な感じの話題がちょろっとな第15話、は~じまるよ~!
それはそうと、何で棚卸ってあんなにめんどくさいんだろうね……
「――何故、
決闘委員会のラウンジからの帰りのエレベーターの中、二人きりで相乗りしていたグエルが不意にそう尋ねて来た。
その問いに、敢えてレンは
「あんな事って?」
「決闘が無効になったのは、俺の望まない事だと……セセリアに言い返しただろ」
苛立ち半分、困惑半分といった感じの口調で告げるグエルに、ああ、とやっと思い至ったかのようにレンは頷き返す。
そんな彼の態度が気に入らなかったらしく目を細めるも、早々に視線を外してグエルが続ける。
「――お前も、俺を笑いたいんじゃないのか? 負けた事を認めたくなくて、親に泣きついた情けない奴だと」
先程のセセリアのように。
そう言うグエルを横目に見ていたレンは、一拍置いてから、なら、と逆に彼にこう問い掛けた。
「何でお前は、ミオリネの温室を直させたんだ?」
「それは――」
グエルが言い
そうなるだろうなと、レンは彼のその反応を予想していた。直させた理由も、当に分かっていたから。
だから、彼に代わって自らの質問の答えを告げる。
「
「――っ」
先のラウンジの時と同様に、グエルが目を見開く。
「――あ、あれはマグレだ!」
グエルがレンの方に振り返って叫ぶ。
「油断してなければ、あんな無様は
「そうだな、
再び、ぐっ、と言葉を詰まらせるグエルに、落ち着けよ、とレンは笑い掛ける。
「別に俺はお前を笑いたいワケでも、ましてやバカにしたいワケでもないんだ。それどころか――
「何だと?」
「お前は、勝負に対して
だから、一度目の決闘の後、温室の修理に取巻きを
だから、セセリアが言っていたような、敗北が認められず親に泣き付いて決闘を無効にした、などという事はあり得ない。例え
――グエル・ジェタークとは
そうレンが告げたところ、彼の言葉があまりにも意外だったのか、グエルが目を丸くして固まる。
そんな彼に、
「――なぁ、ジェターク」
この際だから、ともう一つレンは質問を投げ掛ける事にした。
「お前、
「? 何だ突然?」
向こうからすれば
そんな彼に、いや、何となくな、と取り敢えずレンは返すが――その質問をした理由は当然ある。
似ていたのだ。グエルの勝負事に対する誇りや真摯さが、
彼もそうだった。自分の絵に誇りを持ち、そして芸術に対して実直だった。自分の絵に何か批評があれば、それに不満を表す事はあっても、素直にそれを認めて受け入れられる男だ。
そんな仲間とグエルの在り方が重なったからこそ、何か彼にも心に決めた
そして多分、その予想は当たっていた。
俺の、夢は、と微かにグエルの口から
まぁ、最も――。
「――あったとしても、誰が貴様なんぞに教えるか」
「だよねー」
今の彼らは決闘を控える敵同士。当然ながら、グエルからはフン、と鼻を鳴らして
仕方なく、そりゃ残念、と肩を
それとほぼ同じくして、エレベーターが停止。夕日に照らされオレンジ色に染まった廊下がスライドした出入口の向こうに現れる。
「――ま、それはそれとして」
その中へ一足先に歩を進めながら、肩越しにレンはグエルの方を見遣った。
「たとえ油断もマグレも無かったとしても、次も
まだ温室を荒らした事をミオリネに謝らせていないし、まだこの学園を去るワケにはいかない。――
「じゃあな、ジェターク。――また決闘で」
そう最後に告げてから、両手をハーフパンツのポケットに突っ込んでレンはその場を後にした。
背後から、おい待て、とグエルが呼び止めようとする声が聞こえた気がしたが、敢えてそれは無視して。
日は変わり、翌日。――
「――いよいよ、ね」
「ああ」
学園地下の格納庫内。学園指定の濃淡2種類の黄色で塗り分けられたノーマルスーツ姿でエアリアルのコックピットへ続くキャットウォークを歩くミオリネは、グレーのパイロットスーツ姿で一歩先を進むレンと言葉を交わす。
自分達の行き先を決める、運命の一戦。負ければ二人揃って学園を退学――破滅する事となるが、勝てば父を改心させるための取引と心の怪盗団入りという、自由への
そんな重要な戦いを目前に、自分が戦うワケでもないのにミオリネは緊張で胸が高鳴って仕方ない。
そんな彼女の様子を見兼ねてか、落ち着けよ、と足下の――彼女のと同じ濃淡違いの黄色で塗り分けられた動物用のノーマルスーツを着た――モルガナが声を掛けて来る。
「お前が戦うワケじゃねーんだ。
「そうそう。戦いはボクとレンに任せて、君達は
「分かってるけど……」
モルガナに続いて掛けられたエリクトの言葉に同調を示しつつも、
――が、ふとここでミオリネは気づく。
「エリクト、アンタ――」
「ん?」
「――今、どこから声掛けて来た?」
レンが、パイロットスーツの中に例のキーホルダーを仕込んでいるのか? あるいは、モルガナがノーマルスーツの中に?
それにしては、いやにハッキリと、大きな声が聞こえて来た気がしたが?
違和感に片眉を上げるミオリネ。
そんな彼女の様子に何か気づくものがあったのか、ああ、と顔を見合わせたレンとモルガナが揃って得心したように頷く。
「そういえば、君はまだ
「?」
何の事を言っているのか分からず首を傾げるミオリネを余所に、レンとモルガナがエアリアルのコックピットへと先行し、ハッチを開ける。
そして、
「こっちだ、
開放されたコックピットの中を指し示しながら、ミオリネを呼び寄せて来る。
そんなレンの行動に、思わず、はぁ、とミオリネは困惑の声を漏らす。
「い、いや何言ってんの?」
あの喋るホッツさんのキーホルダーこそ現実でのエリクトの姿の筈だ。そのエリクトが、今しがた開いたばかりのエアリアルのコックピットの中にある? 何故?
頭の中を?が行き交うばかりのミオリネであったが、かといってレンの奇行の意味を考察しようとしても何も進みそうになかったため、取り敢えず促されるまま彼らの方へ足を進め、コックピットの中を覗き込んだ。
そして、
「ギャアアアアアアァァ!?」
強烈な悲鳴を上げ、後方の手摺に背を強かに打ち付けるまで
「なっ、なっ、なっ、なぁっ!?」
驚愕と恐怖に目を見開き、突き出した指を体ごとガタガタ震わせるミオリネ。
まるで幽霊か何かでも現れたかのような反応だが、しかしそれも止むを得ない。
何せ、その視線の先――薄暗いエアリアルのコックピットの中では、
「何だよもー、そのリアクションは! 人をお化けか何かみたいにさー」
おねーさんショックだぞー、と不満げに頬を
そんな、それこそ幽霊か何かにしか見えない少女を前にガチガチ、と歯を打ち鳴らすミオリネの思考は当然纏まらないが、しかし、段々と彼女の見た目が――その赤毛と、褐色の肌と、生意気そうな青い目に特徴的な短く太い眉が――見覚えのあるものだと気づいていく。
「えっ……エリクトぉ!? エリクトなのアンタぁ!?」
何なのよその姿ぁ、と絶叫するミオリネ。
その疑問に対し、キャットウォークの床に座り込む彼女にレンが答える。
「これがエリクトの
「現実って……!? あ、あのキーホルダーはっ!?」
「アレは――」
「――ボク専用の
レンの言葉を遮って、半透明の少女――現実でのエリクトがニヤッ、と悪戯気に笑う。
その口から紡がれた通信機という言葉の意味が分からず――というか、そもそもこの世の物とは思えないその姿こそが現実における彼女という事からして理解出来ず、どういう事よ、と震える声で返すしか出来ないミオリネに、少し思案するような素振りをしてから、エリクトが答える。
「ボクの
「で、このエアリアルってガンダムから離れられないエリクトが外の事を見て聞いて話したりするための物があのキーホルダーで、アレ持って異世界に入れば、一緒にコイツもエアリアルの中から連れて行けるって寸法だ」
「ちゃーんとした肉体付きで、ね」
「ちなみに、俺達がこうやってエリクトの姿を見る事が出来るのも、異世界で本当の姿を見て認知が変わってるからだ。普通の人間にはエリクトは見えないから、そこは気を付けてくれ」
「な、何なのよ、それ……?」
あまりにも多いエリクトに関する新情報に、
エリクトの正体はエアリアルに宿る魂で、彼女の肉体はとっくに無くなっていて、しかし異世界に入れば肉体が復活して……一体、何から噛み砕いていけばいいやら……?
――ただ一方で、これだけはハッキリさせねば、という単語も一つ聞こえたような……?
「……ねぇ、モルガナ?」
「ん?」
「今、エアリアルの事
そう尋ねてから暫しの沈黙の後、げぇっ、とモルガナが悲鳴を上げる。
同時に、おっと、とレンがヘルメット越しに額の辺りに手を当て、何やってんだよモナー、とエリクトがモルガナを非難する。
……どうやら、聞き間違いではなかったらしい。しかも、この三者の反応を見るに、その事を知らなかったのはミオリネだけだったようだ。
「……ガンダムって、この前の決闘が無効になった、そもそもの原因じゃなかった?」
確か、その筈だ。
1週間余り前のあの決闘でエアリアルがガンダムだと疑われたためレンがフロント管理会社に拘束され、ベネリットグループではデリングを筆頭に審問会が行われる事になったのだ。
そのままジェターク社のCEOの提案で沙汰は今から行われる決闘の結果で決まる事となり、“エアリアルがガンダムか否か”という根本の話については半ば
「え? 何? アンタ達全員知ってたの? 確信犯?」
「あ、その確信犯の使い方間違ってるよ? 例え罪になるとしても、そうする事が正しいって
「うっさい!」
至極冷静にどうでも良い事を突っ込むレンをピシャリ、と黙らせたミオリネは、次いで頭を抱えて呻く。
「……そもそも、ガンダムって禁止されてるんでしょ? カテドラルの協定で。何でか知らないけど。――大丈夫なワケ、そんなの乗ってて?」
「
何の躊躇も無くレンが言い切り、その視線をエリクトの方へと向ける。
それを合図と受け取ったらしく、こほん、と一つ咳払いしてからエリクトが説明を始めた。
「そもそもガンダムが禁止されてるのは、乗った人間が
「はぁっ!? 死ぬぅ!?」
乗った人間が死ぬ
それに反応して見返して来た彼の姿は、至って平常。――乗った者が死ぬ呪いとやらが掛かったMSにこれから搭乗する人間の様子には到底見えず、そもそも前回乗った時から今に至るまで、死の気配など全く感じられない。
いきなりの矛盾に首を傾げるミオリネに、ふふっ、と笑ってから当のレンが言う。
「
「そういう事」
悪戯気な笑顔でレンの方に目を遣ってから、エリクトが説明を続ける。
「これが普通のガンダムだったら、レンはとっくにガンダムの呪い――データストームにやられて死んじゃってる。でも、エアリアルは別。何でかって言えば、エアリアルの中からボクが
だから、エアリアルに乗ってもレンはデータストームに
「――と言ってはみたけど、多分
ボソリ、とエリクトが口に手を当て、何かを呟く。
それが目に留まり、何、と良く聞こえなかったその言葉の内容をミオリネは問うて見たが、ううん、何でも、とエリクトからは小さく首を振ってはぐらかされる。
それが少し気になったが、
「と言っても、ガンダムってのがバレたらヤバイのは変わらない」
モルガナの発言にその思考は
「今聞いた話は他言無用だ。間違っても周りに言い触らしたりするんじゃねぇぞ、ミオリネ?」
そう釘の刺して来る彼の言い分は分かる。
呪いを克服しているとか、だから人が乗っても死なないとか、多分そんな事は関係無い。
あくまでカテドラルの協定に反する、ひいてはその統括者でもあるデリングに睨まれているガンダムである事が変わらない以上、その事が明るみにでもなればレンや開発元のシン・セー開発公社は糾弾を
――しかし、だ。
「――
今この場でエアリアルがガンダムだとミオリネが知った切欠は、当のモルガナの失言である。
その事を突っ込めば、うぐぉ、とモルガナの口から呻きが漏れ、続けて、い、いや、それは、と目を泳がせて言い訳がましく何か言い
その姿が酷く
「アンタこそ言い触らさないでよね、猫」
「……わっ、ワガハイ猫じゃねーしっ! ふっ、普通の奴にワガハイの言葉なんて、わっ、分かんねーしっ!」
取り敢えず出て来た反論が、いやに空しく格納庫内に響いた。
「――ま、お蔭で落ち着いたけどね」
キャットウォークの床から立ち上がり、ノーマルスーツに付いた埃を
同時に、それは良かった、と笑顔を浮かべてからレンもコックピット内へ。エリクトが端を掴んでいるシートに座り、コンソールを叩いて各種情報の確認を手早く済ませていく。
「さて、俺達はそろそろ行くよ。――
そう笑みを浮かべて言うレンの求める返事が何であるかは、考える間でも無かった。
だから、ミオリネはふっと彼に笑い返す。
「アンタこそね。――とっとと終わらせて来なさい、こんな
「了解」
その遣り取りを最後に、エアリアルのコックピットハッチが閉じられ、重い振動を立ててキャットウォークが動き出す。アラートがけたたましく鳴り響く中トリコロールの機体がMSコンテナへと運び込まれ、内部のアーム類による固定が完了すると共にコンテナのハッチが閉じられる。
そしてエアリアルの収まったMSコンテナがキャリアへと乗せられ――
そうしてレンとエリクトを見送った後、さーてと、とモルガナが
「それじゃあ、ワガハイらも行くか。――先に着かなきゃ意味が無ぇ。急ぐぜ、ミオリネ!」
「分かってるわよ!」
一足先にモルガナに続き、ミオリネはキャットウォークを駆け出す。
レンとエリクトの、ひいては自分達の勝利と自由のため、その
そんなワケであっさり来ちゃったガンダムバレ(身内のみ)。インキュベーションパーティで晒し上げられた挙句、信じてたお母さんにテヘペロかまされて絶句していた可哀そうな水星ちゃんは、一体何だったのかぁ!?
次回、VSグエル君(2戦目)開始! 当人は油断も隙もないけど……お楽しみに!