そんなワケでジークアクス観て来てテンションマックス! ついでにリアルタイムでPlazma聴きながらアゲアゲ状態で投稿する30話、はーじまるよー!
ジャラジャラ、と鎖が鳴る。
ポツン、と水溜りに水滴が落ちる。
その音に眠りから目覚めたレンを出迎えたのは、一面に広がる
左右と後方を覆う壁に、天井と床。寝そべっている粗末で硬いベッドに、それと対照の位置に設置されている
目に見えるあらゆる物が蒼く染められた
だが、当のレン自身にその事への驚きや不安は無い。
この場に今呼び出された事については全く予想外ではあったが、この牢獄自体は
何より、牢獄内と外の空間を
だから、ベットから立ち上がったレンは――
そうして牢獄の外へと出たところで、
「ようこそ、我が“ベルベットルーム”へ」
彼は出迎えの言葉を受ける事となった。
「ここは夢と現実、精神と物質の
牢獄の外にあったのは、直方体状の石を敷き詰められた床と、レンが入っていたのと同じような牢獄の列で形作られた円形の広間だ。
その中央に敷かれた蒼地に連なる葉の模様と“V”の字が金色で描かれた
小柄で細い体を黒い礼服に包んだ、頭頂の
「ここは、何かの形で“契約”を果たされた方のみが訪れる部屋。そしてこの部屋の有り様は、貴方様ご自身の心の有り様を映したものにございます」
つまりは、重く冷たい空気が立ち込めるこの牢獄こそが、レンの心の有り様だという事だ。
正確には、
「かつての貴方様は
しかし、
最初から開け放たれ、
「――ふふっ。今更このような話は不要でしたかな? あま――」
「主」
老人が何かを言い掛けたところに、その傍に控えていた少女が口を出す。
腰まで届くプラチナブロンドの髪と金色の双眸、身に
その少女の指摘を受けた老人が、おっと
「
そう訂正する老人のお
そんな老人につい笑いを誘われつつ、別に良いよ、とレンは返す。
「
「左様でございますか。――でしたら暫くの間、貴方様の事は“お客人”とお呼びさせて頂く事に致しましょう」
その老人の言葉に頷き返して了承したレンは背後の鉄格子に背を預け、改めて対面の二人と
「久しぶりだね。――イゴール、ラヴェンツァ」
「ええ。――お久しぶりです、トリックスター」
蒼いワンピースの少女――ラヴェンツァが
「以前お会いした時から、随分と時が経ちましたな。――
「今のところは上々かな? ――目に付くものが全部新鮮でね、中々楽しめてるよ」
「それは
ふふ、とレンの返答に満足気に、或いは安堵したように顔を
そんな彼らに、それで、と今度はレンの方が問い掛ける。
「今日はどんな用事かな?」
もしかして、
「残念ながら、我々が
「
「加えて、次に貴方をここにお招き出来るのがいつになるかも分からない状態です」
そう変わり変わりに告げられるイゴールとラヴェンツァの説明に、そうか、とレンは肩を落とす。
二人の回答はある程度予想していたものではあったが、それでも多少の
この分じゃ、
そして、
「今回はその報告を。それと――」
蒼地に金の差し色が入った
そのままレンのすぐ傍まで来たところで、金色の大きな瞳が彼の顔を見上げた。
「そろそろ
そのラヴェンツァの問いに、ああ、とレンは意味有り気な笑みを浮かべ、まっすぐに見つめて来る彼女の顔を見下ろした。
「――実はもう
その返答に、不快感の類など欠片も見られない上品な微笑みがラヴェンツァの人形の様に整った顔に浮かぶ。
同時に、
「おおっ、左様で」
それは丁度良うございましたな、とイゴールが白い手袋を嵌めた手を打ち合わせた。
「であれば、
白い手袋を嵌めた手を差し出しつつのイゴールの提案に、頼むよ、と
それを合図にイゴールがラヴェンツァに呼び掛け、それに、承知しました、我が主、と一つ頷いたラヴェンツァがレンの傍から離れる。
そしてベルベットルームの一画――蒼地に星の模様が散りばめられた布に覆われた巨大な
バサリ、と音を立てて布が取り払われ――。
「既に
レンとイゴールの方へ振り返り、物騒な単語を何て事無い様に口にしたラヴェンツァの後ろにあったのは、三種類。
一つは、10mは有りそうな高さの木製のレールと、その間に渡された
一つは、床下5m程度の台と、その上で揺れている輪の付いたロープを組み合わせた
そして最後の一つは、物々しい造形の発電機がケーブルを介して繋がれた
いずれも、ベルベットルームの室内同様に蒼く染められた
その恐ろしいオーラでも発していそうな
「手始めに
そう告げてから、レンは背後の鉄格子から背を離し、ズボンのポケットに手を入れたままラヴェンツァの方へと向かう。
すぐ傍にレンが着いたところで、今度はラヴェンツァが彼の目元――白いドミノマスク向けて右手を
すると、仮面が蒼い炎を上げて燃え上がり――レンの後方に数体のペルソナが呼び出される。
そう、
アルセーヌに、ジャックフロスト。それにジェタークパレス内で手に入れた、他のペルソナ。――今のレンが所持している全ての仮面が、ずらりと彼の後ろで横一列に並び現れたのだ。
その光景に――もう幾度となく見た故に――特に驚く事も無くレンは振り返り、いずれも
その内の一体はジャックフロストだ。
「アイツとアイツを頼む」
「承知致しました」
レンが指定したペルソナへとラヴェンツァが向かう。
逃げ出したりする様子の無いジャックフロストともう一体の傍まで歩み寄った彼女は、先程処刑器具から取り払ったのと同じ蒼地に星模様の布を何処からともなく取り出し、それを次々に
そうして布の中に覆い隠され、更に鎖で
その様子を見計らってイゴールが指を鳴らし――上部へ引き上げられていた刃が落ちた。
ダン、と無情な音が牢獄内に響く。
それと入れ替わりにギロチンから蒼と黒の
そして――。
「俺ぁスイキ」
奔流が飛び散り、その中から現れた
「喜びなぁ。これから俺ぁテメェの仮面、テメェの邪魔する有象無象を自慢の洪水で一匹残らず押し流してやらぁ」
濃淡二色の紫のまだら模様を纏った衣服の隙間や手足から覗かせる鬼神が、手にした物々しい棍棒を一振りすると共にその身を仮面へと変え、素肌を晒しているレンの目元へと飛び込む。
そうして
「引き続き、
そう、この一連の行為は
「もちろんだとも」
レンが返事を返すと共に、ラヴェンツァが再び彼へと手を翳し、今しがた仮面に変わったばかりのスイキをペルソナ達の列に加える。
それから、先程と同じようにレンは処刑に掛けるペルソナを指定し、ラヴェンツァがそれらをギロチンへと連れていくために動く。
そうして、再びギロチンの刃がペルソナ達の首を断つ音が響き渡る。
ベルベットルーム内にけたたましいブザーが鳴り響き、現実のレンの目覚めを報せるその時まで、何度も、何度も。
「お疲れ様です、父さん」
ジェターク寮の地下、学園艦の
「グエルはどうした?」
学園を訪れる
それに対し、やや言い難そうに眼を
「その、兄さんは……今日は、体調が優れないらしくて……」
「――やれやれ」
しょうのない奴だ、とヴィムは鼻を鳴らす。
多少の不満はあったが、だからといって体調不良の人間に無理をさせる気も無い。学園を訪れた目的が目的だけに、
(俺の方から来ると報せておいたのに、当日の体調管理も出来んとは……)
パイロットは体が資本。常に搭乗するMSの性能を100%発揮し、最高の操縦が出来るように、日頃から己自身を万全の状態にしておくのは
長い学園生活の中で気が
(アイツの引き取り先には、遠慮は要らんと言っておかねばな)
体が資本なのは経営者もそう変わらない。今の緩んだままでは到底
そう決意を固めながら地上へ向かうエレベーターへと乗り込んだヴィムに、あの、と続けて入って来たラウダが問うて来る。
「どうして、また学園に?」
「何だ? ――俺が来ちゃ悪いのか?」
「い、いえっ! そんな事は……」
若干の苛立ちを覚えて鋭く細めた目を向けたヴィムに、怒りを買う事を恐れたラウダが慌てて首を振る。
そこから一拍置いて、社用だ、とだけヴィムは告げた。
まだ処理し切れていない業務を放ってまでまた学園に足を運んだその理由は、本当のところヴィム自身も分かってはいない。
ただ、
学園で――ジェターク寮で何か危険な事態が進行しているような、そんな胸騒ぎが。
そんな風に思った根拠や切欠など何も無い。だというのに、どうしてもヴィムはその胸騒ぎを無視出来なかったのだ。
だから、しいて理由を上げるとすれば“何も問題など無い”とその目で
何はともあれ、一階へと到着したエレベーターを降りたヴィムは後にラウダを連れてエントランスへと向かい、そこから中庭へと出たのだが――。
「――ん?」
植込みや
「何だ、あの連中は?」
目を
「……いえ、分かりません」
同じ緑色の制服に身を包んだ男女が何十人も集まり、物珍し気に押し合ったりへし合ったり、生徒手帳のカメラを向けたりしている。
その集団についてラウダも全く心当たりは無い様で、僕にも何が何だか、と首を傾げるしかないようだった。
と、そこで門戸に集まっている集団の中から離れ、ヴィム達の方へと駆けて来る者達がいた。
「ラウダ先輩ー!」
そう手を振りながらやって来たのは、二人の女子生徒だ。
片方は暗いブロンドを後頭部で結わえ、もう片方は茶髪を七三に分けた……名前は、確か……。
「フェルシー! ペトラ!」
ああ、そんな名前だったか。
自分の前へと進み出たラウダが呼んだところで、ようやくその女子生徒達の名前を思い出したヴィムを余所に、たっ、大変っすよ、とフェルシーが慌てたように訴え掛ける。
「何か、何か寮の前にっ、
「カード?」
フェルシーの発言をオウム返ししたラウダに、これです、とペトラがそのカードとやらを差し出す。
それを怪訝そうに受け取ったラウダであったが、
「――っ!?」
次の瞬間、信じ難いものでも見たように彼の顔が驚愕に歪む。
「このカードが、寮の前の壁にベタベタ貼り付けられてるんです! それで、ウチの寮だけじゃなくて、他の寮の奴らまで集まって来て――!」
そうペトラが叫んでいる間も、ラウダは目を見開いて絶句し続けている。
彼女達が見せたカードとやらに、一体何があったというのか? ――固まる息子の背を見続けていたヴィムであったが、その辺りで彼は
「どっ、どうしましょ先輩? こんなの、もしもCEOに知られたら――」
「ええぃッ、貸せ!」
「――ってCEOぉ!?」
微かに震えるラウダの手から件のカードを強引に奪い取った。
「一体、これが何だと言うんだ!?」
苛立ちのままに声を荒げつつ、眼前まで近づけたカードをヴィムは確認する。
赤と黒の円環模様をバックに、“TAKE YOUR hEaRT”の文字と共にシルクハットと片目の部分が燃えているドミノマスクがデザインされているだけのそのカードは、最初は特に何の変哲も無い様に思えた。
だが、本当にそんなただの紙切れであるならば、ラウダ達のおかしな様子の説明がつかない。となれば――。
ヴィムは手首を返し、カードの裏面を向ける。
そして、
「なぁっ!?」
先のラウダと同様、或いはそれ以上の驚愕に襲われる事となった。
そうなっても止むを得なかった。
何故なら、そのカードの裏面にはこんな文章が
Your jealousy that you think it's natural for your child to have your way, and if there's anyone who gets in the way, you'll move to eliminate them without hesitation is flagrant.
「何なんだこれはああぁぁぁっ!?」
「やってくれたな……あのクソガキ共!」
現実のヴィムが人目も
「――良いだろう。貴様らが
くくっ、とシャドウヴィムが肩を震わせる。
「俺は常に勝ち続けて来た男だ。今度もそれは変わらん。碌にレールの上を走れん貴様らなんぞに、“アレ”は触れる事すら出来んと教えてやるよ。――アーシアン野郎! デリングの娘! グエルゥ!!」
天を仰ぎ、高笑いを響かせるシャドウヴィム。
いよいよ憎たらしい賊共が、何よりも大切なオタカラに手を掛けようとしている。――その認知が警戒心を呼び起こし、パレス中に
そしてまた、ここにもヴィムが予告状を見た事を知った者達が。
「よぉ、待たせたなお前ら」
学園地下の格納庫。ハッチが開かれたエアリアルのコックピットへと続くキャットウォークに姿を現したモルガナとグエルに、お疲れ、とレンは
それと共に、で、どう、と右隣りの
「あの親父、ちゃんと予告状は見た?」
前日の夜の内にジェターク寮の門戸付近に数枚の予告状を貼り付け、今日学園に訪れる事となっていたヴィムにそれを目撃させる。――そういう手で予告すると決まった段階で、予告状の設置と見届け役はジェターク寮住まい故に目撃されても疑いを持たれにくいグエルと、猫故に目立ちにくいモルガナが担当する事となっていた。
その二人がこうしてやって来たという事は、つまり
「ああ、バッチリだ!」
ヴィムは予告状を目撃した。――その事を、へへっ、という笑い声と共にモルガナがハッキリと宣言した。
「貼り付けた予告状に集まってる奴らの中にフェルシーとペトラがいてな。アイツらが寮の方へ予告状を持って行ってすぐに、父さんの叫び声が聞こえた」
「周りの森の中にいても聞こえるくらい、デカい声だったぜ。あんな声が出る程驚く事なんて、予告状くらいなモンだ」
そう語られるグエルとモルガナの説明を聞くに、残念ながら二人はヴィムが予告状を目にしたその瞬間までは見ていないようであった。
だがそれでも、現状を考えれば二人の話には十分な
となれば次は――。
「これでジェタークのオタカラは実体化した」
一歩踏み出しながら告げるレン。
それによって他の面々の注目が集まる中で、彼は言葉を続ける。
「前にも説明したけど、予告状の効果は一日だけの一回こっきりだ。この機を逃したら、もう奴を改心させる事は出来ない」
つまりは一発勝負。
最後に泣くか笑うかは、これからオタカラを奪えるかどうかの、その一点に全てが掛かっているのだ。
「――全員、いけるな?」
最後の仕上げに向かうための、最後の確認を投げ掛けるレン。
その問いに、他の面々が一斉に力強い頷きを返す。
「何度も言ってるでしょ? あの親父は、ウチのクソ親父改心させるための通過点に過ぎないって。――これくらい、やってやるわよ」
「右に同じく、だよ。――ボク達の取引はまだ始まったばっかりなのに、こんなトコで
「俺には目指すべき夢と、守るべき誇りがあるんだ。それを捨てる気も、奪われるつもりも無い。――覚悟は出来ている」
「――だそうだ。全員いけるってよ、蓮!」
最後に締め括ったモルガナの威勢の良い声を受け、良し、と頷いたレンは左手に生徒手帳を取り出し、イセカイナビを立ち上げる。
起動したナビが発生させる赤と黒の波紋。
その中で、彼は目元を覆っていた黒縁眼鏡を一旦取り払い、怪し気な輝きを称えた黒い瞳を
「いくぞ、皆」
波紋が止み、
眼鏡に代わって現れた、白いドミノマスクを。
その身に纏っていた緑色の制服は、当に黒いロングコートへと変わっている。他の面々の姿が各々の怪盗服へと変わったのと、時同じくして。
歯を剥き、不敵な笑みを浮かべたレンは号令を発する。
その号令を合図に、全員が一斉に駆け出した。
「ショータイムだ!」
※推奨BGM:Life Will Change
いざ、最後の潜入へ!
次回もお楽しみに!