ペルソナ5G 水星のトリックスター   作:shisuko

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さーて始まるVSグエル二戦目! 本日の天気はくもり、ところにより(排熱処理の)大雨となるでしょう。

それでは、はーじまりはじまりー。


#16 I'm not like trackless people who can't lay rails well.

<これより双方の合意の下、決闘を執り行う>

 

 第7戦術試験区域の上空を浮遊するドローンを筆頭に、学園中の生徒達の生徒手帳や施設内のスクリーンなど、様々な中継器具から決闘の開始を報せるアナウンスが響く。

 当然、戦術区域内に既に到着しているMSコンテナ内で待機中のMSにも。

 

<勝敗は通常通り、相手MSのブレードアンテナを折った者の勝利とする。立会人はペイル寮のエラン・ケレスが務める>

 

 そう淡々と告げるアナウンス越しのエランの声を、コックピット内で腕を組みながらグエルは聞いていた。

 

<戦術試験区域の環境設定情報――入手。コリオリ補正――問題無し>

 

 コンソール中央にセットした生徒手帳を介して、ジェターク寮学園艦の艦橋(ブリッジ)内にいるオペレーターの声がコックピット内に流れ、同時にMSコンテナのハッチが解放されていく。

 

<生体情報(バイオインフォ)――識別完了。パーメットリンク――良好>

 

 機体を固定するアームも全て取り払われ、ハッチも完全に開放される。

 後は、開け放たれた戦術試験区域へと飛び込むのみ――というところで、生徒手帳に通信が入る。

 液晶に現れたのは、ラウダだ。

 

<――兄さん>

 

「どうした、ラウダ?」

 

 いつものように前髪を(いじ)っている弟は、しかし視線を合わさず、どこか影の差した顔をしている。

 その表情を(いぶか)しんだグエルであったが、すぐに何事も無いかのように、ラウダの目がまっすぐに彼を見る。

 

<必ず勝って、兄さん>

 

「おいっ」

 

 その激励(げきれい)の言葉に、思わずグエルは噴き出し掛けてしまう。

 

「さっき俺が言ったのと同じじゃないか」

 

 この決闘の場へと向かう直前、学園艦内の格納庫でジェターク寮生達からの歓待(かんたい)を受けていた際に、必ず勝つ、と彼の方からラウダに言ったばかりだった。

 同じ言葉をそっくりそのまま返されるなど予想しておらず面食らったグエルに、ゴメン、とラウダが軽く謝る。

 

<僕の方からも言っておきたかっただけなんだ。――本当に、それだけなんだよ>

 

「何だそりゃ」

 

 また自分から視線を逸らしつつそう言うラウダに、半ば呆れて嘆息しつつも、笑い掛けるグエル。

 神経質な弟の心配性には困ったものだが、それでも自分の事を想ってくれているからこそ出た言葉だ。その気持ちを無下に扱う気はない。

 なので、そんなラウダの不安を晴らしてやるために、グエルは一つ言ってやる事にする。

 

「あの田舎者にも言ってやったが、前のはマグレだ。――お前だって俺に言ったじゃないか、ドミニコスのエースは諦めてないんだろ、って」

 

 諦めるも何もない。

 奴がこの決闘に勝ってミオリネに謝らせる事を当然のように考えているなら、こちらだってその思惑(おもわく)(くじ)く事こそが当然なのだと示してやればいい。

 それだけの話だ。

 

「俺はドミニコスのエースになる男だ。――学園に入るずっと前から、そう決まっているんだ。その俺が、あんな気障(きざ)ぶってるだけの田舎者に、2度も泥を浴びせられるワケが無い。――俺の方からももう一度言ってやるぞ、ラウダ。俺は――」

 

 ――()()()()

 

<……うん、そうだね>

 

 ようやく、ラウダの顔が安心したような穏やかな笑みになる。

 その顔を見て自身も一つ笑ってから、切るぞ、とだけ断ってラウダとの通信を切断したグエルは、改めて機体をMSコンテナから出すため、左右の操縦桿(そうじゅうかん)へと両手を向かわせる。

 その刹那であった。

 

「――? 何だ?」

 

 いざ操縦桿を握り込んだ時、何か――パイロットスーツの生地を貫通して一瞬だけ走った、電流のような違和感を覚えた。

 それが何なのか分からず、咄嗟(とっさ)に手を離したグエルは動揺(どうよう)する。

 だが、すぐにその違和感を()じ伏せて、彼は操縦桿を握り直す。

 これから行われるのは、唯の決闘ではない。

 傷付いたジェターク社の信用と、自分を敬ってくれるジェターク寮生達と弟の想い。そして何より、一時は敗北という泥を塗られた彼自身の誇りと夢のため。

 そういった多くの物を賭けた、決して負けられない一戦なのだ。

 だからこそ、そんな謎の感覚一つで逃げ出すワケにはいかない。

 

「KP001、グエル・ジェターク。――ダリルバルデ!」

 

 その意思を胸に、いざ、グエルは戦場へと踏み出す。

 

「出るぞ!!」

 

 ――()()()()()()()()()()()()()()など、全く知る由も無く。

 

 

 

PERSONA5G ―― TRICK STAR from MERCURY ――

#16 I'm not like trackless people who can't lay rails well.

 

 

 

<両者、向顔>

 

 アナウンスを介してエランが淡々と告げた向顔宣言と共に、正面モニター上にウィンドウがポップアップ。対戦相手――ヘルメットを被ったグエルの顔がそこに映り込む。

 

「やぁ、ジェターク。昨日ぶりだな」

 

<ほざけ田舎者>

 

 これまで通り、手を挙げて(ほが)らかな挨拶を掛けたレンに、グエルが無下に吐き捨てる。

 そのつれない反応に一つ息を吐いて肩を(すく)めるレンを構わず、彼が言葉を連ねる。

 

<そうやって余裕ぶってられるのも今の内だ。この勝負は俺が勝つ! 俺が勝って、ホルダーを取り戻す!>

 

「悪いがそれは無理な話だ」

 

 勢いづくグエルに、レンは微笑み返す。

 

「昨日も言ったけど、まだお前をミオリネに謝らせていないからな。それに彼女とは取引も(ひか)えている。――()()()()()()()()

 

「そう、()()()()

 

 レンの宣言に、シートの右側から顔を出していたエリクトが同調する。

 流石に彼女の声までは伝わってないだろうが――それから少しだけ向き合った後、フン、とグエルが鼻を鳴らす。

 

<まぁ良い。――勝利の女神がどっちに微笑むかは、始めれば()()()()()()>

 

 その言葉を頃合(ころあい)と見たように、アナウンスからのエランの声が流れる。

 

<両者、口上を>

 

「“勝敗はMSの性能差のみで決まらず”」

 

<“その者の技のみで決まらず”>

 

 前回とは逆に、レン、グエルの順で二人が口上を述べていく。

 

『“ただ、結果のみが真実”』

 

<決心開放(フィックスリリース)>

 

 そして最期にエランの宣言と共に、プロジェクションマッピング技術により戦術試験区域全域が岩だらけの荒野へと変化。

 それを(もっ)て、戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 先手必勝。――そう言わんばかりに背のブースターから炎を噴射してエアリアルが宙へ舞い上がり、前方下方向けて右手に持ったビームライフルを撃ち込んだ。

 放たれた三発の光線は速やかに空間を飛び、直前に照準へと収めた標的――ダリルバルデへと食らい付こうとするが、その真紅の機体が半身を逸らし、その肩に備わったシールドを前面に出した事で侵攻(しんこう)を阻まれ、即座に霧散(むさん)する。

 続けて、今度はこちらの番、とばかりに脚部のホバー機構を作動させたダリルバルデが突進。ディランザの比じゃない高速度でエアリアルがライフル、及び側頭部に左右一門ずつ備わったビームバルカンから降らせるビームの雨を掻い潜って距離を詰め、一定まで近づいたところでその手に持つビームジャベリンの両端から黄緑色のビーム刃を発振。大きく跳躍(ちょうやく)すると共に振り被ったそれを、着地した直後のエアリアル目掛けて投擲(とうてき)した。

 すぐさまエアリアルは全身に装着されたビットステイブをパージし、それらを突き出した左腕に集約させる。そうして――前回の決闘では見せなかった―― 一枚の(シールド)を組み上げたエアリアルは、それを前面に掲げ、猛然(もうぜん)と迫り来るジャベリンを防御。表面のフィールドの反発によって、大きく後方へと弾き飛ばす。

 しかしその数舜後、弾かれた反動でクルクル回転しながら宙を舞っていたジャベリンが突如静止。その穂先(ほさき)を、エアリアルの頭部から四本生えたブレードアンテナの内の一本へと()()()向け直す。

 正確には、ジャベリンの柄を未だ握っているダリルバルデの()()()()()()()()によって向け直された、のだが。

 “意志拡張AI”――その第五世代型によってMS本体から離れた後も自動制御されるドローン兵器なのだ、その部位は。

 そうして、落雷の如く再攻撃を仕掛けるジャベリン。

 しかし、迫るその長槍の方にツインアイを向ける素振りも見せず、エアリアルはその場で機体を横に回転。身を(ひるがえ)したところに飛び込んで足元に突き立ったビームジャベリンの、その柄に一回転し終えた勢いを乗せた回転蹴りを叩き付け、大きく蹴り飛ばした。

 再び回転しながら飛んで行くジャベリン。その進行方向上にいるのは――未だ宙に浮いたままのダリルバルデ。

 これに対し、ダリルバルデは両肩のシールド――“アンビカ―”をパージ。やはり自立飛行機能を持ったドローンであるこれを前面に差し込んで迫るジャベリンのビーム刃を防ぎつつ、勢いを失ったそれを、未だ柄を握っている肘から先の部分――“イーシュヴァラ”ごと回収・再接続してから、地面へと着地。

 そうして、機体から離れたまま浮遊するアンビカ―を左右に控えたダリルバルデと、シールド形態を取らせていたビットステイブ達を分解、周囲に広げて待機させる中で右手のビームライフルの銃身を肩に乗せ、突き出した左手で手招きするエアリアルが向き合い、睨み合う。

 そんな決闘の様子をジェターク寮学園艦の艦橋に備えられた大型モニターで観ていたヴィム・ジェタークは、

 

「クソッタレ!」

 

自らが座っている艦長席のアームレストに拳を叩き付けていた。

 その音と彼が苛立ちも顕わに吐き捨てる声が周囲の席に座ってオペレーターを務める生徒達をビクリ、と震わせるが、当のヴィム自身はそんな事(つゆ)ほども気にせず、歯軋りしながら呪詛を吐く。

 

「調子に乗りやがってぇ……ガンダムめ!」

 

 画面の向こうで、ダリルバルデが背部バックパックに積載していたタイプBのイーシュヴァラ二基を展開。過たず先端からビームサーベルを展開して突撃させる。

 これに対し、エアリアル側は展開済みのビットステイブの内二基を迫るイーシュヴァラの軌道に差し込ませ、フィールドによってビーム刃ごと弾く。

 続け様に、今度はダリルバルデそのものが前進。中程で柄を分割しビームアンカー・ビームクナイへと変えたビームジャベリンをそれぞれ両手に持ち、振り上げ、飛び掛かっての両肩落としを狙うが――直前で滑るようにエアリアルが横へ移動。一対のビーム刃の斬撃を紙一重で(かわ)す。

 と同時に、エアリアルが居た位置の後方に現れる、ビットステイブの群れ。

 エアリアル本体が回避行動を行う、その直前にはタイプBイーシュヴァラへの対応に使った物を除いて全てそこへ配置済みだったそれらが、一斉に黄緑色の光を灯す。

 数舜の後放たれる、無数の光条。

 それらを、ギリギリ差し込んだアンビカ―の一基で防ぐダリルバルデであったが、両手の刃を振り下ろし切って無防備になったその瞬間、背後から差す影が。

 影の主――大きく右足を振り上げたエアリアルが、高く掲げていたその(かかと)を振り下ろす。ダリルバルデの額の辺りから上へ伸びた、一本角(ブレードアンテナ)目掛けて。

 しかし差し込まれる、もう一基のアンビカ―。

 甲高い音を立ててそれが踵を受け止めたその間に、両腕の肘から先――アンカーとクナイを握ったままのタイプAイーシュヴァラを射出。回り込ませるようにして、左右から敵機へと攻め込ませる。

 これに対し、エアリアルは受け止められた右の踵を軸に、左足も持ち上げてアンビカ―の表面に駆け上がり、それを足場にすかさず跳躍。一瞬前まで機体があった場所をアンカーとクナイが交差するのを後目に、大きく後方へと、宙返りも交えて飛び退いた。

 先程の挑発行動もそうだが、単にMSの戦技として見た場合には無駄も良い所のパフォーマンス()みた動きだ。そんな動きをこの日のために用意したダリルバルデ相手に苦も無くやっているという事が、ヴィムから見れば鼻持ちならなかった。

 

「乗ってるのは()()小僧か、フザけたマネしやがって!」

 

 歯を剥くヴィムの脳裏に現れるのは、先日デリングから審問会を開く通達が出るまで見ていたフロント管理会社の取調室内の映像に映っていたエアリアルのパイロット、レン・アマミヤの顔だ。

 今のエアリアルの動きを見れば見る程、記憶の底から湧いて来る。飄々(ひょうひょう)とした態度で取り調べに応じ、どれだけ取調官が圧を掛けようと怯え一つ見せなかったあの黒い癖毛のガキの、あの気に入らない笑みが。その()()も合わさって、不快感と共に(よみがえ)る。

 そしてもう一人――あのヘッドギアを被った不気味な女、プロスペラ・マーキュリーにも、その苛立ちの矛先は向く。

 

「何でもかんでも貴様らの思い通りになると思うなよ、水星の採掘屋(さいくつや)共が……!」

 

 そもそも、先の審問会の場であの強硬なデリングに悪印象を抱かせるかもしれない危険を冒してまでガンダムやシン・セーの連中にチャンスを与えるような提案を出したのも、あの女がどこからかヴィムによるデリングの暗殺未遂の証拠を嗅ぎ付けたからだ。

 それさえ無ければ、単にグエルの敗北を無効にするだけだった。仮に奴らがカテドラルの不況を買ってドミニコスに強制査察されるような事になっていたとしても、知った事では無かったのに。

 

「俺は貴様らやデリングのような、(ろく)()()()も引けん無軌道者(むきどうもの)とは違うんだよ……!」

 

 だから、ヴィムはこの日の為に用意をしておいた。

 ダリルバルデそのものや、それに仕込んだ()()だけではない。もう一つ、決闘を有利にするための仕掛けを。

 その仕掛けを発動すれば、一気にこちらを有利な状況に持っていける筈だ。

 だから、ヴィムは傍らで控えているラウダへ指示をしようと振り向く。

 振り向いて――何やら、彼の様子がおかしい事に気づく。

 

「どうした? 何かあったのか?」

 

「あっ、父さん。それが……」

 

 (いぶか)しみながらヴィムが問い掛ければ、息子は言葉に困ったように口籠(くちごも)るだけで、すぐに答えは返って来ない。

 見れば、その手には生徒手帳が握られており――痺れを切らしたヴィムは、貸せ、と手帳をラウダの手から奪い取って、その画面を覗き込んだ。

 そして――。

 

<大変っす、ラウダ先輩!>

 

<制御室のドアが開かないっす! これじゃあ、グエル先輩のために雨降らせられないっすよっ!?>

 

「なんだとぉっ!?」

 

 生徒手帳から響く女子生徒達の声に、ヴィムは目を見開き吠える事となった。

 

 

 

<制御室に入れないとはどぉいう事だァッ!?>

 

「ひぃっ! そ、その声っ!?」

 

「CEOぉ!?」

 

 内側からロックを掛けた自動ドアの向こうから、何やら騒々しい声が聞こえる。

 一人――恐らく生徒手帳の通話越しだろう最も大きい声は、どうやらジェターク社のCEOのようだ。

 そしてもう二人――聞き覚えのあるこの声は――。

 

「――ペトラ・イッタにフェルシー・ロロね」

 

「んなっ、その声!?」

 

「ミオリネ!?」

 

 戦術試験区域の制御室の中央から自動ドアの方を見ながら言ったミオリネの声に、ドアの向こうにいるだろうグエルの取巻きの二人が驚愕の声を上げる。

 それに続けて、二人の声を聞いたのだろうヴィムも。

 

<なっ……デリングの娘だとぉ!? き、貴様ァ、何でそこにいるっ!?>

 

「ちょっとした()()()()があったものでして、ジェタークCEO」

 

 ヴィムの怒声に、一応相手が御三家CEOという目上も目上の相手だという事を配慮して、極力穏やかな口調の敬語で返事をするミオリネ。

 その返答に、タレコミだとぉ、と唸る彼に、ええ、と口角を吊り上げて彼女はその内容を告げる。

 

「“今行われている決闘で、ここから()()()()()()妨害を仕掛ける不届き者がいるかもしれない”、っていうタレコミが、ね」

 

 この制御室では戦術試験区域内の様々な状況を直にコントロール出来る。プロジェクションマッピングによる地形の詳細な変更や、戦術区域内のモニタリング、異常感知。それに、火災等が起きた際の排熱処理として()()()()()退()()()()()()()()雨を降らせたり、など。

 その排熱処理の雨を悪用しようと企む輩がいる、という情報があった。――そう伝えたところ。

 

『なっ……!?』

 

 ドアの向こうで、三人が一度に絶句したような声を上げる。

 その様が容易に想像出来て、ついミオリネは噴き出しそうになってしまった。

 

「そういうワケで、その不届き者よりも先にここに来て、不正を働かせないために()()()()()()()()()()()

 

 そう説明して見せるや、再び、んなっ、と三人の悲鳴が重なる。

 また吹き出しそうになるのを何とか耐えるも、今度は忍び笑いが漏れ出てしまった。

 

「お、お前フザけんなァ!」

 

「いいからここ開けろぉ!」

 

 バンバン、とドアを叩いて怒鳴り散らすフェルシーとペトラ。

 そんな二人に、嫌よ、とミオリネは無下に返す。

 

「今言った不届き者がアンタ達かもしんないのに、はい分かりましたってノコノコ開けてやる奴なんかいないでしょ」

 

「アタシら違うっつーの!」

 

「つーか、アンタこそその不届き者だろがッ!!」

 

 そう疑惑の否定を叫ぶフェルシーとペトラであったが、そんなものにミオリネは耳を傾ける気は無い。

 実のところ、とっくに知っているからだ。二人こそが件の不届き者で、決闘の場に雨を降らせ、ビームライフルやビットステイブなどの遠隔攻撃が多いエアリアルに不利な状況を作る事が目的だと。

 そう()()()()()()のだ。昨日レンが決闘委員会から戻って来たタイミングでエリクトから、モルガナと一緒に先回りして防ぐように頼まれつつ。

 故に、そんな二人の言い分に、よくもそう自分の事棚に上げられたものだ、と彼女は嘆息(たんそく)してしまう。

 

「――まっ、私は()()()()()()()()()と違ってそんな手段選ばないマネなんてしないから、大人しくそこで決闘観戦してなさいよ」

 

「出来るか馬鹿ヤロー!」

 

「くそぉ! フェルシー、そこ退いて! こうなったら、強引にでも開けてやる!!」

 

 そんな会話の後、カチャカチャ、と何かを(いじ)る音がドアの向こうから聞こえ出す。

 恐らく、ペトラが外からロックを外しに掛かっているのだろう。

 なるほど、メカニック科の彼女なら恐らくそう時間を掛けずに開錠出来るだろう。――()()()()()

 それを示すように、ニャッフッフッフー、と勝ち誇った笑い声がミオリネの足下から響く。

 

「お生憎様(あいにくさま)、ちょうどさっき電子ロックの基盤(きばん)外しといたトコなんだよなぁ」

 

 そうドアの向こうへと語り掛けるモルガナの傍にはドライバーとラジオペンチ、そして今彼が外したと言った、緑色の基盤が転がっている。

 恐らくペトラは今電子的に開錠を試みているところだろうが、そうするための肝心の基盤が外されている以上、そちらの方面からはどう足掻いてもドアは開かない状態となっているワケだ。

 

「大概器用よね、アンタも。――よくその身体で人間の工具なんて使えるわね」

 

「へへん、これでもワガハイ怪盗歴一番長いんだぜ? 一昔前は蓮に“潜入道具”作りの手解きだってしてやってたんだ、これぐらい朝飯前ってな」

 

「ふーん」

 

 そんな風にモルガナと話しながら(きびす)を返したミオリネは、そのまま制御室のコンソールの方へ。

 その中に収まった椅子を一つ取り出して座ってから、生徒手帳を取り出す。

 

「ま、これでこっちのミッションはほぼ完了だ。アイツらに報告したら、後はのんびり観戦といこうぜ」

 

「そうね」

 

 モルガナに笑い返しながら、ミオリネは連絡の為生徒手帳を操作する。

 その背後で激しい怒声が閉ざされたままのドアを震わせるが、今の彼女達にとってそんなのは全く意に介すものでなかった。

 

<おのれえぇぇっ、デリングの娘エェェッ! 俺の敷いた()()()を壊した事、必ず後悔させてやるからなァッ!!>

 

 

 

<レン、エリクト? 聞こえる?>

 

 コンソール中央にセットしていた生徒手帳に通信が入り、その液晶にミオリネの顔が映る。

 その顔を見るなり、おおっ、とシートにしがみ付いていたエリクトが身を乗り出す。

 

「ミオリネ! ――どうだった、()()()()()()()?」

 

<()()()()よ>

 

 エリクトの問い掛けに、ミオリネがにっと笑って答える。

 

<()()()()()()()()()()、ジェターク寮の奴らがノコノコ制御室にやって来たわ>

 

<今頑張ってロックこじ開けようとしてるみてーだが、開く頃には決闘も終わってるだろうな。――これで()()()()()()()()通りだ。もう()は降らないぜ!>

 

「了解した。――二人共、上出来だ」

 

 続けて画面の左下から顔を出して来たモルガナからの報告にレンも頷き、ヘルメットのバイザーの下から笑みを返す。

 そして通信を切り、正面モニターへと視線を戻したレンは、それにしても、と右の操縦桿を引き寄せながら言う。

 

「良く分かったな、()()()()()()()()()()なんて」

 

 操作に合わせ、エアリアルが半身を傾け――飛来して来たタイプBイーシュヴァラを回避。

 そこに続けてもう一基、ビームアンカーの切っ先を突き出したタイプAイーシュヴァラが回避行動直後の機体へ追撃を掛けて来るが、

 

「分かったも何も、さ。()()()()()()()()()()対策しないなんて、バカみたいじゃん」

 

そこっ、とエリクトがそのドローンを指差すと共にビットステイブが一基その進路上へ。アンカーごとイーシュヴァラをフィールドで弾き上げ、更に続けて飛来させた二基から放たせたビームで×の字を描くように射抜かせて、宙で爆散させる。

 

「違いないな」

 

 ここで運が良い事に、破壊したイーシュヴァラの爆炎を破ってビームアンカーが飛び出し、回転しながらエアリアルのすぐ前方の地面へと突き立ったため、すかさずレンは操縦桿を押し込んでそこ向けて突進。辿り着くと共にそれをエアリアルに引き抜かせ、即座に投げ付けさせる。

 放たれ、猛然と宙を走るアンカーが向かうのは奥の岩盤――切り立った岩肌を背に立つダリルバルデ!

 これに対し、バイザーを光らせた真紅の機体は迫るアンカーの切っ先と自身との間にアンビカ―を一基配置し、それで防ぐ構えを取る。

 ――()()()()()()()()()()()()()()

 

「――じゃあ、もう一つ良いか?」

 

 問い掛けつつ、レンは左の操縦桿を押し込み、それと同時にエリクトはダリルバルデの左側を指差して指定。大回りして真紅の機体の右側へエアリアル本体が回り込み、ビットステイブの何基かが左側へと回り込む。

 そして、

 

「あのジェタークの新型――」

 

 飛来したビームアンカーが、アンビカ―の厚い装甲に弾かれ、甲高い音を立てる――と同時に、突き出したビームライフルの銃口と配置された数機のビットの発射口に、一様に黄緑色の光を灯らせる。

 狙うは――頭部先端のブレードアンテナ。

 

「――()もあんな風に、()()()()()をしていたのか?」

 

 そうエリクトに尋ね切ると共にレンは操縦桿のトリガーを引く。

 過たず、エアリアルのビームライフルとビットステイブ達が一斉に光の火箭(かせん)を放った。




所詮天気予報は天気予報、当たらない時もあるよね仕方ない(地団駄踏んでるヴィムパパを生暖かい目で見ながら)

次回、何だか様子がおかしいグエル君 with 第五世代AIとの決着!
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