん」

 

「同期って事か。なら、今みたく授業で顔を会わせる機会も多くなりそうだな。――今後ともよろしく」

 

「よろしく」

 

「で、何か用かな? 見ての通り、今ジェタークと取り込み中だったんだけど」

 

「うん。――君と――」

 

「おいエラン!」

 

 自分を無視して会話する二人に、(たま)らずグエルは声を荒げる。

 

「今そいつは俺と話している最中だ! それを横から割り込んで、何勝手に話を――」

 

「君も」

 

「ア゛ァ゛ッ!?」

 

()()()()()()()()、グエル・ジェターク」

 

 そう告げるエランに、怪訝(けげん)に眉を(しか)めながらもグエルも向き直る。

 それを待って、エランが本題を二人に告げた。

 

「今日の放課後、決闘委員会のラウンジに。――次の決闘の宣誓(せんせい)をしてもらう」

 

 

 

 その日の放課後、手に持った生徒手帳に表示されているマップアプリの指示を頼りに()()へ向かっていたレンの前で、エレベーターの扉が開かれた。

 途端に視界に広がるその情景に、ふっ、と一つ笑ってレンは呟く。

 

「――ここが決闘委員会の本拠地(ほんきょち)とやら、か」

 

 真っ先に目に入る、横一面に広がる窓越しの青空。それをバックに、部屋の中央にソファーと緑豊かな植え込み、ギリシャ彫刻風の円柱がCの字状に並べられている。

 明るく開放されていながらも、どこか厳正な雰囲気が漂っている、そんな決闘委員会のラウンジへとレンが一歩足を踏み入れるや、ようこそ、決闘委員会へ、とソファーから誰かが立ち上がる。

 そのままレンの方へ歩み寄って来たのは、長い金髪を揺らす褐色肌の青年だった。

 

「俺はシャディク・ゼネリだ。――よろしく、水星君」

 

「こちらこそだ。――よろしく、ゼネリ」

 

 一見人好きそうな笑みを浮かべ、しかしどこか探るような光をその青緑色の穏やかそうな目から覗かせるシャディクが差し出した手に、レンもまた自らの手を差し出して握手に応じる。

 その最中、彼のポケットの中でエリクトが呟く。

 

「水星()――ねぇ」

 

 ちなみに、モルガナはこの場にはいない。

 ここへ向かう直前に呼び出された事を一応ミオリネに伝えたところ、この場に不釣り合いの鞄に入れてまで連れて行くのは流石に不自然だと指摘されたため、今は彼女と共に温室で待っているところだ。

 

「さて、()()も揃った事だし。早速始めようか」

 

 シャディクが振り返り、ラウンジの奥へ向かうよう手で指し示す。

 それを合図に、それまで青空と学園の外観が覗けていた窓が暗転。横から見た鳥をあしらったような校章と共に“Asticassia School of Technology”の文字が浮かび上がるスクリーンへと変化する。

 同時に、ソファーから二人分の影が立ち上がり、シャディクに案内されるレンと共に、スクリーンの前へと移動する。

 影の正体は――エランとグエルだ。

 そのまま、まずエランがスクリーンの正面に立ち、そのエランの正面にレンとグエルが向かい合う形で並ぶ。そして彼らが配置に着いたのを見届けた後、既に彼らとは別の二人の生徒が座っているソファーへとシャディクも腰を下ろし――ようやく、宣誓の用意が終わった。

 

「双方、魂の代償を天秤(リーブラ)に」

 

 エランが、自身の前で睨み合う――というよりも、一方的に睨み付けているグエルと、(すず)しい顔でそれを受け流しているレンに告げていく。

 

「決闘者はグエル・ジェタークとレン・アマミヤ。場所は戦術試験区域7番。1対1の個人戦を採用。――異論は無いか?」

 

『ああ』

 

 レンとグエルの応答の声が重なる。

 直後、ちっ、とグエルが舌を打ったが、レンもエランも特に構わず、宣誓の進行が続けられる。

 

「レン・アマミヤ。君はこの決闘に何を賭ける?」

 

 その問いに、ふっ、と一つ笑ってからレンは返答する。

 

「前と変わらない――と言いたいところだけど、温室の方は済んだから一つ減らして、ミオリネ・レンブランへの謝罪を要求する」

 

 その答えを受け取ったエランは、次いでグエルの方を向き、同じように問う。

 

「グエル・ジェターク。君はこの決闘に何を賭ける?」

 

「――前と同じだ」

 

 そう返す間も、その青い瞳はレンを射殺さんばかりに睨み付けている。

 前と同じく、レンの退学を。――それが彼の答えだった。

 

賽は投げられた(アーレア・ヤクタ・エスト)。――決闘を承認する」

 

 エランが両の掌を上に向け、続けて胸の前で甲高く打ち鳴らす。

 これにて決闘前の宣誓の儀礼は終了。スクリーンの遮光(しゃこう)が解除されて元に戻った展望窓から入る光が、暗くなっていたラウンジ内を再び照らし上げる。

 そうしてこの場は解散となるのだが――くっくっ、という忍び笑いと共に誰かがグエルに声を掛ける。

 

「良いっすよねぇ、グエル先輩は。親が偉いと、決闘やり直したり出来て」

 

 その声の主は、レン達に比較的近い場所に座っていた女子生徒だ。

 スタイルの良い褐色肌に()える銀髪、その下に小生意気そうな笑みを浮かべたその女子生徒にグエルの鋭く細められた目が向けられるが、当の彼女はそれすら面白がるように言葉を続ける。

 

「今度負けたら言い訳出来ませんよぉ? 止めといた方が良いと思うけどなぁ」

 

「おねーさんもそー思うなー」

 

 女子生徒の言葉に、ポケットの中のエリクトも同意を示す。

 自分にしか聞こえないその言葉に、おいおい、と声量を抑えて(いさ)めるレン。それを気にも留めず、グエルが険しい声で女子生徒に言う。

 

「俺と決闘したいならそう言え、セセリア」

 

「やだなぁ、単なるアドバイスですよ」

 

 ヒラヒラ、と手を振りながら返す女子生徒――セセリア・ドート。

 しかし、その軽薄な口調はどう聞いても当人が言うようなアドバイスとは受け取れない。――ただグエルを怒らせ、面白がるだけの挑発(ちょうはつ)だった。

 

「これ以上先輩の市場価値が下がらないように、ってね。――あ、でもこの前編入したばっかの人に()()()()しちゃった上に、()()()()()()()()()()()()()()()()()んだから、もう底値か」

 

「――ッ!」

 

 くわっ、とグエルの目が大きく見開かれる。――怒髪天(どはつてん)だ。

 その様子を横から見ていたレンは、流石にマズいな、と思った。

 そして同時に、()()とも感じた。

 だから、

 

「セセリアさんだっけ?」

 

怒気を立ち昇らせて一歩踏み出そうとするグエルの前に腕を伸ばして彼を止めつつ、セセリアに声を掛けた。

 

「君が今言った事、俺は違うと思うな」

 

「へ?」

 

 思わぬレンの発言に、セセリアは(はと)豆鉄砲(まめでっぽう)食らったような顔になる。

 同時に、貴様っ、何のマネだ、と邪魔されたグエルの怒りが飛び火して来るが、構わずレンは言葉を続けた。

 

「だって多分――決闘が無効になったのはジェタークにとっても、()()()()()だっただろうからさ」

 

「――!?」

 

 図星を突かれたように固まるグエル。

 その顔を横目に見ながら、レンは彼に笑い掛けた。

 

「そうだろ、ジェターク?」




意外! それはにっくき田舎者からの擁護!

グエルくん「だがテメー(とセセリア)は俺を怒らせた」ドドドドドド

レン「えっ」

グエグエグエグエグエグエグエグエグエグエ、グエルッ!!


次回、ジャンジャジャーン! 今明かされる衝撃の真実ゥ!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。