今日は、ジェタークパレスのフェルシーライナー、他多数からお送り致します。
そんな感じの27話、はーじまるよー!
「レーベ?」
入り口以外の三方を横切る窓の、その一方向に何気無く目を向けたミオリネは、そこで妙に
仮面の奥からでも分かる程目を見開いたグエルは彼女の方を振り向かず、また返答を返す事も無かったが、その代わりに微かに震える指で窓の方を指差していた。
窓の向こうを見ろ、とそのハンドサインの意味を解釈したミオリネは、彼の様子を怪訝に感じつつも、その指示に従って窓を覗き込む。
そして、
「はあっ!?」
彼女も
眼下に足場とレールが交互に並ぶプラットホームと、その中で三群に分かれて列を作っている集団。
その集団の先頭で、レールの上に乗った角柱状の物体に見慣れた顔だけを貼り付けたフェルシー・ロロらしき存在を。
「な……何、なの……アレ……?」
自らの目を通して入って来たその情報がまるで理解出来ず、ただ目を
それ故に視線を外す事さえ忘れてしまった彼女は、眼下に存在している異常がそのフェルシーだけでは無い事に
「ちょっとー! 後が
フェルシーの次に並んでいるあの茶髪の女子生徒は、同じくグエルの取巻きをしているペトラ・イッタのようだが、その髪色と声以外で彼女をその人だと断定する事は出来なかった。
何故なら、その体が現実の彼女のものとはまるで似つかない、緑色や黒色の角柱が組み合わさって出来たものだったから。
そして、そんな異様な有様なのは彼女だけではない。
「そうだそうだー!」
「早くしろよー! 授業に遅れるだろ!」
彼女達の後ろからそう口々に
上手く組み合わされば、丁度フェルシーのような一本の角柱状になりそうな、そんな体を。
「うええぇぇ……何アレぇ?」
その声に反応して振り返れば、いつの間にやらミオリネの隣でエリクトがシャドウ達が操作していた機器類を支えに身を乗り出し、同じように窓からプラットホームを見下ろしていた。
そして、レンとモルガナもまた同じく。
「こりゃあまた……すげぇ事になってんな」
「――これが、例の認知存在って奴?」
機器類の上に立って目を点にしていたモルガナに、恐る恐るミオリネは問い掛けた。
すぐに、多分そうだ、という返事が返って来る。
「アイツらは、ジェタークが歪んだ心の目で見ているジェターク寮の寮生達だ。――ここにどういう奴がいるかなんてワガハイは知らないから、恐らくは、だが」
「やっぱり……そうなのね」
つまりは、眼下のフェルシーやペトラを始めとした一団は現実の彼ら彼女らとは無関係の、あくまでヴィムの“こういう存在である”という歪んだ認知の産物に過ぎないのだ。
だが……それならばそれで、気になる事がある。
眼下の一団があのような姿になっている理由は――ヴィムの認知上の彼らは―― 一体
その疑問に対する答えは、ふむ、と口元に手を当てたレンの呟きから
「――
「えっ?」
「多分、ジェタークは寮生達の事を
その突飛な発言に、一旦はミオリネも、いやいや、何言ってんの、と顔の前で手を振って否定して見せる。
だが、続くレンの言葉に彼女はその考えを改める事となる。
「彼女、ロロさんで良かったっけ? あんな姿でレールの上に乗って、発車がどうのと言って――まるで、自分が
「それは――」
言われてみれば、確かに窓の向こうのフェルシーの有様は、彼女自身が乗っているレールの上を走ろうとしている列車にでもなったかの様に見えなくも無いが……。
そうミオリネが思考していると、そういう事か、とモルガナが鼻を鳴らした。
「そういえばジェタークのシャドウも言ってたもんなぁ、“子供は親の敷いたレールに従って走る者”とか何とか」
「ちょっと、まさかそれって――」
ヴィムにとって、子供とは
その二つが組み合わさった結果が、あの
もしそうだとすれば――。
「このパレスが
「――あー、それってもしかしてこういう事?
眉根を
ヴィムにとっての“子供”とは列車と同じように
そしてジェターク寮はジェターク社の管理下にあり、そのジェターク社の
「――それで、あの親父は
だから、その子供
だから、デリングの暗殺を
その結論に至った時、単に奇怪としか思っていなかったジェタークパレスがヴィムの身勝手さと嫉妬心で凝り固まった
そしてその一方で、
「……父さん……」
再び窓の向こうを見下ろしていたグエルが、仮面の下で
そうして、ほんの少しの沈黙を挟んでから、
「――皆、あそこを見てくれ」
レンが窓の向こうへと指差す。
その方向にあったのは、プラットホームの上方の空間を横切る通路であった。
「エントランスの二階の所に改札口があっただろ? 位置関係を考えるに、あの改札口の先にあるのが、あの通路だ」
レンの言う通り、その通路は確かに二階ぐらいの高さから飛び出している。
どうやらプラットホームへ降りるための通路らしく、側面からは足場へと続く階段が枝の様にその左右から伸びている。
そして同時に、その通路は奥側――プラットホームを挟んだ対面を覆う壁までまっすぐに続いてもいた。
「こっち側と向こう側を繋ぐ連絡通路、って感じだな。とすりゃ、オタカラもあっち側か」
「でも、どうやって行くの? 通れなかったんでしょ、あの改札口」
そう問うたエリクトに、問題無い、とレンが何かを取り出して見せる。
彼の手の中にあったのは、一枚の硬質そうなカード状の物体だった。
「多分、例の改札口用のパスだ」
「さっきの連中が持っててな、倒すついでに頂戴しといたんだ」
「おっ、やるじゃん!」
レンとモルガナの返答に、パチン、とエリクトが指を鳴らす。
となれば、次はあの連絡通路を渡るために二階へ戻る事になる。
「――OK、分かった。それじゃあ、早速二階へ行きましょう」
一足先に踵を返してそう他の面々に促したミオリネに、しかし、いや、とレンの首が左右に振られる。
「今日の探索はここまでだ。現実に戻ろう」
「ええっ? どうしてよ?」
寝耳に水な彼の言葉に、思わずミオリネは目を見開く。
それに対して、ズボンのポケットに手を入れたレンがこう返す。
「さっきの戦闘で皆消耗した筈だ。連絡通路の先がどうなっているか分からないし、一旦
確かに彼の言う通りだ。負傷こそモルガナが治してくれたが、先の戦闘で消費した体力や精神力までもが回復したワケではない。
ただ、それらは
だからまだ戻る必要は無い、とミオリネは主張したが、
「
ドミノマスク越しの黒い瞳が彼女から別の方へと向けられる。
それまで
「い、いや、俺は……!」
不意に注目を浴びたせいか、はたまた自分が引き返す理由になりそうなのを拒否するためか、
そんな彼に、無理をするな、とレンが
「実の父親が自分達の事をどう思っているか見せ付けられたんだ。これで平常を保っていられる奴なんて、そうはいない」
その言葉は図星だったのか、言われたグエルは反論を返さず、ただ言い淀むのみだった。
そんな彼を余所に、それに、とレンが今度は窓の向こうを
「
見れば、プラットホームの方では異変に気付いたらしい数体のシャドウ達が連絡通路の方へ駆け上がる姿があった。
その連中が向かう先が自分達のいるこの管制室なのは明確で、またその道中に例の改札機が含まれている以上、今そちらへ向かうのにも危険が付き纏う。
よって、この場から速やかに去り、身を隠しつつ現実へ帰還するのが今は適切な行動といえた。
それを理解したミオリネは、
「――分かったわよ」
観念して一つ溜息を吐いた。
それに続いて、
「――分かった」
「りょーかい」
グエルとエリクトもそれぞれ了承を返す。
それによって反対意見は無くなった事で、良し、とレンが全員に告げた。
「それじゃあ皆、現実へ戻るぞ」
そうして一行は部屋を後にし――その日のパレス探索は終了となった。
<ナビゲーションを終了します。お疲れ様でした>
手に持っていた生徒手帳から――イセカイナビからそのアナウンスが流れると共に、赤と黒の波紋に覆われていたレン達の視界一杯に元いた格納庫の情景が広がった。
無事に現実へと戻って来た。――そう認めた途端、深い息を吐き出す音が響く。
「あー、疲れた」
「……ペルソナが使えるようになった時程じゃないが、なかなか体に来るな」
そうぼやきつつ、ダラリ、とミオリネが脱力した両腕を揺らし、グエルが自身の肩に手を当てながら首を回す。
異世界ではペルソナ使いは身体能力が大きく増すが、それ故に現実にいる時よりも消耗を自覚し難い。今の、分かりやすく疲労が溜まっている二人の様子を見るに、あの段階で帰還を決めたのは正しかったようだ。
「今日はもう帰って休んだ方が良い。――日はまだあるんだ。また明日、探索の続きをしよう」
「そうね、そうさせてもらうわ」
レンの提案に、ふぅ、ともう一度息を吐いたミオリネが肩を
それと共にグエルも、ああ、と頷くが……やはりパレス内で見たジェターク寮生達の認知存在の事が引っ掛かっているのか、
その辺りがレンは少し気になりはしたが、一方であまりしつこく言い続けるのもプライドの高い彼には逆効果になると思ったため、敢えて指摘はしない事にした。
その間に、じゃあ、と尻尾を揺らしながら彼らの間に歩み出したモルガナが告げる。
「今日はここで解散だ。明日の放課後にまた集まるぞ。集合場所は――」
「また
「それに、ボクだけ皆と直接顔合わせないで異世界に行くってのも、ちょっと
例のホッツさんのキーホルダーさえあれば問題無く異世界へ同行出来るし、現実でもそのキーホルダーを通じてエアリアルから離れられないながらに周囲の様子を見聞き出来るが、それはそれとして一人だけ別の場所から向かうのは面白く無い。
そんな言い分込みでのエリクトの提案に、そうだな、とレンは頷き、続けてミオリネとグエルも異論は無い事を示す。
それを
と、その時であった。
「あっ、いた!」
背後からそんな声が聞こえて来たのは。
「おーい! そこのアンター!」
もう一度聞こえたその声に、足下のモルガナと共に後方へ振り返るレン。
その目が、奥の空間からやって来る二人分の人影を認識する。
「やっと見つけたぜ! ニカねぇの言う通りだったな!」
一人は制服の上から鮮やかなピンク色のジャンパーを着込んだ女子生徒。
ジャンパーとほぼ同色の、その頭と同等のサイズの巨大な
「はぁ、はぁ……学園に来たばっかりなら、多分MSもここに置いてると、思ったから」
もう一人は、青みの強い黒のアウターカラーと鮮やかな青のインナーカラーで色分けたボブカットの髪の女子生徒だ。
穏やかそうな面持ちをやや慌てたように崩し、腰から左の太腿の上に下げた暗い黄緑色のポーチからガチャガチャ、と金属が打ち付け合うような音を立てながら、もう片方の女子生徒に続いて、息を切らしながら飛び込んで来る。
どちらもレン達に見覚えの無い。それ故に、ううん、とモルガナは
「俺に何か御用かな? お嬢さん方」
レンの方は特に動じる事も無く、微笑みながらそう尋ねる。
すると、シニヨンの女子生徒が、なぁ、とやや興奮したように身を乗り出す。
「アンタ、レン・アマミヤだよな!? この前の決闘で
「ん?」
――クソスぺの大将?
極々自然な形で女子生徒の口から飛び出て来た侮蔑の
すると、じゃ、じゃあさ、と女子生徒が食い気味に次の質問を投げ掛けて来る。
「その、ホントなのか? 決闘の後でぶち撒けられてた、その……アンタが、
「ああ、それね。――まぁ、間違ってないよ。俺が生まれたのが地球だっていうのは」
「聞いたニカねぇ!? やっぱりアーシアンなんだって!」
「チュチュ、落ち着いて! 失礼だよ、初対面の人相手に」
「スッゲェよ、マジでアーシアンがホルダーになったんだよッ!!」
小さな子供が素敵なプレゼントでも手に入れた様に
そんな彼女に、もう、と困ったように息を吐いたボブカットの女子生徒が、続けて、少し慌てたようにしながらレンの方へと向き直り、小さく頭を下げる。
「すいません、いきなり押し掛けて来ちゃって」
「大丈夫、気にしないで。――それより、そろそろ君達の名前を教えてくれないかな?」
そうレンにやんわり自己紹介を
「ごめんなさい、すっかり忘れてた。――ええと、私、ニカ・ナナウラっていいます。メカニック科の二年です。それで、こっちの子がチュアチュリー・パンランチで――」
「チュチュって呼んでくれよ!」
ボブカットの女子生徒――ニカ・ナナウラの紹介を遮って、再びレンの方に顔を向けたシニヨンの女子生徒――チュアチュリー・パンランチが声を張り上げた。
「アンタと同じパイロット科で、一年だ! 同じアーシアン同士仲良くやろうよ、
「レンにぃ?」
白い歯を見せて満面の笑みを作るチュチュ。
その言葉の内に含まれていた、恐らく自身の事だろう妙な呼び方が、おいおい、何か
同様にレンも少し気になりはしたが、それを顔に出さす、ああ、と
「ニカ・ナナウラさんに、チュアチュリー・パンランチさんだね。――こちらこそ宜しく」
そう二人に
モルガナと、レンの制服のポケットの中に入っているキーホルダーを介したエリクトとの会話へと。
「えぇ、うっそぉ……ニカちゃんだけじゃなくて、チュチュちゃんも?」
「おい、知ってるのかコイツらの事? ひょっとして、
「えーと、そうなんだけど……何か、チュチュちゃんの態度がえらく
そんな遣り取りを聞きつつ、レンは、それで、チュチュとニカに問い掛ける。
「チュチュさん達――」
「“さん”なんて要らないよ! レンにぃ三年なんだろ? あーしの方が年下なんだから、
「そう? それじゃあお言葉に甘えて――チュチュ達が態々俺に会いに来たのは何でなのかな?」
まさか、同じアーシアンだから顔を合わせに来た、だけでは無いだろう。――そう言外に含ませた質問に対し、よくぞ聞いてくれた、とでも言わんばかりにチュチュが胸を張り、ふふん、と得意げに鼻を鳴らす。
「あーしら、レンにぃを
水星ちゃん「チュ、チュチュ先輩が何か優しい!? ……い、今ならもしかして私の事もスレねぇとか呼んでくれ――」
パイセン「あ゛あ゛!? 調子こいてんじゃねぇぞゴルァ(゜Д゜#)!!」
たぬき「(((;゜Д゜)))ひいいいぃぃっ! ごめんなさーい!!」
次回、パレス潜入三回目!