ペルソナ5G 水星のトリックスター   作:shisuko

29 / 41
長らくお待たせいたしました。プラモ製作並行してたり仕事がめんどい事になってたりでなかなか時間取れませんでしたが、ようやく次話投稿です。

今回はジェタークパレス潜入3回目! オタカラ向けて裸足で駆けてく28話、はーじまるよー!


#28 Is it worse than MS to my father?

「――成程」

 

 地下格納庫の一画、(たたず)むエアリアルの足下でチュチュとニカによる“お誘い”の内容を説明されたレンは一つ頷く。

 

「そろそろちゃんとした寝床が欲しかったところだったんだ。だから、君達の“お誘い”はとても有難いよ」

 

「ホント!? って事は――」

 

 レンが(つむ)いだ言葉に、彼が自分達の“誘い”に応じてくれたと判断し、チュチュとニカが一様に期待で目を輝かせる。

 しかし、すぐに彼女達の喜色に明るんだその表情は変わる事となる。

 

「だけど申し訳ない」

 

 少し困りながらも彼が告げたその返答への、落胆(らくたん)と困惑に。

 即座に、何でさ、とチュチュが不安げな顔で詰め寄って来たので、それを(なだ)めながら、彼女達の“誘い”に乗れない理由をレンは説明する。

 レンがアーシアンであるとヴィムに広められた時、同時にレンを退学させるとも言っていた事。その言葉通りに申請が出されていて、退学の危機が迫っている事を。

 

「というワケで、数日後にはここから去らなきゃいけない身でね」

 

 それ故に、レン自身の気持ちとは関係無く、()()チュチュ達の誘いには応じる事が出来ない。

 そう伝えると、

 

「ザッけんなよクソスペーシアンッ!!」

 

いつの間にかワナワナと体を震わせていたチュチュが憤怒の形相で叫んだ。

 

「決闘に勝ったから退学だぁ!? んだよそのフザけた話は! そうまでしてテメェらが上だって事にしてぇのかよ、クソったれめッ!!」

 

 まるで火山が噴火したような、激しさ極まる怒気だった。

 それに思わず呆気に取られ、足下のモルガナと共に目を丸くしたレンとは対照的に、チュチュっ、と固めた拳を振り回して今にも暴れ出しそうなチュチュをニカが慌てて押さえに掛かる。

 ただ、彼女の方も今のレンの話には思うところがあったようで、でも、と青い双眸が彼の方にも向けられる。

 

「やっぱり酷いですよその話。レンさん、まだこの学園に来てそんなに経ってないですよね? なのにもう退学だなんて、そんなの……」

 

「そうだぜ! 勝手な都合で決闘やり直させやがったくせによぉ!!」

 

「――ありがとう」

 

 そう言ってくれるだけでも救われるよ、とレンは二人に感謝の言葉を述べる。

 心からの言葉だった。

 チュチュもニカも、初対面にも(かかわ)らず、自分の事の様にレンに降り掛かった不幸に怒り、寄り添おうとしてくれている。――レンがつい、ここにはいない仲間達の姿を脳裏に思い描いてしまう程に。

 特にチュチュは――あくまで、ここまでの短い会話だけで伝わった範囲ではあるが――その言動や熱さが良く似ている。以前ミオリネに話した、かつての自分が着せられた濡れ衣について最初に親身になって怒ってくれた()に。

 だから――。

 

「――君達が良ければなんだけど、“お誘い”の話、()()って事にさせてくれないかな?」

 

 そう先程の返答について訂正したレンは悪戯気にウィンクしつつ小首を傾げ、二人に礼代わりとして一つ()()を告げる事にした。

 

「明後日か明々後日(しあさって)になるかな? その辺りで、きっと()()()()()()()()と思うからさ」

 

 

 

PERSONA5G ―― TRICK STAR from MERCURY ――

#28 Is it worse than MS to my father?

 

 

 

 日は変わって翌日。

 

「――さて」

 

 放課後を迎えてすぐに予定通り地下格納庫内に集まり、ジェタークパレスへの三度目の潜入を開始したミオリネ達は、既に食堂内の階段を上がってすぐの廊下にて身を潜めていた。

 その理由は勿論、彼女達の現在地の先にある例の改札口だ。

 前回の探索では通過出来ず、止むを得ず別の道を通る事となったそこだが、今回は違う。

 

「アレ、持って来てるわよね?」

 

「もちろんだとも」

 

 ミオリネが掛けた確認に、微笑み返しながらレンがパスカードを取り出して見せる。

 昨日、強力なシャドウと戦闘した際に手に入れた戦利品だ。それを使えば、恐らく改札口を通過し、その先へ進む事が出来る。

 ただし、現状ではあくまで()()()だ。

 

「もしダメだったらどうする?」

 

「そん時ゃ、また一から探し直すしかないな」

 

「うえぇ~、またぁ? メンドくさいなぁ」

 

 グエルの問いに対するモルガナの返答に、エリクトがうんざりしたように脱力した両腕をぶら下げる。

 最も、ここからパスカードを手に入れた四階の管制室まではほぼ一直線だった。道中にあった部屋も一通り調べて回ったため、他に何かある可能性はほぼ無いが。

 何はともあれ、試してみなければ何も始まらない。

 早速レンが――前回から変わらず、一階のエントランスに(ひしめ)いているシャドウ達に気づかれないように身を(かが)めながら――改札口の方へ向かう。

 そして、物陰から顔だけを出したミオリネ達が見守る中、パスカードを改札機に近付け――。

 

「――良し」

 

 ガシャリ、と何かの駆動音が鳴った。

 程無くしてレンが手招きして来たため、それに応じて物陰から彼の傍までミオリネ達は移動し、一様に改札機の方に目を向ける。

 見れば、改札機の内側に設けられている侵入防止のプレートは倒れており、問題無く通過出来る状態になっていた。

 ――()()()

 

「行くぞ、皆」

 

 そう指示を下したレンを先頭に、ミオリネ達は順に改札口を通り抜けていく。

 その先に待つのは連絡通路だ。

 一定間隔で窓が設けられた壁面と、プラットホームへ移動するための階段を左右に、正面奥に道が続く一本道。

 見たところ警備のシャドウも見当たらないため、その一本道を遠慮無く駆け抜けようとしたミオリネ達であったが、

 

「ぽっぽ~!!」

 

不意に響き渡ったその声が踏み出そうとした足を止めた。

 

「……またあの声?」

 

 またも聞こえた例の声に、若干うんざりしたミオリネは顔を(しか)める。

 初日から数えてもう三度目となるその声を発しているのが何なのかは、ほぼ明らかになっている。その最後の答え合わせとでも言うように、彼女が振り向いた手近な窓の向こうには、

 

「急げ急げー! 遅刻しちまうー!!」

 

間近で列車(モノレール)が動いているかのようなけたたましい駆動音を上げながら()()()()()()()()()()()、緑色の角柱状の体に顔が貼り付いた姿のジェターク寮生の認知存在の姿があった。

 かと思えば、

 

<LM011、発車完了>

 

<了解。――続けてKP019、発車位置へ>

 

続けてそんな事務的な台詞も伝わって来る。

 どこかに設置されたスピーカーか何かから発せられているだろう、ややノイズが混じったその声の内容については聞き覚えがあった。

 これは――。

 

「何か、昨日のシャドウ(奴ら)が言ってたのと似てるね」

 

 そう告げるエリクトの言葉通り、スピーカー越しの声の言葉は、昨日のシャドウ達が戦闘の直前まで口にしていた遣り取りと似ていた。

 件のシャドウ達は既に消滅している事から、新たに管制室に配備された別のシャドウが問題の台詞を発しているのだろう。そして恐らく、この台詞の意味は――。

 

「ムーンライト、エリィ」

 

 レンの呼び掛けが耳に入る。

 それに反応して振り向けば、彼とモルガナ、グエルが少し進んだところにある階段の陰に身を隠しつつ、階下を覗き込んでいた。

 すぐにミオリネとエリクトも足早にそちらへ向かい、同じように階段の先、プラットホームへと目を()らす。

 見れば、昨日と同じように認知存在のジェターク寮生達が足場の先のレールへ向けて並んでいる姿がそこにあった。

 その先頭の、恐らく先程呼ばれた学籍番号の主なのだろう生徒が、よっしゃ、とブロックが組み合わさったような腕を振ってホームの端に立った。

 かと思った次の瞬間、その生徒が高々と飛び跳ね、ブロックの組み合わせで出来たような体をガションガション、とMSの駆動音か何かと聞き間違えそうな硬質な音を立てて()()()()()()()

 変形は物の数秒と掛からずに完了。昨日のフェルシーや、先程走り去っていた生徒と同様の角柱型になったところで生徒がレールの上に着地し、

 

<KP019、発車準備完了>

 

<了解。――KP019、発車どうぞ>

 

「待ってましたぁ!」

 

スピーカー越しの声の許可が下りると共に、意気揚々走り出した。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……」

 

 目の前で繰り広げられた一連の光景に、何と言えば良いのか分からなくなってしまったミオリネは閉口せざるを得なかった。

 何度も耳にした例の認知存在の声。それが列車の警笛のようだとレンが評していた事もあったが、正しくその通りであったようだ。

 ただ、そんな事がどうでも良くなってしまう程に、生徒達がコミックやシネマにでも出て来るようなロボットのように変形し、レールの上をモノレールそのままに走り去っていく様は衝撃的であった。

 ――いや、それだけじゃない。

 もう一点、言葉を失ってしまう程に彼女を困惑させたものがあった。

 

「……なぁ?」

 

 それについては、どうにかといった具合で口を開いたグエルが言及する。

 

「どうなっているんだアイツら? ……()()()()()()

 

 そう、()だ。

 列を作る認知存在のジェターク寮生達は、その多くが顔が無かった。

 あるべき筈の目や鼻、口が無い、所謂(いわゆる)()()()()()()と化していたのだ。

 

「変なモノレールもどきの次はお化け? どうなってんの、あのオジサンの頭の中?」

 

 不気味と評する他無いその顔無しの集団に、うわぁ、とドン引きしたような声を吐き出すエリクト。

 それに対し、モルガナがこんな推測を返す。

 

「恐らく、()()()()()()()()()()()()()()()()って事だろうな」

 

 あくまでヴィムはジェターク社のCEO。自社が管理する施設の居住者として寮生達の名簿なんかに目を通す事はあったとしても、その一人一人と顔を合わせる機会は殆ど無い。

 また、仮にあったとしても――そもそも、あの認知存在が生まれた根源は“子供は親の敷いたレールに従って走るもの”という認知だ。その認知の存在を省みれば、ヴィムにとって重要なのはジェターク寮(自身のパレス)で生活する()()という一点だけであり、特別印象に残りでもしない限りは個々人の顔や特徴など一々覚えておく必要も無いのだろう。

 

「――そういえば、昨日のフェルシーとペトラも何かおかしかったわね」

 

 モルガナの言葉に、管制室から目にしたフェルシーとペトラの認知存在の事をミオリネは思い返す。

 当時は見た目にばかり注意が向いてしまっていたが、考えてみれば口調も現実の当人達と比べて少し違和感があった。

 取巻きとしてグエルやラウダ(自分の息子達)と良くつるんでいる二人の事は顔ぐらいは覚えていたのだろうが、それ以上は――もしかすると名前すら――知らないし、関心も無い。――あの認知存在の有様は、()()()()()だ。

 つまりは、子供というだけで個々人の個性など認めず、それが当然と親の言葉に従う事を強要するヴィムの強引で頑迷(がんめい)な姿勢の、その分かりやすい例なのだ。

 その事実に気を落としたり、あるいは嘆息したりした後で、一行は改めて連絡通路を足早に駆け抜ける。

 通路の先に再び現れた改札口を先程同様にパスカードで開放し、その向こうに続く廊下へと足を踏み入れたミオリネ達は、左右に伸びる廊下の、その内の左方向へと(かじ)を切る。

 そして、途中で徘徊しているシャドウの目を掻い潜りながら抜けた先に待っていた物を前に、彼女達は一旦その足を止めた。

 

「――エレベーターか」

 

 これまで目にして来たものよりも重厚な装いのスライド式のドアに、その隣の上下をそれぞれ向く△が描かれた二つのボタン。廊下の突き当りに設けられていたその組み合わせは、一目見てエレベーターのそれと分かる物であった。

 同時に、ドアのすぐ上には現在の階層を示す液晶が設置されており――そこに表示されていた“B1”の文字が、丁度今“2F”へと変わった。

 

「! 隠れろ!」

 

 咄嗟(とっさ)にモルガナが声を張り上げる。

 その指示に従い、すぐさまミオリネ達が付近の物陰に身を隠すと、程無くしてエレベーターのドアが開き、薄緑色の制服姿のシャドウが現れた。

 幸いにして、そのシャドウがミオリネ達に気づいた様子は全く無く、微かな駆動音を立てて閉じるドアを後に、すぐに廊下の向こうへのそのそと歩いていく。

 その背が見えなくなるのを待って物陰から出たミオリネは、ふぅ、と安堵の息を吐く。

 

「いきなりで参るわね」

 

「そうだね。――ただ、このエレベーターは何かありそうだ」

 

 エレベーターの方を興味深げに(うかが)うレンに、そうね、とミオリネは同意を返す。

 よくよく見れば、エレベーターの現在階数を表示している液晶の更に上には、“STAFF ONLY”と書かれたプレートが貼られている。それに加え、先程の液晶の表記の変化を見るに、このエレベーターはどうやら2F(現在値)とB1のみを行き来するようで、1Fには止まらないようだ。

 駅員限定の、地下までの直通エレベーター。――何も無いと考える方が不自然というものである。

 

「――こりゃあ、そろそろオタカラに近付いているかもな」

 

 ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべるモルガナ。

 否応無く期待を(あお)られるその言葉に高揚を感じながら、一行はエレベーターへと乗り込み、内部に設置されているボタンを押して地下へと向かう。

 暫しの間を置き、鈍い振動と共に再び開くドア。

 その先に待っていたのは――。

 

 

 

「ここは……格納庫、か?」

 

 開かれたエレベーターのドアを潜り抜けたグエルは、足を踏み入れたその広大な空間を見回して呟く。

 四方を鉄板や機械を組み合わせた壁が張り巡らされ、それを支えるようにトラス状に組み合わされた鉄骨が立ち上げられている。その壁の中央辺りを横切るように渡されたキャットウォークが枝分かれし、上方中央の空間で合流している様は、学園内でも見られるMSの格納庫の内装に良く似ていた。

 何なら、一定間隔でその中に(たたず)んでいる数体の()()()()()()

 

「あのMSも認知存在ってヤツ?」

 

「まぁ、そうなるな」

 

「ふーん。――こっちは現実のとそんなに変わんないだね、人間(ここの寮の子達)と違って」

 

 目元に右手を(かざ)しながら眺めるエリクトの言う通り、そのディランザ達の緑色に染められた骨太のシルエットは、目を凝らして見ても現実の機体とまるで変わらないように思えた。

 

「紛いなりにも、自分の会社の商品だしな」

 

「ちゃんとPR出来るように、性能もデザインも何もかも()()()()()()()()()()()()()()()。――そんなトコでしょうね」

 

 その自社製品に対する正確で深い認知(理解)の表れが、現実のそれと寸分違わない周囲のディランザの認知存在を形作っているのだろう。

 モルガナに続けて、嘆息混じりにミオリネがそう告げる。

 自社の商品について理解が深い事は、決して悪い事ではない。(むし)ろ、CEOという立場を考えれば必須とまでいえる。

 ただ、あのジェターク寮生達の認知存在を目にした後では、その再現度の差にはどうしても引っ掛かりを覚えてしまう。

 特にグエルにとっては、

 

(……父さんにとっては、MS以下の存在なのか……? 寮の奴らは……俺とラウダは……)

 

そんな疑いが芽生えてしまう程に。

 しかし、今はそんな感傷に(ひた)っている時ではない。

 

「――皆、先へ進もう。――きっと、オタカラまでもう少しだ」

 

 響くレンの声がグエル達の気を引き締める。

 そうして探索を再開した一行は格納庫の奥、彼らが乗っていたエレベーターと丁度対称の位置に設けられた大きな両開きのドアを見つける。

 そのドアに近付くや――はっと何かに気づいたようにモルガナが声を上げた。

 

「この感じ……オタカラだ!」

 

「何だとっ!?」

 

「間違いねぇ! このドアの向こうにオタカラがある!」

 

 ワガハイには分かる、というモルガナの断言に背を押され、すぐさまグエルはドアの取っ手を掴み、力任せに開く。

 短く細い通路。それを抜けた先に――。

 

「――あったぞ! オタカラだ!」




次回、遂にオタカラとご対面!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。