ペルソナ5G 水星のトリックスター   作:shisuko

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目の前をぶち抜くプゥラズマ!

そんなワケでジークアクス観て来てテンションマックス! ついでにリアルタイムでPlazma聴きながらアゲアゲ状態で投稿する30話、はーじまるよー!


#30 I'm the man who's always won.

 ジャラジャラ、と鎖が鳴る。

 ポツン、と水溜りに水滴が落ちる。

 その音に眠りから目覚めたレンを出迎えたのは、一面に広がる()だった。

 左右と後方を覆う壁に、天井と床。寝そべっている粗末で硬いベッドに、それと対照の位置に設置されている(ふた)の無い便器。そして、前方に壁の代わりに嵌め込まれている()()()越しに見える、その情景も。

 目に見えるあらゆる物が蒼く染められた()()の、その一室の中にいつの間にやら彼は押し込められていたのだ。

 だが、当のレン自身にその事への驚きや不安は無い。

 この場に今呼び出された事については全く予想外ではあったが、この牢獄自体は()()()()()()()()()()()()()()()()

 何より、牢獄内と外の空間を(さえぎ)る格子戸は()()()()()()()()開け放たれている。()()()()()()

 だから、ベットから立ち上がったレンは――(とこ)に着いた時に着ていた筈のスウェットがいつの間にやら黒いロングコート(怪盗服)に変化している事にも疑問一つ抱かずに――迷わず格子戸を(くぐ)り抜ける。

 そうして牢獄の外へと出たところで、

 

「ようこそ、我が“ベルベットルーム”へ」

 

彼は出迎えの言葉を受ける事となった。

 

「ここは夢と現実、精神と物質の狭間(はざま)にある場所」

 

 牢獄の外にあったのは、直方体状の石を敷き詰められた床と、レンが入っていたのと同じような牢獄の列で形作られた円形の広間だ。

 その中央に敷かれた蒼地に連なる葉の模様と“V”の字が金色で描かれた絨毯(カーペット)の、その上に乗せられた横長のデスクに両肘を乗せた人物が、口元で手を組みながら朗々(ろうろう)と告げる。

 小柄で細い体を黒い礼服に包んだ、頭頂の禿()げ上がった老人だ。

 (ただ)し、その老人は耳と鼻が異様なまでに長く尖り、血走った三白眼が今にも眼窩(がんか)から零れ落ちてしまいそうな程に飛び出しているなど、およそ尋常な人間とは思えない特徴が幾つも見受けられるのだが。

 

「ここは、何かの形で“契約”を果たされた方のみが訪れる部屋。そしてこの部屋の有り様は、貴方様ご自身の心の有り様を映したものにございます」

 

 つまりは、重く冷たい空気が立ち込めるこの牢獄こそが、レンの心の有り様だという事だ。

 正確には、()()()、だが。

 

「かつての貴方様は()()()()()()。ご自身に降り掛かった理不尽と、人々の怠情の欲望より生まれ出でたかの悪神が(もたら)そうとした破滅の運命にそのお心を縛られた囚人(しゅうじん)でございました」

 

 しかし、()()レンを(しば)るものは何も無い。

 最初から開け放たれ、()()()()()()()出入り可能となっている牢獄の格子戸が、その証明だ。

 

「――ふふっ。今更このような話は不要でしたかな? あま――」

 

「主」

 

 老人が何かを言い掛けたところに、その傍に控えていた少女が口を出す。

 腰まで届くプラチナブロンドの髪と金色の双眸、身に(まと)った蒼色のカチューシャとワンピースが特徴的な、10歳を少し超えたかどうか程度の美しい少女だ。

 その少女の指摘を受けた老人が、おっと失敬(しっけい)、と額に手を当てる。

 

(わたくし)とした事が失念しておりました。()()()()()()レン・アマミヤ様でございましたな」

 

 そう訂正する老人のお道化(どけ)た仕草は滑稽(こっけい)さと気品が両立しており、大昔の宮廷にて王や貴族を楽しませた道化師を連想させた。

 そんな老人につい笑いを誘われつつ、別に良いよ、とレンは返す。

 

()()()だろうと俺の事に変わりは無いんだから、好きに呼んでくれれば良い」

 

「左様でございますか。――でしたら暫くの間、貴方様の事は“お客人”とお呼びさせて頂く事に致しましょう」

 

 その老人の言葉に頷き返して了承したレンは背後の鉄格子に背を預け、改めて対面の二人と挨拶(あいさつ)を交わす。

 

「久しぶりだね。――イゴール、ラヴェンツァ」

 

「ええ。――お久しぶりです、トリックスター」

 

 蒼いワンピースの少女――ラヴェンツァが(うやうや)しく会釈(えしゃく)をし、それと共に、ふふ、と老人――イゴールが再び口を開く。

 

「以前お会いした時から、随分と時が経ちましたな。――如何(いかが)ですかな、()()()での生活は?」

 

「今のところは上々かな? ――目に付くものが全部新鮮でね、中々楽しめてるよ」

 

「それは()うございました」

 

 ふふ、とレンの返答に満足気に、或いは安堵したように顔を(ほころ)ばせるイゴールとラヴェンツァ。

 そんな彼らに、それで、と今度はレンの方が問い掛ける。

 

「今日はどんな用事かな?」

 

 もしかして、()()()に居られるようになったとか、と若干の期待を抱きつつ尋ねたレンに、いいえ、とラヴェンツァが首を振る。

 

「残念ながら、我々が()()()に長く留まれる算段は未だについていません」

 

此度(こたび)はあくまで、現実でお眠りになられている貴方様を一時的にお呼び立てさせて頂いたに過ぎませぬ。こうして顔を合わせていられるのも、現実のお客人がお目覚めになられるまでの(わず)かな間のみでございます」

 

「加えて、次に貴方をここにお招き出来るのがいつになるかも分からない状態です」

 

 そう変わり変わりに告げられるイゴールとラヴェンツァの説明に、そうか、とレンは肩を落とす。

 二人の回答はある程度予想していたものではあったが、それでも多少の落胆(らくたん)はあった。

 この分じゃ、()()()のように現実や異世界から好きなタイミングでベルベットルームへ入る事は当面出来そうに無い。

 そして、()()()にいる仲間達も……。

 

「今回はその報告を。それと――」

 

 蒼地に金の差し色が入った装丁(そうちょう)の分厚い本を右脇に抱えたラヴェンツァが、長い髪を揺らしながらレンの方へと歩み寄って来る。

 そのままレンのすぐ傍まで来たところで、金色の大きな瞳が彼の顔を見上げた。

 

「そろそろ()()()()()()のではありませんか、トリックスター?」

 

 そのラヴェンツァの問いに、ああ、とレンは意味有り気な笑みを浮かべ、まっすぐに見つめて来る彼女の顔を見下ろした。

 

「――実はもう()()()()()()()。いよいよ一人目に仕掛けるところだったし、そろそろ()()()()()と思ってたところだったんだ」

 

 その返答に、不快感の類など欠片も見られない上品な微笑みがラヴェンツァの人形の様に整った顔に浮かぶ。

 同時に、

 

「おおっ、左様で」

 

それは丁度良うございましたな、とイゴールが白い手袋を嵌めた手を打ち合わせた。

 

「であれば、()()()()()()()()()()()()

 

 白い手袋を嵌めた手を差し出しつつのイゴールの提案に、頼むよ、と鷹揚(おうよう)に頷き返すレン。

 それを合図にイゴールがラヴェンツァに呼び掛け、それに、承知しました、我が主、と一つ頷いたラヴェンツァがレンの傍から離れる。

 そしてベルベットルームの一画――蒼地に星の模様が散りばめられた布に覆われた巨大な()()の方へと赴き、布の端を掴み取る。

 バサリ、と音を立てて布が取り払われ――。

 

「既に()()の用意は出来ております」

 

 レンとイゴールの方へ振り返り、物騒な単語を何て事無い様に口にしたラヴェンツァの後ろにあったのは、三種類。

 一つは、10mは有りそうな高さの木製のレールと、その間に渡された陽炎(かげろう)の様に揺らめいている刃が特徴的な二台の()()()()

 一つは、床下5m程度の台と、その上で揺れている輪の付いたロープを組み合わせた()()()

 そして最後の一つは、物々しい造形の発電機がケーブルを介して繋がれた()()()()

 いずれも、ベルベットルームの室内同様に蒼く染められた()()()()であった。

 その恐ろしいオーラでも発していそうな禍々(まがまが)しい造形の物体群を前に、レンは――()()()()()()()()()()()()事で、口角を鋭く吊り上げた。

 

「手始めに()()といこう」

 

 そう告げてから、レンは背後の鉄格子から背を離し、ズボンのポケットに手を入れたままラヴェンツァの方へと向かう。

 すぐ傍にレンが着いたところで、今度はラヴェンツァが彼の目元――白いドミノマスク向けて右手を(かざ)す。

 すると、仮面が蒼い炎を上げて燃え上がり――レンの後方に数体のペルソナが呼び出される。

 そう、()()だ。

 アルセーヌに、ジャックフロスト。それにジェタークパレス内で手に入れた、他のペルソナ。――今のレンが所持している全ての仮面が、ずらりと彼の後ろで横一列に並び現れたのだ。

 その光景に――もう幾度となく見た故に――特に驚く事も無くレンは振り返り、いずれも(ひざまず)いたりヘバったりしていて動ける様子に無いペルソナ達を一望してから、赤い手袋を嵌めた手でその内の二体を指差す。

 その内の一体はジャックフロストだ。

 

「アイツとアイツを頼む」

 

「承知致しました」

 

 レンが指定したペルソナへとラヴェンツァが向かう。

 逃げ出したりする様子の無いジャックフロストともう一体の傍まで歩み寄った彼女は、先程処刑器具から取り払ったのと同じ蒼地に星模様の布を何処からともなく取り出し、それを次々に(かぶ)せていく。

 そうして布の中に覆い隠され、更に鎖で雁字搦(がんじがら)めに縛り上げられたペルソナ達が、ラヴェンツァの慣れた手付きで難無くギロチンに固定される。

 その様子を見計らってイゴールが指を鳴らし――上部へ引き上げられていた刃が落ちた。

 ダン、と無情な音が牢獄内に響く。

 首枷(くびかせ)を嵌められていたペルソナ達は、そこからはみ出ていた箇所を容赦無く断ち切られる――どころか、()()()()()()()()()()()

 それと入れ替わりにギロチンから蒼と黒の奔流(ほんりゅう)が飛び出し、やや角度を付けて並べられたそれらの延長線上で混ざり合う。

 そして――。

 

「俺ぁスイキ」

 

 奔流が飛び散り、その中から現れた()()()が名乗りを上げる。

 

「喜びなぁ。これから俺ぁテメェの仮面、テメェの邪魔する有象無象を自慢の洪水で一匹残らず押し流してやらぁ」

 

 濃淡二色の紫のまだら模様を纏った衣服の隙間や手足から覗かせる鬼神が、手にした物々しい棍棒を一振りすると共にその身を仮面へと変え、素肌を晒しているレンの目元へと飛び込む。

 そうして()()()()()を得た彼に、ラヴェンツァが問い掛ける。

 

「引き続き、()()を行いますか?」

 

 そう、この一連の行為は()()。――ワイルドが新たなペルソナを得る方法の一つ。二つ以上の古い仮面を処分(処刑)し、一つの新たな仮面を作り上げる(へと生まれ変わらせる)“ペルソナ合体”だ。

 

「もちろんだとも」

 

 レンが返事を返すと共に、ラヴェンツァが再び彼へと手を翳し、今しがた仮面に変わったばかりのスイキをペルソナ達の列に加える。

 それから、先程と同じようにレンは処刑に掛けるペルソナを指定し、ラヴェンツァがそれらをギロチンへと連れていくために動く。

 そうして、再びギロチンの刃がペルソナ達の首を断つ音が響き渡る。

 ベルベットルーム内にけたたましいブザーが鳴り響き、現実のレンの目覚めを報せるその時まで、何度も、何度も。

 

 

 

PERSONA5G ―― TRICK STAR from MERCURY ――

#30 I'm the man who's always won.

 

 

 

「お疲れ様です、父さん」

 

 ジェターク寮の地下、学園艦の停留所(ていりゅうじょ)にて直立の姿勢で出迎えたラウダの姿に、ん、とヴィムは片眉を上げる。

 

「グエルはどうした?」

 

 学園を訪れる(むね)を記したメールは、ラウダだけでなく彼にも送った筈だ。自分からのメールを息子が無視するなど有り得ないため、当然そこに二人共いるとヴィムは考えていた。

 それに対し、やや言い難そうに眼を()らしながらラウダが返答する。

 

「その、兄さんは……今日は、体調が優れないらしくて……」

 

「――やれやれ」

 

 しょうのない奴だ、とヴィムは鼻を鳴らす。

 多少の不満はあったが、だからといって体調不良の人間に無理をさせる気も無い。学園を訪れた目的が目的だけに、猶更(なおさら)

 (むし)ろ、帰り際に彼の方から息子の元に顔を出してやろうかとも思ったくらいだが―― 一方で、こうも考えていた。

 ()()()()()()退()()()()()()()()()()()()()()()、と。

 

(俺の方から来ると報せておいたのに、当日の体調管理も出来んとは……)

 

 パイロットは体が資本。常に搭乗するMSの性能を100%発揮し、最高の操縦が出来るように、日頃から己自身を万全の状態にしておくのは必須(ひっす)条件であり、基本だ。そんな初歩中の初歩すら維持出来ないとあっては、如何に実力や才能があろうとパイロットとしては失格と言わざるを得ない。

 長い学園生活の中で気が(ゆる)んでしまったのかは分からないが――いずれにせよ、それが()()()()()()()()()()なんかに二度も負けた原因の一つなのは間違いない。

 

(アイツの引き取り先には、遠慮は要らんと言っておかねばな)

 

 体が資本なのは経営者もそう変わらない。今の緩んだままでは到底レールの上を走れない(引き継がせられない)ため、そう遠からず入社させる予定の系列会社でしっかりと意識を引き締めさせなければ。

 そう決意を固めながら地上へ向かうエレベーターへと乗り込んだヴィムに、あの、と続けて入って来たラウダが問うて来る。

 

「どうして、また学園に?」

 

「何だ? ――俺が来ちゃ悪いのか?」

 

「い、いえっ! そんな事は……」

 

 若干の苛立ちを覚えて鋭く細めた目を向けたヴィムに、怒りを買う事を恐れたラウダが慌てて首を振る。

 そこから一拍置いて、社用だ、とだけヴィムは告げた。

 ()であった。

 まだ処理し切れていない業務を放ってまでまた学園に足を運んだその理由は、本当のところヴィム自身も分かってはいない。

 ただ、()()()がしたのだ。

 学園で――ジェターク寮で何か危険な事態が進行しているような、そんな胸騒ぎが。

 そんな風に思った根拠や切欠など何も無い。だというのに、どうしてもヴィムはその胸騒ぎを無視出来なかったのだ。

 だから、しいて理由を上げるとすれば“何も問題など無い”とその目で(じか)に確認して、自分自身を安心させる事だろうか?

 何はともあれ、一階へと到着したエレベーターを降りたヴィムは後にラウダを連れてエントランスへと向かい、そこから中庭へと出たのだが――。

 

「――ん?」

 

 植込みや花壇(かだん)で形作られた道を半ばまで進んだヴィムは、そこで()()()()()を見つけ、続けて、おい、と振り向かずに後のラウダに呼び掛ける。

 

「何だ、あの連中は?」

 

 目を()らしつつ彼がそう尋ねたのは、道の先に続くジェターク寮の門戸の辺りに集まっている()()()()の事であった。

 

「……いえ、分かりません」

 

 同じ緑色の制服に身を包んだ男女が何十人も集まり、物珍し気に押し合ったりへし合ったり、生徒手帳のカメラを向けたりしている。

 その集団についてラウダも全く心当たりは無い様で、僕にも何が何だか、と首を傾げるしかないようだった。

 と、そこで門戸に集まっている集団の中から離れ、ヴィム達の方へと駆けて来る者達がいた。

 

「ラウダ先輩ー!」

 

 そう手を振りながらやって来たのは、二人の女子生徒だ。

 片方は暗いブロンドを後頭部で結わえ、もう片方は茶髪を七三に分けた……名前は、確か……。

 

「フェルシー! ペトラ!」

 

 ああ、そんな名前だったか。

 自分の前へと進み出たラウダが呼んだところで、ようやくその女子生徒達の名前を思い出したヴィムを余所に、たっ、大変っすよ、とフェルシーが慌てたように訴え掛ける。

 

「何か、何か寮の前にっ、()()()()()がっ!」

 

「カード?」

 

 フェルシーの発言をオウム返ししたラウダに、これです、とペトラがそのカードとやらを差し出す。

 それを怪訝そうに受け取ったラウダであったが、

 

「――っ!?」

 

次の瞬間、信じ難いものでも見たように彼の顔が驚愕に歪む。

 

「このカードが、寮の前の壁にベタベタ貼り付けられてるんです! それで、ウチの寮だけじゃなくて、他の寮の奴らまで集まって来て――!」

 

 そうペトラが叫んでいる間も、ラウダは目を見開いて絶句し続けている。

 彼女達が見せたカードとやらに、一体何があったというのか? ――固まる息子の背を見続けていたヴィムであったが、その辺りで彼は(しび)れを切らし、

 

「どっ、どうしましょ先輩? こんなの、もしもCEOに知られたら――」

 

「ええぃッ、貸せ!」

 

「――ってCEOぉ!?」

 

微かに震えるラウダの手から件のカードを強引に奪い取った。

 

「一体、これが何だと言うんだ!?」

 

 苛立ちのままに声を荒げつつ、眼前まで近づけたカードをヴィムは確認する。

 赤と黒の円環模様をバックに、“TAKE YOUR hEaRT”の文字と共にシルクハットと片目の部分が燃えているドミノマスクがデザインされているだけのそのカードは、最初は特に何の変哲も無い様に思えた。

 だが、本当にそんなただの紙切れであるならば、ラウダ達のおかしな様子の説明がつかない。となれば――。

 ヴィムは手首を返し、カードの裏面を向ける。

 そして、

 

「なぁっ!?」

 

先のラウダと同様、或いはそれ以上の驚愕に襲われる事となった。

 そうなっても止むを得なかった。

 何故なら、そのカードの裏面にはこんな文章が(つづ)られていたのだから。

 

To the sinner of The Envy who doesn't accept anything other than the rails you laid down自分のレール以外を認めない嫉妬の罪人,Mr. Vim Juterk(ヴィム・ジェターク殿).

 

Your jealousy that you think it's natural for your child to have your way子供は自分の思い通りになって当然と考え, and if there's anyone who gets in the way, you'll move to eliminate them without hesitation is flagrantその障害になる者がいれば迷わず排除に動くお前の嫉妬心は目に余る.

 

Therefore, we have decided to reform you(よって、我々はお前を改心させる事にした).

 

We take your twisted heart(その歪んだ心を頂戴する).

 

From Phantom Thieves of Hearts(心の怪盗団) “The Phantom”(「ザ・ファントム」).

 

「何なんだこれはああぁぁぁっ!?」

 

 

 

「やってくれたな……あのクソガキ共!」

 

 現実のヴィムが人目も(はばか)らず絶叫を上げたその時、その目を通じてシャドウヴィムもまた予告状を見ていた。

 

「――良いだろう。貴様らが()()()()()なら、こちらも相応の遣り方で出迎えてやる」

 

 くくっ、とシャドウヴィムが肩を震わせる。

 

「俺は常に勝ち続けて来た男だ。今度もそれは変わらん。碌にレールの上を走れん貴様らなんぞに、“アレ”は触れる事すら出来んと教えてやるよ。――アーシアン野郎! デリングの娘! グエルゥ!!」

 

 天を仰ぎ、高笑いを響かせるシャドウヴィム。

 いよいよ憎たらしい賊共が、何よりも大切なオタカラに手を掛けようとしている。――その認知が警戒心を呼び起こし、パレス中に伝播(でんぱ)していく。

 

 

 

 そしてまた、ここにもヴィムが予告状を見た事を知った者達が。

 

「よぉ、待たせたなお前ら」

 

 学園地下の格納庫。ハッチが開かれたエアリアルのコックピットへと続くキャットウォークに姿を現したモルガナとグエルに、お疲れ、とレンは(ねぎら)いの言葉を掛ける。

 それと共に、で、どう、と右隣りの欄干(らんかん)に背を預けていたミオリネが二人に問い掛ける。

 

「あの親父、ちゃんと予告状は見た?」

 

 前日の夜の内にジェターク寮の門戸付近に数枚の予告状を貼り付け、今日学園に訪れる事となっていたヴィムにそれを目撃させる。――そういう手で予告すると決まった段階で、予告状の設置と見届け役はジェターク寮住まい故に目撃されても疑いを持たれにくいグエルと、猫故に目立ちにくいモルガナが担当する事となっていた。

 その二人がこうしてやって来たという事は、つまり()()()()()だ。

 

「ああ、バッチリだ!」

 

 ヴィムは予告状を目撃した。――その事を、へへっ、という笑い声と共にモルガナがハッキリと宣言した。

 

「貼り付けた予告状に集まってる奴らの中にフェルシーとペトラがいてな。アイツらが寮の方へ予告状を持って行ってすぐに、父さんの叫び声が聞こえた」

 

「周りの森の中にいても聞こえるくらい、デカい声だったぜ。あんな声が出る程驚く事なんて、予告状くらいなモンだ」

 

 そう語られるグエルとモルガナの説明を聞くに、残念ながら二人はヴィムが予告状を目にしたその瞬間までは見ていないようであった。

 だがそれでも、現状を考えれば二人の話には十分な信憑性(しんぴょうせい)はあると判断出来る。

 となれば次は――。

 

「これでジェタークのオタカラは実体化した」

 

 一歩踏み出しながら告げるレン。

 それによって他の面々の注目が集まる中で、彼は言葉を続ける。

 

「前にも説明したけど、予告状の効果は一日だけの一回こっきりだ。この機を逃したら、もう奴を改心させる事は出来ない」

 

 つまりは一発勝負。

 最後に泣くか笑うかは、これからオタカラを奪えるかどうかの、その一点に全てが掛かっているのだ。

 

「――全員、いけるな?」

 

 最後の仕上げに向かうための、最後の確認を投げ掛けるレン。

 その問いに、他の面々が一斉に力強い頷きを返す。

 

「何度も言ってるでしょ? あの親父は、ウチのクソ親父改心させるための通過点に過ぎないって。――これくらい、やってやるわよ」

 

「右に同じく、だよ。――ボク達の取引はまだ始まったばっかりなのに、こんなトコで(つまず)いてなんてらんない。でしょ?」

 

「俺には目指すべき夢と、守るべき誇りがあるんだ。それを捨てる気も、奪われるつもりも無い。――覚悟は出来ている」

 

「――だそうだ。全員いけるってよ、蓮!」

 

 最後に締め括ったモルガナの威勢の良い声を受け、良し、と頷いたレンは左手に生徒手帳を取り出し、イセカイナビを立ち上げる。

 起動したナビが発生させる赤と黒の波紋。

 その中で、彼は目元を覆っていた黒縁眼鏡を一旦取り払い、怪し気な輝きを称えた黒い瞳を(あら)わにする。

 

「いくぞ、皆」

 

 波紋が止み、明瞭(めいりょう)になった視界に現れたジェタークパレス(駅舎)を前に、レンは手に持った()()を自らの顔に装着する。

 眼鏡に代わって現れた、白いドミノマスクを。

 その身に纏っていた緑色の制服は、当に黒いロングコートへと変わっている。他の面々の姿が各々の怪盗服へと変わったのと、時同じくして。

 歯を剥き、不敵な笑みを浮かべたレンは号令を発する。

 その号令を合図に、全員が一斉に駆け出した。

 

「ショータイムだ!」




※推奨BGM:Life Will Change

いざ、最後の潜入へ!

次回もお楽しみに!
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